◆帰ってきたマリオブラザーズ◆
永谷園との強力タッグ



発売日:1988年11月30日   発売元:任天堂   ジャンル:ACT
値段:400円(書き換え専用)   Disk:両面
おすすめ度:4.5(ファミコン史上最も安いゲーム登場)


1983年に発売された『マリオブラザーズ』のリメイク版で、今作ではディスクシステムで発売された。 発売日は、オリジナル版(FC版とAC版)発売から5年後の1988年で、 この年は『スーパーマリオブラザーズ3』が発売され、任天堂のゲームもディスクゲームを中心に平均的に人気が高かった。

やはり、ディスクシステムが登場して2年が経過しているので、他のメーカーが駄目なディスクゲームを作っていたのに対して 任天堂は前後編のAVGを前年に続いて2作目を登場させているなど、ディスクシステム本体を開発した者の余裕という気風を感じさせていた。

そんな中で、マリオブラザーズをディスクでリメイクさせて発売するというのは、オリジナル版発売から5年という節目を迎えたことに関係あると思われるが、 FC最初のソフトである『ドンキーコング』ではなくマリオブラザーズをリメイクした背景には、 マリオブラザーズのほうがドンキーコングよりも売り上げや人気があったためらしい(マリオはミリオンを達成したがドンキーは達していない)。

また、マリオシリーズの人気も他のシリーズと比べて高かったことも背景にあると思われ、その1つスーパーマリオ3についてもゲームそのものの人気もさることながら、 ミニゲームでマリオブラザーズを楽しめることができることも高評価につながったといえる。

無論、スーパーマリオ3に収録されているものは間違いなくアレンジ版で、カメさんことシェルクリーパーがスーパーマリオシリーズにおいてはノコノコのモデルとなったために、 代わりにトゲゾーを出すことでその誤解(上から踏めること)を払拭することにした。 他に、ミニゲームならではのオリジナル要素はあるものの、アレンジに丸く収まっている出来になっている。

一方のリメイクとなるディスク版では、リメイクというよりはAC版に一層近づけた内容、 むしろAC版の完全移植に加えてディスク版のオリジナル要素を加えた、まさに完成版という出来具合に仕上がっている。

これについては後ほど説明するとして、この時期のFCの技術と容量を考えればディスクよりもROMカセットにリメイクするのが普通だろうが (確かにディスクの容量は5年前のものより数倍に上がっている)。にもかかわらず、あえてディスクゲームで発売させたのは、ある会社との提携にある。

その会社は永谷園、『お茶漬け海苔』や『すし太郎』といった商品ならピンと来る会社で任天堂とも関わりが深かった会社でもあった。 スーパーマリオふりかけやマリオカレーといった商品も発売していたので、2社の提携は1988年ごろから始まったといえるだろう。

つまり、永谷園がゲームのスポンサーになることで値段を下げることが出来たわけだが、100円の値下げなのでその恩恵が大きいのはディスクゲームの書き換えであり、 子供がもらう月のお小遣いを考えれば100円の値下げはかなり魅力的だった。


任天堂と永谷園、老舗ゲーム会社と老舗食品メーカーの2大タッグは、瞬く間にユーザーの間で話題になったのは言うまでもないだろう。 このゲームに永谷園のスポンサーがついた以上、所々に永谷園が関わっているという点を付け加えなければならなかったが。 その1つとして有名なのが、ゲーム開始前にある永谷園のCMで、それぞれお茶漬け海苔、五目チャーハンの素、スーパーマリオブラザーズふりかけの3つ。

なぜ、永谷園の製品の中でその3つが選ばれたのかというのは、当時の知名度と新製品という点を考慮したと考えられる。 お茶漬け海苔は1952年誕生の老舗商品で、五目チャーハンの素は1988年誕生の新製品、スーパーマリオブラザーズふりかけも新製品でかつスーパーマリオ3の宣伝といえる。

また、ディスクの入れ替えを行う際にもCMが登場し、ゲーム前のCMのものより数が多い分メッセージだけ担っているが、 その内容はバラエティに富んでいてるのでディスクの入れ替えと読み込みが、面倒より逆に楽しくなっている。

どちらのCMも質がよく、軽快なBGMにあわせて宣伝されるあたりは、プレイヤーに商品の購入意欲を高めさせているといえるだろう。 まさしく、ゲーム内のCMの元祖といえ、今でもそのCMは色あせていない。

なお、1つだけ和風のBGMと背景のCMがあるが、それはお茶漬け海苔で演歌歌手の北島三郎さんのイメージにあわせている。 実は、3つのCMの中で一番見る確率が高いのはこれで、それ以外の2つのCMの見る確率が低いのは残念だが、サブちゃんの知名度や人気にも関係しているのかもしれない。

もう1つは、永谷園ワールドという通常とは別のモードで、残機が0になってもその後に現れるスロットマシンで特定の絵柄をそろえると、見事に残機を増やすことが出来るのだ。 もっとも、その救済措置はたった1回だけだが、ゲームオーバー後のコンテニューがある程度定着してきた中でのこの手法は意外性を突いている。

スロットの絵柄の中に、永谷園の文字が出ていることも特徴の1つで、スロットにも永谷園が関わっていることを示している。 ちなみに、永谷園ワールドはもとより通常のモードでも3種類のCMを見ることが出来る。


ところでゲーム本編はというと、遊びそのものはまったく変わっていないため、それについてはFC版のレビューを参照してもらいたい。 敵を床の下から持ち上げてひっくり返し、ひっくり返って動けない敵を蹴飛ばして落とす、途中から現れるトラップを避けながらその繰り返しをやる。

ピンチになったら、画面中央下のパワー床でまとめてひっくり返したりする。 2人同時プレイでは、相手の行動を邪魔したり逆に協力して敵を倒すなど、相変わらずプレイのバリエーションが個性的でバランスが取れている。

先にも書いたように、ディスク版はAC版に近づけているので、グラフィックやシステム的にAC版にあわせた作りとなっている。 それもこれも、FC版では容量の都合によりいくつかの要素が削除されてしまったからだ。

特にグラフィックは、キャラの幅を狭くしたり全体を小さくしたりと容量の節約を余儀なくされていたが、ディスク版では容量が大幅に上がったことでAC版並のグラフィックを取り戻している。 その中でシェルクリーパーは、自力で起き上がる際にシャツを着ながら自分で甲羅をひっくり返しているというしぐさも再現されれている。

ファイヤーボールの大きさも、AC版同様の大きさつまりFC版よりも一回り大きくなり、それに触れるマリオのグラフィックが赤くなった。 いうなれば焼死で、フリーザーに触れると凍死ということで今度はグラフィックが青くなり、容量が増えた分芸が細かい。

床の下に出来るツララや、一部のボーナスステージの床が見えなくなる手法も、容量が増えたからこそ再現出来た要素で、ディスク版のみだがジャンプする時マリオとルイージの方向を変換できる、 つまりはスーパーマリオシリーズと同じジャンプが使えるので、これだけでも難易度はAC版やFC版と比べて極端に下がっている。


そして、オリジナル要素のもう1つは一定の得点に達すると、マリオとルイージがプレイヤーに対して祝福してくれるということだ。 10万点と20万点の2つだけだが、その分長くプレイしつつゲームオーバーにならなければ達成されない偉業なだけに、その祝福は何かと感激深いものがある。 さらに20万点以上に達すると、パスワードをはがきに書いて送るような指示が出されるが、これは当時このゲームのキャンペーンを行っていたためである。

達成した得点によりもらえる商品が違うが、10万点はスーパーマリオ3トランプが、 20万点はスーパーマリオ3とその他の任天堂新作ソフト(『VSエキサイトバイク』か『ファミコンウォーズ』程度だろうが)があたる仕組みとなっていて、 応募した人全員の中からスーパーマリオ3特製キーホルダーがあたるなど、 永谷園とのタッグがなければまさにそういった大盤振る舞いなどできるはずもなく、まさに2大老舗メーカーの協力タッグの力には恐れ入る。

ところで、このお知らせはゲーム中で見ることが出来るが、このキャンペーンの解説はなんとノコノコで、ある意味スーパーマリオ3の宣伝とも言えるのかもしれない。 当然ながら、キャンペーン期間は1988年11月30日つまりこのゲームの発売から翌年の4月30日までという短さで、今はキャンペーン終了から20年近くたっている。 しかしながら、スーパーマリオふりかけ以外の永谷園のCMの商品は今も売られているので、プレイ後は商品の1つ買ってみるのもいいだろう。

ゲームも、書き換え専用で2003年にディスクの書き換えが終了したといっても、ファミコンを取り扱っている通販で売られている場合が多く、 かなり値は張るがプレイしてそれ以上の価値があることをこのゲームは今も示しているのだから。


このゲーム発売当時、私はその存在に気づくはずもなく、ようやく気づいたのは発売から3年後であった。 それでも、このゲームを買おうとは全く思わなかったのは、別のいとこからもらったFC版を飽きるほどまでプレイしていたためだった。

また、ディスクシステムを持っていなかったことやそのゲームが書き換え専用だったこともあって、プレイする気など全然なかった。 プレイしたければ、普通にFC版で十分だと思っていたのだから、なぜ『帰ってきた〜』とタイトルにあるのか子供ながらに理解できなかった。

そのゲームの存在を知ってから12年後、偶然大手レトロゲームサイトを覗いていたらこのゲームのことが載っており、違いのほうも幾分ながらわかってきたものの、まだプレイするという気にはなれなかった。 しかもこの年は、ファミコン誕生20周年にありながらディスクゲームの書き換えが終了した年でもあったため、 書き換え専用のゲームが一気に幻のゲームになってしまったこともあって、2度とプレイすることが出来ないのかと少しがっかりした。

しかし、このゲームを詳しく紹介しているサイトを見ると、その違いが画像付きで詳しく載っていた。 永谷園のCMや一定以上の得点で祝福など、FC版とは大幅に違っていることがわかったために、小さい頃どうしてこのゲームをやらずにけなしてしまったのかかなり後悔する羽目に陥った。


だが3年後、ゲーム好きのいとこから多くのディスクゲームをもらった際に帰ってきたマリオブラザーズがあったので、思わずうれしくなったと同時にいつの間に書き換えたのか不思議だった。 おそらく、書き換え終了の年の期限日ぎりぎりに書き換えたのだろうが私にとってはどうでもよく、それよりもこのゲームをまさかただでもらえるのは夢にも思っておらず、それが書き換え専用ならばなおさらだった。 もっとも、FC版で培ってきた腕はすっかり衰えてしまったので、果たしてどこまでやれるか不安だったが。

そんな私だったが、ゲーム前に永谷園のCMを見て思わずわくわくしたこととB面に換える際のCMにも面白かったために、 ついついディスクの入れ替えを多くやってしまった(幸いディスクシステムは壊れなかったものの、あと少しで壊れたと思う)。

気を取り直して本編に入ったが、ジャンプの性能がスーパーマリオ並みだったりキャラクターが大きくなったりと、 FC版の内容を覚えていたからこそその衝撃は大きく、改めてこのゲームをプレイしてよかったと思った。 もちろん、10万点ぎりぎりには届いたものの20万点には届かなかったので、とりあえずこのゲームは封印することにした。

この後、レビューを書く現在久々にこのゲームをプレイしたが、理由はファミコン誕生25周年ということでこのゲームを選んだことによる。 やはり、10万点突破した後に難しくなってきたが、ゲームオーバー後のスロットで見事1人増やせたことで何とかがんばれた。

そして遂に、待望の20万点を突破しその祝福画面を見た私は、ようやくその壁を破ることが出来たと感激した。 無論、その画面の珍妙奇妙な内容は、落ち着いて見ると思わず苦笑したくなるものだったが、それはそれで味があると思う。



本日のまとめ



マリオカレーも ヨロシク!!

(08/7/15レビュー)
伝説のスターブロブ2への掲載:2019年6月25日
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