◆ダウボーイ◆
ケムコFC参入第1弾



発売日:1985年12月11日   発売元:ケムコ   ジャンル:ACT
値段:5300円   おすすめ度:2(体当たりで倒せる理不尽さ)


『ダウボーイ』とは、第一次世界大戦から第二次世界大戦までにおいて戦地に赴いた、アメリカ軍兵士の別称である。 第二次大戦の終戦以後、彼らは『G.I.(Government Issue)』通称『官救品』と呼ばれるようになり現在に至っている。

これ以前に、米西戦争や義和団事件などアメリカ軍が外国に出兵した例は数多くあるが、第一次大戦からダウボーイと呼ばれた理由はわかっていないものの、 本国から支給される装備の潤沢さに他国の兵士達がうらやましがったことと関係があるのかもしれない。

彼らの誕生は、アメリカ人などの乗客を乗せた豪華客船ルシタニア号がドイツ軍により沈没されたことや、 ドイツの外務大臣の電報によるツィンメルマン電報事件によるアメリカとドイツとの関係悪化、さらにドイツの無制限潜水艦作戦での無差別攻撃宣言の結果、 長年モンロー主義により中立の立場を取っていたアメリカはドイツに対して宣戦を布告したことによる。

これにより、ダウボーイと呼ばれた兵士達が初めて戦地に赴き、アメリカ軍はもとよりアメリカが所属した連合軍の勝利に大きく貢献、後の超大国の礎を築くことになった。 1964年には、アメリカ漫画の『G.I.ジョー』が登場、主人公ジョーの人形はアメリカのみならず世界各地で大人気となり、 1982年にはアニメにもなり日本でも放送され、現在でも根強いファンは多い。

G.I.の前身であるダウボーイ物語の舞台は第二次世界大戦の末期、アメリカ軍がイギリス軍やフランス軍などが所属する連合軍と共に、 枢軸軍の一角であるドイツ軍を倒すために向かったヨーロッパ。 そこに登場するアメリカ軍の若い兵士、それがこのゲームのプレイヤーである君自身であり主人公でもあるのだ。

他の仲間達と戦っていた君は、自軍の司令官から直接ある重要な任務を受けることになった。 その重要指令とは、敵軍につかまった仲間の救出、およびその仲間を無事にわが軍の陣地に送り届けるというものである。 捕虜となっている兵士は、散発的な戦闘に負けた際につかまったか、敵の情報を入手しようとして敵に見つかってつかまったらしい。

失敗、すなわち捕虜を救出中にその捕虜が死んでしまうことが許されぬ重大な使命に、君は進んでこれを受け入れた。 かくて君は、捕虜を救出しつつ無事に自軍にたどり着かせるため、敵軍の陣営を突破しようと試みた。 そして、一人では任務を成功させることが難しいと判断した君は、同僚と共に捕虜救出のために敵陣へ向かうことになったのだが…。


レトロゲーマーには、別の意味でおなじみになっているケムコのFC参入第1弾。 ケムコというゲームメーカーがユーザーに知られたとき、「これって『ナムコ』のまねではないか?」という疑問が主にナムコを知るユーザーに思い起こされたのは想像できる。 今も、ケムコの名前はナムコのパクリと思っている人はある程度いるが、ここで注意してもらいたいのはケムコという名前はナムコと全く関係ないのだ。

ケムコの正式名称は『KOTOBUKI ENGINEERING & MANUFACTURING CO .,LTG』であり、 ケムコの名前は正式名称の頭文字から取っているため(『KOTOBUKI』のK、『ENGINEERING』のE、 『MANUFACTURING』のM、『CO .,LTG』のCO)、ナムコとつながりが全然ないことがよくわかる。 事実ケムコは、現在のコトブキシステムという名前でありその会社のゲームブランド名でもある(現在はその名前を子会社に与えている)。

ただ、コトブキシステムがFCに初めて参入した際に、ブランド名をケムコにした時期がまずかったのかもしれない。 言わずもがな、ナムコはケムコ初参入の前の年にFC参入を果たしており、知名度もケムコと比べてかなり高かったためであろう。

正式名称があまりにも長すぎたために、頭文字からとってブランド名にしたことは仕方がないが、 偶然かそれとも必然かナムコと名前がかぶりすぎてしまったのは不運といわざるを得ない(ロゴの形を見ればすぐわかると思うが)。

しかし、だったら『コトブキシステム』もしくはその母体である『コトブキ技研工業』という会社名にすればよかったのに、わざわざそれをせずにケムコにしたのは不明。 ケムコとナムコの区別はわかる人でも、両者の今まで出したゲームの質の差(後述)とゲームメーカーをネタにすることが多い。

後に、ケムコがありながらもコトブキシステムという名前でゲームを発売していた時期もあり、それもケムコを知るユーザーからネタにされている。 2005年に、ケムコの名前がコトブキシステムのゲーム事業を受け継ぐ形で東京の別の子会社に引き継がれたが(本社は広島県呉市)、 このあたりの展開もやや唐突だったのでこれもやはりケムコをネタにすることがあったのかもしれない。


参入時から、色々話題の的となったケムコだったが、ソフトも色々別の形で話題となった。 最初のソフト『ダウボーイ』は、第二次世界大戦を舞台とした戦場で、左端から右端に移動しそこで手に入る鍵を手に入れながら、様々な敵や仕掛けと戦っていくというもの。 全5ステージで、最初のステージはクリアに必要な道具を入手し、ステージ2以降はアイテムが出ないため実質本番という形になっている。

つまり、ステージ2が爆薬の使い方でステージ3が金切りバサミの使い方、ステージ4がはしごの使い方で最終面がそれらを組み合わせた総合ステージである。 なるほど、クリアに必要な道具をこのゲームはレクチャーしていることを示している。 それだけなら普通のゲームなのだが、いきなりプレイすると奇妙な形のものがかなりあるため、説明書がなければ間違いなく混乱してしまいかねない。

アイテムは、爆薬とそれの爆破に必要な導火線、地雷、はしご、金切りバサミの5つで、はさみ以外の4つはクリアに必須、なくなったらクリアは無理。 導火線以外の4つは、AまたはBを押す(「プッ」という音が出る)か連射しつつ一部は使用する場所に向かって十字キーを押さなければならず、もたもたしていたら敵にやられてしまう。 そのために、プレイヤーは銃を使って倒していくのが普通で、爆薬や地雷は戦車やまとめて一般兵を倒したいときに使うのだが、一般兵に限りなぜか体当たりで倒すことができる。

当時のゲームでは、体当たりで倒すものといえば『ドルアーガの塔』ぐらいだが、ドルアーガは(剣を突き出しての)体当たりが基本攻撃だけに、 ダウボーイは銃が支給されているにもかかわらず体当たりで倒せるのは疑問が残る。

その銃にしても、撃つとしばらく動けなくなる上に一部道具を使うときには必ず撃たなければならないために(Aボタンを使うので)、敵が多い場所では必ず狙い撃ちされかねない。 このために、銃よりも体当たりでプレイする人が多くなったのは奇妙の一言。


最終面の捕虜救出にしても、鍵を取って扉を開けたところに捕虜がいる建物ごと爆破して救出するので、現実ならその捕虜はまず即死だろう。 それを乗り越え救出したとしても、サーチライトに当たれば敵がわらわらと出てくるが、サーチライトを爆破するとそれが消えてしまい、全て消せば敵が全く出てこなくなる。

爆破で消すこと自体唖然ものだが、爆破のフラッシュで画面全体が見える(最終面は周囲以外暗くなっている)時、同時に出る施設のデザインがしょぼいのも唖然としか言いようがない。 そのさなかに捕虜も死んでしまうことがあるため、クリア自体は可能だが捕虜の生死でエンディングが変わるので、 グッドエンドしかない(またはエンディングがなくエンドレス)ゲームにバッドエンドも加えたのは評価できよう。

評価できるものといえばBGMもそうで、どこかで聴いたことがあるような曲が多い。 意外にも、全てのステージにマッチしているため、そのBGMをバックに戦う様はどこぞの戦争映画を思い起こさせる。 特にエンディングのBGMは、アメリカ国歌の一部分であるので、捕虜を救出・帰還して自軍から賞賛されるあたり、任務を達成できてよかったと思うことだろう。

とはいえ、理不尽な要素が多いこのゲーム、プレイヤーからクソゲーと決め付けられた。 ケムコと名前が似ているナムコが、次々とFCで良作を出しているのに対して、ケムコはむしろクソゲーを多く連発していったことにより、 ユーザーの間で将来のケムコの方向性を決め付けられてしまった感じがあるようだ。 クソゲーメーカーの船出となってしまったダウボーイ、せめてアイテムを使い切ってしまったときの救済措置があれば多少なりとも評価は上がったのかもしれない。


このゲームを初めてプレイしたのは昨年からだが、存在を知ったのは発売から1年近く経った後。 いとこの家にそんなゲームはなかったが、当時発売されていた徳間書店が発刊した児童用ムックの1つに(多分テレビランド関連だと思う)、 ファミコンのカタログシリーズの1冊を持っていて、その本にダウボーイの内容と画像が載っていた。

その時の私は、まだFC本体すら持っていなかったのだが、FCそのものについては既に友達やいとこの家でプレイしていた。 そのためなのだろうか、ステージ1のゲーム画像を見た時散らばっているものがアイテムだということに即座に気づいたのは、 私の中にあったゲーム好きが呼び起こした結果なのかもしれない。

しかし、いとこや友達すら持っていなかったゲームだったので、無論私もこのゲームをプレイする機会はなかった。 それから20年近く後、ネットでこのゲームをレビューしているサイトを見つけて、レビューに書いてある新事実に目をやった。 それは、体当たりで敵を倒せるというもので、そのページは画像も載っていたためにアイテムの存在も思い起こされた。


それでも、若干新しめのゲームに偏っていた私は買うのを手控えたので、結局プレイしたのがレビューを書く1年前だった。 だが、カセットのみで買ったのがまずかったようで、アイテムの存在はわかっていてもどういう効果を発揮するのかわからなかった。

サイトで調べて、アイテムの使い方といったある程度の操作は覚えたものの、体当たりで敵を倒すことに躍起になったらしく、 数体それで倒してしまったことでつい調子に乗ってしまいいつの間にか現れた敵の大群に蜂の巣にされてしまった。

あまりの下手さに、ようつべやニコニコ動画でこのゲームの動画を何度も見て研究することにした。 もちろん、それだけで自分の腕が上がるわけではないのだが、動画を見る前よりは腕が上がったと思っている。 そして、捕虜を無事に救出した上で最終ステージをクリアした私は、エンディングのバックに流れるアメリカ国歌に余韻を深めていた。

捕虜が殺されなかったから余韻に浸れることができたので、もし捕虜が死んでいたら思わず今まで出くわした理不尽さに、 カセットを壁に叩きつけて壊そうかと思った(それくらい私の怒りは大きかった)。

昔は、このゲームが面白そうだと思っていたために、今になってプレイしてみると逆に面白くなかったあたりが、 昔と今のギャップが激しすぎた結果なのだろう(他のゲームもそういう事例が多々ある)。



本日のまとめ



GOOD LUCK

(08/6/15レビュー)
伝説のスターブロブ2への掲載:2019年6月12日
◆目次に戻る◆


inserted by FC2 system