◆ザナック◆
ザナックシリーズ第1弾



発売日:1986年11月28日   発売元:ポニーキャニオン   ジャンル:STG
値段:2900円   Disk:片面   おすすめ度:3.5(連射お断りの硬派STG)


それは、最初においては一つの点だったのかもしれなかったが、数千年の年月を経てそれは宇宙を覆うほど巨大になっていった。 その正体は、はるか昔有機知性体が作り出したシステムであり、現在有機知性体がいなくなった今日も活動を続けていったのだった。

そのシステムが、わざわざ活動範囲内に有機知性体がいないにもかかわらず、活動を続ける理由は一体何か。 実はこのシステム、この地域で聖像という意味を持つイコンを正しく開いたものには大いなる知識を、 逆に誤ったものには対象者への攻撃そして滅亡と死を与えるという、恐るべき目的を持っていたのである。

そんなある日、複数あるイコンの内の一つが誤った方法で開かれることになってしまった。 システムは正しく作動し、対象者に攻撃を開始したため、同じ者達がこんどは正しくイコンを解放した。 イコンは、システムの中枢に正しく開いたことで、先ほど間違ったものに対して攻撃中止を伝えた。

だが、ここにおいてこのシステムを作った大昔の有機知性体も、おそらくこういった不測の事態など知らなかったのであろうが、 なんとシステムはこの中止命令プログラムを完全に無視したために、せっかく有機知性体が作り上げたシステムは、この時点において単なる殺戮装置と化した。

イコンを開いた者達、つまり有機知性体以降の生命体である人類は、己の行為により危機的状況に陥った。 幸い、イコンは正常に作動しシステムを食い止めるために、所持している全ての手持ちの知識を人類に与えたが、 所詮システムのセンサーにすぎないイコンでは、システム全体に対する知識を得ることはできなかった。 こうしている間にも、圧倒的攻撃力を持つシステムの前に人類のくり出す攻撃部隊は、次々に撃破されていったのである。

システムの大規模な攻勢に打つ手がなく、いよいよ人類が滅亡の危機に瀕したとき、一つの可能性が提起された。 それは、『システムは基本的に戦略マシンであり、多数同士の戦闘を想定している。したがって、単独でシステムに向って行けばシステムは効果的に対応できないのではないか。』というのだ。 危険な賭けであったが、可能性を求めてこの計画は実行、新型戦闘攻撃機AFX−5810=ZANAC(ザナック)を制作し、単独でシステムの中枢に侵入、これを破壊することに成功した。

これで危機は去ったかと思われたものの、敗北を喫したシステムは爆発の寸前に他のシステムにこの事態を連絡したのである。 既に、いくつかのコロニアムは連絡を絶っていることから、今回のシステムは前のシステムの数倍はありそうであった。 それでも、最新鋭 AFX−6502=ザナックが残された時間の中、再び単独で飛び立っていった…。


今はなきゲーム会社コンパイルが制作したSTGで、ザナックの権利が他の会社に譲渡されている今もなおファンが多い。 何しろ、続編はもちろんそれより多い関連作品によって、その精神は受け継がれているのだから、その手の作品にもファンは多い。

もちろん、コンパイル初のSTGはザナックではないが(初のSTGはセガSG−1000の『N−サブ』)、 2番手のザナックがN−サブよりかなり有名なのは、登場ハードの知名度もさることながら、面白さにおいてもそれを上回っていたことが大きいだろう。

ちなみにN−サブの内容はというと、潜水艦を操作して敵の戦艦や潜水艦を片っ端から撃沈する、 ただそれだけのゲームでSG−1000初期というかなり昔のゲームゆえに、単純で飽きやすくなってしまうのはご愛嬌か。

ザナックにしても、かなり知名度が高くなったのは数年後においてであって、当時はメーカーゆえに知名度はそれほど高くなかった。 ただ、ゲーム自体MSX版から先に登場したが、知名度においてはディスクシステムの知名度によってディスク版のほうが相当上だ。

また、コンパイルという会社自体も当時はまだ有名でなく、その理由もあってか発売元がコンパイルではなくポニーキャニオンとなっている。 両社との関係は、前年に『ルナーボール』の販売を委託したことからなっており、やはり会社の知名度を優先したのかもしれない。

人気においても、登場ハードが万人向けということもあってか、当初は一部のユーザーにしか受けなかったようだ。 理由は、このゲームの難易度が他のFCのSTGよりもはるかに高かったためである。

このゲームには『ALC(自動難易度調整機能)』が付属されているため、難易度の調節は最初からできず代わりにコンピューターが状況に応じて難易度を自動的に調節してくれる。 つまり、難易度の変化はプレイヤーの腕によって大きく異なるわけだ。


ただし、今までのSTGの価値観でプレイすれば、必ず痛い目に遭うのは必定だった。 というのは、当時のFCのSTGといえばハドソンのSTG、すなわち連射のSTGというイメージが子供達の間で大きく、他のSTGにしてもある程度の連射で敵を倒していた人は多い。

しかしザナックの場合は、敵がいない場所で連射をする言わば無駄弾を撃つことは、それだけ敵が強くなったり多くの敵や敵弾を呼び込むことになる。 連射ブームの中で、連射ご法度のシステムを導入したことは、ブームに否定的な硬派であるSTGユーザーに好評はあったものの、全体的に見ればあまり大ヒットしたとはいえない。

STGの定番といえば、今も昔も弾幕で敵を粉砕するということに大体変わりはない。 もちろん、『スペースインベーダー』や『ギャラクシアン』といったSTG黎明期に登場したゲームの類は、 1発撃つとその弾が画面外に消えなければもう1発撃つことができず(単発扱い)、やたら撃ちすぎると敵の襲撃に対処しきれないというシステムがあったので、敵の動きを読んで的確に弾を撃たなければならない。

それゆえ、STGに連射のシステムが登場したことはかなり話題になり、弾幕STGの素地ができるきっかけにもなったが、 ザナックはあえて連射STGに単発システムの要素(撃ちすぎるとこちらが苦労するということ)も盛り込んだといえる。 いうなれば、毛利名人が『GAME KING』でやっていたテクニックによるプレイ推奨といえるのかもしれないが、そうなればなるほどますますストレスをためていくばかりだ。


そのために、各ステージでは所々に難易度を下げる要素を持ち込んであるのも、このゲームにおける大きな特徴の1つになっている。 時々現れる偵察機『サート』を破壊したり、ボスと中ボスの存在である要塞を制限時間内に破壊すれば、たとえ連射しても微妙な難易度のバランスは維持できる。

一応、やられて難易度を下げる手法もあるが、それはゲームに慣れた人でなければ難しい。 このゲームには、ミスしてもその場で復活できるシステムがあり、自機増加が多く発生することもあるので、自機が多く増えすぎた終盤でしかミスによる難易度低下は使えないことが多い。

まさに、自分のプレイしだいで難易度が作られていくあたりは、今の時代に即しているつくりといえるが、先にも述べたようにSTGでは連射ブームがまだ残っていたために、当時は受け入れがたかったものと思われる。 幸い、ゲームオーバーになっても(裏技だが)コンテニュー機能があるので、連射を楽しむことをしなければ初心者でも無理やり後半までたどり着けることができることはありがたい。

そんな連射否定の感じのゲームだが、その分パワーアップ機能を充実させている。 Aボタンで出せる特殊弾がそれで、特別な建造物や敵を倒すと出てくる番号を取ると発動し、発動している特殊弾と同じ番号を取るとパワーアップする。

当然、同じ武装での全クリは難しいので、大抵他の特殊弾を取ることが多く、全ての武装に時間や弾数の制限もあるが、番号が出ること自体非常に多いのであまり気にならない。 最大8種類あるのはすさまじく、それでいてパワーアップするのはすばらしいの一言。


通常弾も最大3段階にパワーアップし、一度に3箱出るボックスの中から1つだけそのチップが登場、ゆえに敵弾が出るトラップも用意され、普通のパワーアップでも気が抜けない。 ステージによっては3つのうち2つが、ブロック自体も3つのブロックが一度に3つ編成で飛来してくるので、 パワーアップできる機会が多い一方でトラップにかかる危険も大きいが、ブロックを破壊寸前まで追い詰めるとチップがおぼろげながらに見えるので、 そのあたりも連射厳禁のスタンスを取り入れている感じが大きい。

高速スクロールが、ステージ前半で開始されることも大きなポイントで、その場合は背景はもちろん地上建造物も高速でスクロールされるので、 一般敵の動きはそのままでもスクロールの早さに錯覚してミスをした人はいただろう。

確かにこれは初めての人にとってつらいだろうが、慣れてくるとそのスクロールが逆に快感に見えてくるのだから面白い。 それを盛り上げてくれるBGMも、ディスクゲームなのにディスク内にある音源を利用していないにもかかわらず、その音質が他のディスクゲームと引けを取らないのは不思議だ。

ALCや高速スクロール、豊富なパワーアップやすばらしいBGMなど、難易度は高いもののディスクゲーム黎明期のSTGにしてはかなりのできである。 にもかかわらずゲームの容量は片面だけなので、片面だけの容量でこれほどのゲームが作られたのは驚くべきことだ。 多くのディスクゲームでは、ROMカセットのゲームのほとんどは片面である一方で、ディスクから生まれたゲームのほとんどは両面を使っている。

ある意味、ROMカセットでやったほうがよかったのではないかというほどのできだが(翌年にはアメリカでカセット版として発売されている)、わざわざディスクにした理由が読めない。 ただ、ディスクの半分以上の容量を持つROMカセットのSTGがほとんどなかったことも関係しているのかもしれない(『スーパーゼビウスガンプの謎』が唯一か)。 実際、ROMでザナックの容量以上のSTGが多く登場するのはその翌年なのだから。


このゲームの存在自体、レビューを書いてから5年前のそれも大手レトロゲームサイトで知っただけだった(画像つき)。 したがって、プレイについてはさらに数年後だが、いとこからもらったディスクゲームのほとんどをもらい、その中にザナックがあったのでプレイする機会にありつけることができた。

それでも、プレイするのを手控えた理由は、既に関連作品の1つである『スーパーアレスタ』をやりこんでいたためであった。 関連作品でも、質の高いものをやりこんでしまってはあまりプレイしたいという気にはなれず、やっとその気になったのはレビューを書く前年だった。

この頃になると、他のFCのSTGを結構プレイしていたので、そろそろザナックにでも手をつけようかとプレイすることにした。 ザナックと、スーパーアレスタをはじめとしたアレスタシリーズとの関連性は知っていたので、パワーアップアイテムを取って連射で群がる敵を片っ端から叩き潰そうかと思っていた。 既に、スーパーアレスタはレビューもやっていたから、ザナックも多少簡単なSTGになるだろうとも思っていた。

しかし、この時期完全にたかをくくっていた私は、連射で進むことを決めて散々な目に遭うことになった。 連射で蹴散らしてみるも、次から次へと横からザコの大群が沸いてくる上に下から敵弾がばら撒かれてくるので、これは一体何事かと疑った。

無駄弾を撃つと、自動的に難易度が上がるALCのことなど知らなかったので、コンテニューやその場からの復活など救済措置はいくつか用意されていたものの、 あまりに敵の攻撃が激しすぎた上にコンテニューも何度もやったために、すっかりやる気をなくしてしまった。


レビューを書く現在、今までのつらい記憶を覚えている以上、このゲームのことをネットで調べてALCはもちろん、パワーアップのことなどスーパーアレスタで学んだことを、また一から学ぶことにした。 関連作品とはいえ、ザナックとスーパーアレスタの共通点が高速スクロールと多彩なパワーアップぐらいしかなかったので、また痛い目に遭いたくないためにもできるだけ多くのことを調べることにした。

とはいえ、高橋名人に影響された私なので、毛利名人のようなテクニックでSTGをこなすことは困難だった。 要は、無駄弾を撃つなということだが敵が大挙登場する場面になると、どうしても連射で敵を蹴散らしたくなってしまった。

そんな私だったが、敵弾の中に破壊可能なものもあったことをプレイして知ったので、適当でないにしろ敵が多く集まるときだけ連射にしたことで、偵察機の撃破も含めてある程度難易度は下がったと思う。 もちろん、何回かミスもやってしまいコンテニューもやってしまったが、昔のようにぶっつけ本番という形でプレイしたときと違って、 さくさくとは行かないまでも昔と比べてかなり進むことができた(昔はステージ4の中間が限界だった)。 そして、最終ステージに潜むラスボスを倒すことができて、ようやく今までの苦労と昔のつらい経験が報われることになった。



本日のまとめ



BONUS 40000

(08/6/25レビュー)
伝説のスターブロブ2への掲載:2019年6月13日
◆目次に戻る◆


inserted by FC2 system