◆クレイジークライマー◆
往年の名作を大幅リメイク



発売日:1986年12月26日   発売元:日本物産   ジャンル:ACT
値段:5300円   おすすめ度:3(全ての要素がクレイジー)


AC業界の黎明期にありながら、同時に日本物産(以下ニチブツ)の第一黄金期を支えたゲームの1つ。 これについては、スーパーファミコンレビュー一覧その1にある『ニチブツアーケードクラシックス』を参照していただきたい。

アーケードクラシックスでは、1980年登場のAC版をそのまま収録しているので、少々値は張るがこのゲームに加えて 2本のニチブツの名作がオリジナル・アレンジ共に遊べることができるので、AC版をプレイしたければそれを購入するのがいいだろう。

なお、クレイジークライマーについてはもう1つアレンジ版が用意されており、 それがこのFC版であってもはやその内容たるやアレンジというよりリメイクといったほうがいい(アーケードクラシックスには未収録)。

これについては後ほど詳しく説明するとして、 アーケードクラシックスに収録されているアレンジ版はAC版の絵柄を当時のSFCにあわせていて、BGMもそれなりにアレンジしている。

ただそれだけで、かつてこのゲームをプレイした人にとっては好評だったものの、このゲームを知らない人にとっては人気があったとはあまりいいがたい (一応この時期は、往年の人気ゲームをゲームホルダーにして発売していたので、それを知っている若い世代には好評だった)。

他社の『平安京エイリアン』をアーケードクラシックス第2弾に登場させた際、オリジナル版に加えて大幅な改良を加えたリメイク版を追加して、 若い世代の支持を広げようとしたことがその理由と思われる。 確かにこの頃は、往年のゲームがそのままもしくはアレンジされて再び登場するというリバイバルブームのさなかにあり、 その昔そういったゲームを体験したことがある人はもちろん、若い世代にもそれを触れることができた。

このリバイバルブーム、実はそれより前にも起こっており、ブームは一定の周期で再発され再び流行するのだ。 ゲームでのリバイバルブームは1986年にも起こっているが、その時は『エレポン(タイトー)』や『ポントロン(セガ)』といった ブロック崩しをリメイクさせおり、『アルカノイド』がブロック崩しのリメイクを成し遂げた。

FCにもリバイバルブームらしきものがあったものの、本体の発売やサードパーティの参入といった時期の関係上、そう呼べるかは疑問が残る。 『バトルシティー』や『ルート16ターボ』といったリメイク作品が1985年に出ているが、それらは例外といっていいだろう。


これから紹介するFC版『クレイジークライマー』も、AC版登場から6年の歳月が経っているものの、ニチブツのFC参入時期の関係上リバイバルブームに便乗したとはあまりいえない。 しかしながら、AC版登場におけるAC基盤の性能とFC本体の性能と比べれば、明らかに後者のほうがそれを上回っている。

FCに登場したAC作品のうち、AC版登場とFC版発売の時期があまりにも離れているものの(最低5年以上)、 そのほとんどは完全に近い移植(得点の位置や画面比率など)または時代に即した大幅リメイクをやっている。

もっとも、そうでもしなければ現在のゲームに慣れているユーザーに見向きもされなかったようで、 タイトーFC初参入ソフト第1弾が昔ブームを引き起こした『スペースインベーダー』のほぼ完全なる移植だったものの、 前年に第一次FCブームを巻き起こした『ゼビウス』を発売されては人気がいまいちになるのは目に見えている。

クレイジークライマーもまた、その時代に即した大幅なリメイクをしなければならなかった。 もちろん、AC版の要素を全て取り入れているので、AC版をプレイしていた人でもある程度楽しめるつくりになっている。 ビルの住人おじゃまMANやしらけコンドルはもちろん、鉄アレイや看板などの落下物までもプレイヤーの邪魔を容赦なくやってのけている。

リメイク版では、それらに加えて鎖付きの鉄球が回転しながら落下し、鎖に触れると一定の所まで落下させられる他、 触れたら即ミスとなる爆弾や炎を吐くドラゴンのオブジェ、キャラクターではそうじのおじさんや紙笛を吹く人など、AC版よりバリエーションがこれでもかと増えている。


お邪魔キャラの定番であるキングゴリラも登場しているが、グラフィックがAC版と違って色合いのせいかどこかしら気色悪い格好になってしまっている。 さすがに、こういった気色悪いものだけでは無理があるのか、新たに2体キングゴリラの役割を演じるお邪魔キャラが登場しているが、2体ともどこかで見たようなキャラになっている。 雷様と怪獣がそれで、前者はドリフの大爆笑でおなじみの後者は間違いなくゴジラにそっくりで、著作権など知らないという態度はある意味すばらしい。

だが、それに輪をかけてプレイヤーを貶めている存在がある。 それが制限時間で、おじゃまMANやしらけコンドルの落とすものや、鉄アレイや看板などといった突然の落下物などに触れるとそれが減ってしまうが、 あくまでそれは得点という形に換算していることにより、0になっても1ミスにならないのは救いか。 というより、当時のゲーム全般に見られた得点のインフレに巻き込まれたのだろうが。

一方で、つかまると一定の階層まで上がってくれるラッキーバルーンをはじめとして、 タイムを回復させるものや一定時間敵の動きを止めてくれるものといったFC版ならではのお助けアイテムが登場し、プレイヤーを楽にさせている。 それでも難しいということに変わりはなく、要因となるお邪魔要素に加えてFC版の操作方法がその難易度上昇に拍車をかけている。

FC版では、コントローラーを2つ使い横に持つのではなく縦に持って(十字キーの左を上に向くようにする)プレイしなければならないため、普通のゲームと比べて操作しづらい。 SFC版では、AC版の操作は十字キーと4つのボタンでまかなえるようになっている。

このためか、ニチブツでは『クライマースティック』なるものをソフトに付属した。 これは十字キーにセットして使うもので、AC版に近い感覚でコントローラーを横にしながらプレイするのだが、 スティックが妙に外れやすいことと中古でそれが付属されていないこともあわせて、コントローラーを縦にしてプレイした人は多いだろう。

確かに、AC版では2つのスティックを使用してプレイするのだが、FC版ではそれができないので2つのコントローラーをスティックに見立ててプレイするしかなかったのだ。 ニチブツが、FCでプレイしてもらいたいという苦肉の策だったのかもしれない。


このように、FC版にはAC版になかった要素が次々と登場してくるが、一番衝撃的なのが裏面の存在とそこに行く手段だろう。 後者については、特定の面とその地点にたどり着くと、鍵が落ちてそれを取ることで扉が登場、そこに入って1画面のボーナス面に突入することになる。

ボーナス面といっても、敵が出てくる上にそもそも操作方法が全く違うので、本編でようやく慣れた操作をして必ず痛い目にあう人はいるだろう。 早い話が普通のアクションで、どこをどうすればビル登りゲームと全然違うゲームを同時に収録できるのか、まったくもって不思議としか言いようがない。

しかも、ボーナス面には勲章が置いてあるため、全ボーナス面で全て取ってなおかつ8面をクリアすると裏面に行けるが、 1つでも勲章を取りそこなうと8面をクリアした後にその面をプレイしなければならず、得点稼ぎはいいのだろうが操作のややこしさがあってつらい。

AC版では4面だったのがFC版では倍の8面になっていて、裏面の4面を合わせると合計して12面という壮大なものになり、 全ステージともグラフィックがかなり違っているので、1Mの容量でこれほどまでに多くの要素を出せるものだということをアピールしている。

グラフィックも豪華になったが、それ以上におじゃまMANのデザインがステージごとに変わっており(ロボットやゴーストなど)、 プレイヤーを飽きさせることがない(それを見ている余裕はないが)というより彼らがなぜいるのか疑問がわくが。 主人公のデザインも変わっているが、なぜか上半身裸で『できるかな』のノッポさんスタイルになっているので、AC版と比べるとかなり奇妙ではある。


裏面の話に戻るが、今までがビルもしくはビルに近い建物が舞台だったのに対して、もはやビルではなく奇妙なところになっている。 確かに、タイトルにビルを登るという明確な意思は示されていないのだが、AC版においてビルを登ることがこのゲームの醍醐味であることが認知されているために、 AC版をプレイした人にとってかなり違和感が付きまとったと思われる。 前にも書いたが、そういった大幅なアレンジをしなければ今のゲームに慣れ親しんでいる人に見向きもされないという危機感から生じたといえる。

このゲームは、リメイク的に成功を収めたたかどうかというと微妙といえる。 やはり、操作の難解さと余計なボーナスステージがネックになったと思われ、後者はともかくとして前者はゲームにおいて最重要なのだから、根本的な策を練らなければならなかっただろう。 光線銃といった、本格的な周辺機器を付属として発売させたほうがよかったのではないか(他のゲームに使えることを前提として)。

FC版のレビュー前、既にSFC版をプレイしていた私だったが、それよりさらに前にホルダーゲーム版でもプレイしていた。 ホルダーゲームのほうが、クレイジークライマーを初めてプレイ(高校生)するきっかけであって、これについてもニチブツアーケードクラシックスのレビューに書いてある。

書かなかったが、SFC版をプレイすることになったのは中途半端な古いゲームに食傷気味だったことに加えてもう1つ、 アレンジ版をプレイしてみたかったからであり、ファミマガでSFC版の情報を読んでプレイしてみたいなと思っていた。 結果、レビューを書いた少し前に購入、絵がきれいということ以外特に目立ったものはなかったが、私にはそれなりに楽しめることができた。

しかし、SFC版より前に発売されたFC版については、その存在を知ったばかりだった上にあまりプレイしたいという気にはなれなかった。 その理由は、スペックがFCということでせいぜいAC版をある程度グラフィックを変える程度で、特に真新しい要素などないと思い込んでいた。 今になってFC版をプレイしたのも、なんとなくプレイしたくなったというだけだったが、ソフトはSFC版購入の少し後に買っている。


そんな私だったが、最初のステージの終盤近くになって偶然鍵らしきものを取った後にその近くに登場した扉に入ったことで、AC版の違いが明確に出ていることを実感した。 なんと、ビル登りゲームから普通のアクションゲームに早変わりしてるのだから、その変貌振りにただ呆然としてしまった。 しかも、操作がビルを登る場合と全然違うため、どうしてこんなステージを取り入れたのか不思議で仕方がなかった。

落ち着いて考えれば、当時に即した大幅なリメイクをしなければならないという事情があったのだが、 あまりのギャップの大きさに戸惑っていた私にはそんなことなど理解できるはずがなかった。

操作そのものについても、SFC版のように1つのコントローラーでビルをよじ登ることなどできないので、 2つのコントローラーで必死に障害物を乗り越えていったが、あまりのつらさに腕と指が麻痺に近い状態になってしまった。 まさしく、AC版の違いをじっくりチェックする状況ではなかったが、ようやくFC版の操作に慣れてきたところでその違いを調べた。

爆弾や鎖付き鉄球といった新型トラップはもちろん、キングゴリラの役割を果たしているキャラが2体出ていることに驚いた。 ゴジラもどきはともかく、雷様はどうみてもドリフの高木ブーさんに似ていると思うのだがどうだろうか。

なお、このゲームをプレイするにあたって攻略サイトも参考にしたが、まさかボーナスステージで裏面にいける手がかりということにも驚いたし、 何よりエンディングを見るにはボーナスステージにある勲章全て回収しつつ、裏面に行って全てクリアするということも驚いた。

その裏面、完全に洞窟で登りをやっている時点で、私はAC版以上にFC版がクレイジーということを悟った。 裏面もクリアしたものの、リメイクの域をかなり超えている時点でニチブツはそれに満足しているのかとふと思った。



本日のまとめ



あ゛〜っ!!

(08/7/11レビュー)
伝説のスターブロブ2への掲載:2019年6月23日
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