◆ミシシッピー箱の裏事件◆
没テキスト、ソフトの裏、海外版と調べたが、まだまだミシシッピーの謎は尽きなかった…。


没テキストが大量にあり、それは海外版(原作)のテキストを日本語に直訳したもので 原作とゲームシステムが変わったので使われなかったのも結構あった、というようなことが分かりました。

さて、説明書やソフトの裏、パッケージ(箱)に印刷されたゲーム画面が実際のゲームの内容と 違うというのは非常によくあることです。ソロモンの鍵しかり、 初代ポケットモンスターしかり…。

で、このミシシッピー殺人事件の箱の裏も実際のゲームと違うんだよなと思い続けており、 やっとそのことを話題にすることにしたのでした。というわけでまず箱の裏側はこんな感じになっています。


左側には、ゲームの概要となる説明が書かれています。「舞台は静かな デルタ・プリンセス号の船の上。突然起った殺人事件によって乗客たちは恐怖につつまれた。」とあるが、 そこまで恐怖に包まれてはいない気がする。

思えば殺人犯と同じ船に乗っていることになるんだから、全員に身体検査を厳重に行って 凶器となり得る物を完全に排除した上で船が目的地に到着するまで勝手な行動を許さない、 ぐらいなことをするんじゃないだろうか…?のんきにオクラのスープの話なんてしている場合か…!?

「容疑者にはそれぞれアリバイがある。」とのことだが、あるか?? ちゃんと証明できるアリバイを持つ人、そんなにいなかったような気がするのだが…。(告発失敗時に分かる人もいるが…)

「アリバイは、はたして崩れるだろうか?!」と煽ってくれているが、 このゲームをクリアするカギは真犯人のアリバイを崩すことではなくメモを取り忘れないことである。 犯行時刻、真犯人が眠っていたという(誰も証明できない)アリバイを崩すために物的証拠を探すわけじゃないし… どっちかというと、動機を探す感じだ。

さて、この箱の裏には4つの画面写真が載っています。パッと見は実際のゲームとは違うところはなさそうですが、よく見てみましょう。

こちら、誰もが知る「ミシシッピー殺人事件」のオープニングです。 ストーリー攻略の1ページ目に全文を書いていますが、 とりあえずこの最初に表示される文字は以下の通り。

「セントルイスを出て広大なる ミシシッピー川をくだり、ニューオリンズへと向かう外輪船デルタ・プリンセス号。 その一等船室では、探偵チャールズが助手のワトソンを連れて乗り込んでいます」 …と、なっています。

箱の左上のオープニングの写真では…。

画像には違いはなさそうですが、テキストの前半は 「セントルイスを出て広大なるミシシッピー川をくだり、 ニューオリンズへと向かう外輪船デルタプリンセス号」となっています。 改行位置が「外輪船」の後になっていて、「デルタ・プリンセス号」という中点がありません。

「その一等船室では、有名な探偵チャールズが助手のワトソンを連れて ある発見をしようと乗り込んでいます。」というのが後半。

実際のゲームの中にはなかった「有名な」という一言が我らが主人公の探偵チャールズにくっついています。 この一言は結構大事なんじゃないだろうか…?権威ある名探偵、という意味で…。

というか気になるのは「ある発見をしようと」という一文。 実際のゲームにはその一節はありません。どんな発見をするつもりだ?!もう何か察していたのか?それとも 別件で追っている事件?そんなのはゲーム内には登場しないが…!?

ところでこの部分の原作のテキストは、「Aboard the sternwheeler S. S. Delta Princess, New Orleans bound twelve hours out of St. Lovis, Sir Charles Foxworth,well-known sleuth, along with his manservant Regis, travels, first class naturally, on a simple voyage of discovery down the vast waters of the Mississippi River.」 …と、いうことになっているので直訳しただけかもしれません。

さて次は箱の裏の右上の写真。階段の前にいて、メニューを出しているところのようです。 何も違うところはないかと思いきや、そのメニューの項目がおかしい。 「あるく」ではなく「あるきまわる」になっています。 あ、歩き回る…!?なんかニュアンスが違わないか?!

「さがす」はそのままのようですが、「しらべる」という項目は存在しません。 チャールズの部屋である3号室でメニューを出すと「しょうこひんを しらべる」という項目が出ますが、 そもそもこの画面写真の位置のような部屋の外では出ません。

部屋の外でも「証拠品を調べる」の行為ができたのか? それとも部屋の外で「しらべる」を選ぶと「証拠品は部屋に帰ってから調べましょう、先生」のように ワトソンに言われるだけだったりしたんだろうか。

それに、この状態で「はなす」があるのもおかしい。誰もいないのにそれを選んだら「だれに はなしているのだ。」と ワトソンに言われたりしたんだろうか。

同じ写真を撮影しようと思って歩き回りましたが、 箱の右上の画像と同じ場所がない。12号室の扉は画像サイズの関係で 見切れてしまっているのかもしれないが、チャールズ先生の後ろに白い柱が存在している 場所というのがどこにもないのである。

非常にどーでもいい違いだが、元は2階の階段の後ろには柱が一本あったんだろうか? 屋根の長さも違うし…。

さて次は左下の画面写真。 セリフからして、ウィリアムさんの部屋に初めて入ったときのシーンのようです。

「ごきげんいかがですか。 ちょっとよろしいですか、私はチャールズと言います。そしてこれは助手のワトソンです」

「私はウイリアムです。私のボランティアに寄付なさりたいのですね」
…という会話になっています。 実際のゲームと全然違います。

まずチャールズ先生とウィリアムさんの会話の間に 空白行が設けられて誰の発言なのかが分かりやすくなっています。

そしてウィリアムさんの発言が「私はウイリアムという者です。 ボランティアをして、世の中を平和にしようとしてます」と、ちゃんと「自己紹介」になっています。

テキストの違いはまあいいとして、一番気になっているのがウィリアムさんの位置です。 部屋にいる人はチャールズ先生の位置に応じて自動で動きます。そして、その歩く範囲というのは実はかなり限られています。

部屋にいる人は、一定距離を保ちつつ部屋の反対側にいるように動きます。まず大前提として、チャールズ先生が左側にいるときは右側に。 そして一定距離を保つので、先生が左端にいれば画面中央付近まで歩いてきます。しかし左側には絶対に来ません。 文字だと非常に分かりづらい。

部屋に入った瞬間は先生は左に表示され、ウィリアムさんは右端にいて 画面中央のこの位置まで歩いてきます。しかし赤いラインで示した画面中央の左側までは来ません。 この位置が、先生が左にいるときのウィリアムさんの行動範囲の左端です。

じりじりと右に移動するとウィリアムさんもじりじりと右に行きます。 そして画面中央まで来たとき、ウィリアムさんはこの位置まで退がります。 つまりこの位置は、先生が画面左半分にいるときのウィリアムさんの行動範囲の右端となります。

さらに1ドット右へ先生が移動し、「先生が画面右半分にいる」 という判定になった瞬間にウィリアムさんは画面左側へ一気に歩き、先生の方を向きます。 この位置は先生が右にいるときのウィリアムさんの行動範囲の左端です。 そして先生が右に行くに連れてウィリアムさんはまた右へ距離をつめるように移動するのです。

…さて、画像3枚も作ってなにを説明したかったのかというと。

先生が画面左半分にいるときの ウィリアムさんの移動範囲はこの四角の中だけということです。 どんなに先生が詰め寄ろうとも、この四角よりも右側に行くことはありません。

改めて箱の裏の画面写真を見てみましょう。 そう、ウィリアムさんが行動範囲外にいるのです。 しかも左に向かって歩く動作をしているので、もっと右にいたということになります。

確かに画面が切り替わった瞬間の初期位置はベッドの右端辺りなのでそこから歩いてきたシーンというならば この位置を歩くウィリアムさんを撮影することはできなくはないですが、 そうなると今度は先生の位置がおかしい。

ウィリアムさんが写真の位置にいるのは画面が切り替わった直後のみ。その後はもうその位置に歩くことはありません。 しかし、先生は画面中央にいるしワトソンはさらに右にいるので一度画面中央まで歩いていって 左を向いたシーンのはず。そんなところまで歩いていたら、ウィリアムさんが写真の位置に来るはずがありません。

ここまで熱弁していて一体何がそんなに問題なんだとちょっと自分でも思いかけてきましたが、 つまりは「COMの歩く範囲のプログラムが元は違った」んだということです。

…もしくは。

撮影に成功しました。この状態を撮影するには、 階段の途中でメニューを出して歩く裏技を使い、15号室に入ってもウィリアムさんが表示されないようにしておき、 無人の部屋を画面中央まで歩いて左に方向転換し、メニューを閉じた瞬間にウィリアムさんが右端に現れるので 1歩踏み出したところを狙えばOK。

この方法でなければ、箱の裏と同じ画面写真は絶対に撮れません。…が、 まさか箱の裏の画面写真を撮影するためにこの裏技を使うわけがないよな…。

もう一つの説として、「デバッグ操作中の画面」というのも考えました。通常プレイ中、部屋に入った瞬間は先生とワトソンは重なっており、 操作をしないでいると勝手にワトソンは右に移動するので画像の配置に自然になります。

そして、デバッグ作業中や開発作業中にあの歩行速度で船内を歩いていたら非常に効率が悪いので ボタン一つで部屋を移動できるようになっていたとしたら。部屋の移動先が「部屋の中央」だとしたら。

15号室の中央に先生が現れ、ウィリアムさんが初期位置から1歩左に歩いてくる瞬間にワトソンは右へ移動し、 そのシーンを撮影したとすればチャールズ先生とワトソンの位置、ウィリアムさんの位置とポーズの全てに説明がつきます。 わざわざ人が歩く範囲のプログラムを細かく修正することはなさそう(激しく失礼)なので、 自分はこの画面写真を見た瞬間にこっちの説が先に浮かびました。

長々と説明しましたがマジでどうでもいいな…。

さて最後に、右下の写真です。 テーラーさんの部屋に入って「はなす」のコマンドを選んでいるところのようで、 部屋の配置にも項目にもそこまでおかしいところはなさそうです。

…と、思ったら一つだけ項目が違う。上から4番目の「メモを みせる」が、 「ノートを みせる」になっています。 元はメモではなくノートを見せていたのか!

だとしたら書き残せる量があまりにも少なくないかと思ってしまいそうになりますが、 原作では「Note」なので本来はノートだったのでしょう…そういえば没テキストにも 「つぎの ページに いきますか せんせい」 というのもあったし、元はもしかしたらもっといっぱいメモが残せるはずだったんだろうか…。

見比べ用に、全く同じシーンを再現して撮影してみました。 部屋に入ると人はチャールズ先生の位置に応じて自動で歩きますが、 箱の裏の写真の位置と全く同じ場所にテーラーさんは勝手に歩きました。

船の写真、トランク、ベッド、椅子、床や壁の色まで完璧に同じっぽいです。

…という、非常にどうでもいい検証もしてしまいましたが「ミシシッピー殺人事件」の箱の裏の 画面写真と実際のゲームの画面の違いの紹介でした。

箱の裏の画面写真にあるテキストが、没テキストにないというのもやっぱりちょっと不思議です。 そして、やっぱゲームのパッケージのための画面撮影はかなり前もってやっているんだろう、開発スケジュールというのは大変だなあということをしみじみ思いました。

製作者様に「ウィリアムさんの部屋の写真の撮影時は、デバッグ操作中だったんですか!?」と尋ねてみたいが 150%覚えてらっしゃらないだろうなあ〜…。

2020年8月27日


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