SHIDU NOTE -シヅノート-

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さて、シヅノートの14ページ目。いよいよ閉幕です。

Lは5月22日に「青山に行ったことが普段の生活における動きと明らかに違う人物」に絞ってキラ容疑者とし、 さらにキラの人物像と第二のキラの人物像もイメージしていてそこからさらに少人数に絞り込んでいて、 家宅捜索を行ったのは100に満たない件数でした。

そしてシヅキラは、実はかなり怪しい人物としてマークされています。

さらに、捜索に来た警察に「なんの捜査ですか」と尋ねなかった者として、シヅキラはさらに 「キラの可能性のある人物」に名を連ねてしまっています。ちなみにミサちゃんは賢いのでちゃんと 「なんの事件の捜査なんですか」と尋ねたようです。ポンコツシヅキラ。楽してシヅポン。 (キラどこ行った)

シヅキラがずっと察しているのはとにかく「Lに敵うわけがない、自分は今確実に追い込まれている」ということ。 天才探偵に太刀打ちできるわけがなく、逮捕されるときは一気に来る。今は危なくなさそうでも、 少しずつLはキラに近づいてきているのです。

ちなみにシヅキラの家やミサちゃんの家にきた捜索時に、キラとは別件で捜査が進んで捕まった人もいるとかいないとか。 警察からの報告で「その家の人物は、キラではないが怪しい」と感づき、そこから犯人逮捕に至っています。 さすがはLだ、と警察もますますLへ信頼を寄せています。

そんなLにしっかり怪しまれ出したシヅキラは、キラとして最後の行動に出ます。

ここ最近は、裁きの人数をあえてばらつかせ、何もない空白の日を入れるようにもしていた。 毎日行われていたものが一週間なくなったら「終わったのか、やめたのか」と思われるかもしれないが、 3日おき、5日おきになど、法則性のないランダムな、気まぐれな頻度で行われていたものが 一週間なくなっても「今回の空白は長いな」と思われ、「終わったのか」と判断されるまでには比較的長い日数を要します。

シヅキラ、机の一番下の最も大きな引き出しの、使っていないノートや昔作ったボードゲームのカードや 古くて大きい貯金箱などが入っている箱の下に、今言ったものを一度全部出してから二つ折りにした便箋を入れます。

今までずっとこの机を使っているけど、最下段の引き出しの箱を取り出したのは初です。 何か「きっかけ」がない限り、動かすことはなかったしこれからもありません。

そして、リュークと最後のお出かけ。できればもっと一緒にいたかったが、凡人以下には無理だった。相手が悪すぎた。 ミサちゃんと、レムと合流。花が綺麗な季節ですので、大きな公園でお花見です。しゃべりたいので、 見通しが良くて、近くに人がいないところで。

この公園は、先日シヅキラがノートを埋めに来た場所の近くです。ちょっとしたハイキングコースもあり、 その道から逸れるだけで誰もいなくなります。いつぞや、シヅキラがてこの原理で頑張って動かした岩があります。 あの日から、岩が動かされている様子はない。この岩の下に、デスノートは埋まっているはずです。

そして、カバンの中にはミサちゃんから預かっているデスノートが入っています。 このノートの所有権はミサちゃんにあります。それを、シヅキラはミサちゃんに返却します。

ミサちゃんのノートの元の持ち主は、死神「ジェラス」でしたが、すでにジェラスは死んでいて存在しないので、 そのノートが無いと困る死神はいません。しかし、ぼくが拾ったノートはリュークが死神界で拾ったものであり 持ち主がいるはずです。(実際はシドウだが、リュークはもしかしたら分かってないし、シヅキラは知る由もない)

リューク、一緒にいてくれてありがとう。すごく楽しかったよ。リュークがデスノートを落としてくれたから ぼくはキラとして活動することができたし、世の中の犯罪率はすごく低下した。いい人は、感謝してくれてる。 キラというぼくのことを誰も知らないから、リュークも感謝されている者の対象なんだよ、わかる?

と、リュークに言う。リュークは面白いものを求めていた。ぼくがキラとして裁きを行ったことが理由ではあるけれど、 元を辿ればリュークの行動によって世界は変化したのである。人間界の変化、感謝されること、悪くないと思ってほしい。

リュークは死神だけど、感情はあるし人間の心情だって同調はせずとも理解はできる。 良いとされること、悪いとされることの違いは知っている。だからこそ「掟」を守っているのである。

今までリュークとたくさん話してきた、一緒に遊んだ、リンゴも食べた。Lとの直接対決なんていう 刺激的なものは見せてあげられなかったが、それでも人間を近くで見て、楽しんでもらえたと思う。 だから、頼んでみよう。この願いを聞いてもらうために、準備をしてきた。

ぼくの代わりに、たまにでいいから、少しずつでいいから、ぼくと同じような裁きをしてほしい。 死神は人間の寿命をもらって生きているなら、デスノートに名前を書くという行為は必ずやらなければならないことなら、 その対象をぼくが裁いていたような者にしてほしい。

死神界から犯罪者を探すのは多分難しくない。誰かを適当に見て、その人が見ているテレビでも見ればいい。 あまりに凶悪な者は人々の間で話題になり、目にすることが増えるだろう。

死神が寿命を延ばすための行為を、裁きの代わりにしてほしい。お願いします。と、真剣に頼んでみる。

さらに、レムにもお願いする。レムはミサちゃんのことを好きになるような優しくて聡明な死神だから、 どうせ自分もノートに誰かの名前を書くのならそれをすごく悪い奴にするだけ、ということには同意してもらえるよね。 ただ、レムが死んでしまわないようにだけ気を付けて。お願いします。

レムなら、了解してくれるだろう。ミサちゃんはキラに共感していたし、キラの意思に沿った行動をレムが取るということは ミサちゃんが願っていることでもある、と考えてくれるはず。

リュークにもう一つお願いをする。ぼくが拾ったノートは、元の死神に返してあげてほしい。 その死神の寿命があと何年かは分からないけど、ぼくがノートを所有していることによって寿命が尽きてしまうことがあってほしくない。 そして、できたらそのノートを返す時に書く名前は凶悪犯の名にしてほしいって言ってた、と伝えてもらいたい。

持ち主がどんな死神かは分からないが…もしその行動をとってくれる死神が一人でも増えてくれたら、 リュークやレム以外の死神にもその「風習」が広まってくれたら、 ぽつぽつと犯罪者は裁かれていき、「キラはいなくなった」と思われることはなくなる。

死神界がどれだけ不毛で、死神たちが無気力であろうとも、そのように変化したのならまた変化することだってあるはずだ。 自分たちがしたことで、人間たちが変化するとしたら、それを眺めているということは、面白いんじゃないか。 まるで、ゲームのような感覚でやってくれたっていい。生きていて面白いと思えることがあれば、変わるはず。

リュークにはお土産として、園芸店で購入したリンゴの苗を渡す。死神界からリンゴを持ち出していたし、 人間界から物を持ち込んではならないという掟は無いから、これは問題ないんじゃないだろうか。

もしもそれが問題がある行動だとしても、大丈夫。死神界には確かに「リンゴ」はある。 乾ききり、不味いリンゴであろうとも、それは確かに同じ「リンゴ」という植物。 実がなる環境であるならば、光も水もある。

つまり、死神界でおいしいリンゴをつくればいい。

同じ植物であれば、同じように手を加えることが可能。水をやり、世話をし、最も優れたものの 子孫を残し、より甘い個体、より赤い個体、より大きな個体を選別して品種を改良することができるのである。

人間界くんだりまで来なくても、死神界でリンゴがいくらでも食べられるようになったら嬉しいよね。 時間がかかる作業かもしれないけど、死神の時間感覚からしたらあっという間だし、目に見えてよい結果がどんどん 得られるから、絶対に楽しいはず。飽きるまでは、リンゴの栽培を試みてほしい。がんばれ、ジューシーなリンゴのためだ。

そして最後に、リュークとレムに誓いを立てる。

死神である二人にぼくがやってほしいことをお願いする以上、ぼくはデスノートの記憶を失っても 今まで通り、悪いことは絶対にしない。犯罪はもちろんのこと、誰かを傷つけたり、陰口を言ったり、 悪意をもって行動することは、ない。絶対に、ない。

もしそんなことをするようになったら、真っ先に裁いてくれていい。悪人となったぼくの死を見て、 キラがいると思ってもらえるならそれはありがたいこと。その誓いをぼくは自ら破ったのだから、 無惨に殺してくれていい。そう言えるぐらい、ぼくはこれからもそんなことをしない自信がある。

そして、ぼくはデスノートに関する記憶は失って二人のことも忘れてしまうけど、 二人のことをデスノートを使わずにもう一度認識し、お願いした内容も理解し、裁きが行われるたびに感謝する。 ちゃんと感謝してるかな、ってたまにぼくのことを見てみて。飼ってるペットの様子を確認するような感覚で。

ミサちゃんのことは、責任を持ってちゃんと、ぼくの支えが必要な時にちゃんと支え、ぼくが幸せにできることがあれば ちゃんと幸せにします。レムに代わって、ちゃんとぼくが見守ります。だから安心して下さい。

リュークはリンゴが食べられるなら、と同意してくれた。デスノートは誰のものかは分からないけど、 死神大王に渡し、そのあと持ち主が判明した後にぼくが言ったことを伝えてくれるとも。

レムも、やってやろう、と言ってくれた。ミサちゃんを任せる、誓いを破るんじゃないぞと念を押して。 大丈夫です、任せてください。

…じゃあ、いよいよだ。ミサちゃん、デスノートを地面に置いて。ドラッグストアで購入した、マッチを取り出す。 もったいない、とかそういうことはもう考えない。ノートの表紙の端に火がつき、徐々に燃えていく。

燃料代わりに、燃えているノートの下にマッチをばらまき、箱も一緒に置く。火が全体に回っていく。 燃え尽きてしまう前ならまだ間に合う…などということも考えてはならない。もったいなくなんてない。

シヅキラ、リュークに向けて宣言。

「そこに埋まっている、デスノートの所有権を、捨てる」

「はいよ。じゃあな」とリュークの声が聞こえ……記憶が無くなる。 リュークの姿も見えない、レムもいない。ん、リュークってなんだっけ?レムって誰だっけ?

ミサちゃんの悲鳴が聞こえる。なんだ。うおおお、なんだこれ。足元で黒いノートみたいなのが燃えている! ものすごく辺りが焦げ臭い。焚火…誰が、こんなところで?

……へ?目の前のまあまあなサイズの岩から、黒い筒状のものが…丸まりがなくなった、ノート?が、浮いている…。

飛んでった……。

ってか、ここはどこ?ミサちゃんと二人でなぜこんな林の中に?道に迷った?遭難しているの? ミサちゃんがスマホで位置情報を調べてくれた。おや、大きな公園の近くのちょっと険しめの丘の道から少し外れたところだ。

確か、ミサちゃんと今日は待ち合わせて…お花見に来たんだよな。そのあと二人で立ち上がって、 お散歩にでも出たのかな。そして道から逸れて迷って、こんなところに…でも、燃えていたノート、 そして確かに見えた、飛び去った黒いノートはいったい…。

見間違いだった?風に吹かれて飛んでいった…?燃えているノートなんて、なんか気味が悪いし、道に戻ろうか。 うん…お花見、楽しかったね。そうだね、そろそろ帰ろうか…送っていくよ…。

………。

2024年04月05日


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