◆ロイヤルブラッド◆
宝石魔術師と魔物と傭兵



発売日:1991年8月29日   発売元:光栄   ジャンル:SLG
値段:9800円   おすすめ度:4.5(魔物が人間の僕になる日)


はるか遠い昔、七つの海の果てと言われる異郷の小さな島に1つの国があった。 『イシュメリア』、…妖精が人間の瞳に映り、モンスターが暗い森に生を営むこの国を、いつしか人々はそう呼んだ。

イシュメリア草創記、邪悪な魔術師が召喚したドラゴンによって、世界は暗黒に包まれた。 この時、守護竜パスハが6人の魔術師と共に、邪悪なドラゴンを封印した王冠が世に出る。 ドラゴンの眠る紅玉と、魔術師が変化した宝石を頂く権力の象徴、人はその王冠を『ロイヤルブラッド』と呼んだ。

この王冠は、所持者であるランカシア王家に代々伝わり、その王冠の力はイシュメリア全土を長い間平和に保っていた。 だが、王冠の力は絶対的な権力を持つほどにまで強く膨れ上がり、時の国王エセルレッドの心を狂気の色に染めた。 暴君となった父の姿を見て嘆き悲しむ王女アヴェールは、ある夜彼女の心に語りかけてくるパスハの優しい声を聞いた。

「今やロイヤルブラッドは、神すら凌ぐ力を持ってしまった。ここは今一度王冠を解き放ち、 宝石魔術師の助力を願うほかない…、アヴェールよ、乱を治める英雄を求めて、宝石を夜空に放つがよい。」

かくて、ロイヤルブラッドの封印は解かれ、まず6つの宝石魔術師が夜空のかなたに向けて飛び立っていった。 隕石を司るミーティアはライル家の当主レッドワルドに、雷を司るサンダラスはブランジェ家の当主エランに、毒を司るポイズンはモーブル家の当主レアンデルに、 炎を司るフレイムはコーラル家の当主ランフランクに、風を司るマシェーティはフェリアス家の当主イリアスに、氷を司るチルはクリサリスの当主ガッシュへと、 エセルレッドの狂気によって終わったイシュメリアの平和を託すため、それぞれ実現できると思しき勢力に組していた。 元々は、イシュメリア内で己の勢力争いに固執するだけだったが、宝石魔術師達の呼びかけに応じエセルレッドと対決する姿勢を固めた。

だが、全ての宝石を解き放つ前にアヴェールは捕らえられ、城の奥深くに幽閉されてしまった、強大なドラゴンを王の元に残したまま…。 そして、自由にドラゴンを召喚できる王冠を得た狂王エセルレッドは、遂にイシュメリアの軍事統一作戦を開始した。

「愚かなる貴族ども、宝石魔術師の力を借りても無駄なことよ!!偉大なるエセルレッドの力、思い知るがよい!」

王の邪悪な野望を打ち砕く力を持つのは、6人の宝石魔術師を従え邪悪なドラゴンを倒し、新たなロイヤルブラッドを得た者のみ。 囚われの王女アヴェールの涙に応えて、気高き貴族達の多くは剣を手に取り立ち上がった。 ここに、長きに渡るイシュメリア全土を包む聖戦、イシュメリア聖戦史が今始まろうとしていた…。


光栄が送るSLGの1つだが、お得意の歴史SLGではなく『イマジネーションゲーム』という、一風変わったスタイルのSLGとして登場させ、今作はその第1弾に該当する。 今作品がイマジネーションと呼ばれる理由は、イマジネーションという意味が感情移入や想像などを参加者の思いに任せるというもので、 世界背景もアイルランドを舞台としたケルト神話で、今作の舞台もアイルランドをイメージされたイシュメリアである。

また、登場人物も全員オリジナルで、同じオリジナルの人物が大量に登場した一方、世界設定は16世紀初頭の世界を舞台とした『大航海時代』と比べれば、 オリジナルの世界を組み合わせることにより、歴史SLGともリ・コエイションゲームとはまた違ったスタイルのゲームを生み出した。

SLG以外のジャンルはともかく、今までの光栄SLG全て史実の設定を取り入れているため、オリジナルの世界観だけのSLGというのは初めてだった。 先にPC版が発売されたものの、本来はFC用に制作されたものと思われる。

値段が、今までの11800円ではなく9800円なのがその証で(消費税を含めれば相変わらず1万円以上になるが)、 久々に定価が1万円を割り込んだことは、子供がメインユーザーであるFCに狙いを定めたといえる。

FCユーザーをメインに選んだということは、このゲームのシステムもFCにあわせているということで、光栄らしからぬ領土の政治の簡略さを推し進めている。 FCのSLGの多くは、PCのSLGのような細かい数値や設定などを省き、あえてFCユーザーにわかりやすくFCの性能に見合ったゲームを作り出している。 代表的なのが、『ファミコンウォーズ』と『ガチャポン戦士』シリーズであり、PCのSLGの細かい要素を省いて詰め将棋の感覚などを出したことで、一気に大ヒットになることができた。

一方の光栄作品、大人向けのPCにSLGを提供したことにより、そのSLGは数値やシステムなどが事細かく配備され、結果SLG初心者にはわかりづらいものになってしまった。 FCに移植しても同じことで、ある程度要素を削除してもまだわかりにくく、PC版に近い高評価は得られたものの、他のFC発のSLGと比べれば高いとは言い難かった。

光栄側としても、国民的ハードであるFCを有効活用する以上、大人向けのSLGをFCに移植するだけではだめだということに気づいたものと思われる。 『もっと、子供達やSLG初心者にわかりやすいSLGを!』そう思ったのかもしれない。


このゲームの目的は、王冠ロイヤルブラッドを復活させるというあらすじはあるものの、30ある領土全てプレイヤーのものにすることに変わりはない。 ただし、国のステータスが簡略化しているため、内政や軍備がやりやすくなっている。 ここでは内政を『民政』と呼ばれ、今までの歴史SLGにあった商業などがなくなり、軍備では部隊編成や訓練がなくなっている(PC版にはあるらしいが)。

開発の金額にしても一律金10で行われ、民忠誠度と開墾度と治水度は全て最大100に収められ、9月の収穫はその3つのステータスにより金と食料の収入が変わるだけになっている。 要は、開発をして収入を得て、兵士を雇って敵に攻め込むだけという単純なもの。

毎年4回、それも3の倍数の月にはかなり高い確率で災害が発生するので、前の月にセーブして翌月に食らってしまったら即リセットというやり方ができた。 とはいえ、その月1回ではなく2回来ることもあり、なかなか憎たらしい。


しかし、一般のSLGの政治と違う点は、それを何度も実行していくと様々なモンスターや神々が、その地域を支配している領主や地域に祝福してくれる。 それは、民政を何度も実行すると高い確率で現れるというもので、確立ゆえにあまり期待できないが恩恵を不意に受けると心なしか幸せな気分にしてくれる。

これを祝福イベントと呼ぶ一方、軍事を毎回実行すると内政の恩恵を与えるモンスター(ラッキーモンスター)とは別のモンスター、 つまり物語で人間に害悪を与えるモンスター(イーヴルモンスター)が、物語同様に領土に被害をもたらす。

つまるところ、民政を多めに軍事を少なくやれば国力が自然と上がっていくのだが、兵(傭兵)を雇って他の領土に攻め込んだり防衛したりしなければならないし、 ステータスが全て100になってしまったら民政でやることはほとんどなくなる。

結果、軍事などを多くやることが多くなり、民政をやりすぎたツケが一気に降りかかるということになるため、 『民政だけでは統一はできない、軍事も必要』ということが求められ、単純ながらもSLGマニアに喜ぶシステムを備わったといえる。

特にトルディン家は、強国と接している上に家臣もわずかしかいないので、民政より軍事を実行する傾向を強めさせ、 かえってイーヴルモンスターを呼び寄せる結果を招き、滅亡寸前の危機にいながら民政を行わざるを得ないというジレンマが、上級者を喜ばせることになった。


戦争もいたって単純、相手陣地を奪うか敵部隊を全滅させることで勝利し、部隊も最大5つ編成でき1つ1つ役割分担が決まっており、 移動を阻む柵の設置やユニットの向きによる有利不利、第3部隊である長弓兵部隊の遠距離攻撃など、詰め将棋感覚ながらもなかなかに奥が深い。 雇った兵を訓練で鍛える必要などないため、兵力が多い勢力が原則的に勝つことになっているので、普通は「味気がない」という批判が展開されるはずである。

だが、ある要素の登場により味気ないはずの戦争は、逆に加熱し軍事にも飛び火する。 それは第5部隊の存在で、この部隊だけこちらの正規軍以外の者で編成されているためだ。 傭兵を雇ったり、何とモンスターをもこちらの手駒として契約することができる。

そのモンスターの多くは、ファンタジー作品で有名な悪役達で、基本的にやられ役である彼らを逆に有効活用するあたりはかなり新鮮だ。 地域によって雇えなかったり、契約金が支払われないとその領土を荒らすなどという欠点はあるものの、正規軍と比べれば能力は高く使い勝手はいい。 傭兵も、契約金が高くたまに離反する欠点はあれど、能力はモンスターより高くモンスターに慣れた人用といえるのかもしれない。


しかし、モンスターや傭兵以上に仕える存在がある、6人の宝石魔術師がそれ。 シナリオによっては、それを所持しない勢力があるものの、シナリオ1では全ての勢力が必ず宝石魔術師を1つずつ所有している。

傭兵やモンスターと違って、金がかからずそれでいて強力な者ばかりで、特にミーティアとサンダラスは宝石魔術師の中でも最強クラスで、 それらを所持しているライル家とブランジェ家は家臣の数や能力、領土のデータやその領土の数とあわせて常に初心者に扱いやすい勢力である。 欠点は、それを使うと2ヶ月間戦場で使用できないため、1つの勢力で共有できる分あまりあてにはできないが、第5部隊の切り札として使うとかなり活躍できる。

他の宝石魔術師を所有する勢力や、邪悪なドラゴンを所有するランカシア家と戦うと、地味に見える戦闘シーンが熱く見えるのだから面白い。 その場合、相手との激戦は避けられず勝っても多大な被害を被るため、兵1で侵攻し宝石魔術師やドラゴンをおびき寄せて撤退する手法がとられたが、これは少々卑怯ではある。 この他、祝福イベントで一度だけ戦力にできる守護竜パスハも切り札としては十分。


このように、このゲームは初心者のみならず上級者もとりこにし、FCの性能を最大限に活用したゲームを生み出すことに成功した。 同時に、光栄SLGの隠れた名作として名をはせるようになったが、 『隠れた名作』と呼ばれるようになったのは続編が8年後という長い間発売されなかったことと、それ自体今も家庭用ハードに移植されていないこと。 初代も、発売時期がSFCの人気に押され始め、結果的に知名度が低くなってしまった。

わずかな要素を取り入れ、『SUPER』と冠してSFCやMDにも移植されたが、 光栄が満を持して送り出したスタイルであるイマジネーションゲームがロイヤルブラッドシリーズだけということも、 知名度低下の要因の1つらしく、ゲームそのものはある程度成功を収めたものの、新しいスタイルの立ち上げには完全に失敗したといえる。 さらに付け加えると、光栄が作り出したFCメインのSLGは今作だけである。


それでも、このゲームの世界設定は目を見張るものがあり、大元であるケルト神話と中世の世界観、 数多のファンタジー作品などを色々合わさってそれらをメインとしているものの、傭兵の大砲や小銃装備といったどこか近代風を思わせるものも出ており、 剣と魔法のファンタジー一色とは一味違う世界観を作り出している。

勢力の人物1人1人にも、これでもかというくらいこと細かく設定されており、それらはPC版ご用達であるハンドブックに収められているので、 攻略本自体もあまり発刊数が少なかったようだが、古本屋で見かけたらぜひ入手してもらいたい。

ちなみに、家庭用ハード専用の攻略本であるガイドブックは発売されなかったが、 前に書いたように今作はPC版とFC版がほぼ同時進行した上でFCユーザーメインに作られたため、 PC版ながらも家庭版にわかりやすい形の攻略本を制作したのではないだろうか。

もっとも、ハンドブックはPC版専用とあるものの、家庭版にも十分攻略に活用可能で、家庭版専用攻略本にはほとんどないコラムも載っているため、 光栄関連の攻略本はコラムが多く奥が深いPC版と、攻略メインの家庭版共に読み応え十分である。

なお、5年後に『爆笑ケルト神話』なる書籍を発刊しているが、おそらくこのゲームのカルト的な人気に目をつけたものと思われ、 この書籍発売のさらに2年後に続編が発売されたことは、わずかながらも関係しているのではないだろうか。


この作品、私がプレイしてみたかった中の1つで当時のファミマガで知ったのだが、その記事が私のプレイしたいという意欲をかきたてた。 SFC版にも、特集記事があったらしいのだがそれは忘れてしまっていて、いんしょうにのこっているのはFC版だけだった。

どちらにせよ、9800円というのは1990年以降の11800円ほど高くはないものの、それでも高値であったことは言うまでもなく、 当時プレイしてみたいと思ったゲームは高値や長い年月の経過などにより、一気に興味や意欲を失わせていった。

現在、ニコニコ動画で光栄作品のOPを見て突発的にプレイしてみたい作品がいくつも見つかったが、ロイヤルブラッドもその中の1つだった。 早速、近くのゲームショップで箱と説明書付きながらも中古で980円という破格の安さで購入。

しかしハンドブックだけは、古本屋などを色々回ってみたものの8件目に回ったであろう、 小山の二木ゴルフのずっと先の大通りにあったブックオフにてようやく購入することができた。 こちらも200円と破格の安さで、隠れた名作ながらもどうして安く手に入れることができたのかと不思議に思ったが (こういう作品はやや高値で取引されるらしい)、どちらにせよプレイの準備はできた。

まずプレイして驚いたのは、光栄作品らしからぬ内政と軍事の簡略で、領土のステータスもわかりやすく簡略されているのを見て、 逆にどうすればいいのかちょっと戸惑ったのは笑い話にもなる。 何せ、軍事の代表の1つである『訓練』がなかったので、どうすれば戦争に勝てるのかもし敵が攻めてきたらどうしようかとも考えた。

シナリオ1では、最大の敵ランカシア家が南半分の領土をほぼ制圧していたためで、南半分に位置していた他の勢力がランカシアに押しつぶされ、 謀反でいくつか穴が開いたとしてもすぐ攻め取ってしまうため、はたしてこんな勢力に勝てるのかと不安でならなかった。 シナリオが進めば、多くの勢力がランカシアよりも大きくなるのだが、その場合年代が進んでアヴェール王女が老けてしまうので、 苦労してでもシナリオ1でクリアしようと考えた。

やはり私は、祝福イベント狙いで民政ばっかりやっていたため、軍師扱いである相談役(領土を任せる家臣ではない)の助言など全く無視した結果、軍事関連は結局後回しになってしまった。 幸い、取引や輸送でつなげていったおかげでイヴールモンスターは登場せず、3ヶ月に1回ほぼ必ず出る災害を見抜いてリセットを繰り返した。 災害と謀反で、ランカシア家の北への進出がかなり鈍くなったのも幸いしたのだろう、戦争でも第5部隊を有効に活用した。

主に宝石魔術師だが、使えないときは傭兵で間に合わせにはモンスターを有効に活用していたが、 祝福イベントでパスハの援軍が何度も現れてくれたので、運の関係もあろうがどうもモンスターを多く活用できなかったのが心残りである。



本日のまとめ



おぬしのすきにせい まず まちがいはないじゃろう

(08/2/23レビュー)
伝説のスターブロブ2への掲載:2019年5月28日
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