◆蒼き狼と白き牝鹿・ジンギスカン◆
蒼き狼と白き牝鹿シリーズ第2弾



発売日:1989年4月20日   発売元:光栄   ジャンル:SLG
値段:9800円   おすすめ度:4(国王とオルドがすべて?)


1985年に登場した『蒼き狼と白き牝鹿』シリーズの1作で、かつて『光栄歴史SLG三本柱』の一角として名を連ねていた。 シリーズのタイトルの由来は、モンゴルの歴史書『元朝秘史』に『上天より命ありて生まれたる蒼き狼ありき。その妻なる惨白き牝鹿ありき。』と書かれていることにあり、モンゴルの祖先が蒼き狼と白き牝鹿であることを述べている。

ここでの蒼は青色ではなく灰色に白が混じったという意味で、なぜ灰色ではなく蒼という言葉に置き換えたというのは、『灰色の狼と白き牝鹿』ではかっこがつかないからという当時の訳者の中国人(漢民族)が思ったことが背景にある。 現在では、1998年に第4弾『チンギスハーン 蒼き狼と白き牝鹿W』のパワーアップキットが発売されて以降、 10年経った2008年になっても新作が発売されず、いつしか歴史SLG三本柱は崩壊し、同じ地位にあった信長の野望シリーズや三國志シリーズは、新たに『コーエー歴史SLG二枚看板』という地位を設立するに至った。

今作は2年後の1987年に発売された第2弾にあたり、知名度もこちらのほうが初代よりかなり高く、今も信長の野望シリーズ同様こちらがシリーズ第1弾と思い込む人も少なくない。 事実、ネットによって知名度が低いゲームもそれなりに有名になっていった一方で、 蒼き狼はいまだに情報が少なく信長や三國志の初代が『リターンズ』という形でリメイクされているのに対して、こちらはいまだにリメイク版が登場していない。

その第1弾は、チンギス=ハーンこと昔のテムジンを主人公に、舞台となるモンゴル内14地域を征服しモンゴル統一を完遂させることが目的で、 つまるところ初代信長の野望のモンゴル版といったところで、信長は中部地方から畿内(近畿地方ではない)17ヶ国を征服するのが目的となっていて、 信長の野望が信長でしかプレイできないと同様、蒼き狼もテムジン以外の有力部族をプレイできず、1年のターンも春夏秋冬の4回だけである。

ただし、蒼き狼では配下武将が4人追加され、同年発売された三國志よりは武将の数は及ばなかったものの、配下を最初から所持できる段階で信長の野望より勝っていた。 とはいえ、武将が下に続いていくほど能力値も下がっていき、史実で活躍した武将がやや不当に低い評価を与えられているのはつらいが、 全ての武将に能力値のボーナスポイントが支給されるため、その武将専門の仕事をさせる能力値を作ることが定石になった。


光栄歴史SLG三本柱の中で、一番知名度が低いながらも続編が発売されたのは、ファンが少なからずいたことに加えて光栄側としても初代で出せなかった要素を、続編で出したいという思惑があったものと思われる。 舞台も、モンゴルに加えてユーラシア大陸全土をテーマとし、全27ヶ国が登場した。 いうなれば、『信長の野望・全国版』に近いものだが、世界の大部分が舞台となっているため、日本のみの舞台となる信長よりもスケールが大きく配下もいる。

また、選べるのはシリーズの主人公扱いのチンギス=ハーンと、ビザンツ帝国(東ローマ帝国)のアレクシオス3世アンゲロス、 イギリスの獅子心王ことリチャード1世、日本の鎌倉幕府の征夷大将軍源頼朝の4名だけで、他はCPU扱いということで選択できない。 もちろん、前作の舞台となるモンゴル統一をテーマとしたシナリオも登場し、ユーラシア大陸を舞台としたシナリオの開始年代は1206年となっている。

この年は、チンギスはともかく頼朝とリチャード1世がこの世になく、アレクシオス3世は存命中とはいえ数年後に死んでしまう身で、 国家ではビザンツ帝国は1204年の第4回十字軍により首都コンスタンティノープルが占領され一旦滅亡、小アジア地域で亡命政府ニケーア帝国を設立している(ビザンツ帝国の領土は新たにラテン帝国のものとなった)。

なぜ、モンゴル以外の3カ国とその国の王が選ばれたのかは不明だが、3つの国やその国王の知名度が比較的高かったことと、 リチャードと頼朝においてリチャードは戦死、頼朝は落馬での事故死(確定ではない)しているため、 もしそれがなく国王も国家も存命していたらというIFを取り入れているという2つの理由から成り立っているらしく、 配下将軍も日本の源義経を始めとして、病死以外で死んでいたらどのくらい長生きしていたのかをもシミュレートしている。


システムも、今までの歴史SLGとは大きく異なっており、国の命令を実行できる回数があったり、それを実行するとステータスが減ってしまうということが1つ。 将軍に訓練を実行して回復させるのだが、命令や訓練でステータスが増減するあたりは今も変り種となっているものの、 別の言い方で言えば国王も配下も鍛えられるということで、お好みの人物の能力を最大にすることもできる。

スタート直前の能力のルーレットがあるが、もし低い能力だったとしても訓練で補えることで、 わざわざ能力設定のやり直しをしてまで能力を高めようとする時間の無駄を削減したと思われる(運よく高い能力になればそれに越したことがない)。

内政もまた、今までの歴史SLGとは一癖も二癖もある内容ばかりだ。 一般のSLGの内政と言えば、主に『開発』や『治水』を実行しその国または地域のステータスを上げることになっているが、 蒼き狼ではその地域や国の住民を分野ごとに配置換えすることで、次のターンにはステータスが上昇する仕組みとなっている。

例えば、兵糧の概念といえる食料を多く作りたければ、その住民の配分を食料作りに多く割り当てたり、資金がほしければ街づくりに多く割り当てたり、 兵を増やしたければ全ての配分を減らすだけでいい(全ての配分を0にしてそれを兵に割り当てると、民忠誠度に当たるモラルが激減し住民の反乱が起こる可能性が大きくなる)。

なお、商人コマンドで傭兵を雇ったり、臨時徴収で金や食料を入手、さらに特産品を売買して多く金を得る手段もあるが、どちらも一長一短だったりする(モラルや商人の不在による)。 つまり、武将の力を借りずとも国は発展していく一方で、肝心の武将の存在が希薄になってしまったのはマイナスであり、 彼らにできることといえば戦と属国となった地域の領主になることぐらいで、その領地での内政や軍事はできるものの、まだ全国版を引きずった内容になっている。


戦争は、国王自らの場合は今まれの歴史SLGと同じだが、配下を差し向けると戦場マップは現れず自動戦闘に突入し、引き続いて国王自ら他の命令を出せる。 ここでは、兵力と兵士の武装度や訓練度、大将の能力に勝敗が決まる。

既に勝てる戦争だとわかっていても、軍を動かして敵部隊を攻撃するという繰り返しが面倒なプレイヤーにとって、時間的に相当助かるシステムである。 したがって、戦争に関係ある能力(主に武力)や訓練度を上昇させるだけで、戦いに勝つことは一応可能ではある。

戦いに勝つと、攻め取った国の統治を誰に任せるかの選択があり、直轄領にするか軍の大将に統治を任せるか、そして攻め込まれた国の国王に統治を任せるかの3つがある。 このうち最後の選択肢は、今までの歴史SLGで国が滅亡すればその国の王は自らの命を絶つことになり、 大抵脅迫で戦をせず王や家臣をそのまま入手するしかなかったが、このゲームでは意外にも敵国の王にも懐を広くした結果といえる。

例えば、かつてテムジンの盟友ながらもある事件をきっかけに袂を分かち合い、戦いで散っていったジャムカを配下にしつつ領地を任せるあたりは、 もしテムジンとジャムカがいつまでも盟友のままでいたらというIFをその2人のファンに示した形となった。

だが、その手の武将や自国の武将でも、反乱を起こして国をのっとる場合があり、それも武将の能力しだいでは一気に領土を広げるため、 攻め落とされた国王のファンとはいえその領土を直轄領にするか血縁武将に統治させることで防ぐしかなかった。

敵領土と隣接している自国の領土も、兵力が少なければ即座に攻め込まれる危険が高いため、実質的にこのゲームの難易度はやや高い。 そもそも、このゲーム自体プレイ方法が特殊なので、慣れていないプレイヤーは周辺国の情勢についていけず、 いつの間にか防戦一方になってしまうことも大いにありうるだろうし、住民の反乱や災害の対処に大わらわということもありうる。

忠誠度という概念がないこのゲームでは、血縁武将以外に領地を任せるといつ反乱が起こるかわかったものではないので、 このゲームでも忠誠度を導入して血縁武将以外でも領地を任せるよう設定してもらいたかったし、 そうすることで憧れの武将に統治を任せるというプレイヤーの望みもかなえられたはずではなかったのだろうか。


そして、このゲーム最大の肝というべきシステムが存在する。 それは『オルド』というもので、子供を作るためのコマンドというのだが画像を見るに、まず間違いなく『あれ』をすることで子孫を残し、それも年に4回しなければ子を授けることができない。 オルドにいる后も、テムジンのボルテを初めとして源頼朝の北条政子など、国ごとに必ず1人后がいるので、后達の顔グラフィックも質・量と共に豪華である。

あれが成功したときにおける后のグラフィックが違い、かつとても妖艶になっているので、プレイヤーはその国王のした行為に思わずどきどきしたことだろう。 もちろん、女性の姿は肩までという具合なのだが、当時としては異常に興奮するグラフィックだったためか、続編以降ではその手のグラフィックがなくなっている。

さすが、かつて『団地妻の誘惑』や『オランダ妻は電気ウナギの夢を見るか?』といったエロゲーを制作してきた光栄だけあり、 既に歴史SLGのメーカーであっても初のエロゲーメーカーの意地の一片を見せたに違いない。 もっとも、かなり昔のものなので内容やグラフィックがエロゲーなのかと思うだろうが、当時としてはこれらもれっきとしたエロゲーで、光栄はその中の硬派と位置づけられていた。


当然、性格も国の情勢などによって複雑になっているため、戦争で奪った后はもちろんたまに機嫌が悪い后もいるため、 3つの選択肢(『愛を語る』・『強引に口説く』・『金銭で歓心を買う』)で機嫌をとらなければあれができずに行動回数を無駄にしてしまう。 しかも、成功してもあれをしたためなのか国王の全ステータスが下がってしまう。

ともあれ、オルドは国家反映のためにはなくてはならぬもので、老体の国王が多い世界編では必須の事項だが(血縁武将がいないと滅亡しゲームオーバーになる)、 幸い(?)にも国王の后は年をとらず若いままなので、画像も普通のオルドになる。

普通、后達はなかなかの美貌を持っているのだが、唯一ブスのキャラもいる。 それはラッチで、モンゴルのある地域の后となっていて、こちらが嫌がろうと無理やり引き込む上にグラフィックも違っているなど、シリーズにおける有名キャラとなった。

さらに、ラッチをオルドに誘えば優秀な子が生まれるといううわさが流れたため、我慢してでもうわさを信じてオルドに励んだプレイヤーも多かったことだろう。 なお、そのうわさの真偽を知る術はもう残っていないのだが。


もう1つ、このゲームを語るに外せぬものとして、テムジンがかなり優遇されていることだ。 というのは、モンゴル編をクリアすると自動的に世界編に移行し、名前もテムジンからチンギス=ハーンに変わるのだが、 同時にモンゴル14地域の金と食料と兵士と特産品の合計の10分の1、家臣と子供の双方5人、后全員を持ち越すことができる。 いうなれば、モンゴル編からプレイしてくれたおまけであり、テムジンと家臣の能力をあげていれば世界制覇はたやすいといったところだろう。

もっとも、いきなり世界編から始めることも可能で、その場合頼朝やリチャードのほうが地理的にユーラシア周辺の両端に位置しているため、 攻め込まれる危険が少ないし、日本は強国と対峙するまでの期間が長く、特産品の売買もやりやすい。

逆に、モンゴルは隣接する国がやや多い上に特産品の価値が低いため、世界編から始めるとモンゴル編からプレイするよりも難しい。 おまけに、モンゴルが主役とありながらあっさり滅亡したり、逆にカリフ朝(アッバース朝)がヨーロッパを支配することもありうるため、プレイしてもなかなか飽きが来ない。


一方で、CPUの性格がおおむね好戦的であったため戦争や反乱が続発し、架空の国の名前が続々登場することになった。 悪いことに、世界史をまだ習っていない小中学生にとって、架空の国が本当に存在していることを思い込んだために、世界史を学んだ際に散々苦労したと思われる。

世界史を学んだ人にとっては、架空の国が続々登場することなど単に架空戦記だと思えばいいだけだが、 それとは別に『オルド=子供を作る』という勘違いも生まれ、オルドの本来の意味である後宮(ハーレム)がおざなりになってしまった。

良くも悪くも、光栄歴史SLG三本柱の一角として、十分すぎるインパクトをプレイヤーに与えたことは言うまでもなく、その反省点を数年後の続編に生かしている。 それでも、荒削りでオルドのグラフィックを楽しむプレイヤーもいることは事実。 PC版発売から2年後にはFC版も登場、グラフィックは粗いものの雰囲気としては十分で、他の要素もほとんど削られておらずPC版さながらに楽しむことができる。

オルドのグラフィックもほぼPC版そのままなので、規制が厳しいFCでもある程度許せる余地があったのだろうが、 SFC版の移植が行われていないところを見ると、この時期にはその手の規制がより厳しくなってしまったものと考えられる。


私は、このゲームを20年近く前にプレイしたことがあるのだが、FC版ではなくMSX2版だったと思う。 思うというのは、プレイしたのが20年近く前ということで詳しいことはよく覚えておらず、 それもどのMSXでプレイしたのかMSXでプレイしたのかもうろ覚えになってしまったが、少なくともMSXでプレイしたことは記憶に残っている。 当然、MSXなど我が家にはなかったので、プレイしたのは東京に住んでいるいとこ(ちょっと年上)の家で、そのときは父親以外の家族で行ってきたわけなのだが、その理由も完全に忘れてしまった。

プレイのことで覚えていることは、モンゴル編でテムジンが民衆に施しをしたということで、そのときはSLG初体験だったものの、どういう形で国を発展していくのかはわずかながら理解できた。 ただ、このゲームの内政の肝である住民の配置は全くやっていなかったものの、翌月には数値が動いたので思わず子供ながらに微笑んだ。 とはいえ、指を動かすゲームの世代だった私にとってこのゲームは当時あまり面白いものとは思えず、すぐやめてしまった。


それから現在、ニコニコ動画で光栄のOP集を見た興奮を忘れないという気持ちで、プレイとレビューをやることになったわけだが、 もう1つあるレトロゲームサイトで后のオルド時のグラフィックにどきどきしてプレイしたくなったことも理由の1つではあった。

もちろん、説明書やネットの攻略記事とレビューを見ながらであったものの、信長の野望・全国版や三國志をプレイしたおかげもあって、FC版初プレイながらもすんなり進めることができた。 何より、国王以外の武将が他国を攻めるときは自動的に戦闘になるあたりは感動し、どうしてこの制度をのかの歴史SLGに活用できなかったのかわからないほどすばらしかった。

そしてオルドは、思った以上のグラフィックと台詞と雰囲気が、もう30近くの私を一層どきどきさせ、特にアランとカチャウのオルドでのグラフィックはいくらFC版とはいえ許されるものなのかと思うほど過激だった。 ボルテや北条政子も捨てがたいが、色っぽい姿で誘惑してくれる后が思った以上に少なかったことは、あくまで本質は歴史SLGだということを教えてくれ、子がまだいる時点でのオルドはあまりしなかった。 そのほかの后とも一夜を過ごしたが、さすがにラッチだけはうわさを信じようにもあの顔だけで一夜を過ごすのはやめた。

最後に、プレイした国はモンゴルと日本だけで、他は個人的になじみの薄い国ということでプレイしなかった。 世界編からでは日本だけで、高麗と金の2つの弱国がいたおかげで序盤からすんなりことが進み、高麗を義経に金を頼範に任せ同時に滅ぼした後、 モンゴルと南宋に攻め込まれないようすかさず兵力の回復と訓練をやったおかげで攻め込まれる危険がなくなったが、肝心の食料が心もとなかったため2年間オルドや武将の能力上昇で時間を潰すしかなかった。

数年後に10カ国になった時点で、臨時徴収で即座に軍を動かして国を奪う強攻策に出たものの、 モラルが下がるしそのつど嘆く民衆のグラフィックを見るのはなんともつらかったが、頼朝で世界征服するには何であろうと鬼になるしかなかった。 一応クリアはできたものの、今度は実朝あたりで鎌倉幕府の世界征服をやってみたいと思った。



本日のまとめ



おつかれさまでございました

(08/2/17レビュー)
伝説のスターブロブ2への掲載:2019年5月26日
◆目次に戻る◆


inserted by FC2 system