◆マグマックス◆
地上と地底を行ったり来たり



発売日:1986年3月19日   発売元:日本物産   ジャンル:STG
値段:4900円   おすすめ度:1.5(良くも悪くもニチブツ)


皆さんは、ニチブツといえばどういうキーワードが思いつくのだろうか…。
普通、大部分の人はこう答えるだろう、『脱衣麻雀』と。 しかし、往年のACゲーマーや昔のニチブツを知る人は、別のキーワードを言うはずだ、(ロボットアニメや特撮に必須な)『合体』と。

この、『脱衣麻雀』と『合体』を別の言い方に変えてみると、前者は軟派で後者は硬派といういかにも相反したものであるが、 当時も今もほとんどのゲームメーカーはその両方の作品を作っている。

だが、軟派を18禁ものに置き換えるならば話は別で、それも18禁ゲームと同じジャンルではないものを作っており、 さらにそのゲームも有名になっているメーカーはとなると、既に倒産しているメーカーも含めてもほんの一握りしかない。 これらの条件を合わせているメーカーの中で、ひときわ存在感が強いメーカーといえば。それはニチブツであろうと考えられる。

そのニチブツは、最初は合体をベースにしたゲームのほかにも色々な味のある良作を作り続けてきた。 1983年には、初の脱衣麻雀である『雀豪ナイト』が誕生、これより脱衣麻雀のニチブツが誕生し次第にこの手のジャンルが定番となっていった。 脱衣麻雀以外、すなわち本来ニチブツが得意としていたジャンルのゲームも平行して作られていたが、年を追うごとに脱衣麻雀に押されていった。

1985年になると、本来得意としていたジャンルにも味のある良作も作られるようになり、かつてのニチブツのゲームに親しんできたゲーマーは、 それらのゲームに新鮮さと安心さそれと懐かしさに触れることが出来た。

そして、ニチブツお得意の合体をテーマにしたゲームも作られていったが、それに関係しているゲームはわずかに2つで、 1つはニチブツファンのみならず往年のACゲーマーでも有名な『テラクレスタ』、もう1つはテラクレスタよりも少し前に登場した『マグマックス』だった。


内容は、いたって普通の横STGに見えるのだが、一般の横STGと違うところは、1つのステージに2つの内容が存在すること。 といっても、1ステージのパートごとに背景などが変わるものではなく、1ステージプレイ中に2つのエリアが同時進行しているとでもいったほうがいい。

例えば、1ステージに地上エリアと空中エリアがある場合、プレイヤーが地上エリアをプレイしている最中でも空中エリアは同時進行しているのである。 もちろん、こういった手法を取り入れたゲームを作るには、1ステージに地上にいるバージョンと空中にいるバージョンを設定しなければならない。

こういった形を取り入れているゲームは、マグマックスを除いて当時ではほとんどなく、ジャレコの『フォーメーションZ』やデービーソフトの『ヴォルガードU』程度であった。 それも、通常は空中にいてロボット形態になると地上に降りるという、いわば擬似1ステージ2エリア同時進行であり、当然同時進行しているはずの別エリアはなかった。

しかし、マグマックスは本当に1ステージ2エリア進行の手法を取り入れていた。 マグマックスの場合、普通は地上エリアでステージが進むのだが、ステージの各所に設けてあるワープホールを使うことによってもう1つのエリアである地底へ行き来することが出来る。

しかも、地底に活動を移しても最初からプレイするわけでもなく、地上と同じ位置でステージを進むことになる。 地底ルートをプレイしていて、もう1度地上ルートをプレイしたいときには、次のワープホールまで進んでいってそこに入ればいい。

これを任天堂の『スーパーマリオブラザーズ』に例えると、いくつかのステージにある豆の木でボーナスステージに行ったり土管を通って地底ルートに行ったりして、 その別エリアから出るとゴール手前もしくはそれに近いところへ移動しているといっていい。

マグマックスは、スーパーマリオよりも早く誕生しさらにジャンルがSTGだったので、当時のゲーマーから特異な目で見られるようになった。 STGの内容も、地上と地底では全く違っており、同じ横STGとはいえ地上では奥行きのあるものに対し地底ではごく普通の横STGとなっている。


ニチブツの特徴である合体も、しっかりと再現されているものの、最初に合体要素を取り入れた『ムーンクレスタ』よりも、パーツは豊富でしかも合体パターンも複雑なものとなった。 パーツは、戦闘車両型の本体を始めとして、上半身、下半身、そして波動ガンの4つ。

つまり、巨大ロボットとなるわけだがそのパターンは、 『本体→上半身合体→下半身合体(上下半身のみ逆でも可)でロボット形態→波動ガン装備(上半身合体状態のみでも装備可能)』という形で完全体になる。 ちなみにパーツは、ステージ中にばらばらに置かれている。

当然、完全体になっても上半身や波動ガンといった状況によっては不要なパーツが出てくるが、 その場合パーツに何発か弾をぶつけることにより、パーツは火の玉風の状態となりジグザズに移動し画面外から出ようとする。

さらに、画面外に出る前にそのパーツにもう1度弾を当てるとパーツが爆発し、同時に周りにいる敵も倒されるというメガクラッシュ状態となる。 これは、例え完全体となってもパーツはまだまだ使い道があるという、当時も今もなかなかにして大変意義深いものではないだろうか。

それに完全体(波動ガンを装備していないロボット状態)は、攻撃力がある反面当たり判定が大きいので、避けるのがうまいゲーマーでも大抵は当たってしまう。 これを見越しての、無造作と見られているパーツ配置の考え方も合わせて、ニチブツらしさが随所に盛り込まれている。

普通のロボットアニメは、合体することにより無敵の能力が与えられており、大きい分かわしにくいといった描写は見られなかったが、 ニチブツ系の合体STGはいかにもリアリティあふれるゲーム作りがなされており、運動性を取るか攻撃力を取るかゲーマーの判断が問われることになった。

なお、各ステージの最後には、三つ首竜の怪奇メカ・バビロンが待ち構えており、それを倒すことにより次のステージに進めるようになっている。 それと波動ガンは、地上では斜め下にリボン状として伸びているのに対して、地底では遠くまで飛ばせる上に連射できるようになっている。

また、ロボットになるとかわしにくいと書いてあるが、それは地底でのことであり地上では奥行きがある分ロボットになってもかわしやすい(もちろん攻撃力は地底よりも劣るが)。


かなりインパクトのあるこのゲームは、ACではそこそこの人気を博すことができ、翌年にFCに移植されることとなった。 これが、ニチブツのFC初参入という記念碑的存在ともなった。 移植といっても、当然ACよりFCの方が劣っているので、所々削除するところはあった。

グラフィックはもちろん(地上はACと比べてかなり平面)、バビロンについてはAC版では首を1本ずつ破壊していかなければならなかったのに対し、 FC版ではその要素は削除されてしまったので、ただひたすらバビロンに撃ち込むだけになった。

ワープホールのデザインも、AC版のようなワープ装置風のデザインではなくただの落とし穴のようなデザインになってしまった。 そのほかの要素は、しっかりとFCに移植されているものの、1ステージ2エリア同時進行の要素は前年発売されたスーパーマリオが大ヒットしたために、地味な印象を受けることになった。 ステージ数も、たった2つしかなくしかもエンディングもないため、延々と同じステージをプレイすることになる。

合体も再現されてるとはいえ、既にユーザーの大半は見た目よりも内容を重視していたため、これもあまりいい印象を与えることが出来なかった。 ただ、完全体(波動ガン装備なしでも同じ)になれば最大3回敵の攻撃を受けても大丈夫なので、その要素についてはなかなかに評価がよかった。


とはいえ総合的に見れば、人気のほどはいまひとつであり、AC版にしてもコナミの『グラディウス』や『ツインビー』、 カプコンの『魔界村』やセガの『スペースハリアー』などの人気ゲームに押されて、こちらも人気はあまりなかったのだが。

しかしながらこのマグマックス、テラクレスタの人気の陰に隠れて多少地味な存在であるのだが、 それでもニチブツの歴史を語る上で外すことの出来ない存在となっている。

合体を元にしたニチブツのゲームは、『ムーンクレスタ』を始めとして10作品近くはある(『超迷宮レギオン』は2人同時プレイによる合体攻撃可能なため、これも合体をテーマにしている)。 マグマックスも、合体のほかにも色々な要素を積み込んでいるため、ゲーム内容は面白みがないもののやはりはずすことの出来ないゲームではないだろうか。


私がこのゲームを知ったのは、ゲーム発売から少し後に発売されたファミコン関連のムックを読んで。

当時、私はまだ子供(小1)だったので、マグマックスのゲーム画像やイメージイラストなどを見た私は、 リアルタイムに『飛影』や『レイズナー』、『トランスフォーマー』や『マシンロボ』といったロボットアニメを見ていた時と同じ感動があったことを、最近になって思い出した。

その時は、面白いなと子供ながらに思っていたのだが、金の管理はまだ親にあったし、友達やいとこもこのゲームを持っていなかった。 しばらくの間、マグマックスをプレイできないといったちょっとしたもどかしさが、私の中にくすぶり続けていたのだが、 次第に他のゲームに目移りしたと同時にマグマックスに対する熱い思いは失せてしまい、ロボットに対する憧れも記憶になくなっていた。

このゲームを、初めてプレイしたのは去年になってからであったが、その時は昔にあった気持ちは全くなく、むしろレビューのネタ探しという形でプレイしていた。 そのときにプレイした感想は、エンディングがなく同じステージを延々とプレイしたことに夜虚しさだけが残った。

何度も被弾しても、次々に登場するパーツのおかげで、ゲームオーバーになりにくい(しぶとい)という利点はあったものの、ゲームとしての面白さとなると本当に面白いとはいえない。 レビューも書いたのだが、このゲームについてほとんど調べていなかった上に、画像も貼りまくった挙句文章もめちゃくちゃだったので、レビュー修正がてらこのゲームを調べると同時に再度プレイすることにした。

特に、AC版との違いに気をつけながらプレイした私は、以前と違った面白さを見つけることが出来た。 パーツを使ってのメガクラッシュや、バビロンへの一斉射撃などがそれに該当する。 もっとも、去年にプレイした記憶が強烈に残っているためか、さすがに延々とプレイすることはしなかった。


ところで、このロボット・マグマックスについて思ったことがあるのだが、当たり判定が大きいとはいえ地底ではかなりの強さを発揮している。 なぜか、地上では飛べないのに地底では空を飛ぶことが出来るのだが、おそらく地底では本来の性能を発揮するタイプではないだろうか。 というより、海底でも同じ強さを発揮できるので、地表より下では無類の強さを発揮することになる。

しかし箱絵をみると、どうも背景が宇宙らしく、もしかしたら宇宙でも大丈夫らしいが、ということは地上以外では大活躍することになるのか。 だとすれば、個人的に考えるとどうも汎用性が低いロボットのようだ…。



本日のまとめ



合体!!

(06/12/5修正)
伝説のスターブロブ2への掲載:2019年4月5日
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