SHIDU NOTE -シヅノート-

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…斯くして、キラはいなくなった。

ただしそれは「地上から」、「人間界から」という意味であり、 死神界にはキラだった者の願いを聞き届けた死神がキラの意思を継いで犯罪者の裁きを続けている。

キラだった者はノートを拾う前とほぼ変わらない生活を送っている。毎日楽しそうである。 変化したことといえば、今をときめく人気モデルであり女優としても活躍の場を広げ始めている タレント「弥海砂」と交友関係にあること。親しい友人として連絡をかわし、頼り、頼られている。

そして、リンゴを多く食べるようになったこと、ぐらいであろうか。

というような口調で進めようかと思ったんだが、まあゆるくいきましょう。ここから先はいわゆる「後日談」です。 シヅノートで、放っておいてはいけない話があるからです。そっちも考えていたので覚えているうちに話すべし。

本家デスノートと違い、シヅキラはまずリンド・L・テイラーを殺さなかった。 すると、Lは日本にFBIを入れる必要はなく、またシヅキラはFBIを殺すこともない。 Lは各国の警察からの協力を得られなくなり、日本に捜査本部を置くなんてこともない。

ただ、リンド・L・テイラーに「キラを必ず捕まえます」と言わせた=Lとして発言したも同義なので、 Lはキラを捕まえるための捜査もしていました。独自にデータを解析し、キラ及び第二のキラを 100程度の人物までに絞って家宅捜索まで行いました。

いよいよ凡人としては限界ギリギリまでに追い詰められたことを野性の本能的に悟ったシヅキラは デスノートの所有権を放棄し、デスノートに関する記憶を失った上にもう犯罪者を裁くこともできなくなりました。

ただし、自分へ手紙を書くという作戦により自分がキラであったこと、 デスノート及び死神の存在についての認識は取り戻しています。

家宅捜索によりシヅキラはLに「キラとして疑うべき人物」としてマークされることとなりますが、 まだ該当者多数な状況なので24時間見張られたり、家に盗聴器や監視カメラが仕掛けられ、 ポテチに仕込んだテレビで犯罪者を裁きつつ受験勉強をしなければならないなどという 事態には陥っていません。

ちなみにミサちゃんも家宅捜索の際に、第二のキラとしての証拠がいくつか出てきているので かなり重要な人物としてLに注目されてしまっています。

元は、ミサちゃんの家からめちゃめちゃ動かぬ証拠が出まくって本家デスノートのようにいきなり第二のキラ容疑で 監禁されるという展開にしようかと思っていたんだけど、ミサちゃんは自白せず、デスノートの所有権を放棄し、 レムがぼくにノートを渡しに来て、「ミサを救い出さなければお前を殺す」って荷が重すぎる。

それに、シヅキラがミサちゃんを利用しようとしていないことは賢いレムにはわかるだろうし、 ミサちゃんが暴走してキラ探しして逮捕されたということも明白だろうし、 ぼくにすべての責任を負わせて脅迫してもミサちゃんを見事救い出せるとは思わないだろう…。

まあシヅキラとしてはミサちゃんを救い出すことが最優先であり、ライトくんと違って再びノートを手にして記憶を取り戻し、 ノートの所有権まで得てキラとして返り咲く必要はないので、さすがの天才探偵L相手であろうとも デスノート、そして死神の存在を知られていない状態であればまだまだ情報戦としては有利な点はある。

イタイのはミサちゃんが監禁される直前まで、ミサちゃんとぼくが会っていたこと。明らかにシヅキラにも さらに捜査の手は伸びてくることだろう。しばらくキラとしても大人しくしていたいところではあるが、 それだけミサちゃんの監禁は長引くし、裁きが止まればミサちゃんが監禁されてから裁きが止まったという ますますミサちゃんへのキラ容疑が確実なものとなってしまう。

だから別の者をキラとして仕立て上げ(サイコ思想)、そのうえでL側にノートが渡ることによって、 ミサちゃんは記憶を失っていてノートを触らない限りキラとして復活することもないことを Lにしっかりと理解させ、ミサちゃんは安全だと知らせて解放させる…みたいな策を取るはずでした。

いわゆる「13日ルール」はミサちゃんとライトくんが監禁されていても死ななかった=キラではないと判断させるための 偽のルールだったが、シヅキラにとっては別にそれは必要ない。L側がデスノートをきっちり管理し、 ミサちゃんが「かつてキラであったが既にキラでなくなった、今後キラになる心配もない」と 判断してくれることがシヅキラにとっては大事。

ってかミサちゃんが自由になるのであれば、2冊ともL側にノートを渡しちゃってもいいよ。 ただし、その存在は永遠に誰にも知られることがないようにお願いします。間違っても悪い奴がそれを 得ようと脅迫なり取引を持ち掛けるなりしてくるなんてことは絶対に無いよう…Lなら大丈夫ですよね。頼みます。

…みたいな展開までは考えていたんだが、そっちのルートは没にして前のページみたいな とても平和なお話にしたのでした。ホントに平和かどうかはさておき。実はやばいとは思う。

さて、ミサちゃんはLにかなり疑われているが、デスノートはもう燃やしてしまったから存在していないし ミサちゃん自体にノートも死神もキラについての記憶もないので証拠はあっても自白は取れない。 そしてどのようにキラが裁きを行っていたかをLは知らないため、捜査は進展しないだろう。

たとえミサちゃんを第二のキラ容疑で確保・監禁して尋問しようとも、本当に何も知らないのである。 「第二のキラ容疑で確保する」と言われたとしたら、本家と違って激しく抵抗するだろう…おお、 そんなことにならないでもらいたい。

でもL側からすると、キラより第二のキラの方がより輪郭がはっきりしていることだろう。 キラはたぶん日本人ということぐらいしか明かしていなかったが、第二のキラはビデオメッセージを送っており 物的証拠は多数。何かしらの容疑が報道された人物、自分のやることを妨害しようとした人物を選んで殺せることが判明している。

しかもさくらテレビ局へ来た宇生田さんやパトカーで駆け付けた警察官二人という犯罪者でない者を殺している。 キラを否定していたコメンテイターも裁いたことからも「キラの邪魔をする者は殺す」というスタンスだということが分かるだろうし、 それならキラを必ず捕まえるという宣言をしたLを殺さないことからLを殺せない理由があることも分かる。

さらに、リンド・L・テイラーは実は死刑囚なのに殺していないことからも、 情報を得ないと犯罪者か分からないし、キラを追う者全員を殺さずさくらテレビに来た警察にだけ 手を下したことから、姿を見ないと殺せないことまで分かる。改めて言うが、ほんとこまる。

シヅキラは、キラとは「人間ですらないのか」という可能性すら感じてほしいと思って行動をしていた。 もちろん日本時間の日付が変わるときに犯罪者が死ぬのだから、日本人感、そして犯人が分からない事件や 姿も分からぬ逃走犯は裁けていないことからも十分に人間感は出まくっていたが…。

だが幸いなことに、Lはキラと第二のキラは別人であると正しく推理していた。第二のキラへメッセージを送り、 第二のキラを懐柔しようとさえした。キラと第二のキラは殺しの方法はさておき、 考え方(裁く基準)はかなり違う、ひいては性質もかなり異なると考えているのではないだろうか。

そして第二のキラは実際にはキラと接触したのだが L側からしたら第二のキラがキラと会えたかどうかは五分五分というところだろう。

第二のキラが最後に送ったメッセージの通り「自力でキラを探す」のであれば、 いずれ自力で辿り着くかもしれないし、キラからの指示でそのメッセージを送っているのであれば既に接触は果たしている。

「どうしようもなくなった時はまたさくらテレビには協力してもらおうと思っています」 というメッセージの通り、またさくらテレビに協力を仰げば「会えていない」という強めの証拠にはなる。

…が、デスノートもない今、そんなのをL側に送るのは危なすぎる。ミサちゃんに送ってもらうとしたら さらに危ないし、ぼくがキラで、ミサちゃんが第二のキラだったこととか死神やノートのこととか、 説明もしないといけなくなる。今の段階で、ミサちゃんにそれを明かすのは絶対に得策ではない。

それにシヅキラもキラであった時の記憶は失っているので、実はミサちゃんにどのように指示を出したのかは覚えていない。 L側が持っているキラに対する情報がどこまでのものか、完全には把握していないのである。 そこら辺まで手紙に書いて伝えておいてほしいところだったが、さすがに手紙が長くなりすぎて…。

パソコンに書き残せば文字の入力スピードはペンで書くより倍以上に跳ね上がる。 あ〜…ネットを完全に切った古いパソコンに書き残す手もあったか…まあ、 シヅキラは事後処理よりもキラをどう存続させるか、どう他人の手にデスノートが渡らないようにするかで アタマいっぱいだったので…。

仕方ないので、自分がしてきたことは他人が集計したものを見るしかない。キラに裁かれた者のリストなんかが インターネット上でウェブページとして存在している。裁きの周期だの、いつ報道されただの、まとめられている。

更生の兆しがある者、情状酌量の余地のある者は重罪人であっても裁きが避けられる傾向にあるようだ、か。 うん…死神たちはそれを理解してくれるかな。大丈夫かな。手紙によるとリュークとレムには、 ぼくが今まで「裁きの対象としていたような者」の名を書いてほしいとしか 告げなかったようだが…。

まあ、ぼくがキラであった時ほどの裁きの頻度ではなくなるだろうし、今更どうしようもないことだし、 それについて悩むのはやめよう…。

キラを探していたキラがキラに向けて送った暗号…どれどれ。ああ、この「日記」ね…これを見た記憶はある。 はあ〜…どうして青山に行ったのか全く覚えが無かったけど、あの日はこれを見たせいで出かけたのか。 この時に、ミサちゃんと…会った記憶はないけど、会ったけど記憶が消えたのか、 ミサちゃんがぼくの居場所を知ったんだろうな。なるほどね。

ぼくがこんな覚え具合なのだから、万一ミサちゃんに捜査の手が伸びて尋問され、 どうしてあの冴えない野郎と急に会い始めたんだと問い詰められたとしても彼女もなぜ青山へ行ったかは 覚えていないし、ぼくとの出会いも落とし物を届けに行ったという認識しかないだろう。

あんな煌びやかな子と低スペックメンの交友なんてキッカケも分からないのであれば不自然極まりないが、 だからといってそこからキラとしての証拠は出ないだろう…一切接点が無かった二人は同じ日に青山に行った、 そのあと仲良くなって会っている、それぐらいの事実しかない。まあ、大丈夫だろう…。

さて、あれから…ぼくがノートの所有権を放棄したという日、ぼくがぼくからの手紙を読んでから、2か月が経過しようとしていた頃。 ミサちゃんからはドラマに出ることになったから見てね、と連絡がきた。ドラマはおろかテレビを見ないが、 ミサちゃんが見てというのなら見るぞい。最近は雑誌だけじゃなくてテレビの仕事も増えたようだ。頑張っておられる。

ミサちゃんの保護者的存在だったレムも、死神界から見て喜んでるんじゃないかな。見てますか〜。 ちょっと窓の方を見て手を振ってみる。微笑んでみる。また前に向きなおって、パソコンの画面を見る。 「アメリカ、イタリア、ドイツ、中国など、各国の反社会勢力のトップとされる人物、 相次いで心臓麻痺で死亡」という緊急速報が目に入る。

ゑ゛っ。

そういう勢力って、つまりはそういう勢力で…日本にもあるみたいだけど、海外では偉い人とか警察とかとも 仲良くしちゃったりなんだり、だから撲滅できないとかそういう…ぼく、一般人だからよくわかんにゃい…。

そしてそれが、心臓麻痺で。時間はまちまちのようだが、これは明らかに偶然ではない。 通称だれそれ、本名だれそれ、と報道がされている。大混乱が起きているようだ。そりゃそうだよね… その死を隠している組織もあるだろうと言われている。そ、そうね…。

顔写真つきで報道されている人もいる。ロッド=ロス、本名はドワイト=ゴードン…うわ〜、怖そうな人…。

これは…リュークか、レムが、やってくれたんだろうな…別でノートが地上に落とされて誰かがキラとなったとしても、 こんだけ各国の、顔も名前も誰も知らないような犯罪者、一気に裁けないだろう…これは死神にしかできないことだ。

でも、凶悪犯が心臓麻痺で死亡…となると、キラの裁きだと考えられるだろうな。 日本人に限定されず、時間も統一されず、シヅキラが裁けなかった大物たちが次々と… 世間は「キラの大々的な裁き」と感じるとして、Lはどう思うだろう…。

あ、いけない。リューク、レム、ぼくのお願いを聞いてくれてありがとう。窓の方を見て、また微笑んで手を振る。 口もちゃんと動かす。

…ミサちゃんの寿命についての罪を背負おうとは思ったが、もうこの裁きをぼくには止められないわけで、 この罪も背負い続けることになるんだな。こんな高頻度で、的確に動いてくれるとはシヅキラにとっても 予想外だっただろう…記憶が無くなったぼくなんてもっと驚きだよ。

本当にやってくれるとは……。






おい、これまだ話が続いてないか?前のページの偉そうな「完」はなんだったんだ? も、もうちっとだけ、もうちっとだけ続くんじゃ…Lについて、話し終わったらそれで完結するのじゃ…。

2024年04月08日


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