◆信長の野望・戦国群雄伝◆
初、定価1万突破のゲーム



発売日:1990年2月3日   発売元:光栄   ジャンル:SLG
値段:11800円   おすすめ度:3(知名度で強弱つける存在)


信長の野望シリーズ第3弾で、タイトルの『群雄伝』は今作から新しく登場した戦国大名の家臣にあたる武将達の事を指す。 これについては後述するとして、前作の『全国版』登場から2年の歳月をかけて登場した作品で、奇しくも初代発売からちょうど5年での発売という縁起のいいものといえる。 移植版は、他のシリーズと比べてあまり多くなく全国版や続編の『武将風雲録』の知名度の間の影に埋まってしまった感じがあるが、それでも熱狂的なファンが少なからずいるのも事実。

前作は、全国版だけあって北は東北南は九州の大名が登場していたが、肝心の配下武将はいないため大名が寿命や戦死で抹消されれば即座にゲームオーバーという厳しいもので、 弱小大名については加えて一揆や謀反で敗北してゲームオーバーになるという厳しいものだった。

大名の能力は設定されてはいたが、暗殺や合戦などといった軍事はもとより治水や開墾といった内政は、金によって決定されることが多いため、 有力大名の多くは財力があるということで、この作品から弱小大名は冷遇されてしまった。 空白地を、隣接している大名同士で入札したり、なんらかで死んだ相手大名の後釜に架空の大名が腰を据えるといったことなど、歴史SLGを名乗るには少々無理なものではあった。

全国版は、SLGの黎明期である1986年に発売されたため(PC版)、まだまだ改良の余地やシステムの荒削りがあったことはスタッフも認識していたようだが、 あえて発売したのはユーザーからシステムの不満が多くくることもわかっていたと思われる(そうすることで、次回作以降における制作のヒントにつなげることもできる、 多くのゲーム会社が続編を作るにあたりよく見られるであろう光景だ)。

一方、前年発売された『三国志』は信長の野望シリーズの元となるシステムが多くあったため、群雄伝はそれを参考にしたといえるだろう。 当時としては(今も)破格の値段でユーザーを圧倒したが、先に書いた理由により不満が大勢を占めることはなかったようだ。

BGMは、信長専用のものがあるなど種類も前作より豊富で、今作も前作同様『マクロスプラス』や『∀ガンダム』といったアニメ作品のBGMを後に担当することになる菅野よう子氏で、 菅野氏は三国志を初めとして多くの光栄(現コーエー)作品のBGMを手がけてくることになる。

武将の顔グラフィックも、多くの武将が登場する分専用のものが増えていく一方で、一般武将の顔の髭や髷などを変更した間に合わせ的なグラフィックも存在していて、 膨大な数の武将と同数のグラフィックの多さに絶望したためなのだろうか。


さて、このゲームのシステムの多くも全国版同様、後のシリーズに大きな影響をもたらした。 4季から12ヶ月の導入、居城の概念とそれにおける篭城戦の導入、野戦の朝昼夜の概念に加えて夜になったときにできる夜襲など、前作をプレイした人なら驚くものばかりである。

シナリオも2つ増え、『信長の野望』は1982年からはじめられるので、いつも1560年からはじめていたプレイヤーにとっても驚くばかりだ。 内政や軍事などといった政策コマンドは、今作に登場した政治力を置き換えた行動力で行われるが、大名だけでなく配下武将にも行動力があるため、政治力が低い武将にはとてもつらい。

種類は前作より増え、その中でも借金コマンドは金を借りるという面白いもので、続編以降では廃止されているところを見るとあまり人気がなかったようだ。 なお、取引を行う商人はたまにいないこともあり、せっかく米相場でこちらが取引に有利になったのに、肝心の商人がいなくてあきらめて、翌月の大幅変動で時期を逃して悔し涙を呑んだプレイヤーも多かったことだろう。


今作から登場、一般化する配下武将のおかげで、前作のように大名の寿命などによってびくびくしながらプレイすることはなくなり、内政・軍事共にやりやすくなっている。 ただ、政治力を行動力に置き換えている分、武辺者のような政治力が低い武将は使いづらく、大名も行動力を多く使って戦争可能の行動力を残しておかなければ、 隣接する大名に攻め込まれ防衛戦もできずに敗北、ゲームオーバーになっていく。

全国版に及ばないものの、1つの油断から瞬く間に滅亡に追い込まれる緊張感は健在だが、配下武将により大名が死んでも別の武将を後継者にできるので、 『大名死亡=滅亡』という図式はほぼなくなっている(1国しか所持できない状態で攻め込まれて負ければ別)。 行動力という制限があるものの、前作のように大名1人で国を動かしていたことを考えれば、以下に配下武将が頼もしく見えるものだ。

今作では、軍事力は武将個人で所有され兵科も決まっている上に、訓練も自分の所有する兵で行うため、戦争を行う際不自由な戦いを強いられる。 その上で、徴兵や訓練を自分の行動力で行うあたり、『ウィザードリィ』シリーズでのパーティにいながら所持金は個人持ちというスタンスと非常に似ている。 もっとも、再編成で鉄砲隊や騎馬隊を増やすというやり方もあり、これもまたWizシリーズでのパーティの資金を1人に集結させて買い物をし、その残りの金を分配または別のキャラに集めさせるという手段に似ている。


この配下武将の存在、前作までなかった分確かに頼もしかったが、同時にこのゲーム最大の欠点になってしまった。 織田や武田といった強豪大名は、配下武将の能力が高く助言を与える軍師が多くいる反面(シナリオ1の武田やシナリオ2の織田は軍師の宝庫)、 畠山や姉小路といった弱小大名(というより国の状態か)に属する武将の能力は低くなっている。

もちろん、強豪大名配下の武将とて名だたる者全てが優秀とはいえず、 上杉家の名宰相と謳われた直江兼次の魅力が40台だったり蜂須賀小六(正勝)の全能力が低水準にあったりなど、史実で英雄になった武将が報われていない感じがある。 一方で、大名の能力が高く設定され弱小にもそれなりに高い能力が与えられているが、 これは配下武将より大名を優遇するという光栄の方針が見て取れる(というより、全国版の影響を少なからず受けているのだろう)。

このように、著名武将には強くマイナー武将には弱い能力を与えられた理由はただ1つ、知名度が低い武将に関する資料が不足していたことに他ならない。 それでいて、知名度が高い武将にはべらぼうに高い能力が与えられ、シナリオ1では猪武者な扱いが強かった武将がシナリオ2になると政治力が大幅に増加しており、 例えば鈴木重秀(雑賀孫一)については政治力が85になっている。 柴田勝家も、シナリオ1では67なのに対してシナリオ2では87と20ほど高くなっているが、 これはシナリオ2までに史実で検地や刀狩といった政治政策を行っていたことの表れかもしれない(そういったことを調べたかどうかは不明)。

この他、今川氏真の能力が政治戦闘共に10台と、史実で父義元が行った政策を引き続き実行して成果をあげた実績が評価されていないなど、 続編以降で改善された能力と比べて資料不足または資料を細かく読んでいないことが見受けられる。 現に、能力が低くなっている武将の子孫から苦情が殺到したのは言うまでもなく、これ以降スタッフは多くの歴史資料を読むようになったが、マイナー武将の汚名挽回にはまだ時が必要だった。

また、400名の武将が登場するということはそれだけ多くの容量を食うことになり、全国版にあった東北、北関東、九州は削除された。 やはりこれも、伊達や島津といった大名などのファンや子孫から苦情が来ていて、城についても有名な城ほどやたら堅固にされており、 逆に知名度が低い城には堅城であったにもかかわらず低くなっているなど、これも歴史ファンの不興を買う要因ともなった。


だが、全国版のように国盗りメインから内政や軍事などの方針を自由に決められることは、天下統一における勝利のサイクル(内政と外交→軍事と情報収集→戦争に突入し勝利→内政…)を生み出し、 大名の国力や武将と大名の能力に応じてどういう手段から先に講じるかをプレイヤーなりに考えるきっかけにもなった。 群雄伝は、やはりシリーズの発展途上にあったわけだが、それでも前作に負けぬ人気を獲得、続編以降のシリーズ誕生のきっかけを作った。

FC版は、PC版発売から2年後の1990年だが、この時期はドラクエWやFFVといった著名作品はもちろん、多くの良作が登場するという大豊作状態だった。 そういった中で、FC版はFC史上初の1万円のゲームを登場させることになった。

かつて、多くの光栄作品ではせいぜい9800円程度で、それ以外についてもこの時期のソフトの値段は確かに前よりも高くはなっていたが、 FC版群雄伝は大人向けのゲームという認識があったのか、子供ユーザーを寄せ付けない値段で販売した。

主に、FCソフトの一般的な値段は5800円で、2本買ったほうがお得ではないかという考えがあるのかも知れない(あるHPにも、 馬鹿高いSLGより標準価格のソフトを2本買えばいいというコメントがあるほどだ)。 それでも、全国版にはなかった配下武将の存在などにより人気を得ることができた。

PCよりスペックが小さいFCでの移植なので、武将が死亡した際に登場する架空武将が容量などの都合により削除された一方で、最初は成人前だが数年後には元服して家臣になる未登場武将の設定が追加された。 もっとも、架空武将は1部の機種にしか搭載されていないため、未登場武将は続編以降における必要不可欠なシステムであることが伺える。

やはりFC版も、知名度が低い武将の扱いが悪い上に、東北、上野を除いた北関東、九州が削除されているという欠点があったため、PC版同様の不満が噴出したことは想像できる。 しかし、PC版で有効だった弱小大名による強豪大名にいる有力武将の引き抜き(『じんじ』の『とりたて』を選択)は健在で、FC版では対象武将忠誠度が100でも金1でなぜか寝返らせることが可能になっている。

これは、意図的なのかバグなのか不明だが、金1以外では引き抜きできないことを考えると、おそらく意図的なものと思われる。 最後に、前作から登場した著名イベント本能寺の変は、シナリオ2の信長をプレイして山城に信長と森蘭丸を、 丹波に明智光秀を配置して丹波の兵を多くしつつ山城の兵を少なくして待つといい(跡継ぎは信忠に継がせるといい、史実と違って死なないから)。


個人的に、戦国群雄伝は前作の全国版と続編武将風雲録の間にあるため、知名度は低いと思っている。 もちろん、全国版と武将風雲録のあいだにシリーズの1作品はあることは知っていたが、それがどういうものなのかは知らなかった。 というのは、全国版も武将風雲録も戦国群雄伝より多くプレイしていたためで、特に武将風雲録をやりこんだ私にとって戦国群雄伝はどうもプレイする気にはなれなかった(前の作品のほうが、 システムやステータスなどに中途半端が残っているため)。

結局プレイしたのは、発売から15年ほど後のことだがそれでも、先の理由により触り程度しかプレイしなかった。 箱・説明書付きで980円で購入し、全国版よりプレイのしがいがあるものの、もう1つ私がプレイを控えざるを得なかったのは、 政策を武将が行う際に政治力に置き換えた行動力が、配下武将にも適用されているためであった。

また、ネットの情報で東北と九州が削除されていることは知っていたが、まさか下野と常陸、上総と下総までもが削除されているとは知らなかった。 これも、私がプレイを手控えた要因の1つであり(私は栃木県出身)、本格的にプレイしたのはレビューを書く現在だった。


レビューを書くためにプレイするという心構えでプレイしたのはよかったが、内政で大名の行動力をほとんど使ってしまったために、隣国にすぐさま攻められて即滅亡しゲームオーバーとなってしまった。 攻め込まれた時に大名の行動力が40未満になっていると、野戦や篭城戦すらできないことを知らなかったので、ゲームオーバーの画面を見て唖然とすることになった(それも数分ぐらい)。 兵の運用も武将ごとに兵科が違うために、騎馬や鉄砲を買ってそれを戦のときに出陣する武将たちに振り分けることができず、戦闘力が高い反面政治力が低い武将を出陣させるにも至難の業だった。

ただ、再編成で戦闘力が一番強い武将に兵の多くを預け、それより前に訓練で訓練度を100近く上げておけば、よほどのことがない限り負けることはない(鉄砲隊ならなおさら)。 そういったことを考えると、続編以降では兵科の元となるものを購入する費用や手間が省ける利点がある。とはいえ、野戦において鉄砲攻撃なのに反撃されるのはいったいどういうことなのか疑いたくなる。

最後に、私は国力武将の質で優秀な織田家を選んだが、前にも書いたように本格プレイしょっぱなで信長の行動力を使い切ったばかりに、斎藤義龍に攻め込まれあっけなく滅んでしまった。 この後、着実に富国強兵をして金1で敵武将を寝返らせて、はかりごとで強国同士を仲たがいさせて攻め込んだ。

この繰り返しで10数カ国得ることができたが、さすがにめんどくさかったのでいきなりシナリオ2でプレイすることにした。 全国統一エンディングを見たいことと、本能寺の変を見たいことの2つの理由であり、特に後者はネットでイベントを出させる方法を見つけて早速実践したが、 なかなか光秀が謀反を起こしてくれずようやくイベントが見られたときは、感動したと同時にほっとした。


本日のまとめ



こよいはこれまでにいたしとうございます

(08/1/25レビュー)
伝説のスターブロブ2への掲載:2019年5月23日
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