◆スペランカー◆
探検家とは、死ぬことと見つけたり!?



発売日:1985年12月7日   発売元:アイレム   ジャンル:ACT
値段:4900円   おすすめ度:3.5(今のゲームが簡単と思っている人に)


ハドソンの『チャレンジャー』・サン電子の『アトランチスの謎』と共に、『FC三大探検家(冒険者)ゲーム』と呼ばれたゲーム。 この総称は、選ばれた3つのゲームにとって、いささか不名誉なものであった。

理由は、主人公である探検家があまりにも(他のゲームの主人公と比べて)弱すぎたためであったのだ。 探険家の主な弱さは、色んな敵の攻撃1発でやられたり(チャレンジャーは例外)、 一定の高さまで落ちると死んでしまう(アトランチスの謎は例外)といった、一般ゲーマーにとってシビアな死に様だった。

チャレンジャーの時は、それほど表面には出なかったのだが、スペランカーの頃になるとそれが表ざたに出始め、 アトランチスの謎になると『探険家は弱い』といった認識が定着していった。 これら3本に、ポニーキャニオンの『スーパーピットフォール』をあわせて、『FC探検家ゲーム四天王』と表記されることもある。

元々、これらのゲームが登場する少し前までは、探検家ゲームの主人公と同じくらいの弱さのゲームがかなりあった。 しかし、時代が進むにつれてゲーム自体の難易度も下がり始め、主人公の虚弱さも徐々に改善されていった。 その一方、全く改善されていないゲームも存在しており、そのほとんどがなぜか探険家が主人公のものが多かった。 その事実も、『探険家は弱い』という認識に拍車をかけているといっていい。


ACでは、インカム率を上げるためにわざと難易度を高くしているのに対し、家庭用では購入者に大金を出させているために、ACよりも難易度を落とさざるをえなかった。

だが、家庭用のゲームはACよりも歴史が浅く、ゲーム制作のノウハウが十分でないため、ゲームバランスが狂ったものが出回っていた。 FC三大探検家ゲームが妙に難易度が高いのも、ACからの移植ではなくFCオリジナルであったことも無関係とはいえないだろう。

このゲームの内容は、洞窟に仕掛けられた罠などを回避しながら、最下層にある財宝を目指していくというもの。 一見簡単そうに見えるこのゲームだが、探検家ゲームにありがちな主人公の虚弱さにより、なかなかそうはいかない。 その虚弱さは、同じFC三大探検家ゲームのチャレンジャーとアトランチスの謎と比べて、非常に際立っていた。

その虚弱さを、箇条書きで以下に示すと、

・ひざ程度の高さで死ぬ(落とし穴やくぼみ、ロープから手を離しても同様)

・酸欠で死ぬ(画面上の中央にある矢印が酸素状態を表している)

・土砂に巻き込まれて死ぬ(トロッコに乗るとき)

・爆弾の爆発に巻き込まれて死ぬ

・火山(ちょっと出っ張っているところ)から出す湯気に触れて死ぬ

・地底湖で溺れ死ぬ

・こうもりの糞で死ぬ

・亡霊に触れて死ぬ

・なぜか下り坂でジャンプして死ぬ

主にそういった死に方があるのだが、ひざ程度の高さでの死亡は、スペランカー以前のゲームにも色々あった。 といっても、スペランカーよりも高い高さでの落下だが、一定以上の高さで落ちると死亡というスタンスは、既にACでも存在していた。

『ドンキーコング』シリーズ(3以外)や『マッピー』などがそれに該当する。 チャレンジャーも、(噴水エリアのみ)一定以上の高さで落ちると死ぬのだが、そういった問題はあまり聞かれることがなかった。


実は、そういった類のゲーム全ては、自分の身長以上の高さでジャンプすることが出来るが、スペランカーのみ自分の身長の半分程度のジャンプ力でしかない。 「これはリアルなんだ」という意見もあるが、それ以上に「リアルはいいからもっと高く飛べ」という声が大きい。

そして何よりも、ひざの高さ以上で落下のほかに主人公が死ぬパターンが数種類あり、これもこのゲームに対する偏見さに拍車をかけている。 その偏見さは、主人公の死にやすさそのものであるのだが、各ゲーム雑誌やレトロゲームサイトでもそれについてクローズアップされることが多い。

何故、死にやすさだけがクローズアップされることが多いのか。 それは、スペランカーとほぼ同時期に発売されたあるゲームの影響が、とてつもなく強かったことが大きい。

そのゲームは、任天堂の『スーパーマリオブラザーズ』。

スーパーマリオ以前にも、一定上の高さで落ちても死なないゲームは存在していたが、 スーパーマリオと同じほどの影響力を持つアクションゲームはなかったので、それほど落ちても死なないことがクローズアップされることはなかった。 だが、スペランカーはスーパーマリオよりわずかに後に発売されたために、主人公の死にやすさに焦点が当てられることとなってしまった。


それと、(隠しアイテムとして)配備されている赤い薬の存在も、主人公の死にやすさに拍車をかけている。

主人公は、薬を取ることで一定時間スピードアップしジャンプ力も(長さだけ)のびるのだが、その制御が出来ないので、 うっかりくぼみに落ちてしまったりトラップにぶつかってしまったりといった事態が起こってしまうことがある。 このため、一般のプレイヤーは薬をマイナスアイテムだと考える人がいるのだが、上級者になるとタイムアタックのための必須アイテムだということで積極的に取るプレイヤーが多い。

色んなトラブルなどを乗り切って、ようやく宝の山にたどり着いてエンディングとなっても、すぐさま何事もなかったかのように2周目が始まる。 しかも内容は、1周目と比べてはるかに高くなっている。

もっとも、難易度が高くなっているところは、爆弾や扉を開けるのに必要な赤と青の鍵だけなのだが、場所を記憶していない場合だと厳しくなる。 おまけに、酸素がこのゲームにおけるタイムリミットとなっているので、酸素補給機(赤と緑の色合いをしているもの)をできるだけ取るようにしないと、最終的には酸欠で死んでしまう。

このように、スペランカーは他のゲームと一線を画すほどに虚弱であり、当時のプレイヤーにとってこれはクソゲーにあたるものだとしていた。 しかししばらく後、アスキーの『ボコスカウォーズ』のようにゲームクリアの成否が運によるものではなく、プレイヤーの腕によるものだとわかったとき、スペランカーの評価は大きく変わっていく。

そもそもスペランカーは、かなりパターンが強いゲームなので、それさえ読んでおけばさほど難しくはなく、うまくいけば2周目以降も楽にクリアすることが出来る。 事実、インターネットが普及し動画投稿サイトにこのゲームのタイムアタック動画が多く投稿されてきたので、 これを見たリアルタイム世代の人は軽々と難関を突破するスペランカーの勇士に勇気付けられたに違いない。 これにより、スペランカーはクソゲーから名作へと大きく脱却することが出来た。

とはいえ、ボコスカウォーズと同じく現在も名作派とクソゲー派に分かれて、激しい議論が展開されている。 ただし、ボコスカウォーズと違って名作派の勢力が大きいが、やはり投稿動画の影響が強いと思われるが、名作派のほとんどは主人公の虚弱さについて否定はしていない。 やはり、スペランカーを名作と認めている人でも、内容と設定をそれぞれ切り離して考えるべきだと考えたのだろう。


さて話を変えて、このゲームにおける話題を2つ紹介する。

どちらも、主人公の虚弱さが元となっている。1つは、アイレムの4コマ漫画におけるもの。 この4コマ漫画は、『スペランカー先生』というタイトルでアイレムのHPに不定期で連載している。

発売元のアイレムが、何故わざわざスペランカーを主人公とした4コマ漫画を作ることになったのかというのは、ゲーム発売当初から主人公の虚弱さが露呈され、 その話題からいつの間にかこのゲームを発売したアイレムの話題へいってしまった。

アイレムが有名になったのは、虚弱な主人公のスペランカーのおかげだと思ったアイレムは、HP開設の際に感謝の意をこめてスペランカーの4コマ漫画を作ったものだと思われる。 その4コマ漫画に登場するスペランカーは、ゲームの虚弱さを反映して容姿性格とも、哀愁漂う青年となっている。 ネタも、スペランカーの要素を前面に押し出したものとなっており、当時プレイした人にとっては思わずニヤリとしたくなるものばかりである。

もう1つは、横浜ベイスターズの多村仁選手。 多村選手は、『スペランカー』というあだ名があるのだが、それはシーズン中にいつも大怪我で長期離脱を繰り返しているため(2006年にも、肋骨4本を折る大怪我で離脱してしまった)、 ファンからスペランカーと同じ体が弱いと認識させられている。

これにより、スペランカーをプレイしたユーザーは、怪我などで離脱するスポーツ選手のことを『スペる』と呼んで皮肉っている。 本当は、ベイスターズの将来のスラッガーとして期待が持てる選手なのだが、怪我による離脱の連続で不名誉なあだ名をつけられており、これからの巻き返しを期待したい。


最後に、このゲームの虚弱性以外の話題について2つ紹介していきたい。

1つは、同時期にAC版が登場したこと。 AC版も、FC版と同じく探検家が主人公だが、FC版と違ってトラップに引っかかったり高いところから落ちても死ぬことはないが、 残機制ではなくバイタリティ制を導入しているため思っている以上にダメージを喰らいやすく、何もしなくても体力が減るため実質FC版より難しいとされている。

知名度は、FC版と同時期に登場しているためか、強烈なインパクトを残したFC版よりもかなり低くなっている。一応続編も登場しているが、内容はほとんど変わっていない。 FC版も続編が作られているが、ジャンルは前作やAC版2作と違って内容はRPG風のアクションになっている。

もう1つは、カセットにある発光ダイオードの存在。 スペランカーのみならず、初期のアイレムのカセットには表の真ん中に赤い発光ダイオードが取り付けられていた。 この発光ダイオードは、電源のON/OFFが確認できるだけのものだが、ゲーム内容のインパクトも合わせていつのまにか有名になった。

これも、このゲームが記憶に残る要因ともなったのだが、何故わざわざ発光ダイオードをセットしなければならなかったのかについては、残念ながら詳しいことはわかっていない。


私が最初にプレイしたのは、発売の翌年(FC購入の前後)にいとこの家において。 既にFCの存在を知っており、また友達の家などでプレイしたことがある私だったが、いとこが色々なゲームを持っているのを見て驚いた。

その中にスペランカーがあり、面白そうだと思って早速プレイした。 最初のところは、難なく進むことができたのだが、まだFCに触れて間もない頃だったので、前半も制覇できずにゲームオーバーとなってしまった。

それから私は、いとこに頼み込んでこのゲームを借りて自宅でプレイしたが、 ようやく前半まで進んだとはいえ当時の私にとってはとても難しく、結局クリアすら出来ずにいとこに返すことになった。

なんといっても、主人公のあまりの死にやすさに少しながら色んなことについて考えてしまうほどになってしまった。 ただ、これをつまらないと思っていなかったのは、これはゲームの腕がものをいうものだとプレイした後に気づいていたから。

なので、運だけの要素でクリアの正否が問われるボコスカウォーズと違って、 かなり死にやすいがひたすらプレイすることでクリアが可能となっていくスぺランカーのほうがずっと面白みがあると、小さいながらにわかっていたと思っている。


それから昨年、このゲームのレビューがてらプレイすることになった私は、小さい頃に出来なかったゲームクリアを何としてでも成し遂げて見せると心に決めていた。 数度のゲームオーバーの末、ようやくゲームクリアすることが出来たが、2周目のときは(主人公が)既に満身創痍だったので、あっけなくゲームオーバーとなってしまったのだが。

その後、レビュー文を書いたがHPを作って間もない頃だったために、ゲーム画像を貼りまくったり文章もめちゃくちゃだったので、 今読んでみたらかなりの赤面ものだった(初期のレビュー文はいつもこういったものが全てだった…)。

このため、レビュー文の修正がてら久々にスペランカーをプレイすることになった。 本当に久々だったので、ちゃんとクリアできるのか不安だったが、指が思えていたためか意外とすんなりクリアすることが出来た。



本日のまとめ



CONGRATULATIONS!!  YOU’VE GAINED ALL THE  TREASURES AT LAST!  LET’S START ON  ANOTHER ADOVENTURE!!

(06/12/3修正)
伝説のスターブロブ2への掲載:2019年4月4日
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