発売日:1987年4月2日 発売元:ナムコ ジャンル:ADV
値段:4900円 おすすめ度:3.5(このカニめがぁ〜っ!!) 吉本興業事務所で、殺人事件発生。殺されたのは桂文珍。 この事件に挑むは、当時の人気お笑い芸人明石屋さんま、そしてさんまの助手であるプレイヤー。 謎と怪奇、そしてギャグが織り成す捜査の果てに見つけた真犯人は、意外な人物…なんだろうなぁ? ADVブームが消えかかってたこの時期、再びADVブームに火をつけるゲームが登場した。 その名は『さんまの名探偵』。制作は、当時FC業界でACの移植を行っていた老舗のナムコ。 ACで有名なナムコが突如ADVを作った、しかもFCオリジナルのADVの…。 この事実は、FCユーザいやADVファンに、衝撃と不安を与えることになった。 このゲーム発売の前年、FCアドベンチャー第2弾として登場した『ミシシッピー殺人事件』があまりにもひどい出来だったので、またADVのクソゲーを作るのかと、誰がしも考えていた。 しかしこのゲームは、ADV本来の面白さの他に、明石屋さんまのお笑いテイストがつまった、今までのADVとは全く違った面白さがあった。 このゲームのヒット以降、本格的にADVブームが生まれてくることになる。 ゲーム的には、本格的推理ゲームの上に、お笑い芸人を乗せただけの感がある。 しかしながらこのゲームは、普通のADVで終わらせない要素がたっぷりとつまっていた。 ひとつめは、2D・MAPによる移動。 普通のADVの場合、別の場所へ移動するとき、十字キーで移動はしないのだが(『ポートピア連続殺人事件』等は例外)、このゲームは2D・MAPで移動する。 これは、どこに移動するたびに、いちいちコマンド入力しなければならないという手間を省くためのシステムで、 なおかつ捜査が進むにつれて、移動できる範囲が増えることは、プレイヤーの捜査意欲を掻き立てることとなった。 ふたつめは、ミニゲームの豊富さ。これに関しては後で説明するが、とにかくミニゲームが豊富だった。 おそらく捜査の息抜きのためのものだったのだろうが、しかし…。 みっつめは、シリアスな捜査の中に、お笑いの要素がかなりあったということ。このゲームでの事件の謎の土台は、しっかりとできていた。 その上にお笑い芸人を乗せたのだが、同時にお笑い芸人のもちネタを加えられることになった。 そして吉本興業で当時一番人気があった明石屋さんまを主人公に、そのほかの吉本芸人をゲスト出演させたことは、 シリアスが主のADVに一石を投じることになった。 この他にも、コマンドをアイコンにして分かりやすくしたり(説明書がなくてもある程度は分かるけど…)、 さんまがプレイヤーに話しかけて近親感を持たせたり、捜査の途中でさんまが他の吉本芸人と雑談をしたり、 所々にある小ネタを見つけてにんまりできるといったことは、今の捜査ADVと比べても異色中の異色であり、かつなかなかに楽しめる秀作として評価できるかと思う。 ところで、このゲームのもう1つの名物は、皆さんご存知だろうか?そう、『カニ(蟹)』である。 このゲームのさんまとカニは、切っても切れないやや妙な関係であり、 調べるを選択すれば「カニカニどこカニ」というちょっとベタなギャグと共に、蟹のカーソルが登場するというシュールさがでてくる。 そしてミニゲームの中で最悪の難易度を誇る『ギャラクシガニ』もその1つである。 ミニゲームの内容は、名作AC『ギャラクシアン』のパロディだが、敵の速度や弾の数が尋常ではなく、 おまけにクリアの仕方がわからずにやられたプレイヤーも数多くいた。 一応捜査上に必要なミニゲームではないが、捜査のヒントを得るためにミニゲームをプレイした人はかなりいたはずだ。 そしてカニにやられて馬鹿にされれば、奴らに一泡吹かしてやるとばかりに、捜査そっちのけでプレイした人もかなりいたのではないだろうか。 総合的に見れば、楽しめるADVではあるのだが、このミニゲームが曲者だった。 捜査の息抜きと同時に、他のADVと一線を画すためのものだったのだろうが、プレイヤーの間で悲喜こもごもが巻き起こった。 もっともミニゲーム自体は少し簡単なものであるのだが、ここで勝たなければ捜査が進展できないし、何より捜査の初めと終わりにもミニゲームが仕掛けられている。 特に終わり(真犯人を追い詰めるシーン)の方は、しくじればバッドエンディングが待っていて、せっかくここまで進んだのに、 ミニゲームに失敗したばかりに真犯人を捕まえられなくてがっくりした人も多かった。 そのバッドエンディングは、いずれも捜査の終盤に待ち構えているのだが、どれも下手な選択をしない限り引っかかることはない(ただし最後のバッドエンドの方はミニゲームなので…)。 それにこのゲームはパスワードが導入されているので、バッドエンドの選択をしてしまった場合でも、直前にメモしておいたパスワードがあれば、なんとかはなる。 ちなみにADVでパスワードを導入したゲームは、これが最初であった。 私はこのゲームの存在を古くから知ってはいたが、私の頭の中ではADV=地下迷路という考えが支配していたので、手を出さなかった。 そして現在、話の種とゲームレビューのために初めてプレイしたが、なかなかにおもしろかった。 シリアスな捜査の中に吉本芸人のギャグをみたとき、『ポートピア連続殺人事件』とはまた違った面白さだなと感じた。 何より登場キャラが、口を動かしながらしゃべるのはとても驚いたし、さんまが私に向かってしゃべってくれるのは、少しうれしかった。 ただ、やはりミニゲームがとてもつらかった。ギャラクシガニはともかく、真犯人を追いかける際のミニゲームは、本当につらかった。 一発でクリアしたとはいえ、もしクリアし損なったらどうなったのか、あまり考えたくない。 ともあれ、クリアできてほっとしている。 …今更ながらに思ったのだが、一応大阪を舞台としながらも、東京をも事件の一舞台となっていることは、ポートピアよりもかなりスケールの大きい捜査ではないだろうか…。 本日のまとめ |