◆大航海時代◆
大航海時代シリーズ第1弾



発売日:1991年3月15日   発売元:光栄   ジャンル:SLG
値段:11800円   おすすめ度:4(自由すぎる難しさと交易の奥深さ)


15世紀中頃のポルトガル、エンリケ航海王子のもと首都リスボンから多くの港に結ぶ新航路を開拓し、 わずか人口100万ほどの小国家は一気に大国家へと発展していき、大航海時代の基礎を作った。 当然、貴族達もその富にあやかって成長していったが、ただ1つの貴族だけはその繁栄から取り残されてしまった。 フェレロ家がそれであり、フェレロ家の先祖はエンリケの命を受け彼の父ジョアン1世から授かった大艦隊を率い、 伝説のキリスト教国『プレステ=ジョアン』を探すため、西アフリカ探検に赴いた。

しかし、先祖率いる艦隊は途中暴風雨に遭い、わずか1隻を残し海の藻屑と消え果てしまい、航海士の多くが死んでしまった。 家を支えてくれた多くの有能な家臣を失ったフェレロ家は、領地をことごとく召し上げられた上に敵対している同僚の貴族達が、 それに乗じてフェレロ家に対して陰謀を行い、結果的に爵位までも剥奪されてしまった。 とどめは、かつての栄華をねたむ世間の心無い者達から格好の非難と嘲笑の的とされ、急速に没落の道をたどっていくことになった。

それから1500年頃、フェレロ家は父ファブリスと息子レオンの2人で交易商として細々と財力を貯めていく毎日を過ごしていた。 彼の片腕は、かつてファブリスの副官を務めていた老航海士ロッコ=アレムケル、まだ41という若さながらも老練な航海の腕を見せていた。

彼はインドで交易をし、順調に航海をしていた矢先に発生した暴風雨から生き残った1人であった。 父の死に、途方にくれるレオンを励ましたのは彼であり、ロッコは父が遺した最期の言葉を涙がらに伝えた。「夢を追え、希望を捨てるな。」と。

レオンは、父の無念を晴らすべく航海の準備に取り掛かった。わずかな資金を元に多くの水夫を雇い、中古船をも購入した。 『ヘルメス』と名づけ大海原に向かうレオンであったが、ロッコがいるとはいえしばらくは近海で交易するしかなかった。 だが、彼の前には7つの海が広がり、その先にはアフリカやインド、アメリカや中国が、黄金の国ジパングが待っている。 航海士という職業は、常に危険が付きまとうがそれだけに見返りは大きく、貧富の差を越えて多くの人間が挑戦してきたのだ。

また、ポルトガル王女クリスの心を射止めるという希望も秘めていたが、近々イスパニアの王子と結婚する可能性が大きい。 それでも、ポルトガルのために尽くせば爵位を頂き、それが上になるほど王女に会えると踏んでいた。 多くの希望を胸に、ロッコとレオンはリスボンの街中へと繰り出して行った、かつての栄華を取り戻すために…。


光栄のリ・コエイションゲームの1つであり、大航海時代シリーズ第1弾でもある。 一般的にSLGに分類されてはいるものの、RPGの要素も加わっているのだから。

この作品の舞台となる16世紀初頭のヨーロッパは、別の地域から多くの品々が入り込み、大海原には多くの船が行き交う大航海時代であった。 同時に、嵐といった災害や壊血病や疫病といった病、国家や商人果ては海賊同士による海戦というアクシデントが頻発するのもこの頃だった。 つまるところ、品々を買って売りさばき多くの金を得るというSLGの要素と、戦いや多くの人と出会うというRPGの感動を組み合わせたのが、この大航海時代といえるだろう。

このゲームの目的は、交易をしながら金貨はもちろん名声を多く獲得し、最終的にポルトガルの王女クリスと結婚すること。 名声とは、RPGで言う経験値を表し、それが一定以上貯まるごとにレベルアップつまり爵位を手にすることができ、次第に王女に会うことが可能になっていく。 もちろん、王の試練を乗り越えてという条件付だが、平民ががんばって出世して最終的に公爵まで上り詰めるあたりは、 豊臣秀吉の出世に非常に似ている(事実翌年に秀吉の出世をテーマにした『太閤立志伝』が発売される)。

RPGにおいて、経験値を稼ぐには主に戦闘つまり海戦を行うのが常識だが、経験値に置き換えたであろう名声はその他に、 ギルドや(たまに)交易所で出る依頼を達成したり、自国の同盟港を増やす形で増加していく。

同盟港は、多額の金を交易所または造船所に支払うことで可能になり、他国の同盟港も可能になるわけだがその分その国の友好度が下がり、 相手国の同盟港には入れないことはもちろん(夜なら入れる)下手すればその国の艦隊に狙われることもある。 もちろん、それを返り討ちにして名声を上げる手段もあるが、この手が使えるのは財力も名声もある程度貯まった中盤以降でしかない。


実のところ、名声を上げる手段はいくらでもあり、平和的に名声を上げる手段もあれば他国を敵に回して(スペインとオスマンしかないが)一気に名声を上げる手段もある。 そう、最終目的を達成するまでの過程に対する答えはなく、金の稼ぎ方も交易するか他国または海賊を襲って戦利品を得てそれを売却するか、 はたまたギャンブルで稼ぐというやり方もある(稼ぎすぎるとできないという欠点がある)。

光栄のゲームは、主に大人向けのゲームが占めているため、ギャンブルもまた大人向けであるポーカーとブラックジャックの2種類で、 ポーカーは4人で最大200枚の金貨を賭け、運がよければ600枚の金貨を稼ぐことが可能なため、稼ぎやすさはポーカーが上に対して ばくちの危険性の少なさではブラックジャックのほうが上なのだが、ジャックポットがないこととどこの港でもセーブできるため、ポーカーのほうが序盤で稼ぐことができる。

交易にしても、どんな品々で売買したりどの港でやろうが自由で、それこそ変化する相場と組み合わせることで無限の交易路が誕生する。 ピサの美術品とナポリの羊毛といった地中海貿易はもちろん、カリカットの胡椒と欧州の武器類といった伝説の黄金航路を利用する手もある。 いきなりインドに行って胡椒を手にすることも自由だが、さすがに序盤では無理だろう。

いずれにせよ、このゲームには自由度が大幅に高く、船や艦隊の編成にしてもキャラックで商売したりガレオンで海戦をやったり、 それも複数の船で引き連れたり単独で進むことも自由など、多くのゲームにある色々な制約に縛られていたプレイヤーには満足するものがあったといえる。


しかし、その自由の大きさがプレイヤーにとって大きな足かせになったこともまた事実。 というのも、多くのプレイヤーは交易のイロハなど説明書を読んでもあまりわからず、うっかり遠出特にアフリカに行ってしまうと、 西海岸に必ずといっていいほど発生する暴風雨に巻き込まれ、地中海の北アフリカ付近を通るとアルジェ海賊に遭遇する危険が大きく、 航海に必要な水夫はともかくとして水や食料も同じ必需品で、散々海に迷った挙句それが切れて水夫がばたばた死んでしまって、最終的にはゲームオーバーになる可能性が高くなる。 厄介なことに、水も食料も交易品と同じ積載量に含まれるため、交易品を増やして資金を増やすか水と食料を増やして遠距離航海重視をするかを迫られる。

悲しいかな、序盤のヒントもなくいきなりわずかな資金と中古船等を押し付けられた上に、主人公をサポートする航海士がおらず(ロッコは航海士に登録されていない)、 どういう形で交易したらいいのかについてもゲーム前のOPで近海で稼ぐしかないとしかないため、 自由度が大きいこのゲームの初心者のために2つ港とその特産品で売りさばく手法を教えておくべきではなかったか。

続編ではそれを反省してか、リスボンの岩塩とセビリアの陶磁器のルートで序盤は手堅く稼げるようになっている。 プレイに束縛されない自由なプレイは大変結構だが、その度合いが大きければ逆にその時その場の目的を見つけにくくなり、途方にくれてしまうという格好の例といえる。

名声を多く獲得するために、どんなことをやっても自由でその幅が大きいのは、 ただひたすら名声獲得すればいいだけで途中の試練と達成における爵位獲得はエンディングの過程に過ぎず、そもそも一定以上の名声を獲得しても試練以外の特定イベントがほとんどない。 せいぜい、最終決戦におけるクリス王女の救出ぐらいだろうか。 あまりにもさびしいが、主人公がレオン1人で彼の周りのキャラも少ないことを考えると、まだこのシリーズの実験段階の意味合いが強いようだ。


とはいえ、名声獲得の基準が遠くの場所まで航海するあたりは、多少ながらもエンディングまでの道のりを暗示している感がある。 つまり、アフリカ西海岸の暴風雨を抜けて喜望峰までたどり着くあたりが中盤、インドと直接交易する頃から日本やアメリカ大陸までたどり着きさらにそこと色々貿易する頃が終盤と、
遠くに行ってそこに長く滞在するまでどの船を選ぶかどの交易品とどの航路が儲かりやすいか、 確かに最初は苦しいが一度その面白さを知ってしまえばとことんはまる、プレイヤーを選ぶゲームだがその分根強いファンがいるのは納得できる。

王の試練におけるアイテムや遺跡探索もまた、近場から次第に遠い場所に向かうあたりも、先に書いた遠海交易とあわせて高い爵位ほどそれだけ試練の難易度が高く、 一方でアイテムと遺跡の情報に詳しい港の酒場娘達と会話しながら、だんだんと遠くの港まで足を運びついでに交易をするところも、 序盤は近海で力を蓄え後半から一気に遠海まで達してという、プレイヤーがゲームに慣れていく感じを表している(自由なゲームほどそこにたどり着くまでが大変だが)。

なお、同盟港にする手段の投資は、その港の商業と工業の指数を上げることにつながり、前者は交易所に後者は造船所に投資することで、今までなかった商品や帆船などが登場し、 それがますますこのゲームにのめりこんだプレイヤーをますますのめりこませている。

ちなみに、このゲーム最強の船は工業指数が最高の1000になると製造できる重ガレオンで、史実では17世紀以降の登場となるだけに性能はすこぶる高く、 積み込める砲台の数が最大100で積載量も最大1000という化け物で、その船が複数そろえば圧巻ゆえにそれだけ多くの資金がかかるものの、とことんプレイする人にはもう1つの目標であったようだ。


次第に評価されてきたこの作品は、多くの機種に移植されFC版の登場は、PC版登場の翌年となった1991年。 この時は、今作と同様に貿易で金を稼ぐゲーム『虹のシルクロード』が登場しそこそこに人気を獲得、今でも根強いファンは多い。

PC版はもとより、FC版もまたどうすればいいのかわからず、暴風雨に巻き込まれたり水と食料が底を尽きてゲームオーバーになってしまったプレイヤーも多かったようだ。 PCより容量が少ないFCゆえに、絵はもちろんシステムも雑な感じが強かったが(操作がコントローラーなため)、 それでもPC版ユーザーには満足できる仕上がりでFCユーザーにとっても、虹のシルクロードをプレイした人にとってすんなりと溶け込めやすいものだった。

さすがに、FC版オリジナルの要素はなかったものの、一方で重要なシステムは手をつけておらず、主にグラフィックやBGMの質を下げて移植した感じが強い。 多くのACやPC作品は、そういう手を使う上に要素のいくつかを削除することがあり、グラフィックやBGMの質を下げる一方で新たな要素を追加するゲームは少なかった。 ACやPCのヘビーユーザーにとって、色々な箇所を犠牲にして新たな要素を追加してもあまり喜ばない人が多く、 このゲームのようにグラフィックとBGMの質を抑えて発売したものが喜ばれる傾向にあったようだ。


なお、FC版の容量は5Mと大容量の声が高かった4Mより1M多いが、5MのソフトはFCは当然として他のハードにもほとんどない。 FC版発売の数ヵ月後には、同じFC版である『信長の野望・武将風雲録』が6Mとして発売され、FCソフトの限界点と目された4M越えを目指していたのかもしれない。

この年は、FC最高容量である『メタルスレイダーグローリー』が登場したあたり、ユーザーの視線が次第にSFCに移りつつあった頃を見計らって、あっと驚く要素を色々詰め込んだ。 名作が大豊作だった前年と比べて、良作それもあまり世間に認知されない作品が多く出た1991年のほうが、バラエティが多く見つかりやすい。 大航海時代は、それらに当てはまる作品だったことからFCユーザーにも好評があり、 翌年にはSFCでグラフィックとBGMをPC版より強化した移植版(『SUPER』と付加されている)が登場し、やはりこちらも好評があった。


私は、このシリーズを初めてプレイしたのはUであり、それからV、Wと続けざまにプレイしていった。 ただ、それゆえに初代は初めてプレイしたのがレビューを書く2年近く前であり、存在自体は発売当時から知っていてプレイしてみたかったわけなのだが、 当時の光栄のゲームはパソコン移植ということで値段が高く、他のゲームの情報を見ていくうちにこのゲームをプレイしてみたいという衝動が減ってしまい、 続編を多くプレイするごとに逆に初代をあまりプレイしたくないという気持ちに変わっていった。

なお、初代を知ったのはファミマガを読んでのことで、プレイしたい気持ちになったのはそのファミマガの裏技を見たことによる。 どういうものかというと、名声をひたすら獲得し爵位を得てその爵位が王女と密会するまで上げて、王女の新密度もまた銀のロザリオで限界近くまで上げれば、 花束を贈るだけで国王から1万の資金援助がもらえるというすばらしいものだ。

当然、そこにたどり着くまでがかなり苦しく、1万を手に入れた分だけその喜びはひとしおといえる。 事実、PC版にもそれに近い裏技があったようで、王女を貢がせるという裏技を皮肉ったものをネットで見たとき、思わず苦笑した。


というわけで、裏技の魅力が頭の片隅に残っているうちに早速プレイした私だったが、続編以降それもUを多くプレイしていることもあって、序盤はUのようにうまく交易で稼ぐことができなかった。 レビューにも書いたが、どういう航路で金を稼ぐのかがヒントすら示しておらず、適当に交易した結果所持金がいつの間にか減っていることに気づき、どうすれば挽回できるのか路頭に迷ったことが時々あった。

また、航海の際進行方向を変えるとき、いちいち立ち止まる形で進路変更してしまうので、PC版はプレイしていなかったもののU以降をプレイしたことを考えると、操作性のほうは結構悪い。 それでも苦難にめげず、ネットの攻略ページを見ながらどの航路が設けやすいかどの商品が売れやすいかを参考にしながら稼いでいった。

その結果、最初にナポリとピサの二点間交易で稼いだあと、イスタンブールとアテネの2点間交易で大幅に稼ぎ、最終的に欧州とインドの黄金航路まで進むことができた。 黄金航路前には、ある程度爵位も上がってきていたので、ここで裏技を実行し王女を貢がせて楽しようという手段を敢行、見事成功させた。 しかし、最大所持金が65535しか持てず所持金を預けられる銀行もなく、主に商業と工業2つの指数を上げるためや造船に使ってしまったが。



本日のまとめ



こうかいのぶじを おいのりします

(08/2/5レビュー)
伝説のスターブロブ2への掲載:2019年5月24日
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