「…ここで分かれよう」
「そうだね」
「え?!」

順調に南東へ向かって飛んでいたレックたちだったが、突然ベルがそう言い出し、レンも同意したので ベルに抱えられたままレックは驚愕した。必死に振り返ってベルを見ようとする。

「ちょっと、なんて?ここで分かれるって…誰が、誰と?」
「ここで3人、お別れってことだよ。レンはダイアンサスの塔に行くんだって」
「そ、そうなの?」

横を飛んでいるレンをレックは見上げた。片手で鷹の足を掴んでいるレンは、複雑な表情でレックを見ている。

「うん…ぼくは、自分が何者なのかを知りたいんだ。レグルスに助けてもらって、何のお礼もしてないけど…」
「そ、そんなことはないだろ。レンがいてくれてホント助かったよ。…じゃあ、レンのことをよく知ってそうな ランのところに行くってこと?」
「そうだね…それに、聖獣とどう関係しているのか、ぼくはどこから来たのか…知りたいと思ってる。 だから、行ってもいい?」
「そりゃ…」

少し寂しい気もするがダメだと言う理由もないので、レックは いいよ、と頷くしかなかった。

「レンは、ずっとそれが知りたかったんだもんな。俺がレンの立場だったら、同じように調べようとすると思う。 ランやコルミシャークから色々聞いてみなよ」
「うん、ありがとう…ぼくを助けてくれて。優しく接してくれて。それじゃあ、さようなら」
「……」

さよならという代わりにレックはなるべく笑顔を作って手を振る。こんな急にいなくなっちゃうなんて、と驚いたが ダイアンサスの塔にいるならまた会えるのかな、と考えることにした。

「ベルと一緒だったらまた会いにいけるもんな。ダイアンサスの塔まで」
「……さっき言っただろ。ここで、全員お別れだって」
「へっ…?」

驚いているレックにお構いなしに、ベルは高度を落とす。地面まであっという間に到着し、 レックは地上にふわりと降ろされた。そしてそれを確認したベルはまた上昇していく。

「待って、ベルも…どこに行くんだよ?!一緒に行かないのか?!」
「…行かない」
「なんで…た、確かに、俺はベルに甘えてばっかだったけど…め…迷惑だった…?」
「そんなことないよ。レックのことは、ちゃんと友達だと思ってる」
「だったら、なんで…?」
「だからだよ」

ファシールが大きく羽ばたいて、ベルは空に舞い上がった。レックは思わず駆け寄り手を伸ばす。

「おい、ちょっとそんな、急に…!!」
「じゃあな、レック。気をつけて行けよ」
「待っ…ベル、なあっ、また会えるよな!?」
「……どうだろうな。会いたいと思ってくれるなら……でも、会わないほうがいいかもな」

レックが走っても追いつくわけがなく、ベルはそのまま飛び去ってしまった。 ベルがなんと言ったのかも聞き取れず、レックは両膝に手をついて息を切らす。

「はあ、はあ……なんで、こんな突然……」

先ほどまで自分がいた空には、もうまばらな雲しか浮かんでいなかった。



「…え、この町の近くまで来たのに、ベルはどこかへ行っちゃったんだ…?」
「レンって子も?会って話してみたかったのになあ」

レックは一人でカデンツァの町へ来たのかを話し、会えるのを楽しみにしていたフィルとアリアは残念そうにしている。 そのとき、ララシャルがアリアの腕からぴょんと飛び降りてレックの方へ向かっていった。

「れーく」
「おう、シャープ姫の妹の…ララシャル、だっけ。フィルがララって呼んでる子だよな」
「そうそう。軽いから抱っこしてみなよ」
「よーし、おいで、ララ」
「わーい!」

レックが腕を広げたのでそこへぽーん、とララシャルが飛びつく。腕に大人しく抱っこされるのかと思いきや レックの肩を上り、顔を上り、頭の上に落ち着いた。

「…そこがいいの?軽いから構わないけど…落ちるなよ」
「あははは、二人セットでかわいいよ」
「ララちゃん、落っこちないようにね〜」
「かわいいって…」

レックは両手でララシャルの体を支えようとしていたが、妙に安定しているようなので落ちそうになったときに支えればいいか、と 頭にのったララシャルのことは考えないことにした。そしてあまり頭は動かさないように腰につけている剣を掴んで鞘ごと引き抜く。

「はい、コレ。ベルからもらった剣…ルプランドルだよ。これが必要なんだろ?」
「あっ…そうそう!ありがとうレックくん!じゃあ…ちょっと待って」

ルプランドルを見てアリアは目を輝かせ、ちょっと待って、と自分の剣を腰から外した。

「じゃ、私の剣をレックくんにあげる!はいっ!」
「え…!?い、いや、いいよ…!そんな、王女様の、どーせ王家に伝わる剣とかなんだろ!?俺なんかが触っちゃダメだって…!」
「自分だって皇帝一族のクセに…。よく分かったね、これはお父様からもらった剣だよ。名前は「フェデルタ」。幅は広めで、 でもそこまで重くなくて使いやすいから。はい、どうぞ」
「えええ…」

レックは手を出そうとしなかったのだがアリアがもらうまで動きそうもなかったので渋々ルプランドルとフェデルタを交換した。 アリアはルプランドルを受け取って鞘から抜き取り、わー懐かしい、などと言いながら軽く振っている。 いいのかなあ、と思いつつレックはベルトにフェデルタを通した。

「じゃあ…その、レッジ湖に向けてそろそろ出発する?なんとかの森の中にあるんだっけ」
「アドラメンテの森ね。カデンツァの町の南東にある大きな森だよ。その中央に大きな湖があるんだ、それがレッジ湖」
「へー…そんな大きな湖なんだ……うわっと」

フィルの方を向いて話していたレックだったが、急に頭にのっているララシャルが動いたので慌てて手を差し出す。 滑り落ちそうになったが、レックの肩に着地したようでまたよじよじと頭まで上っていった。

「大丈夫かな…なあ二人とも、ララシャルっていつもこうやって頭にのせてたわけ?」
「ううん?私は抱っこしてたよ」
「ぼくも抱っこか、手を繋いでたかな」
「なんで俺は頭なんだ…」

そう言うレックの頭に顎をのせて、ララシャルは満足そうにしている。意味を理解しているかは分からなかったが ちゃんとつかまっとけよ、と言ってからレックは歩き出しフィルとアリアも面白がりながらそれに続いたのだった。



アドラメンテの森は非常に鬱蒼としており、人が全く立ち入った様子のない場所だった。 アリアやフィルが邪魔な小枝や草を切りながら進み、レックの頭の上にいるララシャルは自分の顔に 枝葉が当たりそうになるとリボンを先攻させてスパスパと切って空間を作り、レックは非常に快適な空間を進んでいる。

それと同時に、全員は口にこそ出さなかったがララシャルの帽子のリボンは角度が違えばそんなに鋭利だったのか、 とちょっと恐ろしくなっていた。

「うわ…急に開けたな」

1時間ほどひたすら歩き続け、やっと木の密集地帯から脱出した。森の中に突如出現した空間には、大きな湖が広がっている。 レックは頭からララシャルを降ろし、湖の淵まで歩いていった。

「これがレッジ湖か。でかいな〜…」
「私は3年前、この湖から聖地「カノン」って場所へ行って白蛇と戦ってきたんだよ」
「へえ…ここが…」

湖は非常に深く、透明度は高いが底が見えないほどである。ある程度中を確認し、レックは湖から顔を上げた。

「それで、ここにランフォルセが封じられてるんだよな。そのルプランドルをどうするんだっけ」

そう言ってアリアの腰にさがっているルプランドルを指差す。するとアリアはそれをベルトから引き抜き、 あははは、と頭をかいた。

「えっとね〜…ニヒトさんが言うには、このレッジ湖の中にはランフォルセが封じられている場所があるらしいんだけど その剣は聖玉を扱える人間の前にしか姿を現さないんだって」
「そうなの?」
「で、ランフォルセをそのまま持ち出すとレッジ湖の底から水が溢れてメルディナ大陸の大半が水の底に沈むという言い伝えがあります」
「こわ…」

じゃあどうするんだ、と思っているとアリアはルプランドルをレックに向かって差し出す。 また剣を渡されそうになり、なんだなんだとレックはうろたえた。

「え、なに?」
「えっとね〜…その、ランフォルセの後ろに、このルプランドルを突き刺すことによってランフォルセとメルディナ大陸の 水の封を断ち切り、代わりに影の剣ルプランドルを収めることによって水は溢れてこないようになってるんだって」
「はあ…それと、俺にルプランドルを渡すのにどのような関係が…?」

なんとなく判ったような気がして、レックは冷や汗を流す。

「レック君、潜ってきてくれない?」
「は…!?」

アリアは手のひらを前に立てて、ゴメンのポーズをとりながらウィンクをした。

「い、いやいや、潜ってみてランフォルセが姿を現さなかったら俺には持って来れないぞ!? どう考えてもアリアが行くのが確実なんじゃ…」
「それが…えへへ、私、泳げないんだ!ましてや剣を持ったまま潜るなんて、絶対に無理!」
「え〜…」

そんな、と一応レックはフィルに視線を向ける。しかしフィルからはレックの予想通りの反応があった。

「ぼくも泳げません。レック、頑張って!」
「…だよな」

レックはフィルが泳げないことは学園の授業や外で遊ぶときの会話でよく分かっていたので はじめから期待はしていなかった。自分がこんな湖に入るのは恐ろしかったが、だからといって 残る一人であるララシャルに行かせるなど絶対にあり得ないので、行くだけ行ってみるか…と、地面に荷物を置いて準備を始める。

そのとき、ざっぱーん、と豪快な水音を立てて湖面から10メートルはあろうかという巨大な魚が飛び上がり、 出てきた時よりもさらに大きな音と水しぶきと共に再び湖に消えていった。水は湖に最も近づいていたレックがしっかり浴びることとなり、 髪や服から雫を滴らせながらレックはゆっくりとフィルとアリアに振り返る。

「………今の、なに?」

濡れた髪が顔に張り付いているレックは少々不気味だったが、フィルとアリアは顔を見合わせてから笑顔を向けた。

「え、え〜と…」
「…クジラ?」
「湖に?」
「「………。」」

全員でそっと湖に近づいて中を覗き込んでみると、巨大な魚影が優雅に動いているのが見える。 遠くへ行ったかと思うとまた旋回して戻ってきて、しばらく待っていてもいなくなる様子はない。 さてどうしたものか、と湖から少し離れて考えることにした。

「3年前、あんな大きな魚ここにいた?」
「ううん…小さなのはいたかもしれないけど、よく分からないや…湖に入ったとはいっても本当に湖の底まで泳いだんじゃなくて この湖の面からどこか違う空間に入った、みたいな感じだったし…」
「なんか難しいけど…じゃあどうする?さっきみたいに魚が飛び上がる瞬間に巨大な槍でも突き刺す?漁みたいに」
「…無理だと思う…」

まさかこんなことになっているなんて、と一同はため息をつく。ここにランフォルセがあるのは分かっているのに、と アリアは悔しそうに手を握り締めた。

「あと少しでシャープに会うための手がかりが…なんとかならないかなあ…」
「…わわっ!?」

落ち込んでいるアリアの後ろで突然レックが声を上げる。

「ちょっ…ララシャル!何すんだよ!!……わーっ!!」
「ララちゃん!ダメでしょなにしてるの!!」

なんとララシャルのリボンがレックの腹にしっかりと巻きついており、そのままララシャルはリボンを操って 湖にレックを投げ込んでしまった。アリアは必死にララシャルにやめるように言うがララシャルは気にしない様子で湖面を見つめている。

フィルも恐る恐る湖に近づき、レックがどうなっているのか覗き込んだ瞬間にララシャルはリボンを浮かせてレックを引き上げた。

「な…なに!?ちょっと!!おい!!」
「れーく、いき、くーしくない?」
「え…?」

大丈夫だった、とフィルが近寄るがララシャルはなぜか自慢げににこやかにレックに何かを尋ねている。 しかし何を言われたのかが分からないのでリボンに縛られて宙ぶらりんの状態でアリアとフィルに翻訳を求めた。

「なに言ってるの…?」
「ええと、息は苦しくないか、だって…水に浸かってたのは数十秒だけど…どうだった?」
「そういえば…」

巨大魚が跳ねたときの水しぶきで濡れたときの比ではないほどずぶ濡れになってしまっているレックだったが、 全身から水を滴らせながらも顎に手を当てて考える。水に突っ込まれたときはパニックで水中でも呼びかけたり叫んだりしたことを思い出した。

「水を、飲んでない…っていうか、全然苦しくなかった。ララシャル、なんかしてたわけ?」
「れーくにね、おみずのね、ふわふわつけて、いきするの!おさかなきたら、ひっぱるの!はーい!!」
「なん……どわーっ!!」
「レック!!」

またララシャルはリボンを操ってレックを水に突っ込んだ。どぼーん、という音と共にレックの姿が湖に消え、フィルは慌てて湖の中を確認する。 近くに巨大魚がいないようだったのでいくらか安心し、そしてシフラベルの存在を思い出してレックに語りかけてみた。

「そうだ、これがあったんだ…レック、大丈夫?近くに魚はいないみたいだけど…呼吸はできてる?」
「…できてるよ。なんなのララシャルは。俺を何だと思っている…」
「ら、ララは…ぼくの隣で一緒にレックの方を見てるけど、すごく真剣そうな顔をしてるよ。ララなりに、ランフォルセを取り出す手助けをしたいのかも」
「はあ…まあいいや。とにかく服も着たままであんま泳げないからな。魚に食われそうになったらちゃんと引っ張れよ」
「うん…ララ、分かってるよね?レックから合図があったら、引き上げるんだよ?」
「はーい!」
「すごくいい返事をもらえたよ」
「信用していいのか…」

透明度が高い湖なので光がしっかりと水中にも届いておりレックの視界は良好だった。さてランフォルセを探すか、と周囲に目を凝らす。 ララシャルの魔法のおかげなのか視界には水による揺らめきがなく、とてもクリアで水中眼鏡をつけているかのような感覚だった。

リボンはある程度のゆとりを持っていてレックが泳げばその分ララシャルが伸ばしているようである。

「聖玉を扱える人間の前にしか現れないとか言ってたけど、どこにあるんだよ…一応アリアが近くにいるけど…」

岩の壁も水中にあるとは思えないほど綺麗に見え、底の方を見ようとしてもどこまでも青い空間が広がっているようだった。 小魚が数匹、顔のそばを通り過ぎていき何気なくそれを目で追う。

「フィルから俺の姿は見えてる?」
「かなり小さくなっちゃってるけど一応…どう?なにかある?」
「そう言われてもなあ…ランフォルセって何色の聖玉なんだよ」
「黒だよ、黒色。少しだけ紫がかった、黒い聖玉だよ」
「ん〜……」

レックは岩肌から離れるように水をかいて前進した。

「どう?レックくんは。さっきのでしゃべってるんでしょ?」
「うん…アリアも話してみてよ」

分かった、とアリアはフィルの隣にしゃがみ込んでフィルの指を握る。

「大丈夫?レックくん。苦しくない?」
「アリア…うん、それは全然問題ナシ。どうなってるんだろな」
「ちょっとララちゃんのことは私にもわかんないな〜…リアンさんにたずねたら分かるかもしれないけど。えっと、ランフォルセはどう?なんか気配を感じる、みたいなのは…」
「それも全然。小魚がちょろちょろしてるだけだよ。ってかララシャルに縛ってもらってアリアも来たら?息できるんだし」
「遠慮しま〜す…私じゃ水中で暴れるだけで前にも後ろにも動けないから…」
「……」

悪いと思いつつもレックは絶望的なカナヅチだな、と心の中で言ってしまいアリアにもそれが聞こえてしまった。

「あ、ひどーい」
「つい本音が…ゴメンゴメン、王女様は泳ぐ必要ないもんな、普通は」
「そーゆーことじゃなくて、ただ苦手なだけなの!…それより、もうレックくんの姿が見えなくなっちゃったんだけど… 息ができているとはいえ、あんまり深いところに行くと心配だな…」
「うん、レック。1回上がってくる?ここからじゃさっきの魚の姿も見えなさそうだし」
「待って!あれ…そうじゃないか…?」

フィルとアリアが心配し始めたとき、レックが突然声を上げる。どれほどの深さまで潜っているのか自分でも分からなくなっていたが、 急に目の前に現れた山のような形をした岩の頂点に光る何かを見つけたのだった。

「えっと、ルプランドルを刺すんだったよな…」

右手に持っていたルプランドルを水の抵抗を感じながらゆっくりと振り上げて、岩と光っている部分の境目に突き刺す。 すると先ほどまで自由に動かせていたルプランドルは突然凍りついたかのように岩に刺さったまま動かなくなり、 代わりに淡く紫色に光る物体が水中に浮かんだ。

「よっ…と。…うわっ!」

レックがそれを手のひらの上に誘導すると、手の中で光が円を描くように集まって黒い聖玉へと形を変える。 これがランフォルセなんだ、と少し感動しながら顔の前に持ってきてじっと見つめた。

…そのとき。

「………ん?」

周囲の水が大きく押されたような感覚と突然辺りが暗くなったことに気づき、レックは斜め後ろに視線を向ける。 そこには、口を目いっぱい広げて近づいてくる巨大魚の姿があった。レックは咄嗟にランフォルセを渾身の力で握り締めて心の中で叫んだ。

「引き上げて!すぐに!!早くーッ!!」

しばらく聞こえていなかったレックの声が突然シフラベルを通じて響き、フィルは慌ててララシャルの背を叩く。

「ララ、レックを引っ張り上げて!全力で!!」
「はーい!ぐいーすーよ!!」

ララシャルは立ち上がり、両手を挙げてリボンを一気に引っ張ると同時に縮ませた。まるでリールを巻くかのように つるつるとララシャルの帽子の月の飾りにリボンが収まっていく。フィルとアリアが緊張の面持ちで見つめる湖面には やがてレックの影が映り、姿が鮮明になっていき、徐々に大きくなっていった。

「たーっ!!」
「うわ!!」

ざぼーん、とレックが勢いよく水面から飛び出し、それと同時に巨大魚が大きく跳ねてレックを口で掠めて再び湖の中に消える。 レックは重力に反してリボンに吊られたまま空中停止していた。

「はあ、はあ……あっぶな…あと少しで、食われるところだった…」

ララシャルはゆっくりとリボンを引き寄せてレックを地面に下ろす。両手両足を地面につく形で着陸したレックは、まず顔についた水滴を左手でぬぐった。

「れーく、できました!」
「はいはい、ありがとな……」
「レックくん、無事でよかった〜…早く、服を乾かさないと」
「それよりも、ほら」
「……!」

レックは右手をアリアに差し出し、持っていたランフォルセの聖玉を見せる。アリアは感激しながらそっとレックに近寄ってそれを手に取った。

「ランフォルセ…これがあれば、シャープのところに行ける…!ありがとう、レックくん!ありがとう!!」
「いえいえ。…それ、剣なんだよな?アリアなら剣の姿にできるわけ?」
「できると思うよ」

聖玉を右手に持ち、左手をその上にかざすと宝石は大きな剣の形へと姿を変える。数歩後ずさってレックから距離を取り、 左手でランフォルセを軽く一回転させた。どうなってるんだろ、とその様子をレックは目を丸くして見ている。

「まさかまたこの剣を持つことになるとはな〜…まあ、もう白蛇はいないんだけどね。…よし、早くクレールさんのところに行かなきゃ」


    






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