◆チャンピオンシップロードランナー◆
FC初のパスワード制導入ソフト



発売日:1985年4月17日   発売元:ハドソン   ジャンル:パズル
値段:4900円   おすすめ度:3(PCユーザーからの挑戦状)


ロードランナーシリーズの続編で、やはりこれもPC版が原作であってFC版への移植は、第1段発売から7ヵ月後に行われた。 続編といっても、前作同様ステージ数は50で、グラフィックもBGMも全く変わっていないので(容量も全て同じ)、普通に見れば前作となんら変わっていないように見える。 違っているところといえば、FC版でもある程度人気を得ていたエディットモードが削除されたことと、難易度の違いの2つだろう。

しかし、難易度については『チャンピオンシップ』とタイトルに銘打ってあるように、それは前作よりもかなり高い。 それをあらわしているものとして、最初のステージからマップの広さは前作の2倍となっていていることと、この時点で前作をクリアしたプレイヤーすら寄せ付けない難しさを出しているのだ。 前者はFC版のことなのだが、前作では1画面が2つあったのが今作ではそれが倍つまり4つになっているので、前作をプレイした人にとって前作以上にボリュームを感じた人は多かっただろう。

後者の難易度だが、先にも書いたように前作をプレイした人でも震え上がらせるほどの難しさとなっていて、最初のステージすら満足にクリアできない人が続出したことがそれを物語っている。 さらにいうと、今作の50ステージ全てを作ったのはPC版開発元のブロードバンド社ではなく、PC版の前作のプレイした人達なのだ。 それも、エディットモードで作ったステージである上に、50ステージあるのだから50人がゲーム制作の助っ人になったわけではない。

PC版は、ブロードバンドが本社にあるアメリカにあり、ソフト自体日本を初めとした多くの国々に輸出されている。 したがって、続編制作のきっかけとなるエディット募集には、アメリカのみならず世界各国というように幅広く行っていたのは当然だろう。

こういう形での募集だからこそ、応募されたエディットの数は膨大であり、応募したプレイヤーの腕も相当なものであった。 チャンピオンシップと題してあるのだから、応募されたエディットの難易度は総じて高く、 制作スタッフもプレイはもちろん選考も困難を極めたことはいうまでもなく、この選考が行われたこと自体ロードランナーの人気が全世界に広がったことを示している。

ユーザー協力での制作なので人気はあったものの、売り上げとなるとかなりよかったとは言い切れない。 日本では、FC版の前作の売り上げが約110万本とミリオンを達成したのに対して、続編はそれを達成していないのだ。 だが、続編も前作と変わらずかなり人気があって、攻略本はもちろん児童雑誌も攻略記事を掲載するなど熱はまだ冷めていなかった。


やはり世界よりも、日本のほうが知名度も人気も高く、今では難易度が高すぎるとクソゲーと呼ばれる場合があるのだが、 そんな難易度でも人気が高かったのは前作の人気が高かったことに加えて、特集を組んでいる雑誌のあおりも高かったためであった。 そのあおりは小学館のコロコロコミックによって、序盤までの攻略をいち早く出していることで発しているのは、当時を知る人にとって有名な話。

そもそもそのあおり自体移植元のハドソンが大体的に、それも今作発売前から行っている。 1985年3月15日金曜日、東京銀座にある松坂屋の屋上のイベント会場にて、今作のデモンストレーションを敢行、 平日ながらも500人ほどの観客が多くにぎわう中でのイベントは好評だった。

さらに、11面から50面までのシークレット・コードつまりパスワードを、説明書の最後のページにある場所に全て記入してハドソンに郵便で出すと、 ハドソンから『チャンピオンカード』というゴールド認定証がもらえる。 もらえるのが早いほど記載されている番号が小さく、それだけ早くクリアできたことを自慢できる証にもなり、友達との間で話題の種になったことは容易に想像できよう。

実はこのゲーム、FCで初めてパスワードを導入したソフトなのだ。 1面から10面までは前作同様自由にプレイできるものの、11面以降はそのときに出るパスワードを入力しなければ、プレイすることができなくなっている。

このため、50面までプレイしたければ11面から49面までプレイしなければならず(友達からパスワードを教える手もあるが、 これは少々いんちきという気がしないでもない)、エディットも前作にあった裏技もさらにはフルーツボーナスまでもが削除されてしまい、 このあたりは続編というより上級者バージョンというべきなのかもしれない。

その代わり、プレイヤーキャラことランナー君の動きが早くなり、掘る速度も格段に増した。 そうでもなければ、一般のプレイヤーにとってこんな難しいステージの盛り合わせなど、はっきりいってクリアできるわけがない。

ロボットの数も最大5体と大幅に増え、巨大な迷宮やその構造とあわせて、今までの攻略では通用しにくくなっている。 だからこそ、前作に大いにはまったプレイヤーにはやりがいがあり、何度もプレイして50面にいけるパスワードを入手できた人が多く登場したのだから。


こういったハドソンの企画は、FC業界を代表する偉人を2人生み出すことに成功している。 高橋名人と毛利名人であり、高橋名人はハドソンの宣伝部の社員で、毛利名人はどこにでもいる一般人で、2人とも無名の存在でしかなかった。

それが、チャンピオンカードによって一躍有名になるきっかけをつかむことができた一方で、 2人は後に『スターソルジャー』で映画ながらも対決することになるのは運命の皮肉だろう。

なお高橋名人は、一般的に16連射といった連射の名人として知られているが、当時はSTGがあまり登場していなかったために、 その時は名人と呼ばれていても一気に有名になるにはまだ時が必要で、16連射以前の当時の名人の素性を知る人はあまりいない。 それでも、後に続く多くのゲームメーカーが生んだFC名人登場のきっかけを出したのは、ハドソンであることは疑いない事実だろう。


最後に、このゲームに新たな必須のテクニックについて紹介していきたい。 そのテクニックとは、敵の頭上を乗って歩くというもので、前作でもプレイヤーが掘った穴やくぼみにはまった敵の頭上を歩くことができた。

しかし今作では、空中にいたり歩いたりしている敵の頭上にも乗る場面が多くなり、それが難易度上昇に一役買っている。 何しろ、歩いている敵のスピードに合わせて動かなければならないのだから、うっかりタイミングをはずせばそのまま落下した挙句、敵にぶつかってミスということになる。

そんな中、前作においてやや高度ながらも必須だった時間差崩しのテクニックは、今作でも多くの面でクリア必須となっている。 だが、掘るスピードが前作で格段に上がった一方で、穴がふさがれる時間が据え置かれたことは、 時間差崩しの難易度が前作より下がったことを意味していて、同時にクリア必須の度合いが少し下がっていることも意味している。

プレイヤーの速度も、前作より速くなった一方でロボットの速さはそのままになるなど、時間差崩しがやりやすくなった代わりに、 歩くロボットの頭上に乗ることがかなり難しくなっている。

シリーズの上級者バージョンと自負するだけあるが、エディット作成ステージを応募した強者とて全てのステージが理不尽な難易度の面にしたのではなかったのだろう。 そうでなければ、PCユーザーの挑戦状を喜んで受け取る人は現れなかっただろう。 高難易度だからこそ、必ず解ける道と解けた時の喜びがある、このゲームはそれを証明した。


このゲームに目が行ったのは、十年近く前だったと記憶しているが、そのゲームと出会ったのは私が大学時代によく立ち寄っていた中古ゲームショップで、それも箱を見た程度で購入はしなかった。 ゲーム画像を見たのは、それから数年後の大手レトロゲームサイトで、その時はステージの一部しか見れなかったため、前作をプレイした記憶が残っていた私はどこがチャンピオンシップなのかわからなかった。 さらに数年後の現在、前作のレビューを完了した後にこのゲームの情報をネットで調べたが、難易度の高さについては文章で書いてあるものが多く、このゲームの難しさがあまり伝わらなかった。

そんな少し前、ロードランナーをレビューするにあたり、プレイのほかに動画サイトで他人のプレイ動画で、その面白さを体験することにした。 そのうってつけが、YouTubeではなく日本人になじみやすいニコニコ動画で、ニコニコならそれの動画などいくらでもあるなと思っていた。

だが、私の予想はそれをはるかに超えるものだった。もちろん、落胆ではなく感動のほうだったが。 というのは、チャンピオンシップの動画が投稿されていて、それも50面全ての他にテクニックも惚れ惚れするものだった。

元々、ゲームの腕が下手な私にとってそれらの動画はかなり憧れの的であり、私もこのテクニックが身につけられたらと思ってしまった。 ロードランナーのレビューとプレイに没頭できたのも、全てはチャンピオンシップのプレイ動画のおかげであり、その勢いで続編のレビューとプレイも一気に続けてできた。

しかしそこはチャンピオンシップ、解答例がない状況下いわゆる自力での解答は不可能に近かった。 そこで、ネット上の攻略サイトやニコニコ動画でのプレイ動画を参考にして最初からラストの50面までやってのけた。

前作ではやや困難だった時間差崩しは、ランナー君自身の速度とレンガを掘る速度が増したことで楽にできた。 その代わり、ロボットの頭の上に乗りつつロボットの動きに合わせて動かなければならない場面が極度に増し、ロボットの頭上で攻略するランナー君はさながら曲芸師のように見えた。

そういえばアイレムで、ディスク版が2作とも発売されていることは既に知っていたがいまだプレイしていない。 しばらくしたらプレイしてみようと思うが、ロードランナーといえばハドソンというイメージがあるので、それに負けない面白さがあるか不安ではある。



本日のまとめ



答え:レンガ、ブロック、レンガ、ブロック、ブロック、ブロック、ブロック、はしご

(08/5/2レビュー)
伝説のスターブロブ2への掲載:2019年5月31日
◆目次に戻る◆


inserted by FC2 system