◆信長の野望・武将風雲録◆
FC最後の信長の野望



発売日:1991年12月21日   発売元:光栄   ジャンル:SLG
値段:11800円   おすすめ度:4.5(馬鹿高い値段がなければ)


信長の野望シリーズの第4弾で、正式タイトル決定前の開発コード名は『信長の野望W』と呼ばれていた。 光栄のプロデューサーのシブサワ・コウ氏の元、前作の戦国群雄伝を上回る作品を目指すべく、新たなスタッフ達を加入させ2年後の完成を目指した結果、1990年の末頃に完成を見た。 値段も、前作同様1万を超えるものだったが、光栄の代表作の1つであるということで相変わらずのヒットを記録し、PC版のみならずFCやSFCなどにも移植され、シリーズ最高傑作との声が今も根強い。

途中、信長の野望Wから『武将風雲録』に正式名称が決まったが、おそらく『全国版』と『戦国群雄伝』の要素を足しつつ+αの作品ということを考えたのかもしれない。 事実、戦国群雄伝開発終了と同時に武将風雲録の企画が始まったわけなのだが、スタッフの間には戦国群雄伝でやり残したことややれなかったことなどたくさんあったことを示している。 それは、城や武将が不当に評価されたことで、それらの子孫やファンから抗議や苦情が殺到したわけであり、スタッフとしてもそれを甘んじて受けざるを得なかったという苦悩が見て取れる。

光栄は、戦国群雄伝登場から武将風雲録登場までの間には、『三國志』シリーズを初めとして『蒼き狼と白き牝鹿 ジンギスカン』や『維新の嵐』、 といったSLGもしくはSLGにRPGの中間のジャンルとも言うべき『リ・コエイション』のゲームも登場していた。 それら歴史ゲームが順調にファンを獲得している以上、光栄の代表の1つである信長の野望が進化をしないわけにはいかなかった。

そこでシブサワ・コウ氏らは、先に書いたように前2作を足し合わせたもの、すなわち戦国群雄伝をベースにしつつも全国版の要素を取り入れた作品を作ったといえる。 幸い、CPUの容量は年を下るごとに上がっていき、前作では叶わなかった東北・九州両地方、下野、常陸、上総、下総の4つの国が追加、武将数も前作より数百人ほど増え、2倍近い700人の武将が登場した。

新規武将の多くは、前作で削除された地方の武将で、伊達政宗や島津義弘といった英雄達の登場は、ファンや子孫の心をつかんだ。 これにより、架空武将の存在はなくなり(烈風伝PWK以降は自分で作ることで誕生)シリーズにおける真の歴史ゲーム誕生となった。


シナリオにもかなり細工が施されており、シナリオ1の開始年代は前作まで桶狭間の戦いの年の1560年だったのが、5年さかのぼって1555年に設定されている。 桶狭間の戦いが、信長の野望の第一歩の象徴であると考えればこれは画期的で、 今作から3本のシナリオが登場し3本目となる本能寺の変は信長死後のシナリオとなっており、今作における信長が主人公という考えを覆したといえる。

同時に、太原雪斎や朝倉宗滴といった桶狭間以前に亡くなった武将も登場しているが、その多くはシナリオ開始年が没年であるため利用が難しいが(数年寿命を先延ばしできることを考慮しても)。 ただ、一部の移植版には容量の都合ということでプレイすることができなかった上に、そもそもシナリオ自体隠し物だったので、知っている人はあまりいないだろう。

シナリオ2本目となる信長包囲網は1571年、この頃は姉川の戦い後で信長が他勢力よりずば抜けているものの、それ以上に足利、武田を初めとした反信長勢力の連合が大きい。 つまり、信長でプレイして反信長勢力を潰すか、反信長勢力の一勢力をプレイして信長を潰すかの2通りが楽しめる(もちろん、それに関係していない大名をプレイする楽しみ方もある)。 1人プレイなら信長を、複数プレイなら1人を信長が残りを反信長勢力でプレイすれば、スリルと面白さはより増すだろう。


弱小大名についても、引き抜きはほぼ効果がないものの前作における国交換(領土を空にして豊かな隣国を攻め取る)や、共同軍の活用という手もある。 また、弱小大名とて隣国の強国に対抗できないわけはなく、宇都宮家だったら上野の上杉憲政だけ戦で狙えばよいし(シナリオ1のみ)、 河野家だったら友好度の高い毛利家と結んで大友家に対抗したりなど、講じる手段はいくらでもある。 どちらにせよ、食うか食われるかはプレイヤーの腕次第なのだから。

この状況における歴史イベントも増加し、じっくりプレイしていれば桶狭間の戦いや安土城落成などというイベントがお目にかかれるだろう。 だが、多くが実力モードの登場であり、そのモードのCPUは守りをメインとしている一方で、入門モードは攻めをメインとしている。 早い話、実力モードは隠された歴史イベントの多くを見つける意味合いが強く、しかも1Pしかプレイできないという孤立無援に近い状況を体験できる。


それ以外のイベントも、このゲームの華やかさに一役買っているが、特に注目したいのは訪問者によるイベントで、千利休や松井友閑といった茶人や鉄砲(鉄甲船)鍛冶らが該当。 どれもこれも、プレイヤーにとって有益をもたらす一方でやはり不利益をもたらす存在としても描かれているが、疫病や豊作といったイベントしかなかった前作よりバラエティが豊富だ。 訪問者イベント自体、唐突ながらも全て選択肢になっているので、利益を得ようが不利益を被ろうがこれもプレイヤーの選択次第。

戦も、前作までと違ってこれも多彩になっており、攻め込むルートによって戦場が変わったり場合によっては厳島の戦いといった古戦場の再現もある。 また新たに海戦も導入され、本州から四国に攻め込むときや九州から本州に攻め込むときなどは必ず海戦になっている(相模から安房に攻め込むときも同様)。
野戦が7日間になり、ターンも1ターンに3時間経過する仕組みになっていたり、遠距離攻撃専門の鉄砲が部隊を複数組むことで一斉射撃が出たり、 大部隊になるほど連続攻撃の効果が大きくなったり(例えば兵士21で2連続射撃可能)している。

国のステータスも変化があり、技術の導入が国家の命運を分ける存在となった。 それが250以上で鉄砲、500以上で鉄甲船が作れるというもので、前者は商人から高い金を払わずに製造できたり(技術が最大の状態で、政治力と教養100の武将に 鉄砲を作らせれば1丁につき金1で製造が可能)、後者は大砲の威力がすさまじく完成に莫大な金と時間が必要だが、兵科のステータスが大幅に低下する海戦ではまさに無敵。

金山の発掘にも技術が必要で(100以上)、高ければ高いほど採掘量(金)が増える反面、やりすぎると掘り尽してしまうという一長一短がある(数年経てば発見されることがある)。 内政の効能も技術と関係していて、技術が高いほどその効能が高くなり、政治力が高い武将で実行すればその効果はほぼ倍近くなる。


武将のステータスにも、『教養』という新しいステータスが加わり、商業のステータスの限界点存在である文化とリンクしている。 教養も国の文化も高ければよく、茶器や鉄砲の購入にも安く買うことができる。

公家風グラフィックの武将はそれに該当し、北条幻庵や武田信廉といった史実で文化の功績を立てたものの、 ゲームではあまりぱっとしない武将には教養が大幅に高くなっていて、前作では役立たずの代表の1人だった今川氏真も教養だけ90に迫っているので、 多少なりとも有効に活用できる可能性を見出したといえる(全てのステータスが低い武将でも、輸送といった能力とは関係ない仕事専門と割り切れば、多少なりとも使える可能性はある)。

茶器は、今作から登場した要素の1つであり、茶会を行って文化を上げたり褒美ということで家臣の忠誠度を高めたりでき(等級が高いほど忠誠度が上がりやすくなる)、 茶会においては武将の教養を上げたり摂津国とその周辺のみ商人今井宗久を招くことも可能。

今井宗久は、史実では信長の政商を務めたほどの大商人で、このゲームではなんと日本の商売(米の売買や鉄砲と茶器の販売)を牛耳っている存在になっている。 教養も文化もそこそこ高い場合でしか売ってくれず、彼との友好度は取引でしか上がらない上に大きい買い物以外ではあまりり上がらず、 鉄砲においては在庫が切れている場合もあり、とにかく物資を安く買いたければ宗久に平身低頭するしかない。

商人ごときに頭を下げるのは屈辱なのだが、そうでもしなければ天下は取れず彼に逆らうことは己の破滅を意味することになるので、 ここが戦国大名のつらいところではある(改造コードという手もあるがそれは反則)。


この他、兵科を自由に選べたり(その代わり騎馬と鉄砲に金がかかった)武将各自が所持していた兵士を国のステータスとして一まとめになったり、 武将の行動力が廃止されて政策は大名(または城主)の行動力で行うようになるなど、前作のイメージを残しつつ中身を大幅に変えていった。

大名の行動力は、前作と違って翌月には政治力の数値分回復する一方、政治力が低いと思うように富国強兵ができないので、 城主にする場合は政治力が高い武将を優先的にまわす対策がプレイヤーの間で一般化した(大名の場合は能力における分野が高い武将に任せればいいが)。

BGMは引き続き菅野よう子氏が担当し、織田信長を初めとして武田信玄、上杉謙信などの有力著名大名の専用BGMが登場、戦争シーンでも専用BGMがいくつも流れた。 特に評価が高いのはOPのほうで、信長の敦盛の舞とバックに能楽の雰囲気を出しているBGM、それが終わった直後にBGMが重厚なものに切り替わり、 著名武将の紹介とその隣に能面が代替わりに3種類を登場させ、BGMも次第に能楽の雰囲気になりつつあり、 最後の武将紹介が信長と能面が女面はいかにも主役を前面に押し出している(能面で一番有名なのは女面だろう)。

欠点は、総計48カ国登場したのはいいがその国の国境が大雑把になってしまったことで、代表的なものに、陸奥国や出羽国などがほぼ1箇所に組み込まれてしまったため、 特に陸奥国は陸前を除く地域をまとめていることで、南部家や大崎家といった大名が登場できなくなった。 他の地域でも、秋月家や安東家などがそういった理由で登場できなくなったと思われる。

今作でも、弱小大名の多くが不利な扱いを受けているが、里見家の場合海戦の登場で前作では相模しか攻められなかったのが、今作では下総と武蔵にも攻め込まれることになった。 国によっては、金山が掘れない上にステータスが低く、強国に囲まれた時には滅亡待ったなしと言う状況に立たされてしまう。 1571年の姉小路頼綱がその代表で、入門モードの上級では開始1年足らずで信長に攻め込まれてしまうため(柴田勝家が大将という場合多し)、 野戦に持ち込んでおとりの軍を差し向けて相手陣営の兵糧を奪うことしかない。

FC版は、前作発売から2年近く後に発売され、FCでは初の6Mソフトとして名を上げる。そもそも6Mのソフトはほとんどなく、他の機種でも6Mのソフトはほとんどない。 やはり、PC版と比べてスペックの小ささゆえに3本目のシナリオなど削られているが、それでもPC版に劣らぬ面白さを出したことは言うまでもないだろう。 最後に、初心者がプレイしやすい大名は、島津家、織田家、武田家、三好家ぐらいだろうか。


私は、信長の野望シリーズ中この作品が一番のお気に入りで、同時に初めて本格的にプレイしたことがある作品でもある。 ただし、FC版ではなくSFC版からでありそれも友達の家で、発売間もない頃からわいわい楽しんだ。

既に、全国版をさわり程度でプレイしていたことやファミマガで情報を入手していることから、すんなりとこのゲームに解け始めた。 ちなみに、このゲームを所持していた友達がトイレに行ってる間、別の友達が勝手にその友達が操作している大名を滅ぼしたことを今でも覚えていて、 その時トイレに行った友達は織田家を勝手に滅ぼした友達は北畠家を操作していた。

このゲームが我が家に来たのは、それから1年近く後の12月でSFC購入直前だった。 当然ながら、この手のゲームは1万を超えていてクリスマスプレゼントでも無理に近いものだったが、 その当時ファミマガのウソテッククイズに応募して正解し、さらに好きなゲームソフトを1本もらうことができた(正解者の中から抽選でたったの10名)。 それがこの武将風雲録で、SFC購入後もこのゲームを飽きるほどプレイしていた。


主役こそ信長で、国力はもとより家臣団の充実がすばらしく、武田や上杉といった著名大名や、三好や北条といった中堅クラスもプレイした。 だが、私が一番のお気に入りだったのが島津で、技術が最初から250と高く金山はもちろん鉄砲も最初から作れるというすごさだ。 家臣団も、信長のものと比べると質は劣るがやはり充実していて、鉄砲も既に100丁あるし日本の南端に位置するために、ただひたすら北上するだけという簡単な戦略で、あっさりと全国制覇を成し遂げることができた。

大学時代になっても、たまにという程度でプレイしていたが、さすがに島津ばかりでは簡単すぎて飽きたので、出身ということで主に上級者向けの宇都宮家をプレイしてみた。 島津に慣れていた私は、あまりの国力と家臣団の貧弱さに唖然としていて、プレイして1年ちょっとで山内上杉家が攻めてきた。 それも、猛将長野業正が大将というおまけ付きだったが、野戦でおとりの軍を出し敵がそこに目をむいている隙に、がら空きになってる敵の本陣を占領し兵糧を奪う手段でしのいだ。

それから、反撃に転じて業正をおとりでそらしている隙に、上杉憲政を倒して勝利しているが、幸い上杉謙信の援軍は来なかった。 そういった手段を講じて、20年近くかかったが宇都宮家で全国統一を果たすことができた。 もっとも、そのような手段ができるのは大名(城主)の武力が弱いためなので、謙信や武田信玄のような武力が高い大名は無理だったが。

レビューを書いてる現在、大学時代にプレイして10年近くたっていたので相当勘が鈍ってきた私は、さらに昔に立ち返って島津でプレイした。 なんといっても、鉄砲や鉄甲船の威力と金山の価値に惚れ惚れし、次々と相手大名を滅ぼしていくうちに勘を取り戻すことができた。

なお、レビューを書いているさなかにニコニコ動画で姉小路で全国統一をする動画を見ていたが、やはりあの人も私と同じ手段を使っていて思わずにやりとしたが、 織田家が開始1ヶ月それも毎月に近い形で攻めてくるのを見てさすがにうんざりしてしまった。



本日のまとめ



口ほどにも なきやつらめ

(08/1/27レビュー)
伝説のスターブロブ2への掲載:2019年5月24日
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