SHIDU NOTE -シヅノート-

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Lと名乗る人としばらく会話し、必要なことは話せたということでお帰りになる様子を見送ったところ。 シヅノートの後日談、これにて最終回です。



は〜…最初は姿にビビって叫んで走って逃げることまで視野に入れるほど危機感を覚えたけど、 Lってあんな人だったのか。天才って感じはするかも。

ぼくは初めてLにLとして会った一般人か…すごいぞ。 でもまあ、誰にも言えないわな…ってか、言っても信じてもらえない…いや信じてもらえたとして、 なんでLに会えたのか尋ねられる方が困る。言わないのがどう考えても最善ですね…。

今のは夢だったのかな、みたいな心地で帰宅。今日の夕ご飯はお好み焼きにしましょう。

まさか死神たちの裁きによってこのような事態になるとは思いも寄らなかった。 この調子でいくと、本当に日本以外の犯罪率も下がるかも…でも、Lはどうするつもりなんだろう。

死神について知らないにしても、「人の行動を見抜き、裁ける、人間ではない存在」が現在のキラであるという 結論に達していて(しかもその推理がほとんど合ってる)、それは誰にも逮捕できないということで…。

しかし、キラを各国が欲するとは考えもしなかった。キラの能力とはどのようなものかを人々は知らないわけで、 「キラを我が国は保有している」なんて宣言しようものなら、キラは強力な兵器になり得るから軍事力にも 抑止力にもなるのか…すごいな、偉い人たちの考えることは。

たとえぼくがキラの能力を持っていなくとも、「キラを有する国」という事実が大事なわけで… うーわ。怖。これよりは本当に、本当に凡人が踏み入ってはならない領域だ。 Lに関係なく、キラを捕獲しようとする機関が今も以前からも存在していたんじゃないか…!?

…もぐもぐ。今日のお好み焼きは上手にできたな。もうちょっとマヨネーズかけよ。食後にはアイスにしよう。うまうま。



そして、また1か月が経過。ぼくはキラだった者と疑われることなくフツーに、今まで通りごく普通に暮らしている。 Lがぼくのところへ来たことがキラを探している者に知れたらピンチなんだが、さすがはL、そこは万全だったようだ。 だ〜れも、ぼくにキラの疑いを向けてくることはない。

だが、ぽつぽつと…世界各国で犯罪者裁きの報道はなされている。日本でもぼくがノートの所有権を放棄してから3名。 世界中ではすでに数十名…リュークかな。いや、レムかな。他の死神かな。ぼくが最初に拾ったノートの持ち主に ノートは返されたんだろうか。

最近はかなり頻度は落ちてきていて、最初の報道の時がピークだったかな。何もない日すらあるし、 それでも犯罪が減らない国もあるみたいだし…そこのところの事情は…いや、もうぼくにはどうしようもないんだった…。

そんなある日、インターネット上で声明が出され、そのことで日本のテレビ番組も持ち切りになってしまった。 その声明文が掲載されているウェブページはアクセスが殺到しすぎてとても見られないが、 内容は知ることができた。

それは…Lによる「キラ事件の収束宣言」である。 えっ、おわっ……いや、たしかに…んん…??

この宣言によりまたあちこち大混乱。そりゃそうだ、世間的に見たらキラの裁きは続いているのだから。 これは本当にL本人の言葉なのか、諸外国の警察は、日本の警察はこれをどう捉えているのか、 ウェブページの出どころは、Lの居場所は…などなど、あらゆる意見と憶測が飛び交っている。えらいこっちゃ…。

声明文の要約によると、「近年、主に日本で発生していた通称「キラ事件」の犯人をLは追っていたが、 独自の捜査によりLはキラとの接触に成功し確保、その人物がキラとしての機能を停止させていることを突き止めた」 というような文章から始まっているようだ。

はあ〜…うん、間違ってはいない。でもこんなこと言っても誰も納得しないだろう…?

「一方、ここ数か月のキラのものと思われた犯行は明らかに以前と比べ広範囲、大規模のものとなっている。 これについては、キラとは別の者が関与していることが判明しており、現在調査中」

…へ?いや、ちょっ…合っているような、そうでもないような…今の死神による裁きが キラではない者によると言っても、みんな信じるかしら…?

「以上のことから、Lは「キラ事件」について、解決をみたことを宣言する」

か、簡潔〜…。

テレビ番組をちょっと見てみる。うわ。インターネット上も。うわわ。やっぱり、そりゃそうだ…。 「Lは本当にキラを見つけたのか、接触したのか」ということの議論がスゴイ。 「裁きが行われていることから、キラは存在している、キラ事件は終わってなどいない」という意見がほとんどだ。

あとは「確保したキラは誰なのか、処刑されたのか」という疑問も多い。 各国は「Lからのキラの受け渡しはない」という声明を出しているようだ。 そこから「Lがキラを移送した国はここだ」、「この国のこの人物こそがキラだ」という憶測が生まれ、 「Lは極秘でキラをかくまっている」という結論を出す者まで。う、う〜ん…。

フツーに考えて、キラが派手に裁いている真っ最中に「Lはキラを捕まえました、今の裁きは キラによるものではありません」なんて言ったって誰も信じるわけがない。

Lがキラを放置している、あるいはキラと結託した、Lがキラを引き入れたと主張する者が出てくるのは当たり前であり、 それはLにだって予測できること、分かり切っていることだろう…。

実際にはLが言ったことはほとんど合っている。事実と異なるのはLがキラを「確保」した、という部分だけ。 ぼくは身柄確保も逮捕もされていない。Lがこんな声明を出す理由は…なんだろう。一つ、可能性はあるけど…いやまさか…。

もしかして…もしかして、「キラに対する注目をLに集めるため」ですか。 そしてそれは、元キラの安全確保のため…だったりするんでしょうか。違いますか。違いますよね。

Lとしては、キラを見つけることができ、接触もし、逮捕できたようなもの。 明らかにあの時、ぼくはLに見逃してもらえた。天才の考えることは、凡人には分からない…か。 ともあれ、これは感謝をするべきだ。もし違うとしても、Lの思惑が別にあったのだとしても、 助けてもらったことは事実なのだから。

キラを欲する国や組織の注目はLに集まることだろう。キラの裁きは今後も止まらないだろうから、 Lとしてもキラを保有しているのはLだと思われることはメリットもあるんだろうか…? いずれにしても、ぼくの安全はLの声明によってほぼ確立されたと言っていい。

まあネット上でも「日本で裁きをしていたキラと、現在のキラは性質が違う、別人なのでは」、 「Lがキラを捕まえたということは真実なのでは」という意見も少数ながら存在してるようだが…。

…もしかして、ぼくの部屋って監視カメラや盗聴器がマジについてたりするんですかね…? 死神だけでなく、Lにもぼくの行動と言動は筒抜けだったりするんでしょうかね。別に構わないけど。

なんか、ある気がする。どこに、とは分からないけど、Lがぼくのところへ直接来たのは ぼくがキラだったという揺るがぬ確信があったからだろう。既にキラとしての証拠を 多数掴んでいたんじゃないだろうか。いつから、泳がされていたんだろうか…。

でも、もう全部、いいや。すごい。みんなすごいよ。やっぱぼくのような凡人がしゃしゃり出てくるような ステージではなかったんだ。キラだったけど、あまりに無知で無力なぼくのことを救うため、Lはぼくを見逃し、 キラに対する世間の興味を自分に向けてくれたんだ。もうそう思お。

「聞こえてますか、L。ご迷惑をおかけしますが、御厚意に甘えようと思います。 さすが、あなたは世界一の探偵です。ぼくはこれから、あなたの邪魔にならないように良い子にしつつ、 あなたのご活躍とご無事をずっとお祈りしています。ありがとう」

と、口に出してお礼を言う。パソコンもハッキングされてるかな。大きな文字で画面にお礼を書くか、 テキトーにメールでも送信してみるか。ま、いずれにしても見てるだろ〜な。

…やれやれ、これでこれからリュークとレム以外に、Lにも感謝し続けないといけなくなっちゃったぞ。 ま、感謝なんていくらしたって困るもんじゃないし、いっか。あ、ミサちゃんからメッセージが来てる。どれどれ…。

来週からのアメリカでのロケが延期になった、今からトーク番組の収録に行ってきます…か。 ちょっと国際情勢が不安定だから行かない方がいい国みたいなのもあるみたいね、教えてくれてありがとう、 頑張ってきてね、番組は見るからあとでオンエア日教えてね…と。送信。

頑張ってるミサちゃんに、今度癒しの時間をあげよう。寿命、伸ばしてかないとね。 じゃあ持っていくお菓子のレシピでも調べるかな。カロリー控えめで、おいしいのをちゃんと選ぶぞ。



こうして、シヅキラはキラとしての機能を失ってごくごく一般人に戻り、 これからもキラの裁きはおこなわれ続けるかもしれないが、すでにぼくがコントロールできないところに行ってしまった。 暴走した死神によるやばい事件が起きまくり、人間界が大混乱に陥る事態にはならないと…思いたい。

死神だって寿命を人間からもらう存在であるという今のルール下なら人間がいなくなれば生きていけなくなるし、 デスノートのルールにさえ「人間界の混乱を避ける配慮」があるのだから ある程度の事態にまで進展すれば死神界でも何らかのアクションがあるだろう。ストップがかかるかもしれない。

後世、この裁きがどのように評価されることになっていくのかは、今のぼくには分からない。 「普通の人にとっては無関係の出来事」として、たまに起こる事件の一つとして認識されるだろうか。

いずれにしても、地上にデスノートはもうないし、キラはいない。 もしシヅノート第二部があるとしたら、実は昨今の裁きは死神によるものではなく、 リュークとは無関係に、各地に落とされたデスノートによる…みたいな続き方となるのでしょう。 やりません。終わりです。おしまいおしまい、おしまいまい。

これにて、シヅノートは本編も後日談も本当に完結です。善良な人の日常が、これからもせめて少しでも穏やかでありますように。



シヅノート

(本当に)

2024年04月09日


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