「どうもどうも。うちのオカンがね、開発中のゲームの名前をちょっと忘れたらしくてね。 でまあ、色々訊くんやけどな、全然分からへんねんな。」 「分からへんの?ほな一緒に考えてあげるからどんな特徴言うてたか教えてみてよ」 「あのー、タイトルの前半が「ミラーハウス」やって言うねんな」 「おー……コーンフレークやないかい。」 終わるなよ。 ―別バージョン― 「どうもどうも。うちのオカンがね、大好きなゲームの名前をちょっと忘れたらしくてね」 「大好きやのに名前忘れてまうなんてどうなってんねんそれ」 「でまあ色々訊くんやけどな、全然分からへんねんな」 「分からへんの?ほなオカンの好きなゲーム、ちょっと一緒に考えてあげるから どんな特徴言うてたか教えてみてよ」 「あのー…主人公がお城に行くんやけど」 「マリオかな?」 「いや、お城にコーンフレークを食べに行くのが目的らしいねん」 「おー……(ミラーハウス)コーンフレークやないかい。 その目的はもう完全に(ミラーハウス)コーンフレークやがな」 「(ミラーハウス)コーンフレークなあ」 「すぐ分かったやん、こんなん」 「でもちょっと分からへんねん」 「何が分からへんのよ」 「いや、俺もコーンフレークと思うてんけどな」 「そうやろ?」 「オカンが言うには、時間を忘れて何時間もプレイしてたって言うねんな」 「あー……ほなコーンフレークと違うか〜…」 「そやねん」 「コーンフレークはね、とりあえずひととおりプレイしたらもう満足しておしまいやからねアレ」 「そやねんな」 「言うたらプレイ動画だけでも満足できるからね」 「そやねんそやねん」 「多分未完成やけどコーンフレークってそういうゲームやし、ほなコーンフレークちゃうがな。 もう一度詳しく教えてくれる?」 「主人公が頭を上下させずにスーっと歩くらしいねん」 「コーンフレークやないかい。タイトル画面ではあんなに張り切って走ってるのに いざプレイしたら足だけ動かして歩きよるからね」 「まあねえ」 「ファミコンのマリオでもちゃんと自然に歩いてたのに あんだけ頭を上下させずにスタスタスムーズに歩けるのはあとはもう忍者かアトランチスの謎の主人公ぐらいのもんよ」 「けど分からへんねん」 「何が分からへんの、これで」 「俺もコーンフレークと思うてんけどな」 「そうやろ?」 「オカンが言うには、多彩な敵キャラクターが出てきたらしいねん」 「ほなコーンフレークちゃうやないかい。ゴールまで歩くのが目的のゲームやったら まあ敵が出てくると思うのが普通やけど、コーンフレークは一切敵らしい生物が見当たらんのよ」 「そやねん」 「それどころか主人公以外の人の気配が全くせえへんからね。タイトル画面の左上に やけに目つきの悪いのがおるけど、遊んでみたらチラとも出てけえへんのよ」 「そやねんな」 「コーンフレークちゃうがな。ほな、もうちょっとなんか言うてなかった?」 「大人の事情でプレイできたらしいねん」 「コーンフレークやないかい。あれはね、本来世の中に出てくるはずのゲームじゃないのよ。 オカンがどうやってプレイしたのか知らんけど、大人の事情が関わるゲーム言うたらコーンフレークよ、そんなもん」 「けど分からへんねん」 「なんで分からへんのよ、これで」 「俺もコーンフレークと思うてんけどな」 「そうやろ?」 「オカンが言うには、その存在が知られたとき日本中がその話題で持ちきりになったらしいねん」 「ほなコーンフレークとちゃうやないかい。初めて知ったときはちょっと焦ったけど、 驚くほど誰も食いつかへんかったのよ」 「そやねん」 「ミラーハウスコーンフレークで検索しても2020年8月現在なんも引っかからへんからね、 しばらく話題を掻っ攫うかと思っとったのにここまで誰も興味持たへんとは逆に可哀相やわ」 「そやねんそやねん」 「コーンフレークちゃうがな、ほなもうちょっとなんか言うてなかった?」 「時間切れになると餓死するくせに、コーンフレークを食べても残り時間に変化がないらしいねん」 「コーンフレークやないかい。そこまでコーンフレーク言うてもうてるんやから もう確実にコーンフレークよそんなん」 「でも分からへんねん」 「なんで分からへんねん、これで」 「俺も、コーンフレークと思うてんけどな」 「そうやて」 「オカンが言うには、BGMがどれも全部感動的らしいねん」 「ほなコーンフレークちゃうやないかい。一応曲は流れるけど3曲ぐらいしかまともに聴けへんし、 タイトル画面とプレイヤーセレクトの曲は明らかに決定稿ではないのよあれは」 「そやねん」 「迷路の画面でも流れるといえば流れるけど、なぜかゲームスタートしてから6秒ぐらい経過しないと 曲が始まらんからね。メインテーマだけ雰囲気が明らかに違ごてるしは俺はあのゲームのために作った曲じゃないと睨んでるのよ」 「そやねんな」 「ほなもうちょっとなんか言うてなかった?」 「主人公がやたら特徴的な声でしゃべるらしいねん」 「コーンフレークやないかい。そんな口数が多いわけじゃないのに、 妙に印象に残る声で主人公がしゃべりよるねん」 「そやねん」 「ゲーム始めるたびに、死にそうな声で「おなかすいたなぁ〜…」って言う割には しゃきしゃき歩くんやけどね」 「そやねんそやねん」 「ゴールしたときの「オウイエー!やったぜベイベ!!」は耳から離れへんもん。 コーンフレークに決まり、そんなん」 「でも分からへんねん」 「分からへんことない、オカンの好きなゲームはコーンフレーク、もう」 「でもオカンが言うには、コーンフレークではないっていうねん」 「ほなコーンフレークちゃうやないかい。オカンがコーンフレークではないと言うんやから、 コーンフレークちゃうがな」 「そやねん」 「先にゆえよ、俺がフレーク君のマネしてるときどう思っててん、お前」 「いや申し訳ないよ、だから」 「ホンマに分からへんがな、どうなってんねんもー」 「んで、オトンが言うにはな」 「オトン?」 「“本将棋 内藤九段将棋秘伝”ちゃうか?って言うねん」 「いや、絶対ちゃうやろ。もうええわ」 「「ありがとうございましたー」」 ……?? |