◆カルノフ◆
デコの看板キャラ登場



発売日:1987年12月18日   発売元:ナムコ   ジャンル:ACT
値段:4900円   おすすめ度3.5(悪人が大活躍する作品…)


昔々、世界の(おそらくロシアなのかも)どこかにあるといわれているクリアミナ地方…。 その地方に存在するクリミア王国、その王国にある名もなき小さな町…、その町は常に平和に暮らしていました。 町が平和に保ってきたのは、町に保管してある宝物のおかげであり、宝物こそあっての平和は永遠に続くかに見えました。

ところがそんなある日、その町の宝物を狙って悪しき魔法使いがやってきました。 魔法使いの名はアラカタイ、彼は邪悪な魔物の大群を引き連れ、町の宝物を奪ってしまったのです。

この事件は、せっかく平和に保ってきた町の秩序を壊すのに、十分すぎる打撃を与えることになりました。 町の人々は、力を合わせてアラカタイを倒し彼に奪われた宝物を取り返して、昔の秩序を取り戻そうとしました。 しかし、これらの事実を知ったアラカタイは激怒し、その報復としてクリミア王国のあちらこちらに彼の配下である魔物の大群を差し向け、多くの人々を苦しめはじめたのです…。

一方その頃、地上で起こっているアラカタイが起こしたクリミアの出来事を天界で見ていた神は、あまりの悲劇に思わず嘆き悲しみました。 そして、色々と考えた結果一人の男を地上に降ろして、状況を打開しようと決断することにしました。

その男の名は『カルノフ』、彼はかつて人間だった頃に多くの悪事を働き、人々を苦しめていました。
この事態を重く見た神は、カルノフのあまりの残虐さに思わず激怒、カルノフは神の天罰を食らい死亡しました。

その死後、彼は天界の人間として転生したのですが、そんな彼を待っていたのは神の召使いとしての人生でした。 神は、彼の犯した悪事の数々に怒り心頭であったので、彼を召使いにして今までの悪事を償おうとしていたのです。 そんな時期に、アラカタイの悪事を知った神が取った手段は、カルノフに対する最後の試練でもあったのです。

「よいかカルノフ、地上のクリミア王国では何の罪もない人々が、アラカタイとその魔物達によって苦しめられている。 お前は、私が与える多くの魔法の力を使いながら、宿敵アラカタイ一味を倒すのだ。 お前の地上での行い次第によっては、ワシの召使いから開放することも考えてやろう。さあ、行くのだ!カルノフ!」

こうして、地上に降り立ったカルノフは神の召使いから解放されるために、アラカタイ一味と戦うことを決意したのでした…。


データイーストの代表的なゲームの1つで、デコ特有の変なゲームはこのゲームに一気に高まってきたといえる。 多くのファンがそれを指摘するところといえば、なんといっても主人公カルノフの存在だろう。

上半身裸に、ボテ腹とハゲと昔の中国人風のヒゲといった、どう見ても主人公には見えないデザインは、多くのプレイヤーに衝撃を与えたに違いない。 事実、彼が登場するデコゲーの多くが敵として登場し、中には同一人物が数人がかりで登場するものもある(俗に言うザコキャラ)ので、総合的に見て彼が悪人でありながらもデコゲーを盛り立てているのは言うまでもない。

もちろん、このゲームが登場する前にも同様の主人公の設定を持つゲームは多くあった(スピンオフ作品ならなおさら)。 『スーパーマリオシリーズ』におけるマリオ(ヒゲ親父)や『グロブダー(ザコキャラ)』など、ACやFCなどのゲームに目を向けてみればそういった事例はいくらでもある。 にもかかわらず、カルノフが主人公として特異な目で見られるのは、彼の容貌はもちろん顔がどう見ても悪人しか見えなかったのだろう。


ただ、容貌が悪役に見えてもかっこいいキャラが主人公になることは珍しくなかったが(『魔界村』のレッドアリーマーがいい例)、カルノフにおいては先にも書いたように全体的にかっこ悪いのだ。 『アラジンと魔法のランプ』に登場するランプの魔人をイメージにしたといううわさはあるが、ランプの魔人にしても主役になれるデザインには程遠い(むしろ脇役に似合っている)。 AC版のインストカードを見れば、その怪異さが見て取れるはずだ。

一方、FCに移植されて箱絵に描かれた際には、全体的なイメージを残しつつもAC版と比べて雰囲気が大きく異なっている。 悪人面だったカルノフが、陽気でやさしく力持ちな親父さん風に変わっているのだ。 これは、発売元のナムコがACのインストカードに描かれているデザインそのままに描いたのでは、イメージ的に売り上げが落ちてしまうと思ったのだろうか。

もちろん、それ以降の作品ではちゃんと(?)悪人面に戻っていることから、デコゲーにユーザーが慣れてしまったという感じがあるようだ。 また、FC版のデザインがナムコでしか描かれなかったということも関係があるらしい。


登場当時から、主人公の存在によって色々注目されてきたこのゲームだが、内容自体はいたって普通の横スクロールアクションだ。 カルノフの攻撃手段は口から吐く火の玉で、それのパワーアップを取ることで威力や範囲(同時に3方向)がアップしていく。

そして、ステージの最後に待ち構えているボスを倒して、次のステージに進むわけだ。 だが、火の玉は飛距離が画面端まで飛ぶので、パワーアップが最大で攻撃ボタンを連射視していれば、ジャンルがSTGになってしまうのは奇妙の一言(たいていのザコは弾幕で倒せる)。

道中にあるアイテム(パネルのこと)を取って、ステージを有利に進めるわけなのだが、そのアイテムはOPにある神が授けた魔法である。 OPにおいて、カルノフは既に魔法が使えるみたいなことが書いてあるのだが、実際はアイテムを取りながらそれを使うのでOPと本編の食い違いがある。 そのアイテムも、消費の有無によって分かれるものの、爆弾やはしごといった全てのものが普通の存在であり、Kマークは一定数取ればカルノフの残り人数が1増える。
しかしそこはカルノフ、存在を普通だけで終わるわけがない。 アイテムも、それらを使用するカルノフがいるからこそ、一気に奇抜なものに変わるのだ。

それを証明しているのが翼で、使用するとカルノフは(制限つきながらも)空を飛べることができるのだが、なんとカルノフの背中に翼が生えるようになっている。 その翼は、天使が身に着けているものとほぼ同じのかわいらしいもので、カルノフがそれを装備するためにかっこ悪いと同時にかなりシュールである。

シュールなのはエンディングもそうで、ラスボスを倒してようやく神の召使いから解放されるかと思いきや、天界の番人としての人生を歩むことになる。 OP通り、神の召使いから解放されることに違いはないが、これからも神に仕えることに変わりはなく、カルノフの苦難はまだまだ続くことになるのだ。

カルノフが、再び人並みの人生を送れると思っていたプレイヤーは、このエンディングにただ唖然としたことだろう。 このことについてのカルノフの心境はないが、カルノフが登場する作品に彼の後日談がないことから、スタッフの多くはこのことを忘れたがっていたのかもしれない。


FCに登場したのは、AC版登場の同年ながらも12月となっている(AC版は1月)。グラフィックは粗くとも、その雰囲気は十分残されている。 難易度も下がっているが、それを表すものとして耐久力が増えているということだ。

AC版では一撃死だったのが、FC版では耐久力1つ増えて2になっている。 魔界村のアーサーと違って、耐久力がグラフィックの違いによって明確に出せないことを考慮してか、1回ダメージを食らうと色が変わる仕組みにしている(火の玉の色も変わる)。 ただ、耐久力を回復するアイテムはないので、AC版同様気を抜くことができない。

しかも、ジャンプの動作がゆるくなっているために、敵の飛び道具をまともに食らう危険が大きく、最悪連続食らってミスすることもある。 結局、難易度そのものはやや高いため今はともかく、RPGブームの真っ只中にあった当時ではかなり難しかったのではないだろうか。

それも、そのブームのためにAC版でも熱狂的なファンでしか有名になれなかったのだから、FC版ならなおさらマイナーの地位を甘んじざるを得なかったのだろう。 それでも、カルノフ出演の『ドラゴンニンジャ』がFCに移植されたことは、ゲーム内容はもとよりカルノフの存在が一部のFCユーザーに強烈な印象を受けたのかもしれない。


このゲームのFC版はもちろんAC版の存在自体、レビューを書く5年前に大手のレトロゲームサイトで知った。 それくらい、このゲームには全く思い入れがなかったが、FC版の箱絵を見たときは面白そうだなと思った。 ゆえに、AC版のインストカードの絵柄だったら間違いなくやりたい気持ちはなかったと思う。

そのとき私は、カルノフを中国人だと思っていたのだが、彼が出演している格闘ゲーム『ファイターズヒストリー』シリーズをプレイしていたら、 カルノフはこの作品においてロシア出身ということになっていた。

そんな彼なので、このゲームを購入する前に彼のことを色々調べてみたら、『チェルノブのいとこ』だとか『ランプの魔人のオマージュ』だとか、 彼の登場するゲームによってころころ設定が変わるのには苦笑してしまった。

それだけ、デコは彼にかなり思い入れがあるということなのだろうが、マスコットキャラにしたら(経歴ゆえに)多分違和感が付きまとうと思う(ナムコ版の箱絵バージョンなら許せるだろうが)。 YouTubeのプレイ動画も見ても、プレイヤーのテクニックより主人公に劣らぬほどのシュールな世界観に見入っていた。

プレイヤーの連射具合は、ACTとSTGを混ぜたようなものを示しているし、 なにより翼で空を飛ぶあたりはあまりの似つかわしくなさとステージ以上のシュールさに、ただただ呆然とするしかなかった。

それでも、いずれこのゲームをレビューするだろうということと、カルノフ出演のゲームの家庭用の移植版をかなりプレしていた私は、彼が主役のFC版を購入することにした。 ゲームは、ジャンプの動きさえ除けばなかなかにできているが、カルノフには及ばないものの敵のデザインの奇抜さも呆然した。

それは最後の最後まで続き、ラスボスのアラカタイを倒してようやく自由のみになれたのかと思いきや、 今度は神の国の番人にされることになったため、ここまでくると昔散々悪事を働いたカルノフがどうもかわいそうになってきた。

ちなみに、アイテムははしごやブーツといったクリアに必須のものしか使わず、最強と謳われたブーメランについてはラスボスでしか使わなかったので、 ようやくクリアしたときはアイテムのストックがかなりあって、どうしてこれらをもっと使わなかったのかと思ったが、火の玉の威力と弾幕がアイテムを使わせないほど強かったのかもしれない。



本日のまとめ



これしきのことで ちからつきてしまうとは・・。 なさけないぞ カルノフよ!

(08/6/19レビュー)
伝説のスターブロブ2への掲載:2019年6月12日
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