◆ボコスカウォーズ◆
PC版で名作だったはずが…



1985年12月14日発売   発売元:アスキー   ジャンル:SLG
値段:5500円   おすすめ度:1(改造コードを使わないと何とも…)


時は中世、暴君として名高いバサム帝国の帝王オゴレスは、世界征服を夢見ていた。

それを実行するために、まずは隣国のスレン王国に軍を差し向ける。

これを知ったスレン王は、すぐさまオゴレス軍迎撃のため出撃準備を整えるも、強大なバサム帝国の軍事力に、小国のスレン王国がかなうはずもないということは、誰が見ても明らかだった。

そこでスレン王は、オゴレスの軍を打ち破るべく、わずか十数人の兵卒と騎士を引き連れて、オゴレス軍に奇襲攻撃をかけることにした。オゴレスさえ倒せば、バサム帝国の軍は自然と烏合の衆になることを読んでいたからである。だが、バサム帝国はなかなかに地形が複雑で、最悪部隊と連携が取れないこともあるという。

果たしてスレン王は、見事暴君オゴレスを討ち、世界に平和を取り戻せることが出来るのだろうか…?



今も昔も、レトロゲームを語るとき何かと話題が多く、いろんな意味で外すことの出来ないゲームの1つとなっている。

何故そうなっているのかについては後ほど説明するとして、まずはこのゲームの出所だが、1984年パソコンのMSXから発売された。このゲームは、ラショウこと住井浩司氏の制作したものだが、個人で作ったのであってゲーム会社が作ったものではない。

ラショウ氏は、プログラマーであり漫画家でもあり、そして経営者でもあるが、その経営者兼プログラマーの才能を存分に発揮した『イタチョコシステム』なるものが誕生する。どういうものかというと、個人経営のゲーム会社と呼ぶもので、1994年に誕生し現在に至っている。現在のラショウ氏は、本業が時々コケることもあってか、本業よりアルバイトの方が多いらしい。


発売されたといっても、それはMSXでのことであって、誕生したのはそれより前の年であった。

元々このゲームは、MSXで発売する予定はなく、シャープが開発したパソコン『X1』で販売する予定であった。というより、このゲームが作られたパソコンはX1であったためなのだが。

X1は、後に隆盛を極めるX68000シリーズの原型であり、富士通の『FM−7』シリーズやNECの『PC−8801』シリーズと共に、『8bit御三家』と呼ばれていたほどの実力を持っていた。特に、専用ディスプレイなどを利用して「パソコンでテレビが見れる」といった画期的な要素を備えており、他のホビーパソコンとは一線を画していた。

その分、ゲーム機としての機能はあまり備えていなかったのだが(現にX1専用ソフトはあまり見かけることが少ない)。翌年、アスキー(現エンターブレイン)主催の『アスキーソフトウェアコンテスト』の第1回で、グランプリを受賞した。


この時期における、アスキー発行のパソコン雑誌『LOGIN』との関わりは不明であるが、84年5月号の『スター・ゲームデザイナー登場』のコーナーで、この年に開催されたアスキーソフトウェアコンテストグランプリの作品と作者(5人グランプリ受賞)が載っていたので、多少なりともコンテストに関わっていた可能性が強いと思われる。

このコンテストは、この年から毎年行われ、数々のユーザー制作の優秀な作品が登場していった。そして、社名がエンターブレインに変更されても、そのスタンスは変わっていない。

ちなみに、当時のグランプリ受賞における賞金は何と2000万円となっており、それも5人に給与されている(つまり合計一億円)。他にも、優秀賞には50万円(10名)、入賞者には20万円(50名)と、アスキーがコンテスト受賞者に支払った金額の合計は1億1500万円となっており、いかにアスキーが優秀なゲームデザイナーを発掘していたことがよくわかるはずだ。

これにより、供給ハードの予定だったX1から、マイクロソフトとアスキー(当時MSとアスキーは強い結びつきがあったが、2002年に提携を解消)主導のパソコンのMSXに発売することになった。ラショウ氏による、イタチョコシステム誕生(誕生は1994年)のきっかけとなった出来事であった。


さて、『ボコスカウォーズ』がグランプリとなった要素は、オゴレスの元にたどり着くまでにおける多彩な戦略であった。

内容は、最初スレン王がたった1人でオゴレスの元に向かうわけだが、道中で木や岩などにされている兵卒や騎士を救い出し(木や岩などにされた過程は触れられていない)、群がる敵を倒しながら最終的にオゴレスを討つというもの。

ステージは存在しないものの、スタート地点からオゴレスまでの距離は600mで、100m間隔で5つの区切りがある。オゴレスとの距離が近づくにつれて、地形が複雑になり敵も大量に登場する上に強くなってくる。

ストーリーにもあるが、オゴレス軍の数は180で対するスレン軍はわずかに50と、オゴレス軍の約4分の1しかない。


しかも、先ほど述べているように、兵卒や騎士全て木や岩などにされているので、場合によっては最大数の数分の1の軍を率いなければならない。これを乗り切るために、このゲームでは多彩な戦略が用意されている。

主に1つは、行軍の邪魔をする敵に味方の軍をぶつけ、自分はその間に先に進むというものともう1つは、わずかな軍(もしくはスレン王1人だけ)で敵の包囲網をかいくぐって進むもの。どちらも高度な戦略なので、普通のプレイヤーはそういったことは出来ないかと思われる。

そこで登場するアイデアは、部下の昇格である。

これは、敵をどんどん倒し続けると、やがてレベルアップする(敵を倒した数による)ことになり、全ての能力がアップする。兵卒や騎士も、それぞれ違うクラスに昇格できるのだが、このゲームにはHP制が導入されており、なかなに昇格は難しいのだが。とはいえ、昇格すれば他の敵との戦闘に勝利する確率は増える。

戦闘における勝敗は、パラメーターとHPの高さで決まる。もちろん、ランダム性もあるのでそう簡単に結果は出ないが、それでも大抵ユニットの性能で決まることが多い。

なお、戦闘するときに出るBマークは『ボコスカ』のBであり、このゲームのタイトルに由来しているといえる。


ここまで読むと、さぞかしすばらしいゲームだなと思うかもしれないのだが、実はある要素により大部分のプレイヤーからクソゲー扱いされている。もっとも、MSXといったPC版ではそういった批判は出なかったが、1985年に発売されたFC版ではそういった意見が出ることになった。

そのある要素とは、完全に運頼みによるもの。

FCに移植する際、容量の都合によりHP制を廃止した代わりに、PC版では決めてとなりえなかったランダム要素を全面的に押し出し、戦闘そのものをランダムにした。つまり、自軍最強であるスレン王が、敵の一兵卒にやられてゲームオーバーになることも珍しくはなかった。

このため、序盤でゲームオーバーになる事態が続出し、最悪スタートから間もない所で敵の一兵卒に何度もゲームオーバーにさせられ、あまりの理不尽さに激怒しカセットを床に叩きつけるプレイヤーもいたほどであった。


さらに、オゴレスを倒すには必ずスレン王だけで戦わねばならず(他のユニットだと必ず負けてしまうため)、これも運頼みの戦闘のため場合によっては、せっかくここまでたどり着けたのに最初からやり直すことにもなりかねず、これもまたクソゲーの要因の1つとなっている。

その一方、PC版のような高度な戦略も可能となっている上に、完全に運頼みとはいえ運がよければ意外とさくさくといけることから、一部のプレイヤーでは名作と謳われている(あくまで運がよければの話だが)。

また、大軍を率いて進軍するゲームというのは、当時としてはほとんど存在していなかったことから、実際に大軍を率いて興奮したプレイヤーもいた。もちろん、PC版同様スムーズに行軍出来なかったが(数指定の行軍が出来なかったり、各部隊における移動指定などといった臨機応変な指示)。

故に、現在ではこれをクソゲーとするユーザーと、これを名作とするユーザーとの間で激しい議論が巻き起こっている。ただ、勢力的には名作派の方が弱いかもしれない(FC版のみ)。しかも名作派の中には、FC版の理不尽なところを面白いというだけで支持に回る人もいるため、実質的に真の名作と考える人はあまり多くないと思われる。


これとは別に、説明書に書かれているこのゲームの歌詞も話題となった。


進め 進め ものども 邪魔な 敵を 蹴散らせ
目指せ 敵の 城へ オゴレス 倒すのだ


この歌詞は、当時として(今も)は単純でインパクトが強いことなどから、ゲーム雑誌やレトロゲームを紹介するサイトなどから徐々に広まっていった。名作派に回っている人の中には、この歌詞にあこがれている人も含まれている。

いずれにせよFC版ボコスカウォーズは、さまざまな要素を導入したことにより、PC版以上の知名度とインパクトがあったことは疑いようもない。最近では、Iモードなどにも移植されているが、移植された機種ベースはFC版ではなくPC版(MSX版)であるが(しっかりとHP制が存在している)。



このゲームは、FC本体と同時に買ったゲームの1つであるが、同じく同時に買った『スターソルジャー』と同じく強い印象があった。ただし、スターソルジャーのようないいイメージではなく、悪いイメージ(負のイメージ)なのだが。というのも、このゲームにおいて散々泣かされたことがかなりあったためであった。

先ほど述べたのだが、このゲームは運の要素がそのまま前面に押し出しており、いつも序盤でゲームオーバーにさせられたことがあった。運が悪いときは、最初に出てくる兵士でやられていたり、運がよくても150m進んだところで敵にやられたりと、中盤すら進めずオゴレスに会ったことは一度もなかった。さすがに、カセットを壁に叩きつけたりはしなかったが、小さい頃にプレイしたためか色んなトラウマが付きまとうこととなった。

この後、たまにプレイする程度であったが、それでもオゴレスに会うことができず、結局クソゲーと認識し昨年までプレイすることはなかった。

その昨年、私のHPでレビューしたのだが、レトロゲームレビューコーナーで紹介した最初のゲームであり、しかもレトロゲームサイトではなかったので、あくまでも自分の欲求を満たすための存在でしかなかった。さらに、昔のトラウマが今も根付いていたこともあって、レビュー文章はまさに支離滅裂もいいところで、自分のトラウマを前面に押し出したことも文章表現の悪さを印象づけてしまった。

それから現在、レビュー文を修正すると同時に、今一度プレイすることにした。今回は、改造コードを使用していることやエミュレーターの性能を十分に理解していることもあって、昔よりもはるかにさくさくプレイすることができ、大軍を率いることも出来た。そしてようやく、初のオゴレスとの対面後の戦闘で勝利して、これも初めてとなるエンディングを拝むことが出来た。

ここに来て、ようやくこのゲームの面白さが判ったような気がしてきた。

しかし、それでも私はこのゲームをクソゲーとすることに変わりはない。なぜならば、いくら改造コードでクリアしても、昔のトラウマは壮簡単に消えることがない上に、このゲーム自体個人的にネタそのものだから、本当にどうしようもない(フォローのしようがない)。



本日のまとめ


WOW!

YOU LOSE!

06/11/30修正
伝説のスターブロブ2への掲載:2019年3月31日
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