◆◇ハローキティワールドの歴史◇◆
風船をくっつけて空を飛ぶアクションゲーム。
その風船ってのは大抵赤いです。そういうのは今のところいっぱいあります。




これなんかがいい例です。
いいえこれはかなり特殊な例です。

(なんだかわかんない人のための補足、
これは「ルパン三世パンドラの遺産」というゲームで、
穴に落ちそうになったときルパンが赤い風船を使って空を飛ぶ)


とにかく人間が赤い風船の1つや2つで空を飛べるわけはないのですが、
赤い風船で飛んでいくゲームはたくさんあります。

ぼくが初めて遊んだ赤い風船で飛んでいくゲームが「ハローキティワールド」でした。
あとから「大乱闘スマッシュブラザーズDX」で「バルーンファイト」というゲームを知りました。

 

そのなかの「バルーントリップ」というモードが、右から左へスクロールするステージを、
風船をとりながら進んでいくという内容でハローキティワールドにソックリです。

初めてコレを見たとき「ハローキティワールドはバルーンファイトを元にして作られたのか?」と思いました。
ハローキティワールドが出たのが1992年、バルーンファイトは1984年です。

が、事実はもうちょっと複雑。
「ハローキティワールド」と「バルーンファイト」に秘められた禁断の関係とは・・・!?

というほどではないので、肩の力を抜いてお聞き下さい。

 

こちら、HAL研究所が1987年に出した「JOUST」というソフトです。
ハル研究所のWORKS LISTのページにも1987年のところに「ジャウスト」の項目があります。
正式名称は「亜空間サバイバルゲーム ジャウスト」というらしい。やたらと壮大です。

右の画像のように自機であるトリを操り敵のトリを倒す、画面固定型アクションゲーム。
このトリがやたらと動きが最高にHIGHで、走り出したら逆方向のボタンを押すまで止まりません。

バルーンファイトのように少しずつ浮かぶこともできます。
しかし横移動のスピードはそのままなので画面中を飛び回り収拾がつかなくなります。

そして敵のトリより高い位置からトリを踏むとトリがタマゴに戻ります。なんだと!?
そのタマゴをキャッチすれば敵を倒したことになります。タマゴのまま放置しておくと強い敵になりよみがえります。

どっかで聞いた仕様です。

 

デカいカオのトリだなあ、と思っていたんですがなんとこれ人が乗っているダチョウなんだそうです。
右の画像の赤い人はコンドルに乗っています。つまり、トリに乗った人間同士が戦っているのです。

騎士の一騎討ちのことを「JOUST(ジョスト)」というが、確かにコレはJOUSTだ。人だったのか・・・。
ってかダチョウにしては空を飛びすぎではないだろうか・・・。

んでまあ、2回攻撃して敵を倒すとか、空中制御が難しいとか、復活した敵が強いとか、ほぼ無敵の敵出てくるとか、
そもそもステージの配置とか開始時の敵の挙動とか色んなところがどこかで見た感じです。

この「JOUST」というゲーム、タイトル画面にもあるとおり1983年に出たゲームが元です。開発・発売はウィリアムス。
(ファミコン版「JOUST」が出たのは1987年だが、タイトル画面にはATARIのコピーライト表示しかない)

HAL研が1983年〜1984年ごろにファミコンに「JOUST」を移植するため開発したファミコン版「JOUST」なのですが、
権利の問題で交渉がまとまらずお蔵入りになってしまったそうな。

でも「JOUST」をアレンジして可愛く楽しく新しく作ったのが「バルーンファイト」だったのです。
つーわけで、「JOUST」になんか似ている「バルーンファイト」が1985年に出たのでした。
そしてあの1983年に出た「マリオブラザーズ」にも影響を与えたのは「JOUST」を見れば分かる気がします。

月日は流れその権利の問題が解決して、バルーンファイトを作る前に作っていたファミコン版「JOUST」を、
1987年に発売しましたというのが「JOUST」と「バルーンファイト」のご関係です。

1990年に「バルーンファイト」の続編が開発され「Balloon Kid」というゲームボーイのソフトが海外で発売されました。
日本でも「バルーンキッズ」という名前で発売される予定だったのですが、結局お蔵入り。

その「Balloon Kid」のゲーム画面が、こちらです。

激しくどこかで見たことのある光景です。
右の方に煙突のある家、左斜め上に配置されている風船。

風船を二つつけて飛ぶリボンの似合う少女。
ゲーム開始時の残機は4人。

小さい木が二つ、大きい木が二つ、山が二つ・・・。

そう、我らがキティ様の「ハローキティワールド」と瓜二つです。
地面に置かれた背景のブツたちの配置まで全く同じです。

ゲームボーイは画面が小さいので入りきっていませんが、
画面はもっと上までスクロールするので天井も同じです。

敵の配置もほとんど同じで、出てくる敵も同じ。

Balloon Kidのストーリーは「弟のジムが風船持って飛ばされたので、
彼が空中においていく風船を目印に姉のアリスが弟を探しに行く」。

「クマのティッピーが調子に乗って風船大量に作って風に飛ばされていったので、
ティッピーが空中に置いた風船を目印にキティとミミィがクマを探しに行く」ってのとほぼ同じです。
アリスに双子の妹はいないようですが、もう一致しまくりです。

さらにBGMもほとんど同じで、メインテーマやボスと戦う時の曲、1UPや無敵時の曲も同じ。
ただ、ニンテンドーワールドチャンピオンシップのページで話題になったボーナスステージの曲は違いました。

・・・本当にこの曲は謎が多いな。

任天堂と電通が設立した任天堂の子会社である「株式会社マリオ」が作り、
サンリオの子会社「キャラクターソフト」が発売した「ハローキティワールド」は、
「Balloon Kid」のキャラチェンジ版の移植作品だったのである。

なんてややこしいんだ。
なんで急にキティちゃんで、海外だけで発売したソフトを移植しようと思ったの。

・・・まあ、それをしてくれなきゃこのソフトに出会えなかったわけで、非常に感謝するんだが・・・。
「ハローキティワールド」しか幼少時から知らなかったので、後から知ってビックリしたのである・・・。

敵もキティちゃんに合うようデフォルメされているのもいるけど、
「ワニ」「クワガタムシ」「ペンギン」「セイウチ」など、
元になった動物はそのままだしほとんどグラフィックも同じです。

ただボーナスステージの「いちご」だけはゲームボーイになっています。
ファミコンソフトへの移植なのにゲームボーイだとおかしいので、
キティちゃんのイメージに合うように「いちご」にしたのでしょう・・・。

風船を膨らませる時にはこのアリスちゃん、
どこからともなく取り出した大きな空気入れで風船を膨らませます。

キティちゃんが持ってるやつよりかなり大きくて本格的です。どこに持ってたんだ・・・。

あまりにも完璧に移植されていて相違点を探す方が難しいほどです。
ご覧下さいウルルも完全に一致です。

が、ボスと戦う前に弟であるジムくんが登場します。
そしてあとちょっとというところでまた飛んで行きます。

ウルルなんて放っておいて捕まえればいいのに・・・。
ってかジムくん、そこで全部の風船手放せば降りられるのに・・・。

しずけさの森(というステージ名かは不明だが)では背景の木に顔があります。

この画像みたいに勇ましい表情のものはボスに近づいた時の背景で、
普通のはスーパーマリオワールドのヨッシーが生んだタマゴから登場する雲が落とすコインみたいな表情です。
なんて分かりづらい説明なんだ。

ステージ開始やクリア時に黒板が出てきますがそういうのはありません。
キティちゃんが雲の上に降りてくるシーンもないです。

ハレルヤの海では「KITTY」と書かれた飛行船がありますが「Balloon Kid」では「FIGHT」と書かれていました。
アレルヤの海のBGMは「しずけさの森」と同じでしたが「Balloon Kid」では1面と同じでした。
あと雨を降らす雲が画面最上部に設置されていて、雲の上を飛ぶことはできません。

バケツダルマの攻撃のときの音がやかましい、大工場のBGMがボスと戦う前の怖い曲、など
本当にチョコチョコした違いしかないです。

これはキティがアリスちゃん、ティッピーが弟のジム君になっただけの「ハローキティワールド」です。
いや、逆なんですが。

エンディングも一緒に海を飛んでいくところが同じ。
ですが、姉が弟を持っていきます。

でもBGMも効果音が途中で入るところも同じです。
ファミコンだとスタッフクレジットはひらがな表記でしたが、
アルファベットで名前は頭文字だけです。

・・・が、やはり作曲は田中宏和さん。
そのほか「スペシャルサンクス」の方々が違うみたいです。

そして、まさかのBAD END。

「おしまい」と書かれるあのシーンの曲の瞬間、
空飛ぶ敵につつかれてジムくんが海に落下してゲーム終了です。

これ、子供が見たら泣かないだろうか・・・。
アメリカの子供たちは絶望しなかっただろうか・・・。

相当このオチに驚きました。ちゃんと家に帰れたんだろうな・・・?

さらにそのエンディングでもっと驚いたのが・・・。
ハレルヤの海に登場する敵キャラ「シカマル」という渡り鳥。

説明書にも「シカマル」としか書かれてなくて名前の由来はなんなのかなあと思っていました。
エンディングで「TEAM SHIKAMARU (C)1990 Nintendo」の文字が。

なんと「シカマル」ってハローキティワールドの原作「Balloon Kid」を作ったチーム名だったのですね。
・・・い、いやあ、何年も経ってこの謎が解けるとは夢にも思わなかった・・・。

で、スタッフロールを目を凝らしてみていたのですが、
モロボシや、モリムラクンという名前のスタッフさんはいませんでした。

ついでにこっちの謎も解ければよかったのに・・・。



今回参考にさせていただいた、「Balloon Kid」のプレイ動画がこちら。
(当然、自分ではソフトを持っていないので画像もキャプチャさせてもらいました)



ゲームボーイだけどBGMはやはり最高で、エンディングの曲はプレイしてないのに感動します。
ハローキティーワールドと同じ点、変わった点を探してみると楽しいです。



◆後日追記◆

「FC版「ハローキティワールド」の移植元である海外GB版「Baloonkids」ですが、
どうやらゲームボーイカラー専用ソフトとして日本国内でも発売されていたようです。」
という情報をN(イニシャル)さんから頂きました。どうもありがとうございます。

任天堂の公式サイトのこちらのページで紹介されているそうです。
別サイトでプレイ動画も見てみましたが、完全に海外版「Balloon Kid」の移植のようです。
な、なぜゲームボーイカラーでやっぱり出そうということになったんだろうか・・・??

謎がナゾを呼ぶ風船系アクションゲームのこの一連のシリーズですが、
いまだにチンクルのアレなゲームなど、まだまだ出ているみたいです。



◆2016年10月22日追記◆

偶然知ったんだが、「大乱闘スマッシュブラザーズX」の「ゲーム年表」に、
なぜか「バルーンファイトGB」は入っていないらしい。書き換え専用だからなのか?

・・・と、思いきや他の書き換え専用ソフト「スーパーマリオブラザーズデラックス」は入っているらしい。
スマブラXでは忘れ去られていたの?それとも複雑な事情ゆえなの?

なんか、微妙に不遇な気がするのは・・・きっと気のせいです。
・・・たぶん。


2014年1月31日
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