◆ドンキーコング3◆
謎の人物スタンリー登場



発売日:1984年7月4日   発売元:任天堂   ジャンル:STG
値段:4500円  おすすめ度:1.5(ジャンルを変更したのが仇に…)


任天堂は、70年代後半に起こった経営危機を、1981年に登場した『ドンキーコング』で乗り切ることが出来た。 翌年には、続編の『ドンキーコングjr.』と大ヒットした『ゲーム&ウォッチ』シリーズにより、任天堂は大きく成長した。 さらにその翌年には、『ヤングコンピューター』という開発コード名で制作が進められた『ファミリーコンピュータ』が発売され、同時に関連ソフト3本も発売となった。

 ここにおいて任天堂は、一気にゲーム業界のトップに躍り出るため、ある1つの策を打ち出してきた。 それは、大人気ゲームとなったドンキーコングシリーズの第3弾を、世に出すことであった。

既に、スペースインベーダー風のSTGブームは終わりを告げ、様々なジャンルのゲームが世に登場しどれも高い人気を得ていた。 ゲーマーは、常に新しいジャンルのゲームをプレイする傾向があり、各ゲーム会社はゲーマーのニーズに合わせてゲームを供給してきた。


だが、ゲーマーの性質は熱しやすい一方、冷めやすい傾向があった。 つまり、あるジャンルがブームになると我先にとメジャー・マイナーなタイトルに関わらず、熱中するする傾向にあるのだが、 ブームになっているジャンルが何らかの理由で鎮静化に向かうと、それにつられてプレイすることがほとんどなくなり別のジャンルのゲームに行ってしまう(もしくはゲーム自体をやめる)のである。

これをよく表しているのが『スペースインベーダー』であり、日本列島をも巻き込むほどの人気だったが、 それに伴う犯罪(主にコピー基盤の大量流入やカツアゲなど)やPTAなどの横槍によって、一気にブームは収束に向かいゲーマーの大半はその手のジャンルに興味がなくなってきた。

任天堂にとっては、この手の性質を最も恐れており、せっかく築き上げたドンキーコングシリーズの人気が何かのきっかけで消えてしまうかもしれないといった不安が、社内に少しずつ広がってきていた。 そこで、ドンキーコングシリーズの第3弾を出す際に、前2作とは全く違ったタイプのゲームを作ることにしていたのである。 この決断は、既存のファンに加えて新たなファンをも獲得できる一方、失敗すれば既存のファンを失うばかりでなくシリーズの人気を低下させることにもつながりかねない、まさにばくち的なものであった。

ドンキーコングシリーズ第3弾は、前2作と違ってアクション主体のゲームではない。 ルールは、フラワーガーデンに現れたドンキーコングを、殺虫剤を使いながら画面上部に追いやることとでクリアできるものとなっている。

もちろん、ドンキーコングの妨害も健在で、プレイヤーを殺すほかに舞台がフラワーガーデンゆえに画面下にある5つのチューリップを奪おうとする。 当然、ドンキーコングが直接奪うのではなく、ドンキーコングの左右にある虫かごから出てくる虫が奪うのだが。


また、花を全て奪われても1ミスになることはないのだが、花を守ることでボーナス得点が入りパーフェクトだとさらに増える。 得点が増えると、プレイヤーの人数が増えるので、やはりドンキーコングの妨害ということになる。

ドンキーコングが差し向ける虫は、花を奪うタイプのほかに倒せない上にいやらしくドンキーコングへの攻撃を阻む (代わりに攻撃を受けると、少しの間だけ動きが止まる)毛虫、2度攻撃しないと倒すことが出来ず倒したら倒したで弾を4方向にばら撒く虫がいる。

もっとも、プレイヤーとていつもやられてばかりではなく、前2作同様一発逆転のアイテムが用意されている。 無印はハンマーjr.はフルーツであったが、3はスーパースプレーである。

ドンキーコングの右に取り付けられているが、ドンキーコングをしばらく攻撃するとぽろっとプレイヤーのところに落ちてくる。 取ると、スプレーの色が黄色になり威力も上昇、倒せない毛虫も倒すことが出来る上に射程距離も飛躍的に伸びる。 ただし、一定時間しか効果がないため、取った場合はある程度ゲームを進めなければ再び取ることが出来ない。

ちなみに、ステージクリア時にスーパースプレーの効果が残っているときは、次のステージでもそのまま効果が持続される(取らなくても次のステージには、そのまま落ちたままとなる)。

なおプレイヤーのミスは、ドンキーコングが投げるやしの実にぶつけられたり、左右から来る虫やそれらが放つ弾に触れるとミスとなる。 また、ドンキーコングがプレイヤーのいるところに落ちてもミスとなる。


これを読めばお分かりかと思うが、3はジャンプしたりするところは前2作と変わっていないが、徹底的にドンキーコングを攻撃したり、 虫をよけながらそれを倒したりする様は、まさにSTGそのものであるということを。

つまるところ、任天堂がドンキーコングシリーズに新風を入れたというのは、アクション主体からシューティング主体へとジャンルを変更したことである。 これは、このまま同じ主体のアクションでシリーズを進めていれば、いつかゲーマーに飽きられ最終的にはシリーズの人気や、 最悪シリーズそのものが消えてしまうかもしれないといった、いわば任天堂の予測であるがあくまで予測であるため、任天堂が本気で予測していたかどうかについては不明なところばかりである。

しかしながら、任天堂が立てた予測とは裏腹に、『ドンキーコング3』の人気は前2作と比べて大きく低下することとなった。 それは、ユーザーがプレイしたいものとはまるっきり違っていたということ。

先にも述べたように、前2作はアスレチックに近いアクション主体のものであったが、3はシューティング主体であった。 これは、前2作同様の続編をプレイしたいと思っていたユーザーの気持ちを裏切る結果となった。

また、それ以外のゲームの人気が高かったということ。 同時期に登場した、同じ任天堂制作の『マリオブラザーズ』もそうだが、何よりもナムコの『ゼビウス』がブームになるほどの大ヒットとなったことが大きい。

さらに、このゲームの登場人物の変更も、人気を低下させる一因ともなった。 前2作までの登場人物は、マリオとレディ、ドンキーコング親子の4人だが、その2作とも登場しているキャラはマリオとドンキーコングのみである。


任天堂は、新風を吹き込むため3を前2作と違ったものにしたのだが、登場キャラをも変更することになった。 敵は、再び悪役となったドンキーコングなのだが、プレイヤーキャラはマリオではなくスタンリーという全く新しいキャラとなった。 つまり、この作品においてマリオは全く登場していないことになった。

何故マリオが登場しないのか、詳しいことはわかっていないが、おそらく同時期に登場したマリオブラザーズに出演していることが関係あるかもしれない。

いずれにせよ、3が前2作よりも評価が低かったことは疑いようもなく、無印から続いたシリーズは人気と共にいったん収束することになる。 ちなみに、翌年7月にFC版が発売されたが、その内容はほぼAC版に近い移植であったが、AC版の人気をそのままFCに持ってきたため、FC版もAC版同様人気は低かった。

悪いことに、当時の任天堂のCMにはドンキーコング3はなく、そのためなのかいきなり発売された感が強かった。 しかも、前2作がDisk版が発売された一方、3は発売されることがなかった。

結局FC版も、AC版同様ドンキーコング人気は収束に向かい、AC版と違ってFC版は前2作発売から翌年に発売されているので、人気の持続はAC版より短かった。 それから、ドンキーコングシリーズが復活するのには10年の歳月が必要となり、10年後に登場したドンキーコングシリーズは、AC版の世界観を継承しているものの、 全く新しいゲームとなり人気も旧シリーズ以上を獲得するに至った。


ところで、3の主人公スタンリーについてだが、彼が登場したゲームはドンキーコング3のみで、それ以降のFCソフトはおろかSFCソフトや、N64ソフトにも彼が登場することは全くなかった。 ただ、GCの『大乱闘スマッシュブラザーズDX』において、ようやく再び登場するのだが、3からDXまでの間は何と18年という長い年月が経ってのことであった。

もっとも、スタンリー以外にもスーパースコープやMr.ゲームウォッチ(『ゲーム&ウォッチ』のプレイヤーの名前)など、 この時期では既に忘れられたキャラクターやアイテムが大挙出演しているが、スタンリーのみがこれだけ長い年月に登場したのは、 DXをプレイした人のほとんどが彼を知らなかったことと、任天堂内にも彼を知らない社員が大勢いたものと考えられる。

私は、無印同様3もいとこからもらっていたので、かなりプレイしていた。 ただ、無印の方が印象に残った分、3は無印ほどプレイ時間は少なかった。

昔の私は、適当に手当たり次第のゲームをかなりプレイしたことがあったが、 別の言い方でいえば当時無印やjr.のAC版をプレイしていないこともあってか、3については特にこれといった感情を出さなかった。

だが、去年レビューする際に久々にプレイしたとき、既に無印やjr.のAC版をめいいっぱいプレイし、 それらの知識をある程度補完した私は、前2作とまるっきり違った3の内容に思わず愕然とした。

特に、前2作のようにエンディングがなく、ただひたすらゲームをプレイすることは、当時のゲームとしてはよくありがちだとわかっていてもかなりさびしいものだと感じた。


そういった、昔の思い出と現在の心境の差はあまりにも激しすぎたためか、去年書いたレビューにはあまりにも書き殴ってしまって、最近読んでみたらあまりの文体のひどさに思わず苦笑してしまった。 さすがに、不特定多数が見る以上、そういっためちゃくちゃな文体はまずかろうということで、ドンキーコング3の情報の中で得ていなかったものを取り入れながら再びプレイした。

そうしたら、ますます3に対する負のイメージが拡大してしまったため、数ステージプレイした時点でやめてしまった。 いまさらながらにして思ったのだが、FC版3の発売直前に光線銃シリーズが不完全燃焼に近い形で終了してしまうわけだが、 続いて3発売によりドンキーコングシリーズが終焉してしまい、後にナムコを初めとしたサードパーティにFC人気を献上してしまったことを、当時の任天堂社員はどういう心境だったのだろうか。



本日のまとめ


ドンキーコング第3部


(06/11/27修正)
伝説のスターブロブ2への掲載:2019年4月3日
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