◆ヘクター’87◆
キャラバンシリーズ第3弾



発売日:1987年7月16日   発売元:ハドソン   ジャンル:STG
値段:5000円   おすすめ度:3(今となっては評価したい一品)


現在よりもはるかな未来、『西暦』から『星暦』と年代の名称を変えたその時代、破滅は突然やってきた。 全世界を巻き込んだ戦乱が勃発、人々がいずれくるだろうと恐れられていた第3次世界大戦がついに始まってしまったのだ。

その凄惨さは苛烈を極め、人々の命や環境、経済はことごとく破壊されたが、それ以上に被害が激しかったのは有史が始まって以来、人類が今まで長年にわたって苦労して集めてきた遺産や記憶であった。 これにより、人類の歴史の研究などは頓挫してしまい、辛くも生き延びた人類はまた一から自分達の歴史を始めなければならなかった。

星暦1024年に起こった第3次世界大戦から3600年以上経った星暦4622年、この長年の間に人類の歴史は軌道に乗り、大きな痛手をこうむった地球にもようやく復興してきた。 同時に科学や技術も格段に発達したが、なんといっても過去や未来へ自由に行けるタイムトラベルが誕生した。 このタイムトラベルを、商売に利用した会社が現れた、名を時間旅行社またの名を『タイムリープ社』という。

時間旅行社は、会社の一大事業として第3次世界大戦勃発前の地球にタイムトラベルを行った。 その大戦争が始まる前は、人類が遺した遺産や記憶などが有り余るほどあったので、失われた過去を取り戻す事業において十分なものが得られると踏んでいたからであった。 時間旅行社は、多くの調査船を過去の地球へ派遣、その手始めとして古代文明が発達した数千年前の紀元前や紀元後が始まって間もない頃に文明にある謎を解きほぐそうとしたのである。

順調にタイムワープを完了、早速古代文明の調査の最初の目的地であるインカ帝国にたどり着いた調査船団。 ところが、そんな彼らを待ち受けていたのは彼らが知らぬ文明ではなく、突如出現した謎の敵だった。

それは、とある過程で発達したとしか思えないほど異形な姿をしたバイオメカの大群で、調査船団を敵と認識した彼らは攻撃を開始。 調査船団は、バイオメカ軍団の攻撃を振り切ろうとするも、彼らの執拗な追跡によりほとんどの調査船が犠牲となった。

結局、バイオメカ軍団の追跡を振り切った調査船は、ノアという名の調査船ただ一隻という有様だった。 ノアの乗組員は、人類の遺産と記憶などを古代文明から調査する一方で、謎のバイオメカの調査も行うことになった。 インカ帝国から始まり、最終的に邪馬台国まで繰り広げる両者の戦いの行方はいかに…?


ハドソンが送るキャラバン大会用STGで、今回はその第3弾にあたる。 タイトルの由来は、このゲームの宿敵バイオメカ軍団のラスボスの名前と発売した年を掛け合わせたもので、前2作のタイトルと比べてどういうSTGゲームなのか少々わかりやすい。

1985年の『スターフォース』から始まり、翌年の『スターソルジャー』で多くの関係者(特に高橋名人と毛利名人)を巻き込んでのソフトと大会の大ヒットは、 夏の風物詩であるキャラバン大会の船出として十分すぎるものだった。 1,2回とも、ジャンルをSTGで成功したのだから、当然第3回もSTGなのは誰もが予想していたし、STGの人気も前年までとはいかないまでも安定していた。

そんな中で登場した『ヘクター’87』は、第3回の愛称となった『ザ・グレートキャラバン』の名にある程度ふさわしく、ハドソンのキャラバン公認ソフトに迫る内容となった。 なんと言っても目を引くのは、大会でおなじみだった2分間モードと5分間モードが追加されたことで、 前2作ともストップウォッチを見ながらプレイした時と違って、気楽にプレイできると共にキャラバンの練習にも最適だった。

『2分間モード』は予選で使用し『5分間モード』は本選で使用とされ、多くの参加者が予選で敗退するにもかかわらず5分間モードも追加された背景には、 予選で敗退した人にも本選の雰囲気を味わってほしいという、ハドソンの思いがあったのだろう(もしくは個人の事情で、大会に参加できないということもあるだろうし)。

これ以降、キャラバン公認ソフトのSTGにはこの2つのモードが常時追加され、公認ソフトでないハドソンのSTGの一部にも追加されている。 さらには、ハドソンが関わってないSTGにもそれらのモードがついているが、裏を返せばそれほどまでにキャラバンの影響が他のゲーム会社にまで広がった証なのだろう。

ただ、ゲーム内容は前2作と大幅に異なっていて、最低16(スターソルジャー)以上かなりあったステージは最大6と大幅に減らされた一方で、ステージの長さは今までよりも長くなった。 一般のSTGでは、それが普通の数となっているが、大会を知る人にとってはかなり異端な目をしたのかもしれない。 そもそも、ステージ内容が明確になっていて、最初がインカ帝国で次がマヤ帝国、3番目がアトランティスで4番目が古代エジプト文明、5番目がムー大陸で最後が我ら日本の邪馬台国だ。


ボスも全て新規になり、得点を競うよりもゲームそのものを楽しむものに変わっている。 ライフ制も追加され、ステージ(このゲームでは『ヒストリー』という名称になっている)の途中にある特徴的な建造物を撃つことで出るカプセルを取って回復されるようになっている。 これも、キャラバンを知るプレイヤーから見れば異端に思ったのかもしれないが、別の視点で見れば連射だけの単純なものからようやく脱却したともいえる。

BでショットAでボムといった、武器の使い分けの戦術が登場し、縦と横のステージも前者が奇数で後者が偶数に分けられていて、 『連射が命+わかりやすく単純明快+高得点重視』だった前2作よりもゲームそのものを楽しむことに重点が置かれている証拠だろう。 ハドソンもこのゲームに自信を示していたらしく、1991年の小学館の学習雑誌の付録(小学6年生4月号)であるゲームガイドにおいてインタビューを受けた高橋名人は、 「3面は社内的に感動した」と(自画自賛)に語っている。

だが、この思い切りが結果として仇となり、キャラバン大会も盛り上がりに欠けた。 盛り上がりに欠けた原因として、キャラバン大会のソフトの発売日が5月になっても決まっていなかったためで、 開発こそ進んでいたものの連続して発売日が順延した結果、大会はやるのかどうかやきもちさせた人は多かっただろう。

しかも、ようやく発売された時は大会から約2週間近く前で、この時期では攻略記事はおろか大会の練習すらままならなかった。 せめて、開催を1ヶ月ぐらい遅らせれば何とかなったのだろうが、あくまで予定通りの開催に固執したハドソンのミスといえる。


子供達の趣味やFC業界の状況もマイナスになり、前者では主にビックリマンといったシール関係が、後者では『ドラゴンクエスト』に端を発したRPGがブームになり、 それに反比例してACTやSTGといった指を動かすジャンルは人気が落ちていった。

この状況をハドソンは知っていたのかどうかわからないが、ハドソンと強固な結びつきにあったコロコロコミックも強力にプッシュする状況には至ってなかったことも大きい。 何しろこの時期では、大会のための攻略記事を作るには無理があったのだから。

ゲーム内容も決してすばらしいものとは言えず、縦と横のステージを交互に出すシステム自体コナミの『沙羅曼蛇』のパクリであり、 ショットとボムを交互に分けて進むことも『ツインビー』やナムコの『ゼビウス』、セガの『ファンタジーゾーン』のパクリでもあるのだ。

しかし、ACの状況など知らぬFCユーザーは同時期に発売されたファンタジーゾーンを、2ヵ月後に発売されたFC版沙羅曼蛇をヘクター’87のパクリだと思い込んでしまったようで、 ハドソンとコナミ・セガの間にしばらくの間気まずい雰囲気が生じたのは想像できる。

これも、ハドソンはわざとやったか知らずにやったか不明であるものの、もしわざとやっていたとすれば明らかに確信犯だが、 他のゲーム会社も模倣のゲームを作っていた歴史があるのだから、これだけでハドソンを糾弾するのはお笑いだろう。

この他、前2作にあったパワーアップアイテムが削除されて、自力でゲームを進まなければならないという昔のゲームの逆戻りしたようなものになっており、 このゲーム自体の難易度も高いのだが、パワーアップアイテムの削除はそれに輪をかけて難易度を上昇させている。

ゲーム的に、得点を稼ぐ雰囲気が大幅に後退している上に、5分間モードで時間内に1面をクリアしてもそのまま終了してしまうので、次のステージで得点を稼ぐ意欲が減退しかねない。 普通に発売すれば、なかなかの人気を得られたのかもしれないが、キャラバン公認ソフトとして発売されたため批判が目立った格好になってしまった。


ハドソンもこれは失敗だと思ったのだろうか、以降のSTGをFCに出さなかった。 翌年の大会も、STGではなくPCエンジンの『パワーリーグ』という野球ゲームをキャラバン公認ソフトとして発売した。

しかし、STGあってこその大会に野球を持ち込んでも盛り上がりを取り戻せるはずがなく、さらに翌年の1989年に『ガンヘッド』を公認ソフトとして発売、 1992年までPCエンジンのSTGをキャラバン大会ソフトとして発売、再びSTGをよりどころにしたのである。

なお、このゲームを公認とした大会で、周辺コントローラーの『ジョイカードMk−U』の使用が認められている(予選・本選両方)。 この背景には、ゲーム内容的に連射が難しく攻撃方法や難易度は、まさにテクニックでクリアするものだという意思が伝わっている。

この商品は、連射の神様と謳われた高橋名人が宣伝していることによりかなり売れ、現在でも中古ショップで安値でかなり売られている。 一方で、この商品が売れたことは連射ブームの終焉を意味し、高橋名人の伝説も一瞬で過去の遺物と化したのは皮肉というほかない。


私がこのゲームに触れたのは友達の家だったが、それが発売当時だったのか数ヵ月後だったのか覚えていない。 少なくとも、コロコロコミック読者の私でもキャラバン大会には参加したいという意思がなく、あったとしても私はまだ小さかったので両親と一緒に会場に行くしかなく、 ゲームが好きなのに昔からゲームの腕は悪いので、どうせ予選で落ちるのが関の山だったのだろうが。 結局、キャラバン大会自体かなり前に消滅したらしく、今を考えれば予選でもいいから出場したかったなと後悔している。

さてゲームのほうはというと、購入は大学時代という遅さで、主に2分間モードと5分間モードをメインでプレイしていた。 本編は、かなり難しいという話を耳にしたのであまりプレイすることがなかったが、大会の2モードに飽きた頃に本格的にプレイしてみようとようやく決意した、購入して2年後の遅さだったが。

難しいことはわかっていたが、やはり私にはかなり難しい事がよくわかり、ハドソン的に感動したといわれる3面は完全に地獄だった。 もちろん最初のステージは、ダメージこそ受けたものの大会用モードを散々プレイしたこともあって、1回もミスにはならずクリアできたが。


これ以降このゲームをプレイする気にはならず、久々にプレイする機会がやってきたのは2008年の現在だった。 相変わらず、1面で余裕でクリアした後は地獄の連続だったが、私がレビューしたレトロゲームの多くは難しいものが多かったので、10数回プレイしていくうちにある程度敵の行動パターンが読めてきた。

とはいえ、1機も撃墜されずにクリアというわけにはいかず、ゲームオーバーこそならなかったが最終面特にラスボスは手を焼かされた。 それでも、エンディング後のスタッフロールは苦労してプレイした私をほっとさせたが、2周目は自機がノアからボンバーキングもといナイトに変更され、さらに難しくなったのには呆然とした。

ちなみに、2分間モードと5分間モードも久々にプレイしたが、1面だけプレイすることもあって難しくなかった。 むしろ、得点稼ぎにはちょうどいいと思ったが、そうでもなければこのゲームがキャラバン公認ソフトに選ばれるわけがないとも思った。

なお、そのときの2分間モードの得点は43600点で5分間モードは102400点と、個人的にはまあまあの出来だと自負しているものの、本番だったらまず間違いなく予選落ちだと思う。 当然ジョイカードを使用したが、物置から20年近くぶりにわざわざ引っ張り出したほど古めかしいもので、本当に使えるかどうか少々心配したけれども、意外とまともに動いてほっとした。



本日のまとめ



YOU GO ON THE LONG VOYAGE.

GOOD LUCK !

(08/6/6レビュー)
伝説のスターブロブ2への掲載:2019年6月6日
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