◆ドルアーガの塔◆
ドルアーガ伝説第1幕



発売日:1985年8月6日   発売元:ナムコ   ジャンル:ACT
値段:4900円   おすすめ度:3.5(理不尽なまでの宝箱出現)


この物語は、私達の住んでいる世界はもとより、その時代さえもはるか昔の出来事…、その時代に存在していたバビリム王国において、 人々は神を敬い王は愛と戦いの女神イシターに仕える巫女を重用し、政治といった重要なことを行う際に神のおつげを反映していました。

そんな信心深い人々のために、空の神アヌは天上界にブルークリスタル・ロッドを置いて、その輝きが王国の隅々までいきわたるようにしました。 元々女神イシターの持ち主であるブルークリスタル・ロッドの輝きは、人々に愛と平和をもたらしました。

しかし、この噂を伝え聞いたスーマール帝国が突然攻め入ってきて、王国は帝国の傘下に組み込まれてしまいます。 帝国はバビリムの男達を奴隷にし、天上にあるブルークリスタルロッドに届くような高い塔を造りはじめました。 塔が高くなるにしたがってそれが陰となり、王国にはブルークリスタルロッドの光が届かなくなりました。

王国は不安に満ち犯罪が横行し、しかも恐ろしいことに昔女神イシターとの戦いに敗れ、ブルークリスタルロッドの光に封じ込められていた、 腕が8本に足が4本という異形の悪魔ドルアーガが復活してしまったのです。

ドルアーガの復活を知らぬ空の神アヌは帝国の不信心を戒めるため、雷を落として塔を崩してしまいました。 そして人間達に愛想をつかしたアヌをはじめとした神々は、天上界高くに引きこもってしまいます。 神々の助けがなくなり帝国も去っていった王国は、ドルアーガの天下となってしまいました。

ドルアーガは、その魔力で塔を修復し放置されたブルークリスタルロッドを盗み出した上に、 雷に撃たれた帝国軍の兵士をよみがえらせて塔の中に放ち、ブルークリスタルロッドを隠して塔に立てこもりました。

王国の王子ギルことギルガメスと、巫女のカイは恋人同士で、ギルは塔を建てる奴隷として働かされていましたが、塔が崩された時岩の下敷きとなり負傷してしまいました。 ひそかに王国の再建をめざす2人を、ただ1人残って見守っていた女神イシターは、見放されても神を敬い続けているカイに魔法のティアラをさずけ、 ブルークリスタルロッドを取り戻すべく塔へ遣わせましたが、カイはドルアーガの魔力に敗れ、囚われの身となってしまったのです。

恋人を失ったギルの嘆きは、天上界のアヌ神にも届き、ようやく全ての事情が飲み込めたアヌ神は、傷の癒えたギルに勇気を力に変換する黄金の鎧を与えました。 ギルは、ドルアーガを倒してカイを救い、ブルークリスタルロッドを取り戻すため、単身ドルアーガの塔へ挑んで行くのです…。


記念すべきドルアーガシリーズの第1弾で、制作者の遠藤雅伸氏が最初に制作した『ゼビウス』と共に、遠藤氏の株を大幅に上げることになった作品でもある。 ストーリーこそ、囚われの恋人を救い出すという単純なものだが、ファンタジー要素をゲームの持ち込んだこと自体当時としては画期的だった。

もちろん、『ウィザードリィ』などにその手の設定は存在しているが、プラットホームが一般人には手が出なかったPCであったため、 多少なりとも一般人が近づきやすいACに登場させたことが、様々なハードにファンタジー要素を取り入れたゲームが次々と登場するきっかけにもなった。

また、一般人にRPGの概念を植え付けたことでも、このゲームの評価は高い。 RPGの要素は、敵を倒しつつアイテムを入手しそれを利用することで、主人公は以前と比べて見違えるほどに強くなっていく。 そして、新たな場所に移って今までよりも強い敵に挑んでいって、最終的にラスボスを倒し恋人を救出してエンディングとなる。

ドルアーガの場合、多くの困難(現在から見れば理不尽か)を乗り越えて達成するのだから、その喜びはひとしおだろう。 その困難は、1つにゲームの舞台となるドルアーガの塔が60階よろしくエリアが60あるということで、エリア自体は長くて2分程度ではあるが、 全て踏破しなければならないことを考えれば最低でも実に1時間以上はかかってしまう。 次のフロアの扉を開ける鍵を取ってその扉に向かえばクリアなのだが、どちらも配置がランダムにあるために敵の存在もあわせて、短時間でクリアできるかどうかは運任せといえる。


2つ目は、このゲームの重要なアイテムが入っている宝箱の存在で、どれもこれもギルをいっそう強くするものばかりで、 中にはクリアに必須のものも用意されているので、これらをあわせればまさに日本人向けのRPGを作り出していることがわかるだろう。

ただし、問題はそれらを守っている宝箱の存在で、ギルがある行動を起こせば宝箱が出る仕組みとなっているのだが、 そのやり方も特定の敵を数体倒したり1体も倒してはいけないものから、あるアイテムを使い切ったりとある場所に移動したりと様々である。

中には宝箱がないフロアもあり、色々宝箱が出るかもしれない行動を試した結果、結局この階には宝箱がないことがわかり、そのときの脱力とやるせなさは相当なものであっただろう。 この手のトラップを採用したのは、単に容量の都合なのか60階全て宝箱があるというプレイヤーの心理を逆手に取った手法なのか不明だが、このことが宝箱の存在に光を当てている。

宝箱を出現させる行動もめちゃくちゃで、普通は使わないボタンまで使う場合もあるので、これらを知ったプレイヤーは宝箱出現の難易度に関わらず、その喜びは大きかった。 それゆえに、ゲーセンでは自力で解いた宝箱の出し方を他人に見られないよう、色々な手を使って防いでいたという逸話もあるほどだ。

アイテムも、理不尽な要素はあれどそれは宝箱の出し方とリンクしているため、主にアイテムの効果に話題が出ていた。 その中で、避けていたであろうアイテムはポーションオブエナジードレインだ。 理由は、ギルの体力が下がってしまうというマイナスアイテムであるが、厳密に言えば間違いで正確には『ギルの体力を一定の値にする』といっていい。

体力が最低のときに、これを取れば体力がある程度回復するのだがこれに気づいている人は少なく、 体力が多いときにこれを取る人が多くいたので、マイナスアイテムという誤解が生じたのは無理らしからぬ出来事である。


ギルの行く手を阻む敵も一癖も二癖もある者ばかりで、特に悩まされたのがマジシャンやゴーストといった魔法を使う類で、中でも壁を通過したり壁を壊したりする魔法を放つ敵は有名だ。 ローパー系はギルの体力をごっそり奪っていくし、ドラゴン系は大きい体と強力で長い炎、それに専用のBGMで話題をさらっている。 もっとも、それら以外の多くの敵にしても、宝箱の出現の条件上などいやがうえにも知名度が上昇することになったが。

突然下の階に落とされるという『ZAP』も、プレイヤーにおける語り草の1つで、ドルアーガを倒さず60階に行ったり女神イシターとカイを攻撃してもZAP扱いとなってしまう。 イシターの場合は、57階のサキュバスにだまされて体力が減ってしまう人がいたため、疑心暗鬼で攻撃した挙句ZAPされたケースもあったという。 このZAP、嫌なトラップの1つというイメージがあるが、大事なアイテムをとり損ねた時におけるZAPは一応重要ではあるまいか。


そういった、数々の困難を乗り越えてカイを救出してブルークリスタルロッドを掲げてのエンディングは、今までの苦労が報われる瞬間といっていい。 遠藤氏をはじめとした制作者達も、当時の雑誌の攻略記事を見ずにプレイして散々な目に遭ったほど、このゲームの難易度の高さを物語っている。 そもそも、剣を構えながら敵に突進するあたり当時としては前代未聞で、盾を使って魔法を防御することも盾がグラフィックとして利用されていない証でもあった。

そういった難しくも型破りな操作が、このゲームをヒットした秘訣の1つであると言われている。 剣を構えるときは全く防御ができず、剣を構えたり収めたりする動作は完全に丸腰なので、 この瞬間を敵に狙われれば即死(アイテムによる例外あり)という緊張感もまた、斬新と同時に難易度の高さを示しているといえる。

実際、剣と盾を同時に出す手段もあるが、それはギルが前と後ろ向きでしか出せない手段で、左腕に盾を持っている関係上左右でその技を使うのは無理。 この手段は上級者向けといわれているが、それは魔法を使う敵が突如かなり現れたときにその手段がとっさにできるかどうかをあらわしているので、 初心者にはわかっていてもかなり難度の高い技であることがよくわかる。


FC版の登場は、AC版から翌年という早さで登場した。 ハードの都合上、グラフィックやBGMは粗いし、フロアの構造にしても画面比率によって9×18ブロックから7×16ブロックへと縮小している。 それでも、宝箱の出し方はほぼ再現されているし、AC版でしか出せない出し方はFC版オリジナルに改めているなど、移植による変更をできるだけ抑えている。

エンディング後のスタッフロールも、おそらくFC初の快挙のようで、それが他のゲームの質を大幅に上げているといえるだろう。 ただ、ほぼ完全に移植しているため、多くの面で難易度の上昇は避けられず、クソゲーとまではいかないまでも普通の進めた場合、多くのプレイヤーが投げ出すだろう。

とはいえ、ドルアーガが自宅で遊べること自体喜ぶべきことで、多くのユーザーがこのゲームをプレイする以上、攻略本は必須だった。 FC初の攻略本が登場したのはこのゲームが最初で、それも複数の出版社が攻略本を出すのは当時としてはかなり異例だった。

実際、多くのプレイヤーは攻略本の恩恵にありつくことができ、AC版の多くを再現しているためにAC版にもかなり有効だった。 AC版とFC版で、全ての宝箱の出し方を見つける費用を考えれば、FC版のほうが断然コストが安い(AC版は最高で10万以上つぎ込んだというエピソードがある)。

このことをナムコは予想したのか、本編よりさらに難易度の高いドルアーガ通称『裏ドルアーガ』を登場させた。 宝箱の出し方がまるっきり違うというこのモードは、AC版をプレイした人ですら難しいと言わしめたもので、FC版を買ったことで何度でもこのゲームが楽しめるという余裕を潰した。 だからこそ、裏ドルアーガもプレイヤーに愛されているのではないだろうか。

裏ドルアーガと共に、面セレクトもまたこのゲームに欠かせない裏技となった。 60階という長いゲームなので、この技を使うことで自由に好きなフロアに行けるが、重要なアイテムを取らなければZAPしてしまうので、 いまだそのフロアにたどり着いていない場合や新しいフロアの予行練習でしか使い道はないのだが。 ただ、裏ドルアーガでもこの裏技は通用するので、その場合に限りその技を多用した人は多かったのではないだろうか。


実は私、このゲームはもちろんドルアーガシリーズに対して、あまり心に残る思い出はない。 初めてのプレイこそ、発売から翌年のいとこの家でだったが、その時の私は『敵に触れる=ミス』という図式が頭の中にあったので、かなりおどおどしていて敵にすら近づけなかった。 その間に、ゲームオーバーになった数は多くそのときにいとこにプレイしてもらっていたが、あまりの華麗なテクニックに思わず見入っていた。

何とか、このゲームの攻撃方法を会得して地道に突進して倒していったものの、肝心の宝箱の出し方はわからずじまいだった。 序盤のステージは、適当に敵を倒したりフロアを進んだりしていたから宝箱は出たものの、中盤から適当な操作での宝箱出現はできなくなり、 ただでさえどうしたら楽に進めるのかということも、あっさり敵にやられてしまう原因にもなってしまった。 結局、最終的に進めた階層は覚えていないが、間違いなくドルアーガはもちろんサキュバスすら倒していなかったことは覚えている。


それから現在、約22年ぶりにこのゲームをプレイすることになった。 攻略本こそ持っていなかったが、色々なサイトのおかげで私でも何とか進めることができた。 今まで多くのゲームをプレイしている私なので、剣を構えての突進やギルを前後に向けての魔法防御など、自分なりに操作はつかめた。

ただ、やはり宝箱の出現方法でも、サイトによってはよくわからない説明があるので、かなりゲームオーバーとコンテニューを繰り返した。 それでも、宝箱を出現させてアイテムを入手して強くなっていく様は、攻略サイトを見ていても感動した。 今までミスになっていたのがミスにならないものだったり、一撃で強敵を倒したりできるあたり「やっぱり強くなっているんだな。」と実感した。

表のドルアーガをクリアしたあと、すかさず裏ドルアーガをプレイしたがさすがに裏とあるだけ難しく、 攻略サイトどおりに進んでもミスすることが何度かあったので、これをクリアした人はかなりすごいと思うようになった。

当然私はクリアしておらず、余裕があれば全力で裏をクリアしたいと思っている(エンディングもまるっきり違っているし)。 なお、ナムコミュージアム版でも裏はもとより闇と呼ばれた、裏よりも極悪な難易度バージョンが収録されているので、 FC版を完全クリアしたらPS版も3モードまとめてクリアしてみたい。



本日のまとめ



YOU ZAP TO ...

(08/5/31レビュー)
伝説のスターブロブ2への掲載:2019年6月2日
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