★ アナザー・サイド 2 ★





オレが、ビアンカ様に弟子入りしてから数ヶ月が経った。
特に変わったことが無いか、求める者が居れば教えておこう。

まず、第一にオレも魔法が使えるようになった。
ビアンカ様が、どうしても、と教えてくれただけで、オレは魔法を好きになった訳ではない。

ちなみに、属性は火だ。
きっと、メヌエットの血、なんだろうな。

ビアンカ様も驚いていた。

第二に、シオンが帰って来た。
ヤツは、『カペルマイスター』と言う職業に縛られることが嫌だったんだろうな。

それにブラコンだし……。

帰って来て早々、アルスといちゃいちゃしている。
……女でも作れよ。
イリス様とか良いんじゃないか?

それが、俺の周囲で変わったことだ――。


オレは今、王宮の外に出て、近くの川の畔である景色を眺めている。
その目線の先では、

――これはフナ。食べられるところが少ないんだよな。
――そうなんですか……。

白髪の兄弟、シオンとアルスが楽しそうに釣りをしながら話していた。
帰ってからまだ3日しか経っていないとは言え、相変わらずのブラコン振りだ。

はぁ……。
あんなのにオレは故郷を追い出されたのか。

最も、最終的には自分で捨てたのだが……。

――じゃあ煮魚にします。
――ありがと、じゃあ頼んだぞ。

おっと、いつの間にか2人がこちらに向かって歩いて来てるな。
隠れないと。シオンがどう思ってるかは知らんが、オレはシオンと話す気にはならない。

と、言う訳で、オレはアルス達とは別ルートから帰ろうとした。
その時、

「た、大変です!」

城で働いている奴が、そう言っているのが聞こえた。

「ど、どうした?」
「今さっき、イリヤ様が城に運び込まれました!」

なっ、イリヤが!?
急いで城に戻らなければ!

そんなこんなで、急いで城の戻った。
正面から入れば、アルス達と鉢合わせになるのは必至なので、裏門から入った。

中に入ると、場内は騒然としていた。
人があちらこちらへと行き交い、慌てふためく者もいる。

どうやら、イリヤの話は真実らしい。
帰って来るのが遅かったのは、これが原因なのか?
全く、この国は面倒事しか起こさないと見る。

「ビアンカ様。聞きましたか?」

自然と研究室に足が動いていた。
どうやら、これが運命らしい。

「何をだい?」

ビアンカは真剣な面持ちをして聞いた。
まだビアンカには伝わっていないらしい。

「イリヤが、重傷で担ぎ込まれたそうです」
「なっ、それは本当かい?」
「本当、です……」

言葉が詰まる。
あいつには、特にこれと言った感情は無いが、人がただ死ぬのは嫌だ。

「どうします?オレ達に人を治す力なんて……」
「そのことなら心配の必要は無い。これを使うよ」

そう言うと、ビアンカは2つの丸い水晶を持ち上げた。

「……使うんですか?」
「この時のため、だろうからね。私が届けてくるよ」
「あっ、ビアンカ様」

呼びかけるより早く、ビアンカは部屋を出て行った。

本当に、魔法バカだな。
どこまで役に立つかも分からない物を使うなんて。

あれは、聖具だ。
ただ、本当に使えるのかも分からない物。

これで使えなければ、どうなるんだろうか……?



しかし、そんな心配を余所に無事、イリヤは回復した。
地の聖具シードとイルの力の結果らしい。

これが魔法の力、か……。
オレの考えも改めないといけないな。

そんなことを考えながら、一人自室にいた。
そんな時、オレの相棒である黄色い鳥が戻って来た。
くちばしには、破けた服の切れはし。

「……そうか。戦争か」

そう呟いて、遠くの空を見た――。






















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