◆ファンタジーゾーン◆
ほのぼの観に潜む衝撃の結末



発売日:1987年7月20日   発売元:サン電子   ジャンル:STG
値段:5300円   おすすめ度:4(無理なく遊べる安定した移植)


今から数千年の昔、はるか宇宙のかなたに『ファンタジーゾーン』という名の異空間が存在していた。 そこには、緑の星プラリーフ、火の惑星タバスコーダ、砂の惑星ラ・デューン、超惑星ドリミッカ、 氷の惑星ポーラリア、雲の惑星モクスター、水の惑星ポカリアスの7つの惑星が存在している。 さらにもう1つ、あまたの悪霊が凝縮した惑星サルファが新たに登場、ある事情によりファンタジーゾーンの第8惑星となった。

そこの近辺で起こる出来事は宇宙暦6216年、地球の西暦に換算すると紀元前1422年、 この時期の地球は中東において鉄器を世界で最初に使用したヒッタイトが自分達の国を建国した。

また、古代エジプトの迫害に苦しむイスラエルの民を救うべく、預言者モーセが彼らを率いてエジプトを脱出させている。 そのエジプトでは、古代エジプト新王国第18王朝が興り、その時にヒクソスの支配から離れてから100年以上の歳月が経っていた。

一方のファンタジーゾーンの周辺宙域はというと、地球よりはるかに高度な経済とか学力を有していた。 そんな平和な宙域に、惑星間における公式通貨のバランスが何らかのトラブルにより乱れてしまい、 その宙域にある惑星の1つエリダス第9惑星は、未曾有の大恐慌に見舞われた。

この事態を重く見た、周辺宙域の経済を管轄する宇宙協会別名『スペースギルド』は、大恐慌の発端の調査を開始した。 調査の結果、何者かが周辺宙域に住むメノン星人を操った上で、惑星間の経済に必要な外貨を奪い、 それをファンタジーゾーンに巨大要塞を建設するための資金にあてていたという情報を入手したのである。

このままでは、周辺宙域の惑星の経済はエリダス第9惑星のように大恐慌を巻き起こし、宙域の経済活動が麻痺しかねない。 そこで、コミカルな姿をしながらも勇敢な宇宙戦士にして、宇宙の英雄とも呼ばれた機械生命体のオパオパが立ち上がった。 彼は、ファンタジーゾーンに一体何が起こっているのかどうか、その任務を買って出たのだ。

オパオパは、早速ファンタジーゾーンの要塞が建設されている惑星のある場所に向かっていった。 途中で現れる、周辺宙域の経済を混乱させた軍団や彼らに操られているメノン星人、さらにサルファから現れた悪霊の大群を蹴散らし、 ついにその惑星の中枢部に突入したオパオパが見た真の黒幕とは…?


セガが送るほのぼの風のSTGで、今も移植版や続編さらにアレンジ版が数多くのハードに登場し、それに見合った数の作品を提供し続けている。 その魅力は、STGにふさわしくないポップなBGMと幻想的なステージ、それにかわいらしいキャラクターが意外にも十分マッチしていることにある。 敵もその例に漏れず、倒すのがもったいないくらいかわいらしく、倒された瞬間ははかない(体がひび割れてぼろぼろに朽ち果てていくので)。

主人公のオパオパは、画面一番下に来ると足を出してチョコチョコ歩いてくる。 彼が、機械生命体という設定を取り入れたためなのだろうが、見た感じでは戦闘機そのものなので、 戦闘機それもSTGでそれが足を生やして歩いてくること自体前代未聞だ。

だが、その動きやデザインがファンの人気を集めたのだろうか、オパオパは本シリーズはもちろんセガ関係のゲームにも登場、 アニメにも登場しセガのマスコットキャラの1人(?)として今もファンの人気を集めている。

このゲームが、他のゲームと比べても異彩を放っているが、一番注目されるのがSTGなのに買い物ができるということだ。 今でこそ、買い物できるゲームのジャンルは珍しくなく、ACTでもさらにスポーツゲームの多くですら買い物システムを導入している。 だが、20年以上前それもACでSTGという、いかにも買い物ができなさそうなゲームでそれを実行したことは、AC業界に少なからず衝撃を与えたに違いない。


具体的にどういうものかというと、敵を倒したときにたまにコインが落ちてくるので、それを拾ってこれもたまに出てくる風船型のショップに立ち寄って、 そこで売られている武器やエンジンを買ってそれを装備して再びステージに向かうことになっている。

威力が高いものほど値段が高く、ほとんどは弾数や時間使用制限がある上に、一度使い切ってから買うときは値段が上がるので何かと使いづらい感じがあるようだが、 それゆえ一般の武装より威力が高く、同時にどのステージでどの武装を使うかという戦略も重要になった。

もちろん、特定の武器を使い続けたり適当にオパオパをカスタマイズしたりと、こだわりの選択は金しだいで自由にできる。 このシステムは、STGのファンの注目を集めただけでなく、それ以降のSTG(『エリア88』や『オーダイン』など)にもそういったシステムが搭載、人気を集めることができた。

なお、買い物においてかなり有名もしくは使用頻度が高かった武器とエンジンは、ヘビーボムとツインボム、7WAYとジェットエンジンだろう。 自機も、このゲームがショップでしか増やせないため、普通のプレイヤーはこれも買うことになったが、 スコア制がある以上エクステンドも採用するべきだっただろう(それができるまでの得点が高くなってもいいから)。

ヘビーボムは特定のボスに有効で威力もかなり高く、ツインボムは値段が安く初期装備よりも効率がよく、 7WAYは値段が高い分まとめて大量のザコを一網打尽にできボスにも有効で(無論ボスにもかなり効き目がある)、 ジェットエンジンは値段のわりには程よい速さで、ほとんどのステージで対応ができるといった利点があるためだ。

このため、それより早いエンジンは足手まといでしかないが(他のSTGでも、自機が速すぎると回避率より壁や敵などにぶつかる死亡率が高くなる)、 ターボエンジンはラスボスの攻撃の関係上ようやく使いどころを見出せたエンジンといえる。 ロケットエンジンは、あまりにも速すぎて逆に敵や弾に当たる危険が大幅に増し、値段が高いのにマイナス効果が多いこの装備は、いわばジョークアイテムとして登場している。


またこのゲームでは、ステージ構成等が他のSTGと比べて大幅に異なっていることも、このゲームの特徴の1つである。 ちなみに、左右に向きを変えて移動できるSTGは、『タイムパイロット』や『サンダーフォース』などSTGの黎明期でも多く確認できるが、 向きを変更するとそれを完了するまでの隙の多さから高い確率で狙われる可能性が高いので、 一瞬で向きを変更して敵に隙を与えない設定を作り出したことで、このゲームの評価は高くなっている。 それゆえステージは環状で、右から行っても左から行っても特にゲームの影響はない。

むしろ、右に行くことが基本の横STGが多い中で、左から攻略できることがこのゲームの自由度の高さを裏付けているといって言い。 左からも攻略できるゲームが既に過去のものとなった作品が多い中で、今も移植版やリメイクなどが発売され続けているあたり、その人気の長さのほどがうかがい知れる。

そのステージ構成のため、ステージ内にある前線基地(他のザコより一回り大きい)を全て撃破してからボスが出る仕組みになっているので、 これも最後の最後にボスが出ること自体他のSTGと変わりないが、前線基地全て倒した瞬間にボスが出てくるわけではないので、プレイヤーを待ち構えている他のSTGと違って緊張感はこちらが上だ。

それでも、ラスボス以外初期装備でも倒すことができる強さになっているので、たとえ最強装備で臨んでやられてしまっても、 初期装備に戻されて絶望しても倒せるところがうれしい(上級者は最低限の装備を買って、後で高額な装備をまとめ買いしている行為が多い)。

最終ステージでは、やられると自動的にショップに入るので、金さえあればここで体勢を立て直せる設定もよい一方で、 それがなければゲームオーバーだけが待っている可能性が大きいのはつらい(特にラスボス戦では)。

つらいといえばこのゲームのエンディングもそうで、ラスボスはオパオパの父それも今回の事件の黒幕なので、 まさか父親が悪事を重ねているとは予想もできなっただろう(事件の手先となっているメノン星人も攻撃に参加している)。

メッセージは英語だが、訳すと『果たして、この戦いの勝利は今まで払った代償に見合うだけの価値なのか?』というもので、 ほのぼのの絵柄にかなりショッキングなミスマッチは、プレイヤーに大きな衝撃を受けたのは間違いないだろう。


FC版が登場したのは翌年の7月で、この時期既にMSX版が移植されているが、 これはAC版と平行して開発されたセガMk−V版の移植に過ぎず、本格的なAC版の移植はFC版から。 もちろん、ACとFCの性能の差は明白なので、多くのところが変更されている。

主に、前線基地とボスの倒される描写が普通の爆破になっていることに加えて、前線基地を倒した後にボスが現れるのではなくボスのいる場所にワープするという設定になっている。 間違いなく容量の都合で、多くの色が使われているステージで巨大なボスを動かすことができず、ボスの間は背景がないという殺風景なものだ。 そのボスの中で、ウィンクロン(6面)だけ渦が3本になっているものの、代わりにそれらが回転するスピードは速くなっている。

それ以外はAC版とさして変わりなく、過剰に変更された部分は見当たらない。 移植版を開発したサン電子は、FCにおいて以前は『アトランチスの謎』や『いっき』といった、かなり個性的なゲームを世に出していたが、 このゲームの移植の高評価を受けたことで、セガ作品の多くを家庭用ハードに移植することになった。 既にACで名を上げていたが、これによってAC時代の頃の実力を取り戻したのかもしれない。


このゲーム、FC版は友達の家でプレイしたことがあるし、AC版はそれより2,3年後にプレイしたことがある。 初めてプレイしたのがFC版だが、その時は発売から翌年ぐらいだったためか私はRPGに夢中で、敵を倒し金を入手してショップでアイテムを買う瞬間は、本当に感動した記憶がある。 無論、ゲームの腕はあまりよくなかったものの、既に購入したジョイカードMk−Uで半分ほどは進めることができた。

ただ、説明書がないままでのプレイだったので、どの装備が使いやすいのか全くわからず、適当に値段が高いものを優先して使っていたおかげで、 肝心なときに金欠になってしまったという恥ずかしい思いでもある。 武器のほとんどが時間切れで使えなくなることも知らなかったので、武器が突然初期のものに切り替わったときはかなり混乱してしまったりと、 子供だからこそそうなったわけで今ではそれが普通棚と冷静になっているが。

当然、ラスボスの正体などわからなかった上に、オパオパが登場していたアニメ(赤い光弾ジリオン)を見ていたにもかかわらず存在を忘れたりと、 このゲームをまじめにプレイしていたのか疑問が今にわいてきた。 どちらも雑誌で知ることになったが、そのときは別にどうでもいい問題で、しかもゲームそのものもほとんど忘れてしまっていた。


久々にプレイしたのは現在で、いつもアクション系をプレイしたりSLGもプレイしていた結果、ここ最近STGをプレイしていなかったことに気づき、 同じSTGである『ヘクター’87』をレビューした後にこのゲームもプレイ&レビューした。

金を手に入れて買い物をすることは覚えていたので、それが好きな私としてはいずれレビューしたいゲームだったのだ。 とはいうものの、プレイしてからかなりの年月が経っているので(おそらく20年ぐらいか)、実質初めてのプレイでもあった。

しかし、思った以上にさくさく進めた上に金も回収でき、ボスも適当に攻撃しているだけで倒すことができた。 もっとも、レビューがてら攻略サイトも見て、どういう武装を買えばいいのか色々参考になったものは多かったが。 何しろ、上下もAC同様自由にスクロールできる分、敵がどういう行動するのかほとんど読めず、危うくやられそうになるケースが多かったのだから。

ボスについても、3面のコバビーチの場合連続発射されるレーザーを怖がったためか、ようやく倒せるというあたりで接近されミスになってしまい、思わずショックを隠せなかった。 こいつがヘビーボムに弱いことを知ったときはあっさり倒せたものの、4面のクラブンガーと5面のポッポーズにも手を焼かされた。

とにかく弾幕が厚すぎるので、ターボエンジン以上なら間違いなくやられてしまうところだった。 ラスボスは、攻撃スピードが速すぎて何度もミスしたことがあったが、偶然にも動きを読んでヘビーボムを落とせば瞬殺できることを知ったので、 その戦法で倒したときに現れたオパオパの姿に不覚にもほろりとしてしまった。



本日のまとめ



訳:私の勝利は、本当に代償を払うほどの価値なのだろうか?

(08/6/8レビュー)
伝説のスターブロブ2への掲載:2019年6月6日
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