◆つっぱり大相撲◆
FC初の相撲ゲーム



発売日:1987年9月18日   発売元:テクモ   ジャンル:相撲
値段:4900円   おすすめ度:4(もはやこれは相撲ではない)


テクモが送るFC初の相撲ゲームで、以降の相撲ゲームの基本となったゲームでもある。 この時期、FCのスポーツゲームは野球(1983年発売の『ベースボール』)をはじめとして、テニス、F1、 バイクレース、サッカー、アメフト、オリンピック系、プロレスなど、様々なジャンルが世に送り出された。

FC誕生からそれほど経っていないため、その多くはまだ1ジャンルにつき1作品しか出ていなかったが、 野球やゴルフなどスポーツ自体の人気やゲームの売り上げが安定していたジャンルの場合、多くのゲーム会社からその手の作品や続編などが登場していた。

何しろ80年代半ばから後半にかけて、FCソフトがジャンルと共に多くなった時期で、 スポーツのジャンルもそれに刺激を受けたかのように一般人にはあまりなじみのないジャンルまでもゲームになっていった。

その一方で、かなり日本人になじみがありながらも、なぜかゲーム化の遅れがあったジャンルがあった。 それは相撲で、この手のスポーツは突っ張りや押し出しといった力比べや、上手投げや下手出し投げといった技能が試される投げ等が合わさって、一応完成を見るわけである。

決まり手の1つである投げは、あまりにもバリエーションが多すぎるためFCの2つのボタンでは、はっきりいって決め技が出てこない。 せいぜい押し出しか突き出し、よくてAB交互に出す投げ技(簡単なもの)程度しかないだろうが。

そもそも、FC黎明期は日本のゲームのジャンルが花開くまでの発展途上の真っ只中にあり、 相撲はACの『大相撲(データイースト開発・販売)』しかなく内容も最初の相撲ゲームなのだろうかかなり粗かった。

さらに言うと、相撲というジャンルをゲームにすると1対1で敵と戦うという、今で言う格闘ゲームの原型という見方もある。 空手然り柔道然り、いずれも1対1の勝負で行うため、1対1という勝負自体格闘ゲームの原型でもありACTにおけるボス戦でもある。

この時期のゲーム全般に見て、格闘というジャンルは明確に存在しておらず、 『ストリートファイターU』の大ヒットでようやくジャンルに格闘が明確になったのだが、これを期に格闘ゲームが雨後のたけのこのように登場した。

カプコンは、データイーストの『ファイターズヒストリー』をストUのパクリだと抗議し、 一方のデータイーストは1984年登場の『空手道(ディスク版と海外版ではカラテチャンプ)』をカプコンはパクったと反論、格闘というジャンルが明確に出てなかった逸話といえる。


このため、FC初の相撲ゲームはコマンド入力を織り交ぜたものにしたのだが、それゆえ発売が他の有名なスポーツゲームより遅れてしまったようだ。 発売年は1987年で、その時期の相撲界は横綱の千代の富士(現九重親方&審判部長)を筆頭に、 同じ横綱の北勝海(現八角親方)や初の外国人力士の小錦(現KONISHIKI)といった著名な力士が観客を沸かせていた。 この相撲人気がうなぎのぼりになったあたりで、ようやくFC初いや家庭用ゲーム初となる相撲ゲームがテクモより登場した。

格闘ものの原型の1つとも言われるこのゲームは、前述したようにFCながらもコマンド入力で色々な決め技を出すようにしているが、そのバリエーションはかなり豊富だ。 Bで突っ張り・寄り・吊り・投げでAでぶちかまし、十字キーで投げ技となるコマンド入力という単純ながらも、これらをうまく組み合わせて決め技を出すことができる。 つまるところ、Bだけで相撲ゲームの原型が完成しているが、あえてAや十字キーもフル活用することで、取り組み自体がバラエティ豊かになっている。

もちろん、組み合ってコマンド入力してもすぐ技が決まるわけではないが、 画面下の体力において相手と取っ組み合いや張り手を食らう回数が多いとそれが減ってしまい、相手に技をかけられる確率が上昇するしその逆も生じる。

また、体力ゲージが光る場合もあるのでその時も技をかける確率が上昇し、これらを掛け合わせて相手に勝利する確立は大幅に増す。 相手と組み合ってコマンドを入力しても、すぐに決め技がかけられないところがこのゲームの面白さでもあり、同時にスリルでもある。

そもそも、組み合って技を出してしまってはつまらないし、体力ゲージによって技を出せるか否かをリアルに決められるシステムを出したテクモは見事だろう。 逆に言えば、体力ゲージが高い力士ほど有利で、それが少ない力士には彼らに勝てる確立が少なく、まだまだ相撲ゲームに改良の余地を残した形となっている。 組み合っていれば、自動的に体力が上昇することもあるが、強い力士相手では逆にこちらの体力は減る一方で、投げ技を決めることがほとんどなくなってくる。


その肝心の技だが、やはり相撲においてなくてはならぬ技が多く目立っている。 その中でも、上手投げや下手投げは投げの決め技として多く使われ、押し出しや突き出しも能力が低いCPUや初心者相手にはなかなか有効だ。 もっとも、つっぱり連続での突き出しをやればある程度は勝てるので、格闘ゲームの原型の1つとはいえまだまだアクションやスポーツの要素が色濃く残っている。

ただし、このゲームに登場する決まり手が全て相撲独自になっているわけではない。 なんと、バックドロップやブレーンバスター、ジャーマンスープレックスといったプロレス技がかけられることができるが、 元々相撲に関係ないためあえて隠し技にしつつコマンドもかなり難しくさせて、めったに出せないものにしている。 主に、格下力士が上位力士に大金星をあげるために使用することが多かったようだ。

さらに、高く相手を放り投げて逆に落下した相手に押しつぶされる『あびせ倒し』という技もあれば、相手の力士の回しを外してしまう『もろだし』という技もある。 もろだしは正確に技ではないが、なぜか隠しコマンドということで登場している。 もろだし自体、百年に一度あるかないかという珍事ということも、わざわざもろだしを技として登場させているのだろう。


もう1つ、このゲームはRPGの要素も含まれていて、1場所での勝ち星を積み重ねていけば親方からちゃんこをご馳走され、うでっぷしつまり体力を上げることができる。 ちゃんこをかなり食べていけば、それだけ強くなる分勝ち星がさらに増え、勝ち星ごとに決まる昇進スピードも早くなる。 このゲームのクリアは、前頭13枚目のプレイヤーが数場所の昇進を重ねて、最終的に横綱になってその時に優勝すること。

当然パスワード機能付きだが、強くなった自分のキャラを対戦に出すことができず、適用は立身出世モードの続きのみなのは残念だ。 だが、最初はとても勝てなかった力士に対してようやく大金星をあげるといった充実感や、前頭の下あたりから徐々に昇進していって、 最終的に横綱になれたときはようやくその苦労が報われるというものだ(まだ終わりではないが)。

優勝も、横綱でなくても達成できるので、前頭でも優勝達成できることを考えると、 横綱昇進と優勝2つの喜びを一度に受けたときこそ本当の終わりだということが実感できる。
そのプレイヤーキャラは、容姿や肌の色などを決められないが、四股名を自由に決められる。 もっとも、漢数字を除けばたった45文字だが、その多くは現実の力士が使っている四股名の一部で、適当に自分なりの四股名が造れるのが面白い。

なお、FC初の相撲ゲームで相撲人気もなかなかによかったためなのか、実在の力士のパロディはもちろん部屋の名前のパロディも登場している。 これは、相撲ファンでなくともかなりわかりやすいものが多く、例えば百代富士は千代の富士のパロディだし、ここのかべや(九日部屋?)は九重部屋のパロディなのだ。 ちなみに、日満児(ひまんじ)や五九六山(ごくろうさん)といった駄洒落の名前の力士も多く登場していて、ますます相撲の世界をわかりやすくしている姿勢がうかがえる。

最後に、このゲームにおける位置づけだが、後に登場する相撲ゲームを確立させたのは前にも書いた通りだが、もう1つこのゲームにはバカゲーとも呼ばれている。 理由は言わずもがな、駄洒落の四股名の力士達やプロレス技の決め技、さらにもろだしという「これって相撲か」といったものがもろに出ているためだ。 しかし、ゲームそのものは相撲ゲームの基礎を固めているため、その分バカゲーテイストが強烈にプレイヤーに与えてしまった感じがある。


このゲーム、私は発売間もないころにプレイした記憶がかすかにあるが、初めてプレイしたのはいとこの家でなければ友達の家でもない。 そう、なんと赤の他人の家でプレイしたことがあるという、今を考えればかなり衝撃的な体験だった。

小さいころ、小山で父親の父(祖父で故人)と妹と公園で遊んでいた時に、目を盗んで公園の外に飛び出していた。 そのとき、私と同年代の子供とその母親と出会って、どっかについてきてしまったのだ。 『知らない人にはついていってはいけません』という注意を完全に無視した格好だが、 親子連れということと私が無知だったこともあってそれほど考えてなかったが、母親はちょっと迷惑な顔をしていたかもしれない。

 最初に、おもちゃ屋でつっぱり大相撲を小さい子が買ったので、その子の家で一緒にプレイすることができた。 相撲ゲーム自体初めてということもあって、どちらも結構楽しく騒いでいたもののかなり悪戦苦闘した。

その後その親子と別れたが、家が公園と近かったこともあって一人で戻ることができた。 もちろん、祖父や妹などは相当心配していたので、その時は別に何も感じなかったが今を思えばかなり心配したことを反省している。


さて、21年ぶりにこのゲームをプレイすることになったが、あいにく購入したものがカセットのみだったので、操作はネットで調べるしかなかった。 それまでは、格闘ゲームよろしくコントローラーをガチャガチャにいじくり回して技を出すという、いわゆる『タコ拳』である程度はCPUに勝てた。

でも、ブレーンバスターやもろだしといった隠し技は出せずじまいだったので、レビューや攻略を問わずこのゲームを扱っているサイトを徹底的に調べ上げ、ようやく人並みに技を出すことができた。 それこそ、格下の相手にもろだしの連発をしたり、技と追い込まれてのジャーマンスープレックスなどまさにやりたい放題だった。

ところで、レビューを半分ほど書き上げたとき、息抜きでニコニコ動画にあがっているゲーム動画を見ることにしたが、その中でこのゲームの優勝までの動画があったので早速見ることにした。 前頭13枚目からのスタートだが、強豪相手にももろともせず一部真剣勝負はあれど、多くはあっさりと勝利を収めていた。 なんといっても、浴びせ倒しで勝利を収めた回数が半数近くになっていたので、コメントの多くもそれに対するものがあった。

私はむしろ、このゲーム動画を真剣に見てどうすればCPUに勝てるか調べていた。 そして、相手が豪快な天井投げ(決まり手では上手投げ)を出してくれるようプレイしたが、結局普通の投げ技でやられることがほとんどだった。 したがって、強豪に勝つには自分が強くなければならないという結論に達したのは、当たり前と同時に悔しさがにじみ出た。

なお、文章が横でなく縦で表示されていることに今気づいたが、これも昔はいくらかあっただろうが今はそれを扱ってるゲームを見たことがない。 これも、和風のゲームという関係上そうさせたのだろうが、ゲームで縦で文章を作ることはかなり勇気がいると思う。



本日のまとめ



ごっつあんです!

(08/6/1レビュー)
伝説のスターブロブ2への掲載:2019年6月4日
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