◆蒼き狼と白き牝鹿・元朝秘史◆
蒼き狼と白き牝鹿シリーズ第3弾



発売日:1993年3月25日   発売元:光栄   ジャンル:SLG
値段:11800円   おすすめ度3.5(忠誠度の存在がない恐怖)


『上天より命ありて生まれたる蒼き狼ありき…。その妻なる惨白き牝鹿ありき…。大いなる湖を渡りて来ぬ…。』

これは、蒙古の地に伝わる古い伝説で、ある民族の祖先において男が狼で女が鹿であることを物語っている。

極東の島国日本で、馬を操る『侍』と呼ばれる戦士の階級が台頭し始めた12世紀の中頃、ユーラシア大陸のやや中央に位置するモンゴル草原にも、騎馬を巧みに操る猛々しい民族がいた。 『蒼き狼と白き牝鹿』より生まれた彼らが草原を割拠し、同じ遊牧民族ながらも近辺の強国である遼と金によって果てしなく争うこの頃、ある一部族長イエスゲイの下に男児が誕生した。

赤子はその小さな右手に、王の証たる凝血を握り締めていた。イエスゲイは、昔討ち果たした敵将の名を子に与えた。その名はテムジン…。 厳格な父イエスゲイと聡明な母ホエルンの手により、テムジンはたくましく育てられた。眼には火あり面には光あり、と人々は噂した。

だが、突然の不幸が一家を襲った。イエスゲイが、テムジンの婚約を取り決めようとした矢先、宿敵タタル族によって毒殺されたのである。 争いの絶えないこの草原では、「強者の庇護なしには生きてはゆけぬ」と、部衆達の多くはテムジン一家を見捨てて去っていった。 逆境にあって、母ホエルンは子供達に自分達の協力の大切さを説く。母の苦労を知ったテムジン達は、不屈の精神で困窮を乗り越えていった。

そんな中、テムジンの成長を知った他部族の多くは、彼によって将来に禍根を残すことを恐れ、執拗に彼の命を狙い始める。 『雛の羽伸びけん、子羊生い立ちけん』と…。特に、イエスゲイによって傘下に置かれていた部族は、テムジン抹殺に躍起になっていた。

結果、かつては父イエスゲイの勢力下にあったタイチウト族々長タルクダイの手によって、テムジンは生け捕られ虜囚の身となった。 だが、タイチウト族の営屯地に住む老人に助けられ、テムジンは辛くも脱出した。自分が、孤立無援でないことを悟るきっかけでもあった。

家族と無事再開したテムジンは、部族を問わず自分にとって信頼できると思わしき仲間を集め始めた。 ボオルチュ、チラウン、チンベなど…、後にテムジンの軍団の中核をなす彼らの登場により、営屯は次第に活気を増していった。

さらに、オンギラト族の娘ボルテとの婚姻…、かつて父の親友だったトオリル=ハーン(ワン=ハーン)や盟友ジャムカとの連合など…、テムジンの間に雄飛への野望が芽生え始めた。 かくて、モンゴル高原に割拠する族長の一人として、ようやく自立できたテムジンこと後のチンギス=ハーンは、モンゴル統一の覇者への第一歩を踏み出したのである…。


かつて『光栄歴史SLG三本柱』の一角であった『蒼き狼と白き牝鹿』シリーズの第3弾にして、FCにおけるシリーズ最終作。 同時に、光栄が送り出したFCソフトの最後の1本でもあり、以降任天堂系ハードへの移植作品SFCにシフトした。

前作は、『信長の野望』や『三國志』に強い影響を受けながらも、命令回数の存在やそれに輪をかける国王のステータスの減少、 それを補うように国王や家臣のステータスを訓練で限界(999)まで上昇させるなど、それらの歴史SLGとは一線を画していた。 舞台が、日本や中国大陸だけという小ささではなく、主にユーラシア大陸とその周辺であったため、そのスケールの大きさも群を抜いていた。

そして何より、オルドによる世継ぎの重大さや后達を複数所持できること(ハーレムか側室に近いらしい)、 后の中には別の妖艶なグラフィックでプレイヤーを惑わすキャラもいたし、一人だけ見当違いのブスがいたもののバラエティ豊かだったことに変わりはなかった。

そのせいか、本来の意味であるオルドを『宮殿』ではなく『ハーレム』と勘違いする人が続出し(今も勘違いしている人が少なからずいる)、 歴史SLGであるこのゲームを斜め上から見させる結果となってしまったようだ。


知名度も、発売日や作品において当時歴史SLG三本柱の2番手に位置しながら、舞台や強力な原作などを持ち合わせていなかったためか低かった。 第3弾発売も、前作発売から5年後という遅さで、この時期には既に信長の野望は本シリーズが4作でオリジナルのGB版が1作、 三國志は本シリーズが3作でGB版が1作というラインナップを固め、蒼き狼と白き牝鹿が完全に出し抜かれることになった。 逆に言えば、開発スタッフがそれほどまでに年月をかけて制作したためといえる。

同時に、これだけ年月が経過したことは、歴史SLG三本柱以外にも様々な歴史SLGが発売されており、システムも昔のSLGとは便利なものが導入されていた。 しかし、荒削りな前作を好む人が多かったのも事実で、スタッフとしては他作品のシステムを取り入れつつ前作のシステムをできるだけ残しておき、 さらに今作独自のシステムを追加して今までのファンのみならず新規のファンを取り込もうとする姿勢をあらわにしている。 こうして1992年、シリーズファンにとって待望の第3弾が登場することになった。


基本的な内政と軍事のシステムと手順は、前作でほぼ確定されているためここで言うべきことはなく、前作で可能だった戦略がほぼ使える。 町や兵力などの配分を国ごとに行い、たまにやってくる商人を有効に活用しながら、訓練や徴兵などの軍備をやって、戦争で領土を広げていく。 国王が志望して、国が滅亡する自体を避けるためにオルドに通って子を増やす。

それだけで、ある程度の戦略は立てられるが、逆に前作のファンの一部には無味乾燥という批判があると予想したのか、その基本システムにもいくつか新しい要素が追加された。 まず1つに気候の導入で、プレイヤーなら学校で習ったであろう熱帯気候や地中海性気候などが登場し、住民配分に微妙な影響を与えるようになった。

例えば、日本のような農業が盛んで特産品が高価な国では、畜産を0にして農業や特産品を多めに配分したり、 乾燥気候などだったりモンゴルのような土地が痩せた国では、畜産品を重視するやり方が基本となった。


今作から登場する文化圏も、経済の発展に影響するようになり、軍備にも特徴的な兵科の登場により、一層事細かになっている。 つまり、文化圏独自の兵科が存在していることで、文化圏以外で使うならば商人からそれを傭兵として雇うしかなく(または移動)、 兵科の強さで考えれば蒙古騎兵と武士がトップクラスの能力を秘めているため、戦争を有利にしたければモンゴルか日本を選べばいい。

経済の発展は、当時の情勢を反映して中国とイスラム諸国が高くなっている一方で、 貨幣経済が発展途上だった日本とそれなど関係ない地域(主にモンゴルなど)は発展の度合いが鈍くなっているものの、 日本は特産品が高値で売れる絹なので、兵科が武士であることと周りの国が弱いということも合わせて、前作同様プレイのしやすい国になっている。

国王や家臣のステータスは、数値から『ランペルール』のABC段階に変更されたことで、前作よりわかりやすくなった一方で訓練は兵を鍛えるのみになっている。 訓練で、BからAに上がったのでは強くなりすぎて淡白になると考えたのだろう。以降、他の歴史SLG同様最初から登場人物の数値が決まる仕組みになった。


国の政策の実行回数も、前作の回数制から国王の体力と実行における消費で決まり、主に体力が高い王が政策を有利に運ぶことができるようになっている。 もちろん、体力が高くてもその他のステータスが低ければ宝の持ち腐れに近く、体力が低い王でもその他のステータスが高ければある程度カバーでき、最悪家臣に任せることも可能。 国の状態や気候などを見極めれば、国の運営は十分軌道に乗せることができる、世界スケールというスタンスは変わらないものの、前作にあったゲームの荒さは身を引いている。

とはいえ、体力が高い王ほど政策が多く実行でき、それは体力を多く使うであろうオルドのほうが影響に出やすい。 しかも体力は、老化による体調不良により最大体力が減り、それが近づくにつれて寿命が近づくため、前作以上に子作りに専念しなければならない。

オルドにしても、后の性格や感情によってその時の王の行動が無駄に終わることもあり、何より新たに導入された愛情度(后の顔グラフィックの上にある)を 最大にしなければオルドは成功しないという、ある意味命がけの後継者作りといえる。

さらに、前作では何人かの后のグラフィックがオルドの時には妖艶なものに変わっていたが、今作からそういうものはなくなり 新たにどこぞのドラマのワンシーンを思い浮かべる一枚絵が追加されたが、前作の刺激の強さに親達が反発したためなのだろうか。


戦争においても、『行軍』と『部隊戦闘』の2シーンに分けられ、前者は一般的なSLGの戦争シーンだが、後者は敵部隊と戦闘するとそれに切り替わる。 1部隊につき最大4つのユニットが出撃可能で、最大5部隊では20ユニットが出撃できる。

そして、1画面に様々な障害物を配置した戦場で敵味方が激しく争い、戦闘か退却でどちらかの部隊が0になるとそれは終了し、 国王(または領主)の部隊を全滅させれば自動的に勝利となり、10ターン経過しても勝負がつかなければ自動的に行軍マップに戻される。 兵科によって、弾数制限ながらも遠距離攻撃があり、やはり(国王とは別の)体力によって行動が限定されるため、どの部隊を優先的に攻撃するかもこの戦争の醍醐味でもある。

弓騎兵が全体的に強力だが、地形などで移動が邪魔されると投石器や火砲兵の餌食になることもあるので、 弱い兵科でも地形によって十分勝てることを実証するこのゲームでの戦争は人気を集めたのか、続編にも十分生かされている。

ただ、行軍における伏兵や遊撃などの個性があまり生かされておらず、 戦闘においても計略で戦闘を有利にするものはない(攻撃で混乱した部隊を回復する程度)ため、慣れてくるとやや物足りない感じが出てくる。 したがって、戦闘が強い家臣を立てて集中的に国王か領主の部隊を叩けば、大抵勝利する可能性が高いことも、戦争自体がやや物足りない理由の1つでもある。

さらに、CPUはどの国も好戦的であるため、隣接する国が別の国に攻め込んだときが戦争の勝利の可能性をさらに高めるため、 場合によっては国王を出さずとも4ユニットの部隊1つだけで勝利をつかむこともできる。

もっとも、国王以外は数値による戦闘で行われるため、さすがに無味乾燥というわけではなく、逆にこちらがやられるあたりも面白い。 しかも、CPUはそれを防ぐためか序盤から隣接する国が、こちらに同盟の締結をしてくれるため、 喜んで結ぼうなら災害や戦争で疲弊になった時を逃さず攻め込むことができず、プレイヤーの読みを見透かしたような憎たらしい演出をしてくれる。

そう簡単には勝たせてくれないというスタッフの思惑が動いており、ならば国王で出撃させて1ユニットだけを国王の能力で強くするも、 怪我で国王の体力が削られることもあり、最悪0になって戦死した挙句そのときに世継ぎがいないために国が滅亡という緊張感も維持している。


話を変えて、選べるシナリオとその年代の国王や国家だが、前作ほど知名度を重視せず史実を重視しているのがうれしいところ。 前作の世界編にあたるシナリオ2では、新たにゴール朝やホラズムやフランスが追加され、元朝初期が舞台となるシナリオ3も登場、もちろん主役はフビライの治める元である。 鎌倉幕府や復興したビザンツ帝国、イル汗国やマムルーク朝や両シチリア王国もプレイでき、1シナリオにつき6つの国が選べる基準となる。

前作のモンゴル編にあたるシナリオ1では、ジャムカやトリオル=ハーンやダヤン=ハーンも選べ、 ジャムカでモンゴル統一もここでようやく可能となり、ダヤン=ハーン以外の3人は続編で引き続き国王の座についている。 シナリオ1をクリアして、家臣や子供や后を連れて行くことができるのも前作同様だが、家臣を選べたりクリアした翌年から世界編に移行できることは、前作の不備を改善した結果といえる。 当然、ダヤン=ハーンでクリアして彼が世界中の王と対決するのも面白い。

ちなみに、モンゴル編後のシナリオはモンゴル編をクリアしたときにシナリオ選択画面に現れるため、モンゴルの国王以外でプレイしたいという人にも気を配っている。 その場合、年代が1185年で前作の世界編で選べる国に、新たにアイユーブ朝と神聖ローマ帝国が加わっている。

世界編のシナリオによって、プレイできる国が変わっているため、主役のモンゴル勢と日本以外はシナリオによって選べないのは、 その時代の国が輝いていたことと容量の限界なのだろうか、相変わらず中国といった他の国がプレイできないのはなんともさびしい。

最後に、このゲームに出てくる家臣で、ステータス以外の特徴的な設定について書いておく。 一般の歴史SLGにおいて、配下が出てくる場合は必ず忠誠度、またはそれに近いステータスを表示するが、このゲームには忠誠度という概念がない。

しかも、国王がいる国以外は委任で行われるため、血縁武将以外では誰でも裏切る可能性があり、 自分の勢力が大きくなればなるほどその可能性が大きく、最後までだれることなく緊張感を維持できるゲームバランスを持っている。 もっとも、属国を自分で動かしたい人にとっては不評であり、シリーズ第4弾で再び忠誠度を登場させたことを考えると、結果的に失敗だったといえる。


蒼き狼と白き牝鹿シリーズの中で、家庭用に移植されていない初代を除く3作品の中で、私の中では一番知名度が低い。 今のところ最新作である第4弾(PC版)を、10年近く前にプレイしている最中に第3弾があることを知ったのだから。

しかもそれはPS版であって、FC版となると今から5年近く前に知ったばかりで、第4弾が面白くかつ最高傑作だったため第3弾をプレイする意欲などなく、 初めてプレイしたのが1ヶ月前で、それもニコニコ動画で光栄作品のOP集を見てプレイする意欲が沸いてきたに過ぎなかった。

とりあえず、SFC版ではなくFC版をプレイすることにした私だったが、いきなりモンゴル編でプレイしたのがまずかった。 攻略サイトで、気候における住民の配分などを学び、前作をプレイしている自負もあったことで序盤はある程度進むことができた。

しかし、肝心の商人がなかなか現れない上に、気候が気候で食糧がある程度貯まるのはいいのだが、ようやく商人が来たときには相場が下落しているため、売る機会を逃してしまうこともあった。 何より、モンゴルの4勢力とも統一が狙えることがあるし、特にテムジンはジャムカと接していることもあって、いつ進行されるか冷や冷やしながらプレイしてじっくり領土を広げていった。


15年かけてクリアしたのはよかったが、さすがに世界編に向けるとなるとつらすぎたので、新たにシナリオ2と3でプレイした。 もちろんプレイするのは鎌倉幕府で、商業こそあまり発展していないが、気候ゆえに食料が多く取れることと希少価値が高い絹が多く取れるため、内政や軍備がある程度軌道に乗せることができた。 さらに、商人がほぼ毎月来てくれる上に相場も高値安定になっていたので、絹や食料を売って武士を徴兵して訓練させた。

さすがに、傭兵はその相場ゆえに高くて手が出せなかったことと、訓練は武力が低い(全体的に能力が低い)実朝だったためそこは苦労したが、 ある程度それが軌道に乗りすぎたのは2のほうで、兵力が貯まって訓練も限界に近くなったところを、武力が高い家臣1人と他2名を差し向けてユーラシア東半分を蹂躙していった。

家臣も、他国の武将を捕まえることでそれほど苦労することなく人材は貯まり、人事の登用で家臣を増やせることを知ったのは、 プレイして10年後にユーラシア大陸の半分を支配下におさめた頃だったのが恥ずかしくもややむなしい。

その頃には、既に実朝の子供に王位(将軍の位か)を譲って世界支配を進めたが、そのときの子供がまだ10歳だったためオルドにいけなかったが(オルドは13歳から)、 さすがに年端もいかぬ子供がオルドに通うことは教育情よろしくなかったのだろう。



本日のまとめ



おつかれさまでございました

(08/2/25レビュー)
伝説のスターブロブ2への掲載:2019年5月28日
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