◆悪魔城伝説◆
シリーズ第3弾ながらも原点回帰



発売日:1989年12月22日   発売元:コナミ   ジャンル:ACT
値段:6500円   おすすめ度:4(特殊チップによる全ての高性能化)


15世紀のヨーロッパ、ここに一人の男がいた。トランシルバニアの領主ブラド=ツェペシュ、またの名をドラキュラという。 殺戮を喜びとし、破壊の限りを尽くすことに飽き足らなくなった彼は、はるかなる太古に失われし魔法を復活させ、暗黒邪神をこの世に復活させた。

ドラキュラは邪神の力を借りて、忌まわしき怪物を次々と世へ送り出し、ワラキア全土を暗黒と殺戮の地へと変えていった。 そして、自らの野望に狂ったドラキュラは、ついにその魔の手をヨーロッパ全土に広げようともくろんだのである、この地を汚し地で染めようと。

このことを重く見た正教会は、彼の野望を阻止するためドラキュラ城に私設軍隊を送り込むなどの手段を講じた。 また、かの地でもドラキュラに対して、果敢に戦いを挑もうとする者達が、ドラキュラ城を目指して旅立っていった。

ドラキュラに対して戦いを挑もうとする者達を、人々は『ヴァンパイア=ハンター』と呼び、主に修道院の僧侶サイファ=ヴェルナンデス、 トランシルバニアにおいて身軽さで評判のグランド=ダナスティの2人が有名であった。 だが、誰一人として生きて帰ってきたものはおらず、正教会の手段も次第に減っていった。

とうとうなすすべがなくなった正教会は、遂に真正ヴァンパイア=ハンターと呼ばれるベルモント家に、ドラキュラ討伐をゆだねることを決意した。 ベルモント家でははるか昔、そう11世紀にまでさかのぼる古い歴史と血筋を持ち、ドラキュラといった多くの忌まわしき者達との戦いの中で生き延びてきたという一族であった。 しかし、そのあまりにも人間離れした能力の一族であるがために、人々から恐れられ疎んじられてきた。

そのため、いつしか人々の前から姿を消し、久しい間彼らの姿を見たものはいなかった。 彼らが、ひっそりと暮らしてきた背景にはこういった事情があり、ヨーロッパ全土のドラキュラ騒動の頃には、ベルモント一族は散りばらばらになっていて彼らの捜索は困難を極めた。

それでも、正教会などのキリスト教会派を束ねるローマ教皇は、あらゆる手段を講じてベルモント一族を捜索した結果、 ようやく一族の血を受け継いだ人間にめぐり合うことができた。名をラルフ=C=ベルモントという。 シモン=ベルモントの時代よりさかのぼること200年、ドラキュラとの戦いはシモンの先祖であるラルフの頃から始まったのである…。


FCにおけるドラキュラシリーズ第3弾で、『ドラキュラV』という開発コード名で制作が進められていたが、 正式タイトル決定において『V』がはずされたのはシモンが活躍する前の時代を舞台としているためなのだろう。

事実、2008年の現在まで登場しているドラキュラシリーズで、『U』などのように続編が明記されているのは、 ディスク版のドラキュラ2作とGBの『ドラキュラ伝説』シリーズ、PCエンジンの『悪魔城ドラキュラX』シリーズ(続編はSFC)ぐらいだ。 とはいえ、ドラクエシリーズにおけるVはUはもちろんTの前の時代を舞台としているが(他に続編が前作の前の時代を舞台としているゲームはいくらでもある)。

 3作目となる今作は、初代のシステムに立ち返っているがそれは置いておいて、前作ではRPGブームの影響を受けたのか、 ところどころに謎解きの要素が多く仕掛けられ、主にサブウェポンの聖水は壁を壊して道を切り開くために使われた。

早い話、外見上は初代とほぼ同じだが、大幅なシステム変更や町の住人の多くの情報が偽で、多くの面でアクションRPGとして失格だった。 当然、ファンの反応もいまいちで、初代の名声も一気に吹き飛んでしまったようだ。

翌年に登場したAC版は、FC版初代を一新した作品で、グラフィックやBGMは高い評価を得ていたものの、 難易度が高い上に最強の武器が鞭(ロングチェーンクロス)ではなく剣だったり、そもそもFC版の知名度が高すぎたためにマイナーな扱いを受けてしまった。 さらに翌年に登場したGBのドラキュラ伝説もまた、プレイヤーの性能が悪く結果的に難易度が不条理に上がってしまっていることもあり、これも評価は芳しくなかった。

結果的に、初代から悪魔城伝説までの間に登場したシリーズ3作品はあまり評価がよくない結果に終わってしまった。 ここにおいてコナミは、初代の人気がどのくらい高かったか痛感したのかもしれない。

悪魔城伝説のシステムが、初代の要素を多く引き継いでいるのも、そういったことが関係しているものと思われる。 もちろん、3作品も熱狂的なファンは少なからずいるのだが、初代のファンと比べればやはり少ないのが現状で、コナミとしても支持が多い初代に目を向けたのではないだろうか。


ともあれ、FC第3弾は初代をベースにしつつも、多くの新システムを導入した。1つがいくつか登場する分岐点と、もう1つが3人のパートナー。 前者は、一本道だった前2作(Uは攻略手順は豊富だが、全ての館を行かなければならない)と比べてステージ構成のバリエーションが豊かになり、 1度クリアしただけではプレイできないステージもあるので、分岐点での決定如何によって長くプレイできる。

ステージ構成は、基本的に初代同様1ブロック(ステージの意)に3エリア分かれているが、3エリア目にボスが必ずいるとは限らず、 1ブロックが3エリアを超えるブロックもあり途中にいるボスは中ボス扱いとなっていて、初代のブロックよりやたら長くなっている。

事実、今作でもセーブ機能は付属されたものの、ROMカートリッジになったためディスクセーブではなくパスワードに変更され、ゲームオーバー時に表示されるようになった。 内容は、名前を入れてから4×4の16マスに鞭とロザリオとハートを入力するもので、 ディスクセーブの代わりに近いバッテリーバックアップを導入しなかったのは、アクションにおける時代がそれを必要としていなかったと思われる。

後者は、僧侶のサイファ、身軽な男グランド、ドラキュラの息子アルカードのことで、特定のステージをクリアすれば仲間にできるが、 原則として1人しか仲間にできず仲間がいる状態で別のキャラを仲間にすると、以前の仲間とは別れてしまう。

もちろん強制的ではなく、やろうと思えばラルフ1人でクリアすることも可能。 3人ともサブウェポンを装備し、どれもラルフに劣らず個性的なものの、ライフは共用で全体的にラルフより能力が劣っているため、本当に使えるキャラといえばグランドだろう。

彼には、壁に張り付く能力を持っているため、常人では考えられない形でのショートカットも可能で、 アルカードは特殊ウェポン扱いとなっているコウモリ変化での空中浮遊も、グランド以上にショートカットの幅が広がっている。

ただ、性能からすればグランドのほうがアルカードより勝っていて、アルカードは所々に欠点が見受けられる一方で、 あまり使えなさそうなサイファは唯一の女性であるため、プレイヤーによっては攻略を有利にしたいのはもちろんだが、 仲間を連れて行くことでのストーリー展開も面白いので、3人ともパートナーにしてみるのも一興だろう。

そのパートナーと分岐点を合わせれば、攻略手順が違うためなどによりますます飽きずに楽しむことが可能で、セレクトを押すだけでいつでもどこでも交代ができる。


新システムではないが、このゲームの大きな特徴として特殊チップが導入されている。 無論、コナミ独自に開発したFC用特殊チップVRCシリーズで、『沙羅曼蛇』から始まり『魂斗羅』にも活用され年が進むごとにその性能も上昇し、 悪魔城伝説登場の頃はYまで進んでいた(『ラグランジュポイント』では7も登場)。

VRCは、もともとゲームの音源を上げるためのチップだったがもう1つ、グラフィックの質の向上や背景の変化に厚みをもたせている。 特に背景の変化については、仕掛けと背景がチラツキなしで動いており、それをよく表しているのが時計塔の足場となる歯車と背景の歯車だ。

BGMも、ディスクの音源より質がよくなり、裏技のサウンドテストもあることから、いかにコナミが音に対しても気を配っていたのかがよくわかる。 ゲームにおいて、音は重要なステータスの1つであり、ファミマガの評価の項目に音があるが、悪魔城伝説は他の4項目の中で一番高かった(ほぼ4で合計が20点以上をマーク)。

サウンドテストは、ウル技で必ず大関技(賞金5千円)になるほどで、クソゲーでもサウンドテストが見つかればそれだけで5千円がもらえた。 なお、悪魔城伝説のサウンドテストは説明書に載っていたため、このゲームのBGMをプレイヤーに聴かせてあげたいと同時に、それが自慢であることを表しているようだ。


いずれにせよ、特殊チップによるBGMやグラフィックの強化、3Mという大容量(ディスク2作は1Mだった)によるステージ数の増加やパートナーの導入など、 全てにおいてFC版をパワーアップさせたものであり、FCのドラキュラ本編最後にふさわしい出来となった。

しかし、シモンのサブウェポンの新規追加がなかったり(その代わりにパートナーのサブウェポンが導入されているのだが)、 先にも書いたがパスワードがゲームオーバーでしか取れないのは、少々マイナスポイントか。

パスワードの導入については、前2作の真似のつもりなのだろうが、これについてはステージクリア時にも導入すべきだろうし、 パスワード自体パスワードがあっていてもそれがプレイヤーの名前と一致していなければ使用できないという理不尽もある。 ここだけ、名前とパスワードのリンクを削除するべきものでそれ以外は欠点と見るべきものはなく、初代で培ってきた地位などを一気に取り戻すことができた。


昔のドラキュラシリーズにおいて、悪魔城伝説は初代の次に面白いと思っている。 存在を知ったこととプレイした時期はほぼ同じで、その時ファミマガを毎回読んでいた私はこのゲームの記事にわくわくしていた。 他のゲームの記事にもわくわくしていたが、悪魔城伝説については初代をプレイした頃を思い出したのだろうか、かなりわくわくしていた。

プレイについては、近くの古本屋の前の100円で約10分間ファミコンをプレイできるテレビでやっていた。 何百円使ったか忘れたが、おそらく千円近くにまで上っていたと思う。それくらい、このゲームに夢中になっていた。

それから現在、レビューする目的で箱説明書付きを980円で購入してプレイしたが、OPを見ていきなり衝撃を受けた。 それは、小さいフォントながらも所々に漢字が使われていることで、当時OPをすっ飛ばして本編をプレイしていた私にとって、言葉が出ないほどその衝撃は計り知れなかった。

数年前から、小さいフォントで漢字を混ぜ合わせるゲームは知っていたし、大きいフォントでも漢字を混ぜ合わせるゲームもあることも知ってはいたが、悪魔城伝説も漢字を使っていたことはまったく知らなかった。 もう1つ、私を驚かせたのがパスワードの存在だったが、前にも書いたようにパスワードを取って次回に持ち越そうと思うほどその昔の私はとても裕福ではなかったので(親に管理されていた)、 現在プレイしていることを考えると単に忘れていただけだと思う。


初代のほうが長時間プレイしているので、悪魔城伝説のパートナーよりもステージ構成にも思わず感心した。 主に、階段を上っていくエリアもあれば強制スクロールになっているエリアもあり、当時分岐点によってプレイしていなかったこともあわせて、色々関心と驚きが入り混じっていた。 BGMも、多くのサイトなどで賞賛していることから、サウンドテストで聴いてみると思わず納得し、特殊チップのコナミと思わずに入られなかった。

とはいえ、元々アクションが苦手だった私はいきなり最初のステージで苦労し、パートナーも主に使えるのがグランドだったので、よほどという時以外はラルフで押し通した。 パスワードも、名前とパスワード内容とリンクしていることを初めて知ったので、サイトに載っているパスワードを入力してそれができなかったとき、一瞬「あってるだろ!?」という心の叫びを出した。 そういった意味では、あと一歩のところで初代の壁が越えられてないなと思うものの、駄作の感じが強いUをプレイした後なので、パスワードの理不尽な要素は許容範囲なのかと考えるしかなかったが。



本日のまとめ



そうですか! だいちの せいれいが わたしに ちからをかしてくれるでしょう。 さいごまで よろしく。

(08/1/21レビュー)
伝説のスターブロブ2への掲載:2019年5月21日
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