◆水滸伝・天命の誓い◆
一癖も二癖もある連中総出演



発売日:1990年6月29日   発売元:光栄   ジャンル:SLG
値段:11800円   おすすめ度:4(仲間と共に要塞建設を楽しむ)


時は12世紀初頭、中国の王朝北宋の時代の末期においてのこと…。 皇帝は、8代目となる徽宗前の皇帝の兄が死去したためについたものの、北宋は北方の騎馬民族の契丹族が建国した遼や同じ騎馬民族でタングート族が建国した西夏、 後に金を建国する女真族にいつも悩まされ続け、特に遼は燕雲十六州を奪った憎き存在であった。

また内側に目を向ければ、王安石を筆頭とする新法派と司馬光を筆頭とする旧法派の対立が激化、 次第に両者は北宋を救うことよりも己の政治の実権を握るための醜い争いに固執してしまい、後の『新法・旧法の争い』と呼ばれるようになり、 そのさなかの民衆の暮らしは国政の混乱により悲惨を極め、建国して150年になる北宋の滅亡の足音がにわかに動き出していた。

そんな混乱の中、一人の男がその隙を突いて北宋の政治を牛耳ることになる。その名は高キュウ(こうきゅう)。 音楽や棒術などの芸を数多く所持していた彼は、その昔数多くの悪行を重ねて禁軍に捕縛されていたことがあった。

後に、徽宗に自分の最も得意とする蹴鞠を披露した際、偶然にも徽宗の気に入られるところとなり、その腕前だけで出世し最終的に政治の実権に関与するまでの地位を得るに至った。 そして、蔡京や童貫といった高級官僚と結託し、徽宗を隠れ蓑をいいことに政治を思うがままに操り、彼に逆らうものは容赦なく弾圧していった。

ここにおいて徽宗は、自分が北宋の癌と呼ぶべき存在を重用したことに大いに後悔することになった。 何としてでも、高キュウらを政治から排除し徽宗自らの指揮による政治を行わなければという意気込みを新たにした。 だが、政治の実権が彼らにある以上うかつに手出しができず、そうしている間にも高キュウによって北宋は一層の危機を迎えることになった。

そこで徽宗は、高キュウを倒してくれる人物の登場を期待し、その実力が備わったものには非公式に高キュウ討伐の勅許を出すことにした。 その可能性を秘めているのは、林冲・武松・魯智深・楊志・史進・晁蓋・李俊・宋江・李逵・李応ら無頼漢の連中で、 彼らの多くはかつて天界より追放されし百八の魔星の生まれ変わりであり、そのうちの36は天こう星(てんこうせい)で残りの72は地さつ星(ちさつせい)と呼ばれた。 同時に、大部分が高キュウによって迫害を受けており、彼らはいつか高キュウを打倒し北宋を元の秩序ある国家に戻そうとしていた。

義兄弟として、時には戦いながらも真の目的が一緒であったことを知り、無頼漢憧れの要塞梁山泊に次々と入山。 最終的に、百八全員そろった梁山泊は天魁星の宋江をその首領に仰ぎ、高キュウ軍や祝家荘などと死闘を繰り広げていくことになる…。


光栄の歴史SLGの1つで、中国四大奇書の1つ『水滸伝』をテーマにした作品で、長い間中国や日本はもちろん欧米でも親しまれてきた物語である。 内容は、北宋の政治を牛耳る悪大臣高キュウらを退治すべく、彼らやその配下達によって迫害を受けた無頼漢108人が梁山泊集結するというもの。

途中、高キュウ配下の他に祝家荘などの勢力、さらには方臘軍とも戦わねばならず梁山泊軍は次第に瓦解していき、 最終的に激戦を生き残った者達はそれぞれの余生を送る一方で、北宋を我が物顔で振舞っていた高キュウら四奸臣は実質お咎めなしとなり物語は終結する。

言わば『正義は勝つ』ならぬ『悪は勝つ』というもので、読む人にとっては何かと心が重くなるものだが、二次創作である『水滸後伝』の四奸臣は因果応報の末路をたどったり、 史実でもそういう形の末路をたどったもしくは存在自体が希薄になっていたりするなど、読み手を安定させる事実は度合いは違えど数多く残されている。

この作品をテーマにしたゲームが、『水滸伝・天命の誓い』というタイトルとなって登場するのだが、 中国四大奇書の中で日本の場合金瓶梅以外はゲームもしくは映像化されているが、水滸伝ほどその昔強力な作品は存在していなかった。

今でこそ、コナので『幻想水滸伝』シリーズが人気を集めているが、天命の誓い発売当時において『三国志演義』では三國志シリーズや『横山光輝の三国志』が、 『西遊記』ではドラゴンボールなどが大ヒットを飛ばした一方で、水滸伝では知名度の高い作品があまりなく、原作の知名度自体他の作品と比べても高くない。 続編も、2008年現在第2弾の『天導一〇八星』登場以降その兆しは見られず、コーエー25周年記念パックの第6弾に初代のリメイクが登場したぐらいである。 もちろん、FCやPSなど様々な機種に移植されてはいたのだが。

ゲームにするといっても、一応歴史SLGに割り当てられているとはいえ、一般の歴史SLGの最終目的は全国統一が一般的だった。 したがって、水滸伝を歴史SLGとするならばどういう形でそれを証明するのか。

この作品自体、時代考証はされていても架空の物語で全国制覇するということなどないのだが、 このゲームには4つのシナリオがありそのシナリオによっては最大7人までプレイできるので、 物語が物語ゆえにリ・コエイションゲームの要素を組んだ歴史SLGといえるのかもしれない。


このゲームが、歴史SLGと決定的に違う要素の1つとして、このゲームの最終目的が全国統一ではなく、あくまで北宋の政治を牛耳る高キュウを倒すことが目的。 もちろん、全国統一などやろうと思えばやれるのだが、それをやると時間がかなりかかる上に、1127年になると女真族の金の大軍が北宋を攻めてきて、自動的にゲームオーバーとなる。

なぜかプレイヤーは金軍と戦えないが、恐らく金は朝廷の軍だけ相手にしているのかもしれない。 金と戦えないのがつらいところだが、これがこのゲームのタイムリミットであり、1127年までに高キュウを倒さなければならないという緊張感がおもしろい。

しかし、高キュウを倒すといっても彼は徽宗のお気に入りの立場である以上、高キュウの支配する地域には無断で攻め込むことができないし、 仮にできたとしても戦うのは実質的に朝廷の軍であるために、生半可な戦力で向かえば返り討ちにあう可能性も高い。

高キュウを倒す、つまり高キュウの領土に攻め込むには徽宗の勅許がいるわけだが、 そのためには主人公(好漢と呼ぶ)のステータスの1つである人気を250あげなければならない。 人気を上げるには、領土を開発するか戦争を起こして領土を広げる、または領土内にいる獣を退治して治安を安定するなど。


当然ながら、それをやっても人気は一気に上がらず、地道な行動をしてこそようやく徽宗がら勅許がもらえることができるのだから。 手っ取り早く人気を上げるのは、戦争を起こすか獣を退治するのだがどちらも危険が高く、獣退治では虎が一番強くそれも複数表れた場合、 腕力が低い人物に虎退治をやらせると逆に死んでしまう可能性が大きい。 それでも、できるだけ早く勅許を手に入れるためには多少の犠牲もやむをえないが、それでも己の人気を上げるには領土の富国強兵が欠かせず、運営にしても好漢だけでは成り立たない。

一般の歴史SLGにおける家臣が必要だが、ここでは家臣ではなく『仲間』と呼ばれる。 忠誠度はついているものの、仲間の大半が丁寧口調でしゃべることがなく、主にこちら側から仲間になるかどうか誘うことになっているので、 こちらが声をかけなければいつまでたっても仲間は増えないし、能力が高い者ほど仲間になりにくく彼らは人気の高さで仲間になることが多いので、 彼らを仲間にできることが高キュウ打倒の1つであり、仲間にできた感動は大きい。

初期に仲間にできるものの多くは能力が低いが、それでも仲間がいるといないとでは大きく、好漢とて全ての能力が高いというわけではないので(主に腕力が高く知力が低いものが多い)、 仕事によっては彼らにもそれなりの使い道があるのは面白い。


なお、一領土につき1回しか行動できずそれも好漢のいる領土だけなので(仲間が治めている領土は委任となる)、 初代三國志も同じようなシステムがあったので、それに慣れていればさほど面倒なことはないだろう。

領土の内政などを実行すると体力が消耗してしまうので、多く仲間がいたほうが領土運営がやりやすいし、戦争では武力が低くても訓練度や武装度が最大ならそれなりに戦えるので、 能力が低いキャラを前面に出してあえて壁とするのもいいだろう。 追放もできるが、全49地域あり武将の数は約250ほどと意外と領土をもてあますことになるため、ファンとしてはあえて手放さずこのまま大事においておくのが人情だろう。

一般の歴史SLGでは、主に必ず優秀な人材が最初から手元にありそれを優先的に使うのだが、最初にいる優秀な人材は好漢だけなので、 能力が低い人材でも長く使い続けることでいつしか愛着がわき手放せず、使い続ければ使い続けるほど彼らの能力が上昇し、 優秀なものにも引けをとらなくなるという好例で、歴史SLGでこの手法をとったのはこれが初めてだろう。


その仲間、能力によって強弱があるのは前述した通りだが、彼らには男女の性別や職業があり、 職業は無法者や漁師など政治とほとんど関係ないものがほとんどで、それらによって性格も個性的になっていて飽きがこない。 台詞も面白く、「人使いの荒い親分だこと」や「どうせ悪いことに使うんだろー」など、水滸伝の雰囲気を大いに出している。

それは、今作品の大悪人である高キュウにも当てはまり、好漢の人気が低い状態には部下を差し向けて領土の金品を奪ったり、 高キュウの領土と接している場合は「攻め込まれたくなければ金をよこせ」とたかったり、とにかく悪逆非道なことを平気でやってのける。

小馬鹿にする程度はたまにしかなく、せっかく安定したのに高キュウが邪魔をするところは、 終盤こちらが強くなってだれてしまうのを防ぐ意味合いがあるが、プレイヤーとしては早く人気を上げて高キュウを倒したいと思うだろう。

なお、好漢の多くはシナリオの年代をさかのぼるほど領土を持っておらず、言わば高キュウに追われる形での『逃亡』扱いとなる。 その間、自分のねぐらとなるべき空白地を求めて1ヶ月に1回隣接地に移動するわけだが、途中仲間を見つけたり逃亡に消費する体力を回復するということも可能。 空白地の選択は、主に高キュウの領土から離れた場所にするのが定石だが、あえて領土に隣接する場所に立てて高キュウと一戦交えるのも面白い。

その中で、原作で無頼漢のあこがれである梁山泊を占拠できれば人気が一気に上昇するので、その場所の近くにねぐらを立てるのもいいだろう。 ただ、その場所は19と20にありどれも高キュウの領土となっているため、さすがにいきなり人気を得るのは無理なので、終盤のイベント扱いになっているのが限界というものだろうか。

ねぐら探しも含み、このゲームには自由度が比較的高く、タイムリミットや勅許という制限を除けば長く遊べる作品である。 FC版は、文字のフォントや色の設定などを抑えているものの、そのほかは特に変更された要素はなく、PC版ユーザーでもしっかり楽しめるつくりを成している。 しかし、PC版ではステータスに文字をだしているのにたいしてFC版はそれを絵で表しているのだが、説明書がない人には少々混乱する変更ではある。


私は、水滸伝シリーズを初めてプレイしたのは続編の『天導一〇八星』で、初代の『天命の誓い』も知ったのはちょうどこの頃だった。 私が、初代ではなく続編を購入したのは、初代だと不便なシステムが多いという思い込みからで、続編自体PC版ではなくPS版だった。 続編の内容は割愛するが、私が大いにはまりこんだゲームの1つとなり、人気で仲間が増えるあたりはかなり感動した。

実は、続編の多くの要素が初代から誕生したわけだが、その初代をプレイしたのはレビューを書く直前で、それもニコニコ動画にある光栄のOP集を見てという具合だった。 それを見たのは半月前だったので、そのとたんに中古のゲームショップに駆け出し、1280円で箱と説明書付属で購入。 早速プレイしたが、PC版にあったOPがなくタイトル画面もPC版と違っていたが、個人的にOPについてはFC版のほうが好きだ。

内容も、歴史SLGにそっくりで1ヶ月に1回しか命令を出せないあたりも、1季に1回しか命令を下せない初代三國志をプレイしたこともあるものの、続編を多くプレイしたために不自由に感じてしまった。 しかし、好漢のいる領土以外は委任になるため、わざわざ命令を下すという手間が省け、気づけばその領土は好漢のいる領土より発展していることが多く、その設定が頼もしく感じた。 領土が広がるほどそれが顕著に表れたことで、安全な地域には能力が低い仲間を派遣してその地域の発展をやってもらう手段が多くなった。


ところで、続編ではそれほどちょっかいを出してこなかった高キュウだが、初代では脅迫して金を脅し取ったりせっかく稼いだ金を盗んだりなど、 やることなすことかなりえげつないものばかりで、1回脅迫を無視したら高キュウの部下が大軍を率いて攻めてきた。

それでも、武装度や訓練度を最大に上げたことで、兵力では劣っていたあたりをそれでカバーできた上に、高キュウの配下数人を捕まえて仲間にしたのは大きな収穫だった。 高キュウ軍が落ち着いた頃から、領土を広げ他の好漢達を蹴散らしていったが、最後の好漢の武松を潰す直前に徽宗から勅許をもらったので、 方針転換して高キュウの領土を彼がいる地域を除いてことごとく潰していった。

なお、勅許を手に入れたのはタイムリミットから5年前という時期で、シナリオも1にあたる1101年だったおかげで金に攻め込まれることはなかったが、 これがシナリオ4にあたる1105年だったらどうなっていたかわからない。

結局、自由度が高いといっても私のゲームの腕が下手なあまりに、必ずシナリオ1を選んでしまうのがつらかったが、 今度プレイするときはシナリオ4でもタイムリミット前に高キュウ軍を倒すため腕を磨くことを心に誓うのだった。



本日のまとめ



わたしのいのちをあずけましょう

(08/2/19レビュー)
伝説のスターブロブ2への掲載:2019年5月27日
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