◆三國志U◆
三國志シリーズ第2弾



発売日:1990年11月2日   発売元:光栄   ジャンル:SLG
値段:14800円   おすすめ度:4(弩級の値段とそれに見合った面白さ)


紀元2世紀の末、中国では後漢末期にあたる時代、宮廷内では重臣達が私利私欲から政治を私物化し、また地方に目を転じてみれば民衆は重税にあえぎ、社会不安は増大する一方であった。 そこへ現れたのが、宗教結社でのちの道教となる太平道の教祖であり、鉅鹿出身の張角であった。

『蒼天すでに死せり、黄夫まさに立つべし』という旗印のもと、後漢王朝に不満を持つ民衆の支持を集め、大規模な反乱を起こした。 世に言う『黄巾の乱』で、この反乱の由来は反乱軍の多くが、目印として黄色い頭巾をかぶったことにある。

この反乱は、張角の病死や有力者達の戦死によりすぐ鎮圧されたが、この後に起こった後漢王朝の内部腐敗や各地の豪族達の独立化など、光武帝が打ち立てた後漢200年の終焉を予感させる出来事であった。 数年後、12代皇帝の霊帝が崩御し13代目の皇帝に少帝が即位するものの、少帝の外戚である何進と十常侍をはじめとした宦官達が、宮廷を舞台に醜い権力争いを繰り広げた。 何進は、事態収拾のため各地の諸侯を呼び寄せるが、結局後一歩のところで十常侍達に暗殺され、十常侍達もまた何進が呼び寄せた袁紹をといった有力諸侯達によって殺されてしまう。

宮廷を舞台としたこの凄惨な事件は、ただでさえ落ちている後漢の権威を、さらに失墜させるのに十分であった。 この混乱に乗じて勢力を伸ばしたのが、西涼の豪族の董卓で彼は強大な軍事力を背景に、首都洛陽に入るや瞬く間に宮廷の権力を握り、 在位してわずか5ヶ月の少帝を廃しかつて少帝が皇位争いを繰り広げてきた献帝を立てるなど、宮廷内で思うままに権力を振るった。 さらに、廃した少帝を危険視した董卓は、彼の腹心の部下である李儒に命じて少帝を毒殺、これにより後漢王室の権威は地に落ち、後漢王朝は董卓によって滅ぼされたこととほぼ同じであった。

この董卓の横暴に対し、有力豪族の1人であった曹操は義兵を立ち上げ、中国全土に向けて董卓掃滅の檄を飛ばす。 各地の豪族達は、曹操の檄に応じて立ち上がった、それぞれの野望を胸に秘めながら…。

洛陽に居座り暴政の限りを尽くす董卓を初めとして、『治世の能臣、乱世の奸雄』と呼ばれようと中国統一の野望を胸に秘める曹操、 長男孫策・次男孫権に受け継がれし野望を持つ忠義の虎孫堅、華北を制し中元を伺う名門の御曹司袁紹、猛将関羽と張飛を義兄弟とする若き領主劉備。 果たして、豪族達は董卓を倒し分裂状態となっている中国を1つに纏め上げることができるのだろうか。


1985年に発売された三國志の続編で、前作発売からなんと4年という期間をかけて制作、1989年に発売された。 それだけに、前作にはなかった要素を次々と取り入れて、三國志シリーズを確立し信長の野望に並ぶ歴史SLGの二枚看板にしようとしたことが伺える。 実のところ、1985年に『蒼き狼と白き牝鹿』が登場し2年後には続編も登場したため、三國志Uが登場した頃のシリーズの地位は、光栄歴史SLG三本柱の最後尾というものだった。

そんな状況でも、三国志の人気は漫画映像作品問わず高く、前作の人気も合わさって初代をプレイしたユーザーの多くは、続編に大いに期待を寄せていた。 そして、発売したときの反応は上々で、値段こそ相変わらず初代同様の14800円という値段で、『信長の野望・戦国群雄伝』から始まったWithサウンドパックを含めれば、 通常より3000円高い17800円というFC本体より高い値段で売られていた。 それでも相変わらず売れていたのは、ゲーム内容もよかったが何よりもBGMのセンスがすばらしかったということだろう。


サウンドパックつまるところのサントラだが、わざわざそれを付属してまで売ろうとするあたり、よほどBGMに自信がなければできるものではない。 ゲームで17800円の値がつけられたのは、前にも後にも間違いなく光栄で、14800円のソフトにしても値段でユーザーを圧倒していることに変わりはない。 ただい、数年後にサウンドパックを廃止して、改めてサントラという形で別売りしたのは、明らかに高すぎるということを光栄としてもうすうす感じていたのかもしれない。

そのBGMを担当したのは、初代の菅野よう子氏ではなく『おかあさんといっしょ』の劇伴を担当し、パソコンにも強い向井実氏が選ばれた。 向井氏が選ばれたのは、彼がピアニストであると同時にエレクトーンにも通じ、さらに作曲ができる中堅音楽家であることに注目したものと思われる。

また、菅野氏は信長の野望シリーズのBGM作曲とバンド活動に追われていて、とても三國志UのBGMを作る時間などなかったのだろう。 サウンドパックが発売されたことは、向井氏のサウンドが光栄に認められた証であり、続編のBGMも向井氏が引き続いて担当することになった。


BGMもそうだが、数多くのシステム面やステータス面などについても、前作以上に大幅にパワーアップたり改変もしている。 特に目を引くのが、今作から新たに登場した自分で作れるオリジナルの君主、すなわち新君主の存在で、多くのステータスを入れ替えることになる。

それこそ、呂布並みの武力を持ったり、劉備に次ぐ知力と魅力を持つ君主が作れたり、性別も男女共に選べるため(顔グラフィックは自動的に決まってしまうが)、 むさくるしい男達の戦いに可憐な女性君主を打ち立てることも可能だ。 君主選択の時に空白地を選ぶと、自分の君主が作れるようになるもので、残念ながら君主だけでスタートしなければならず(一部機種では配下が1人追加される)、 難易度も他の君主より高めになっているが、その分引き抜きをして武将を獲得し中国全土を統一したときの喜びは、他の君主でプレイしたときよりもひとしおだ。

引き抜きは、前作になかった他国の君主に見つかる危険が追加され、領地を跳び越して対象武将のいる地域に行くと発動する可能性がある。 君主自ら三顧の礼で出向けば、最悪つかまって殺されることも大いにあるわけだ。

他の計略にしても、前作で猛威を振るった火計がある程度兵士を減らせる程度で、武将も1ターン火に包まれただけでは死なないことになった。 これは弱体化というより、火計があまりにも強力すぎたことをあらわしていることでの、威力を抑えた形となった。


その一方、伏兵や寝返りが新たに加わり、軍自体にも攻撃側における共同軍と守備側における援軍が登場し、 敵の領内の情報を調べただけではその軍の戦力がわからないようになっているため、外交の重要性が非常に増した形となっている。

その国の友好度という形での信頼度だが、同盟国に攻めこんだり国の使者を捕らえたりすると下がってしまうため、 隣接する地域が多いこのシリーズでは、信長の野望シリーズ以上に攻め込む国や同盟を結ぶ国の選定に力を入れることになった。

また、三國志シリーズの定番である一騎打ちが登場したのもここからで、一騎打ちで勝てば仕掛けられた相手の戦力を全滅できる。 ここから、武力の高い武将同士による一騎打ちが多く見られたが、その中で最強といわれるのは呂布で、 曹操や袁紹といった武力が高い君主でも勝てる可能性は大きいほど強い(可能性が大きいだけで、負けることももちろんある)。

だが、義理が低く野望が高いため、寝返りをしたり独立君主になる可能性は大きいし、そもそも知力が低いために知力が高い武将による火計に相変わらず引っかかりやすい。 確かに最強だが、敵に回せば厄介で味方にして金や新たに登場した武将の戦利品もを与えても、裏切られる危険性があるため使いどころが難しいという諸刃の剣である。 事実、呂布といった常時裏切る危険が大きい武将の使い道は、一騎打ちで敵の戦力を根こそぎ奪う程度しかなかった(裏切らなければそれに越したことはない)。

計略や配下との忠誠度などに関わるステータスは、目に見えないデータである『マスクデータ』という形で登場し、信長の野望シリーズなどのSLGでもマスクデータが登場した。 その代わり、目に見えるステータスは知力・武力・魅力(引き抜きなどに有利)・忠誠度の4つと前作より少ないものの、逆に初心者でもわかりやすい内容になっている。 というより、前作ではわかりにくかったステータスをマスクデータに組み込んだり、名前をわかりやすいものに変えて引き続き登場させているのだが。


FC版が登場したのは、PC版発売の翌年となった1990年で、初代よりかなり速いペースでFCへの移植版が発売されたが、 これはPC版発売翌年のFC業界はまだSLGの色がなく主にアクションやSTG中心だったため、ジャンルがバラエティ豊かになる1988年まで待った可能性がある。

FC版Uは、前作の2倍の容量を持ちシナリオタイトルが変えられているも全て選べ、PC版に負けぬ面白さを獲得した。 共通として、武将が前作より増えた一方でメジャーな武将とマイナーな武将との能力の差が大きくなっていったが、 これも信長の野望シリーズ同様マイナー武将の資料不足によって起こった悲劇であることはいうまでもないだろう。

何とFC版も、PC版同様にサウンドパック付きバージョンを発売させ、値段もPC版と同じ14800円というFC史上最高値をつけて発売した。 しかも、ドラクエWやFFVといった名作や良作が大豊作のこの時期に、弩級の値をつけることは自殺行為に等しいものだろう。

それでも結構売れたのは、PCで人気の光栄のゲームがFCでも遊べることと、そのFC版もPCより質が悪いものの光栄のゲーム自体すばらしい出来なためであった。 結局、FC最高値を酷評する人はごくわずかだったが、その翌年にSFC版が発売され値段も同じだったことは、FC版移植を結構急ぎすぎた感があるかもしれない(それでもSFC版もFC版同様に人気が高かったが)。

FC版のみならず、家庭版の多くがシステムやごく一部の武将などが削除されている。 その要因が、PCと家庭版とのスペックの差であることが大きいのだが、一部のイベントだけはその理由以外で削除されている。

ある条件で発生する貂蝉イベントがそれで、三国時代一の美女である貂蝉が彼女の名前のコマンドを実行するたびに服を脱いでいくというものだが、 ただそれだけで結局貂蝉はある人物の罠にかかって自害してしまい、配下武将達もこの一部始終に呆れて忠誠度がことごとく下がってしまうという、男性ユーザーにはちょっとにんまりとするものだ。 削除された理由は、服を完全に脱いだ貂蝉のあれが見えるか見えないかというぎりぎりであったこととイベント自体マイナスなものだけで、ユーザーのメインが子供である家庭版にはふさわしくないということだったと思われる。


レトロゲームサイトのある一文に、『UはTよりも人気がある』と書いてあったが、2作ともプレイしていない私にはさっぱりわからなかった。 そのサイトを見つけたのは今から数年前で、もちろんFC版三國志シリーズなど全くプレイしていなかった。

レビューを書く半月近く前、ニコニコ動画にあった光栄のOP集に感動した私は、FC版三國志を2作とも購入、プレイとレビューを試みた。 初代は、イナゴと火計の被害のすさまじさはあったが、他国武将の引き抜きと相手を火計で焼死させるあたりは感動した。

初代をレビューした後、引き続いてUをプレイしたがその十数分後、続編が初代より面白いとあった意味がよくわかった。 新君主の存在、内政画面での計略の登場、その計略の豊富さと重要性、今作でできる複数の武将による国の政策(初代は一地域につき1つしか政策が出せなかった)、 武将同士の一騎打ちなど…、どれをとっても初代よりすばらしかった。 特に計略は、前作に引き続いての火計や他国武将の引き抜きをはじめとして、2国間の仲違いといった新しい計略が見ものだった。


その中での、他国の領主である配下武将を独立させる駆虎の計は面白く、曹操軍や董卓軍の領土を計略で削っていく快感は面白かった。 しかも、独立した側が滅亡して鎮圧側の戦力がある程度減らせるならともかく、鎮圧軍の一部が寝返った上に独立した側が勝ってしまうあたりは、ガッツポーズを出すのを忘れてしまうほど痛快だった。

一方で、他国武将の引き抜きは敵に見つかる可能性が登場し、新君主で三顧の礼をやったばかりに序盤、 それも配下武将がいないときにそれをやってつかまった挙句、切り殺されてゲームオーバーになった屈辱は何よりも耐え難いものだった。 それでも私は、劉備や曹操より新君主を多くプレイして、苦労の末3年後には地域を3つに増やし、20年後にはようやく全土を統一できた。

そのときの新君主の年齢は21歳で、実は1歳の新君主を作ってスタートしていた。 これが、私がこのゲームをバカゲーと呼ぶに値する要素で、1歳の赤ん坊が国の政治を取り仕切ることを考えると思わず笑ってしまう。

さらに、赤ん坊が敵国の武将と一騎打ちをしたり、三顧の礼で他国の武将をあっさりこちらに引き込むあたり、「これはギャグなのか!?」と考えずにはいられなかった。 もっとも、顔グラフィックは成人(?)のバージョンを使っているのだが、私は女性君主の甲冑をつけていない方が気に入っている。

スタッフも、1歳の新君主で始めている事実が多く見つかったためか、以降のシリーズでは新君主は15歳以上に設定されているが。 もう1つ、FCなのに最大12人でプレイできるというあたりもバカゲーテイストに満ちていて、わざわざ12人集まってプレイする機会などほとんどないのに、なぜ最大12人までプレイできるのかがよくわからない。 それを差し引いても面白いし、SFC版はプレイはしていないのだがこちらもプレイして、FC版との違いがあるかどうか確かめてみたい。



本日のまとめ



しょうせいだいちにおつ…孫堅にきょうちょうが…

(08/2/13レビュー)
伝説のスターブロブ2への掲載:2019年5月26日
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