◆ドラゴンクエスト◆
ポートピア以来の全く新しいジャンル、到来



発売日:1986年5月27日   発売元:エニックス   ジャンル:RPG
値段:5500円  おすすめ度:3(会話や階段がめんどくさい…)


遥か昔、邪悪なるものが光の弾を闇に包みアレフガルドを支配していたが、突如現れた光の勇者ロトによってその邪悪なる者は倒され、アレフガルドに平和が戻った。 それから数百年の後、別のところから邪悪なる者は現れた。名は竜王。竜王はアレフガルドを支配すべく、まずラダトーム王国のローラ姫をさらった。

この事態に国王は、ロトの子孫を呼び寄せ、ローラ姫救出と竜王打倒の命令を発したのである……。

1986年5月27日、エニックスは前年に発売したFC初のAVG『ポートピア連続殺人事件』で、FCユーザーに衝撃をもたらしたのに続いて、 ポートピアとは違うまったく新しいジャンルであるRPGを出し、これまたFCユーザーに衝撃を与えることになる。

その名は『ドラゴンクエスト』。

RPG全体の観点から考えると、すでに『ゼルダの伝説』が登場している。 しかしそれは、アクションを取り入れたからこそ大ヒットとなったわけで、アクションといったほかのジャンルの要素を含まず、文字や絵だけの本格的RPGはドラクエが初めてだった。


今でこそRPGを代表するゲームの1つとはいえ、昔はACTやSTGの影に隠れていて最初はあまりヒットしなかったが、 このゲームの面白さが知れ渡るや、おもちゃ屋ではドラクエを求めに来るFCユーザーが集まり、最終的には売り上げが150万本を達成するにいたった。

それを皮切りに、翌年には続編である『ドラゴンクエストU』を発売し、前作以上の人気を得る。 そしてこれを期に各ゲーム会社は、ドラクエに負けぬ面白さのRPGの制作に躍起するようになる。 では、FCユーザーをのめりこむことに成功した秘訣はいったい何なのか…。

このゲームの面白さの一番の理由は、なんと言っても主役になりきることだろう。 それ以前にも、自分でキャラクターを動かすゲームはあったのだが、動かしているのは第三者であり、自分自身を動かしたことにはならなかった。 あの人気ゲーム『スーパーマリオブラザーズ』でも、動かしているキャラはマリオ(ルイージ)であって、プレイヤー自身ではなかった。

しかしドラクエでは、名前入力画面で自分の名前を入れることで、あえて自分が世界を救うという感覚にさせることが可能だった。 もちろんドラクエ以前にはポートピアで、ボスというプレイヤーが部下のヤスに指示を出したり、ほとんどしゃべらないことから、ドラクエの主人公の原型はポートピアから始まったという声もある。

さらに時代をさかのぼると、ACでは高得点を出すことによって、ネームエントリーができた。 ACTはともかくSTGでは、戦闘機に名前はあっても乗っているパイロットは無名だったことを考えると、ACのSTGは一応主役になりきってるともいえるかもしれない。


だが、それはあくまで敵を倒すことだけで、人と話したり、謎を解いたり、武器や防具を装備したり、道具を使ったり、 そして敵を倒して世界を救うといったことを自分でできることが初めてできたのは、ドラクエだったのである。 また経験値制を導入し、規定以上の経験値を獲得するごとに自分の能力がアップすることも、自分が勇者になっているという錯覚を起こさせた。

とはいえ、もともとRPGはFC向けのジャンルではなく、AVGと同じくパソコン向けのジャンルだったのだ。 それをFCに収められたのは、このゲームの制作に携わってた堀井雄二氏の功績が大きい。

堀井氏は以前にも、ポートピアでFC用にアレンジを施して、一躍FC界に頭角を現した。 その時、PC版ポートピアでは何か行動をするとき、キーボードで入力しなければならなかったのだが、FC版では選択制を採用することで、PC版の面倒を省くことができた。 またその過程で作られたコマンド欄は、ドラクエのコマンドウィンドウの原型ともなったことはかなり有名である。

ところでドラクエのコマンドウィンドウは、FC版ポートピアにあったコマンド欄のほかに、雑に置かれていた書類からヒントを取ったことを付け加えておく。


このようにドラゴンクエストは、現在のRPGの基本となったのである。 しかし、初代のシステムすべてがドラクエの続編以降の基本となったのかといわれれば、あまりそうではない。 ドラクエのシステムが確立されるのは、実はUであるということだ。FC版初代ドラクエ独自の特徴を下に記すと…、

・『とる』や『階段』といったコマンドがある。

・話すときに方角を選択しなければならない。

・キャラクターがカニ歩き。

・最大レベルが99ではない。

・会心の一撃を外すことがある。

…であるが、あえてFC版に限定したのは、薬草や鍵の所持数やたいまつの存在、Tにおける呪文のシステムはSFC版や携帯版とさほど変わらないので、ここでは省略させていただく。
これら上記の特徴のほとんど(最後の特徴を除く)は、容量の制限によるものらしい。


ゆえに、キャラクター全員の横向きや後ろ向きのグラフィックを作っていたら、間違いなく容量制限をオーバーしてしまう。 また、RPGのプログラミングがまだ未完成だったらしく、階段を上り下りるときにわざわざ『かいだん』コマンドを選択しなければならなかったり、 会話するときの方向を選択しなければならなかったりと、かなり面倒だった。

それと容量の制限ゆえに、冒険のスケールが小さかった。そのため、必然的にプレイヤーの最大レベルが、続編以降よりも大幅に低くなっている。

これとは関係ないのだが、最後の特徴はあまり知られていないと思う。 普通、会心の一撃といったクリティカルヒットの類は、威力が高かろうが低かろうが放てば必ず当たるものなのだが、ドラクエTの場合は外してしまうことがあった。 プログラムがまだ未完成なのかそれとも意図的だったのかは、ここでは不明である。

話は変わって制作スタッフのほうだが、当時も今もかなり神がかっていた。 堀井雄二氏を筆頭に、音楽にすぎやまこういち氏、キャラクターデザインに当時週刊少年ジャンプで売れっ子だった漫画家鳥山明氏など、そうそうたるメンバーだった。 特にすぎやま氏の手がけたBGMは、当時としてはかなり評価が高く、その後BGM集がCDとして発売されている。

普通なら発売直後に大ヒットしてもおかしくはなかったのだが、ドラクエの発売直後はあまり売れ行きが思わしくなかった。 その理由は最初にも書いたとおり、当時のFCのジャンルといえばACTとSTGで、RPGは異端的な扱いを受けていた。

それに加え、コロコロコミックやコミックボンボンといった児童雑誌は、主にACTやSTGをタイアップすることが多かったため、 ドラクエを大体的に取り上げることはほとんどなかった。


ゲーム雑誌でもドラクエを大体的に扱うことはあまりなかったのだが、それはメジャーやマイナー、 面白いやつまらないといったいろんなゲームを平均的に扱っていたためである(それによりクソゲーに当たる確率が高くなってしまったのだが…)。

一方週刊少年ジャンプは、漫画家鳥山明氏が大人気漫画『ドラゴンボール』を連載してたこともあって、ドラクエ発売前から大体的にピックアップしていた。

当時のジャンプは黄金期の真っ只中にあり、堀井氏も『ゆう帝』として『みや王』こと宮岡寛氏と『きむ皇』こと木村初氏(劇画原作者のきむらはじめ氏とは何も関係ない…と思う。誰か詳細を求む…。)と共に、 深くかかわっていた(代表的なのが『ファミコン神拳』。早い話が私的すぎるゲームレビューなので、個人的にあまり信用度がない。もっとも私のゲームレビューも私的すぎてるから、あまり他人のことは言えない柄なのだが…)。

その甲斐あって、最初はさっぱりだったドラクエの売り上げも急上昇し、最終的に約150万本を記録するにいたった。 それにより、ドラクエU以降の人気の足がかりを得ることになった。

私がドラクエを知ったのは、発売して間もない頃のいとこの家において…。 最初ゲーム画面を見たとき、あまり面白くなさそうだったので、T以降のドラクエシリーズは敬遠していた。

当時の私がACTやSTGにはまっていたことに加えて、お金の管理が厳しかったことが理由だった。 悲しいかな、結局私がプレイしたドラクエシリーズは、なんとWだったのだ。そこでようやくドラクエの面白さを知ることになった。

しかし現在、FC版Vはプレイしておらず、Uはリメイク版すらプレイしていない。 Tも最近まではUと同じ境遇にあったのだが、好き嫌いはいかんということもあり、ゲームレビューもかねてプレイすることにした。


そしてプレイした感想なのだが、W以降のドラクエシリーズに慣れすぎたせいなのか、かなり不便に感じた。 人と話す時に方角を指定しなければならなかったり、階段を上り下りするのにわざわざ『階段』コマンドを使わなければならなかったりなど、結構めんどくさかった。

その上、宿代や薬草の値段が不条理に高かった。 ドラクエTのファンにとってはこれが普通なのだろうが、私にとってはやはり不条理すぎた。

ところでドラクエTといえば、いろんなものが思いつくが、個人的には復活の呪文(パスワード)を推したい。 復活の呪文を書くことができる文字数は20と、当時としては中途半端に多く、書き間違えたら最後せっかく上げたレベルや金、そして冒険が戻ってこなかった。

ただパスワードの文字間隔をよく見てみると、やや五七五調となっていることがお分かりいただけるかと思う。 これを利用して、授業で覚えた俳句を次々と書いたら、最初よりも強いレベルで始められることに味をしめたプレイヤーが結構いた。

代表的なのが、『ふるいけや かわずとびこむ みずのおと ばしや』と『くわたやま くらしのずかな かはたはら くろま』だろう。 ちなみに私は、『まつしまや ああまつしまや まつしまや ばしや』と書いて「じゅもんがちがいます」と食らったことがあった。

最後に海外版について説明さておきたい。 海外版は『ドラゴンクエスト』ではなく『ドラゴンウォーリアー』という題名に変更されている(題名変更の理由は、海外で同名のゲームタイトルがあったためらしい)。 そして変更になったのは題名だけではなく、ゲームシステムがU以降に変更になっている。

当然、人と話す時や階段を上り下りするときの手間がなくなったのも魅力的だが(それゆえに、モンスターを除いたキャラグラフィックが一新されている)、 なんといってもセーブ方式が『復活の呪文』ではなく、『冒険の書』に変更されたことは大きい。 後に日本版でもドラゴンウォーリアのようなシステムに変更されるのだが、それにはTの発売から約7年待たなければならなかった…。



本日のまとめ



ゆうべは おたのしみでしたね。

(06/4/28レビュー)
伝説のスターブロブ2への掲載:2019年4月18日
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