◆ローリングサンダー◆
ハードボイルドガンアクション



発売日:1989年3月17日   発売元:ナムコ   ジャンル:ACT
値段:5500円   おすすめ度:3(難度の高い硬派ゲーム)


この物語の舞台は、1968年の冷戦真っ只中に置かれているアメリカ合衆国。 この時期のアメリカは、第二次世界大戦と同じ凄惨な戦いであるベトナム戦争に参戦、アメリカ全土の働き盛りの青年の多くが徴兵されていき、 代わりに徴兵前に該当する少年達が主に残り治安が悪化していた。 同時に、世界各地はもとよりアメリカ本土でも反戦運動が高まり、アメリカの街は暗い雰囲気に包まれていた。

そんな中、ニューヨークの街中にスキンヘッドで肌が緑、おまけに耳が異様な形をしたいかにも宇宙人風の男が現れた。 彼の名は『マブー』、国籍はおろか年齢も不明という全てが謎に包まれた男である。

彼は、人々の目の前で様々な奇跡を起こし、時には人々を奇跡で救済しながら彼らの信頼を高めていった。 ベトナム戦争の暗い影が、ニューヨークにも落としていたこともあって、多くの人々はマブーを心のよりどころにしたのである。

これを見たマブーは、やがて世界は破滅するであろうという終末論を語り、さらに人々の信頼を集めた。 遂には、自らを世界の破滅から救う救世主であると自称、彼に対する人々の信頼は最高潮に達した。 だが、これこそがマブーの考えていたことであり、彼はこれを利用して様々な作戦を練ることにした。

そう、彼は世界征服を企む悪の秘密結社『ゲルドラ』の首領で、彼が人々に奇跡を起こして信頼を高めたのは、全て世界征服のためであった。 ゲルドラの世界征服の野望に気づいた『世界刑事警察機構』通称WCPO(World Cop Police Organization)は、 その野望を挫く第一段階としてゲルドラの内部を調査することにした。

その適任者が、WPCO内のチームの中で最強の実力を持つチーム『ローリングサンダー』のメンバー1人であるレイラ=ブリッツで、 女性ながらもその実力は他の隊員達にも引けは取らなかった。

しかし、その調査がある程度進んだ時点で、彼女はマブー配下のマスカー達に捕らえられてしまい拷問にかけられてしまう。 このままでは、彼女の命はもちろん彼女が命がけで入手したゲルドラの世界征服の極秘資料が失われてしまう。

窮地にたったWPCOは、最後の手段としてWPCO最強と謳われた工作員の男の派遣を決定した。 その男の名はアルバトロス、レイラと同じローリングサンダーの一員で、彼はチームの中でも最高の実力を持った男でもあった。 その腕を買われたアルバトロスは、レイラの救出とゲルドラの野望を阻止するため、一人闇へと消えていった…。


1986年の暮れにACから登場したナムコのアクションゲームで、それにしては全体的にナムコらしからぬ雰囲気が漂っている。 というのはこのゲーム、ストーリーの設定が子供も含めた万人向けの風味ではなく、純粋な大人向けともとれる内容になっているためなのだろう。 またキャラクターにしても、ナムコ作品の多くに見られたかわいらしいキャラが、このゲームでは全くいないということも関係しているのかもしれない。

そもそも、ストーリーの舞台が1968年のニューヨークであることが大きなポイントだ。 この時期のアメリカは、ベトナム戦争とそれに続く反戦運動によって暗い影を落としていた一方、あるドラマが人気を集めていた。

それは『スパイ大作戦』で、1966年から73年の7年間放映された人気ドラマであるで、日本でも放映されて話題を呼んだ。 スパイアクションをテーマにしながら、任務遂行を盛り上げてくれるBGMや誰かが任務を受けるまでの手順など無駄なく物語を進めて、最初から最後まで気が抜けない作りになっている。

ローリングサンダーの舞台も、スパイ大作戦のような設定が与えられ、チームの上部組織(WCPO)が作戦指令を出してその指令を受けたチームが、その任務にふさわしい人物を選んでそれを遂行させるというものだ。 もっとも、ドラマと違って上部組織に例え敵勢力に仲間がつかまったり殺されても責任は一切負わないという非情さはなく、任務が失敗したら何もかも全て終わりなのでぜひ成功させてくれという思いを主人公に託している。

主人公のアルバトロスにしても、影で任務を遂行するより敵の本部に殴り込みをかけて、そこに出てくる敵を片っ端から退治するので、スパイ大作戦のような雰囲気はかすんでいるかに思えるが、これはゲームの都合上仕方ないといえる。


したがって、スパイアクションをイメージしつつもそこは敵を倒しながら奥に進み、ラスボスを倒しつつヒロイン(?)を救出してエンディングという、一般的なアクションゲームと大差ない。 むしろ、見た目でそれを十分プレイヤーにイメージさせているといえる。 そういった意味では、WPCOの敵対組織である秘密結社ゲルドラは、プレイヤーが描くイメージに十分合致している。

特にそれを証明しているものとして、ザコのマスカーと忍者が挙げられる。 何しろ、頭部が白人至上主義を掲げるKKK(クー・クラックス・クラン)やどこぞのシンジケートを思わせるようなデザインで、 アメリカで問題になっている危険団体の団員のオマージュをよくやれたものだと感心するしかない。

とはいえ、アメリカに配慮したのだろうか色においては白こそ使っているものの、 (1人を除いて)全員全身真っ白というわけではなくスタイルも戦闘服にブーツという、日本のヒーロー物にある悪の組織の戦闘員のスタイルとなっている。

また、首領のマブーはどこからどう見ても宇宙人にしか見えず、ゲルドラ本部にしても60年代後半とは思えない設備が整っているので、 雰囲気それも大元だけ60年代後半とスパイ大作戦をイメージさせつつ、ナムコオリジナルに味付けしているといえよう。

本部が地球にある秘密結社で首領が宇宙人(もしくはそれに近い風貌)という手は、『仮面ライダー』シリーズで散々やりつくされたネタなのだが、 大抵最初は正体不明で正体は最終回になって明かされるか最終回になっても正体が明かされないパターンに対して、 このゲームでは本編前に首領が人々の前に姿を現しているので、それを逆手に取った手法はストーリー的に珍しい。


さてゲームのほうはというと、アダルトなストーリーとゲーム画面に違わず、難易度が高い。 操作は普通のように見えて、大ジャンプやそれが垂直でしかできない、拳銃がジャンプ中に撃てないことや体当たりを食らうと吹っ飛んでしまうなど、アクションがかなり特殊なのだ。

敵の出現も、秘密基地が舞台ゆえに扉から出てくるのが多いが、後半になると突然出現したりと、バラエティ豊富な分対処しづらいことも難易度を上昇させている。 その扉のほとんどは、敵がいた場所なのか入ってもすぐ出てしまうが、敵の銃弾をかわすことはできるので貧弱ながらも銃撃戦が楽しめたり、ごく一部には時間を回復させたりするものもある。

攻撃についても拳銃のみで、弾切れになったら戦うこともできず、補充は武器が描かれたポスターの隣の扉で補充しなければならない。 しかも、登場する武器は拳銃とマシンガンの2種類のみで、マシンガンが手に入ると自動的にそれになるため、 自由に拳銃に換装ができないためにすぐマシンガンが使い切ってしまいやすい(ボタンを押しっぱなしにすると連射するため)。 つまり、無駄弾を使わずいかにしてすばやく敵を倒すかという、スパイアクションさながらの攻撃をしなければならず、特殊な動作もあわせて少々やりづらい。

体力についても、最大8目盛りがあるのだが敵に触れるとそれが4つ減り、銃弾やレーザーや手榴弾を食らったら一撃で死ぬ。 はっきりいって、2目盛りにすればわかりやすかったはずなのだが、なぜわざわざ8目盛りにて敵の体当たりを4目盛り減らせる設定にしたのかよくわからない。 それ以前に、体力を回復させる手段がない代わりに、敵の出現位置は必ず固定されているので何度もプレイし泣ければクリアは難しく、純粋な覚えゲーという感じが強い。


さらに、このゲームでは2周しなければエンディングを見ることができず、2周目はトラップの数や敵の出現パターンといったステージの仕掛けが変わっているため、 『魔界村』シリーズにおける敵の動きが早くなったりといった1周目さえ覚えれば後は何とかなるということが通用できない。

幸い、1周ごとに5ステージ用意されているものの、その中で一番難しいといわれるのが4ステージ目で、落ちたら死亡の溶岩地帯にファイヤーマンが飛び跳ねて襲い掛かってくるのは、まさに地獄絵図さながらだろう。 通常のジャンプの性能もあまりいいものではなく、ジャンプで敵を飛び越せないことは何が何でも真正面から来た敵には倒して進んでこいというスタッフのメッセージが読み取れる。

このように、ストーリーもゲームもまさに大人向けといったものに仕上がっているが、もう1つ大人向けとしてレイラの扱いが大きい。 アニメ調のイラストながらも、体つきや服装がいかにもという感じで、ゲルドラから拷問を受けるあたりもレイラのセクシーさが色濃く出ている。 ある意味、子供にとっては少々刺激が強かったのだろう、年齢制限が出されたのは仕方がない。

だが、そんな大人向けのゲームが万人向けのFCに移植されるときがやってきた。 発売は1989年の3月で、この頃になると容量が2Mを超えるゲームが増えてきた。 FC版も、3Mという当時としては大容量で登場し、AC版には及ばないもののレイラのセクシーなグラフィックは、当時の子供達を釘付けにしたのかもしれない。

難易度もAC版とほぼ同じで、ライフの設定は2目盛りとわかりやすくしている。 ただし、ACからの移植としては珍しくパスワード付きコンテニューが導入されているので、AC版よりは幾分楽に進める。 絵が粗かったりスコアなどが全て下にまとめられている以外、ほとんど同じというこの移植は十分成功に値するのだが、この時期のFCのナムコはどうも力不足という感じが否めなかった。


このゲーム存在自体、知ったのがレビューを書く5年ほど前で、それもある大手FCサイトで知った程度でしかない。 しかし、偶然載っていたゲーム画像にレイラがいたので、FCながらもそのナイスバディに思わずドキドキしてしまった。 とはいえ、ゲームそのものについては全く知らなかったので、次第にこのゲームの存在が忘れるようになった。

初めてプレイしたのがレビューを書く約2年ほど前で、適当にいずれプレイしてみたいゲームをいくつか買いあさった時に、偶然このゲームをプレイしたいという単純な気持ちで購入した。 最初のほうは、1回ミスした程度でどうにかクリアすることができたものの、特異な動きをする主人公に果たしてどこまでいけるか不安だった。

何せ、大ジャンプは垂直だけでジャンプ自体撃つことができないし、『悪魔城ドラキュラ』のシモンよろしく敵に触れたら吹っ飛ぶあたりは、もし流れ弾に当たったり穴に落ちたらどうしようかと不安でたまらなかった。

実際、そういったことがステージを進むごとにたくさん出るようになって、ゲームオーバーの回数も増えてきた。 しかし、AC作品にもかかわらずコンテニューやパスワードがついていたのは、私にとってうれしいというより驚きのほうが大きく、ある意味この時期におけるACからの移植の定番を覆していると感心した。

パスワードといっても、さすがにひらがなやローマ字ではなく数字なのだが、それでもその手のパスワードより書きやすいのはうれしかった。 もっとも、マシンガンの弾丸が0になったり拳銃の弾が初期値になったりということもあるが、AC版よりはかなりいいと思う。


そうやって、徐々にゲームを進めていった私はそれを繰り返しながらも何とか進め、2周目においてようやくマブーを倒すことができた。 ちなみに、クリア後に見るレイラのスタイルはプレイして初めて見たが、FCなのにムチムチした腕がやけにたまらなかった。 レビューを書く少し前、ニコニコ動画でAC版の動画を見たが、こちらのほうのレイラもなかなかに美人だった。

そのAC版は、私がプレイしたFC版とは若干違ったつくりをしていたので、何度も見なければわからなかった。 もちろん、スコアや残機などのほうの位置や体力は一目でわかったものの、ステージ構成が若干違っていたので、プレイヤーの動きをよく見ながらその人の攻略も確かめることにした。

ここでわかったことは、プレイヤーの積極的な攻撃や進め方が私のような逃げ腰のプレイとは比較にならないほどすばらしかったことで、そのときはFC版とAC版の違いの観察などどうでもよくなってきたのだが。



本日のまとめ



いやぁぁぁぁぁぁっ!!

(08/6/23レビュー)
伝説のスターブロブ2への掲載:2019年6月13日
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