発売日:1985年12月19日 発売元:ハドソン ジャンル:ACT
値段:4900円 おすすめ度:3.5(強くなれば死にやすくなる緊張感) とある地底奥深くにある、深くてなおかつ暗い迷宮、そこに1体のロボットがいた。 そのロボットは、立ちふさがる追っ手を爆弾で倒しながら上へ上へと駆け上っていく、ある噂を信じながら…。 あなたは覚えているだろうか、世界征服を狙うバンゲリング帝国に敢然と立ち向かっていった1人の少年を。 そして、帝国の地下迷宮から大量の金塊を運び去り、帝国と戦う組織の活躍に花を添えた1人の工作員のことを…。 彼の名はランナー君、あの『ロードランナー』において彼が所属している組織の側面から支援するため、 バンゲリング帝国の地下迷宮にある多くの金塊を、そこを死守しているロボット達の警備をかいくぐりながら、根こそぎ奪った主人公のことである。 そんな華々しい活躍を見せた彼だったが、実は彼にはある重大な過去があり、それは組織内部ですら知られていない事実だった。 実はランナー君、あのバンゲリング帝国の大迷宮で死闘を繰り広げてきたロボット達の仲間だったのだ。 そう、彼は昔帝国のロボットであって、それも帝国の悪事を実行する戦闘員的な役割を演じてきたのだ。 そんな彼の主な仕事は爆弾を作ることであり、そんな彼のことを『ボンバーマン』と呼ばれるようになった。 無論、帝国の地下迷宮に眠る金塊を奪う者を排除するため、仲間のロボット達と共に迷宮の警備に就くこともあった。 そういった仕事をする毎日…、いくらロボットといえど自分が嫌がる仕事を毎回やらされてはたまったものではない。 ボンバーマンも、爆弾を作りつつ地下迷宮の警備を命令する帝国とその毎日が、嫌で嫌で仕方がなかったのだ。 そんなある日、ボンバーマンはある噂を耳にした。『地下迷宮を抜け出して地上に出れば、人間になれるらしい。』と。 今の暮らしに嫌気がさしていた彼は、すぐさまその噂を信じて迷宮を脱出することを決意する。 同時に、人間に生まれ変わって今までの生活から抜け出したいとも考えていたが、世の中そう簡単に事が運ぶわけではない。 脱走を知った帝国は、直ちに裏切り者ボンバーマンの捕獲もしくは始末を、全ての部下に命じた。 仲間よりも己の自由を選んだボンバーマンは、かつての仲間達から追われる展開となった。 追われるボンバーマンの武器は、今まで自分で作り上げてきた数多くの爆弾のみ。 果たしてボンバーマンは、追っ手を爆殺しつつまきながら無事に地上に脱出することができるのか。 また、帝国にいたころに聞いた地上に出れば人間になれるという噂は真実かそれとも偽か、それはやってみなければわからぬものであった…。 現在のハドソンのメインタイトルの1作であると同時に、かつてはロードランナーのスピンオフ作品でもあった。 今でこそ、ボンバーマンのデザインは初代のキャラをほぼそのままにしつつ、ゲーム内容やストーリーも含めてコミカルに仕上がっているが、 初期のボンバーマンはコミカルな姿とはかけ離れた、いわばロボット同然のかっこいい姿(むしろシリアス)になっていて、第2弾となる『ボンバーキング』も初代のスタンスをほぼそのまま受け継いでいる。 つまり、初代のボンバーマンのゲームにけるグラフィックは、ロードランナーのストーリーを生かすためにロードランナーのロボットのグラフィックをそのまま採用していると考えられる。 しかし、1990年発売のPCエンジン版は、今までのシリアスなストーリーとキャラクターとはがらりと変わり、あくまでロードランナーのスピンオフから完全に切り離したものになっている。 これは、初代から5年という長い歳月の中で、本来の設定とストーリーが忘れ去られてしまったことと、ライトユーザーに配慮してあえて明るいイメージを出したかったのかもしれない。 結果的に、かわいらしさをメインに本シリーズはもちろん、ぱにボンシリーズやビーダマンシリーズといった派生版も数多く生み出し、多くが大成功を収めた一方で、肝心の初代のストーリーは多くの人が忘れてしまったようだ。 それでも、2006年にはX−BOX360で初代のストーリーとイメージを継承した『ボンバーマン ACT ZERO』が発売されたことは、スタッフ内外に少ないながらも初代を覚えている人がいたことの表れでもあろう。 なお、厳密には昔ハドソンがPCで『爆弾男』をFCにリメイクしたものである。 それから、様々な事情によりボンバーマンと改名されたが、同時にロードランナーの敵キャラを主役にしたのは、ミリオンを達成したロードランナーの人気にあやかったことと、 FC版を移植するにあたり本家開発元のブロードバンド社にFC版の権限の多くを譲渡されたことで、ロードランナーの多くの設定を他のゲームに生かせることができたと思われる。 結果、そのようなストーリーと設定を加える必要がないくらいの勢いで初代が売れたと、高橋名人は当時の売れ行きを公式ブログで述懐しているが、 この発言はロードランナーの人気で礎を築いた事実を軽視しているような感じに見えるので、それについてはいかがなものか(もちろん本人とて、そんなつもりで書いたつもりではないのだろうが)。 さて、肝心のゲーム内容というと、爆弾で敵や壁をつぶしつつ、ステージの敵全てを倒した上で壁を壊すときに出てくる扉に入ればクリアとなる。 全50ステージで、5ステージクリアごとにボーナスステージが登場する。 ただそれだけだが、ボンバーマンをパワーアップするパネルは各ステージごとにたった1つしかなくそれも種類を含めてであるため、 一般のイメージにあるような爆弾をずらりと並べて大爆炎で多くの敵を粉砕することは、最初ではできなくなっている。 それでも、ステージをクリアしてパネルを必ず回収いくごとに自分が強くなっていく様は、現在のRPGに通じるものがある。 この手のシステムは、既に『ドルアーガの塔』で有名になっていて、ボンバーマンはパスワードも導入されているので、 残念ながらゲームオーバーでしか表示されないものの、やられても続きから始められる安心感はこちらのほうが上だ。 しかし、いくらパワーアップされたボンバーマンでも一撃死がある上に、その死は敵に触れたり爆弾の爆炎に巻き込まれたりして死ねば、せっかくのパワーアップが剥奪される。 つまり、ある程度ゲームが進んで死んでしまうと、パワーアップによって抑えられてきた難易度が急激に上昇、せっかく集めた残機などもはや焼け石に水でしかない。 また、パネルを爆弾で破壊したり扉に爆炎を当てたりすると敵がわらわらと登場するので、これを利用して得点を稼ぐ上級者以外は、 そういった事態において突如登場した敵に対処できず、敵に押しつぶされるよりも時間切れでミスをすることが多かっただろう。 そう、このゲームの最大の敵は大量のザコや時間ではなく、自分自身なのだ。 ボンバーマンは、パネルを取ることで置ける爆弾の数を増やしたり、炎を伸ばしたりなどでパワーアップするのだが、爆弾の多さと火炎の長さによって逆に危険度を増している。 というのは、ボンバーマンは爆炎に触れてもミスするので、うっかり爆弾を変な場所に設置して自爆した人はかなりいた。 遠くに置いてある爆弾でも、炎の伸びが大きくなると誘爆する可能性があり、これもあわせてミスする人が後を立たなかった。 一般のゲームでは、プレイヤーが強くなると安心感があるのに対して、ボンバーマンは逆に緊張感が増すというスタンスを確立させた。 これこそがボンバーマンの醍醐味の1つで、安全に進むために爆弾と炎のパワーアップパネルをできるだけ取らないか、自爆覚悟でパネルを取りまくるかという選択を迫られた。 もっとも、パスワードやパネルで爆炎に対して無敵になることもできるが、一方でこのゲームの面白さが失われてしまう。 爆弾を置きながら、自分が爆発に巻き込まれないように避難するのがこのゲームの面白さであり、 同時に適当に爆弾をばら撒くのではなく的確にかつ、安全地帯を事前に見つけることこそも面白さの1つといえるだろう。 そういった意味では、ボーナスステージは扉や壁が全くなく爆弾も火力が最大で、ボンバーマン自身敵や炎に触れてもミスにはならない、 つまり完全な無敵になれるので、たまにしか出ないボーナスステージの存在こそがこのゲームの快感の絶頂であった。 さらに、炎で敵をまとめて倒してコンボで大量得点を手に入れることも、快感の1つであることは疑いない事実である。 ボーナスステージを一定ステージ間に置いて、無敵によるプレイヤーの堕落を防いだハドソンの設定は見事といえる。 それら以外で話題になったものといえば、ミニマルサイズのBGMだろう。 ミニマルサイズとは、最小限のものを反復するという意味で、このゲームのBGMは短いBGMを反復させてテンポよくプレイヤーを楽しませている。 続編以降で、初代のBGMの続きを無理やり作った物と比べれば、シンプルながらも奥が深いものではないだろうか(決して続編以降のBGMを批判しているわけではない)。 この他、爆弾の数や威力以外にプレイヤーをパワーアップさせるパネルもあったが、特に有名なのがリモコンパネルでこれがあるとないとでは難易度がまるっきり違うと評されている。 なにせ、自由に爆破ができるのだから、地味ながらも効果が高い壁抜けと爆弾抜けのパネルをあわせて、必須のアイテムとまで言わしめた。 スピードアップは、リモコンほど必須と呼ばれなかったものの4面でしか手に入らなかったので、別の意味で知名度が上がることとなった。 敵もまた、壁をすり抜けつつトリッキーな動きを見せるオパピー、スピードも速く壁をすり抜けるポンタンなど、シンプルでかわいらしいデザインと共にプレイヤーに知られてきた。 ポンタンについては、終盤でしか出会えないザコなのだが、あまりの強さに恐れおののいた人もいたようで、逆に上級者になればわざとドアに炎を当ててコンボで高得点を狙うこともあったという。 場合によっては、10万点以上の高得点をいきなりたたき出すこともありうるので、後述する隠しキャラよりも手軽に高得点を稼ぐことができた。 その隠れキャラ、『スターフォース』のゴーデスやファミコン本体など出現方法はステージによって違うが、取れば高得点でキャラによっては200万点というインフレがかかっている。 ただ、出現時間が短い上に後半のステージでは、ザコの爆殺コンボでボーナス得点よりも低くなっているものがあるので、後半になるほどその存在意義が薄くなっているのはご愛嬌か。 前述のように、このゲームはロードランナーのスピンオフ作品なのだが、ロードランナーの匂いが漂うのは主人公だけ。 エンディングで人間になり、ストーリーをロードランナーにつなげているあたり、これはロードランナーのスピンオフ作品なんだとゲーム本編に夢中になるあまり、 すっかりそのことを忘れてしまったロードランナーをプレイした人もいただろう。 続編の『ボンバーキング』で、雰囲気が初代とガラリ変わってしまうあたりは、ロードランナーとのつながりは初代限定にしようと考えたのかもしれない。 私はその昔、いとこの家でこのゲームを飽きるほどやりこんだことがあった。 ミニマルサイズでテクノ風味ののBGMが、しばらく経っても頭の中から離れなくなり、FC第3弾の『ボンバーマンU』でそれのアレンジのBGMが流れた時、不意に初代をプレイしたことを思い出した。 その時は、初代のカセットの絵のボンバーマンとUのボンバーマンのキャラの違いに驚かなかったが、今を思うとどうしてその事実に気づかなかったのかちょっと恥ずかしくなってしまう。 現在、このゲームをレビューしたきっかけは、ハドソン版ロードランナーシリーズ2作をプレイ&レビューした後、ついでにロードランナーのストーリーの流れを組むボンバーマンの初代をプレイしようと思ったためだった。 当然、次はシリーズ第2弾をプレイしようと思っている一方で、アイレム版のロードランナー2作もプレイするかどうか悩んでいる。 どちらにせよ、それらは多くのゲームレビューをこなす以上避けて通れないものなのだが。 それはともかく、当時の思い出としてはやはり、手当たりしだい爆弾で爆発させていった挙句、爆炎に巻き込まれたり壁と爆弾にはさまれてしまったり、 挙句の果てには扉を何度も炎に当ててしまって敵の大挙登場させてしまったことがかなりあった。 それでも、いくらかステージをクリアすることができたが、説明書を見ていなかったので(いとこの家なので説明書の所在が不明) リモコンパネルを入手できず前半でゲームオーバーになった記憶がある。 さらに、パスワードの存在などわからなかったので、当時はゲームオーバーになったら最初からやり直すのが基本だった。 現在、チャンピオンシップロードランナーをレビューした後に初代ボンバーマンをプレイしたが、シンプルな内容とこのゲームの基本が続編でも生かされている、 つまり続編以降もプレイした私でも初代をプレイしてからかなりの年月が経っているにもかかわらずすんなりと溶け込めたのは、 このゲームが思い出深かったこととシリーズのやりこみのおかげで基本が頭に叩き込まれたことが大きい。 リモコンや壁抜けのパワーアップも知っていたので、それを取ってゲームを有利に進めることができた。 だが、炎に触れても死なないパワーアップがあったりアイテムはステージ中に1つしかないことは全く知らず、 壁を全て壊したのはいいがそのために時間を大幅にロスしてしまい、結局時間切れになったことは何度かあった。 また、爆弾をずらりと置いたのはいいがなぜか1つだけ爆発しない場合がほとんどあり、 誘爆で爆破できたもののどうして爆破しないのか不思議でならなかった、というよりシステムの不備があったとしか思えない。 まとめて爆破できるのがこのゲームの快感の1つなのに、この不備だけは何とかならなかったのだろうか。 本日のまとめ
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